グロービング 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

グロービング 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

グロービングは東京証券取引所プライム市場に上場し、戦略とデジタル及びAIを融合したコンサルティング事業とAIエージェント等の開発を行うAI事業を展開しています。業績トレンドとしては、コンサルタント人員の増加やAI関連売上の拡大により、直近の連結業績において大幅な増収増益を達成し、成長を続けています。


※本記事は、グロービングの有価証券報告書(第11期、自 2025年6月1日 至 2026年5月31日、2026年8月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. グロービングってどんな会社?

同社グループは、外部視点を持ったインサイダーとして企業変革を支援するコンサルティング等を提供します。

(1) 会社概要

2017年1月に設立され、2021年3月にコンサルティング事業を本格的に開始しました。2023年10月にアバランチを子会社化してサービス領域を拡大し、2024年11月に東京証券取引所グロース市場へ新規上場を果たしました。その後、2026年4月にプライム市場へ市場区分を変更しています。

同社の従業員数は連結で298名、単体で246名です。筆頭株主は同社の取締役である輪島総介氏の資産管理会社であり、第2位は創業者の輪島総介氏本人、第3位は信託業務を行う日本カストディ銀行となっています。

氏名 持株比率
EMMA&KEITO 30.68%
輪島総介 17.32%
日本カストディ銀行(信託口) 7.08%

(2) 経営陣

同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長兼CEO上級執行役員は田中耕平氏が務めています。社外取締役比率は30.0%です。

氏名 役職 主な経歴
田中耕平 代表取締役社長兼CEO上級執行役員 アクセンチュア、楽天等を経てLingvist取締役に就任。2017年にアクセンチュアへ再入社後、2022年に同社取締役、2023年に代表取締役社長に就任。2025年8月より現職。
中川和彦 代表取締役副社長兼上級執行役員 2002年5月にアクセンチュアに入社。2023年7月に同社へ入社しシニアパートナーに就任。同年9月に取締役副社長、2024年に上級執行役員を兼任し、2025年8月より現職。
福田浩基 取締役兼CSO上級執行役員 2006年4月にボストン・コンサルティング・グループ合同会社に入社。2021年1月に同社のManaging Director&Partnerに就任。2024年に同社取締役に就任し、2025年8月より現職。
輪島総介 取締役兼上級執行役員 三菱自動車工業、アクセンチュア、PwCコンサルティング合同会社を経て、2017年1月に同社を設立。2021年に代表取締役代表パートナーに就任し、2025年8月より現職。


社外取締役は、米山恭右(元パソナ執行役員CIO)、田村誠一(元JVCケンウッド代表取締役)、高橋広敏(元インテリジェンス代表取締役)です。

2. 事業内容

同社グループは、コンサルティング事業およびAI事業を展開しています。

(1) コンサルティング事業

外部視点を持ったインサイダーとしてCxOクラスに伴走し、戦略とデジタル及びAIを融合したコンサルティングサービスを提供しています。クライアントと同心協力で新規事業の共創等を行うJI型と、従来型コンサルティングを展開しています。

クライアント企業から提供するコンサルティング役務に対する業務委託料等を収益源としています。運営は主にグロービング、および子会社のアバランチや上海巨球協英信息技術有限公司が行っています。

(2) AI事業

コンサルティング事業で蓄積したノウハウをAI技術でプロダクト化し、企業の外部支出の最適化や企画業務、会議運営等を支援するAIエージェントおよびAI関連プロダクトを提供しています。

特定の顧客課題に応じてカスタマイズしたプロダクトの共同開発や提供に対するサービス利用料等を収益源としています。運営は主にグロービングが行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近の業績推移を見ると、売上収益は順調に拡大を続けており、利益面においても大幅な増益を達成しています。コンサルティング事業における人員増加やAI事業の急成長が、グループ全体の利益率の向上と事業規模の拡大に寄与していることが伺えます。

項目 2025年5月期 2026年5月期
売上収益 83億円 115億円
税引前利益 26億円 40億円
利益率(%) 31.0% 34.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 16億円 29億円

(2) 損益計算書

売上収益の拡大に伴い、売上総利益および営業利益ともに大きく増加しています。特にAIを活用した業務効率化や高付加価値サービスの提供により、利益率の改善が進んでいる傾向が見られます。

項目 2025年5月期 2026年5月期
売上高 83億円 115億円
売上総利益 51億円 74億円
売上総利益率(%) 62.3% 64.3%
営業利益 26億円 40億円
営業利益率(%) 31.6% 34.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が11億円(構成比31%)、採用関連費用が4億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益

コンサルティング事業は、人員増と大型案件の獲得により大幅な増収増益を牽引しています。また、AI事業もプロダクトの共同開発が進み、売上高が急拡大するとともに黒字転換を果たし、高利益率を記録しています。

区分 売上(2025年5月期) 売上(2026年5月期) 利益(2025年5月期) 利益(2026年5月期) 利益率
コンサルティング事業 82億円 111億円 37億円 49億円 44.5%
AI事業 0.4億円 4億円 -2億円 2億円 57.6%
調整額 - - -9億円 -12億円 -
連結(合計) 83億円 115億円 26億円 40億円 34.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。

項目 2025年5月期 2026年5月期
営業CF 33億円 33億円
投資CF -4億円 -26億円
財務CF 24億円 -17億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は43.2%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は73.5%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社は「Be a “Growth” Infrastructure(成長の核となり、世界を進化で満たす存在であり続けます)」をPurposeに掲げています。戦略コンサルティングサービスを顧客基点で再定義し、企業の本質的な変革を支援することで、顧客企業と日本社会の成長に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化

同社は「Passion for Winning(“勝たせるコンサル”)」をValueとして掲げています。徹底的に勝ちにこだわるサービスを提供し、顧客企業を勝てる集団に変革することを重視しており、客観性を担保しつつもクライアントの内部に入り込み主体的に変革を推進する文化を大切にしています。

(3) 経営計画・目標

同社はコンサルティング事業の業績向上を重要課題とし、以下の客観的な指標を重視して経営目標を定めています。

・コンサルタント人員数の増加と定着率の向上
・コンサルタント平均年収の向上
・顧客粘着性と単価向上に向けたJI売上高比率の上昇
・AI関連売上高の拡大

(4) 成長戦略と重点施策

中長期的な成長に向けて、同社はAI時代におけるコンサルティング提供価値の再定義と品質向上を進めています。具体的には以下の施策に注力しています。

・AIを活用した業務プロセスの高度化と品質の均質化
・AIプロダクト及び暗黙知プラットフォームの開発加速と事業化
・AI活用を前提としたコア人材の確保と育成

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

同社は人材を持続的な成長と企業価値向上の源泉と位置付けています。クライアントの変革を主体的に牽引できるコア人材や、AIを実務に活用して新たな価値を創出できる人材の確保と育成を人材戦略の基本方針とし、専門性と実行力を兼ね備えた人材が継続的に活躍できる組織基盤の構築に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年5月期 35.4歳 1.8年 15,986,000円

※平均年間給与は基準外賃金及び手当を含んでおります。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 14.5%
男性育児休業取得率 62.5%
男女賃金差異(全労働者) 58.9%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 58.9%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 88.9%

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 優秀な人材の確保と育成

同社グループはAI活用による生産性向上を目指す一方で、コンサルティングビジネスの源泉である優秀な人材の確保と育成を不可欠と認識しています。人材獲得競争の激化により、優秀な人材の確保が事業拡大に追いつかない場合や離職が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) コンサルティング業界における競合激化

同社グループが手掛けるコンサルティング事業は参入障壁が比較的低く、大手から個人まで多数の事業者が存在します。同社はクライアントの内部に入り込むサービスやAI活用で競争優位性を追求していますが、価格・サービス競争に適切に対応できない場合、事業展開や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 特定の取引先への依存

同社グループは一部の特定顧客への販売比率が高い状態にあります。直近では上位10社で売上収益の過半を占めており、新規顧客の獲得や複数プロジェクトの受注による営業基盤の拡大に努めていますが、主要取引先の経営方針の変化などで契約が想定外に終了・縮小した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) プロジェクトの採算管理と収益認識

コンサルティング業務において、進捗度に応じた収益認識を行っています。プロジェクトが長期にわたる場合、予見できない事象による作業の遅れなどにより総役務提供時間の見積もりが変動することがあり、進捗度の変動が各期の業績に影響を及ぼすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。