グロービング 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

グロービング 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所グロース市場に上場するグロービングは、戦略とデジタルを融合したコンサルティング事業と、SaaS型のクラウドプロダクト事業を展開しています。2025年5月期は、コンサルタントの増員や大型案件の獲得により、売上高は前期比約2倍、経常利益は約7倍と急拡大し、大幅な増収増益を達成しました。


※本記事は、グロービング株式会社 の有価証券報告書(第10期、自 2024年6月1日 至 2025年5月31日、2025年8月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. グロービングってどんな会社?


コンサルティング事業とクラウドプロダクト事業を展開し、外部視点を持ったインサイダーとして企業変革を支援する企業です。

(1) 会社概要


2017年1月に神奈川県鎌倉市で設立され、2021年3月にコンサルティング事業を本格的に開始しました。2023年10月にはアバランチを子会社化し、2024年5月にはLaboro.AIとの合弁でX-AI.Laboを設立するなど事業を拡大しています。2024年11月に東京証券取引所グロース市場へ新規上場しました。

連結従業員数は273名、単体従業員数は230名です。筆頭株主は創業者で代表取締役の輪島総介氏の資産管理会社であるEMMA&KEITOで、第2位は輪島総介氏本人です。第3位には資本業務提携先であるパーソルクロステクノロジーが名を連ねています。

氏名 持株比率
EMMA&KEITO 30.46%
輪島総介 27.04%
パーソルクロステクノロジー 6.53%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長兼上級執行役員は田中耕平氏、社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
輪島 総介 代表取締役 代表パートナー兼上級執行役員 三菱自動車工業、アクセンチュアStrategy本部F&EP統括を経て2017年同社設立。PwCコンサルティングを経て2021年代表取締役代表パートナー。2024年2月より現職。
田中 耕平 代表取締役 社長兼上級執行役員 アクセンチュア、楽天を経てReDucate代表取締役社長などを歴任。2022年同社取締役、2023年代表取締役社長に就任。2024年2月より現職。
中川 和彦 取締役副社長兼上級執行役員 2002年アクセンチュア入社。2023年同社入社しシニアパートナー、取締役副社長を経て2024年2月より現職。
和田 菜穂子 取締役副社長COO兼上級執行役員 モルガン・スタンレー証券、ボストン・コンサルティング・グループ、出前館取締役兼執行役員副社長などを経て2024年1月より現職。
福田 浩基 取締役CSO兼上級執行役員 ボストン・コンサルティング・グループManaging Director&Partnerを経て2024年2月より現職。


社外取締役は、米山恭右(元三菱マテリアル執行役員)、田村誠一(元JVCケンウッド代表取締役)、高橋広敏(元インテリジェンス代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「コンサルティング」および「クラウドプロダクト」事業を展開しています。

コンサルティング事業


戦略策定やDX推進等を支援するほか、顧客企業の内部に入り込み事業を推進する「Joint Initiative(JI)型」コンサルティングを提供しています。顧客企業と一体となって新規事業創造や変革をリードする点が特徴です。

収益は主に顧客企業からのコンサルティングフィーによって構成されています。運営は同社および子会社のアバランチ、上海巨球協英信息技術有限公司、X-AI.Laboが行っています。

クラウドプロダクト事業


コンサルティング事業で蓄積したノウハウをシステム化したSaaS型プロダクトを開発・提供しています。主な製品には、営業生産性向上を目指す「セールススイート」や、外部支出の最適化を支援する「スペンドインテリジェンススイート」があります。

収益は顧客企業からのサービス利用料等によって構成されています。運営は主に同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2期間のデータを見ると、売上高は約2倍に急成長しており、利益面でも大幅な増益を達成しています。利益率も大きく向上しており、事業規模の拡大とともに収益性が高まっていることが読み取れます。

項目 2024年5月期 2025年5月期
売上高 42億円 83億円
経常利益 4億円 28億円
利益率(%) 9.1% 33.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 3億円 18億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益および営業利益が著しく伸長しています。特に営業利益率は大幅に改善しており、売上拡大が利益創出に直結する収益構造となっていることがうかがえます。

項目 2024年5月期 2025年5月期
売上高 42億円 83億円
売上総利益 26億円 56億円
売上総利益率(%) 63.4% 67.9%
営業利益 4億円 28億円
営業利益率(%) 8.9% 33.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が約11億円(構成比38%)、採用関連費用が約3億円(同11%)、役員報酬が約3億円(同12%)を占めています。売上原価においては、人件費や外注費などが主な内訳となっています。

(3) セグメント収益


コンサルティング事業が全社売上の大半を占めており、同事業の急成長が全社業績を牽引しています。クラウドプロダクト事業は売上規模がまだ小さく、投資先行のフェーズにあるため営業損失を計上しています。

区分 売上(2024年5月期) 売上(2025年5月期) 利益(2024年5月期) 利益(2025年5月期) 利益率
コンサルティング 42億円 83億円 10億円 38億円 45.6%
クラウドプロダクト 0.0億円 0.0億円 -1億円 -1億円 -2725.0%
調整額 - - -5億円 -8億円 -
連結(合計) 42億円 83億円 4億円 28億円 33.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


**積極型**:本業で稼いだ資金(営業CF+)に加え、株式発行等による調達(財務CF+)を行い、将来のための投資(投資CF-)を積極的に進めている状態です。

項目 2024年5月期 2025年5月期
営業CF -1億円 31億円
投資CF -2億円 -4億円
財務CF 0.4億円 26億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は48.8%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は65.6%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「Be a “Growth” Infrastructure(成長の核となり、世界を進化で満たす存在であり続けます)」をPurposeとして掲げています。Visionとして「戦略コンサルティングサービスの在り方を、顧客基点で再定義する」こと、Valueとして「Passion for Winning(勝たせるコンサル)」を掲げ、日本社会が再び成長軌道に戻ることを支援することを目指しています。

(2) 企業文化


「勝たせるコンサル」として徹底的に「勝ち」にこだわるサービスを提供し、顧客企業を勝てる集団に変革することを重視しています。「外部視点を持ったインサイダー」として、客観性を担保しつつもクライアント企業の内部に入り込み、変革をドライブする姿勢を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


同社は中長期的にコンサルティング事業の業績向上を一層図ることを重要課題としています。具体的な経営上の目標達成状況を判断する指標として、以下の項目を重視しています。

* コンサルタント人員数
* コンサルタント平均年収
* JI売上高比率
* AI関連売上高

(4) 成長戦略と重点施策


「Joint Initiative(JI)型コンサルティング」の推進により顧客粘着性の深化と単価向上を図るとともに、AIやデジタルツールを活用した業務効率化によって「人の頭数に依存しない」ビジネスモデルへの転換を目指しています。また、Laboro.AIとの合弁会社設立などを通じ、AI関連売上の拡大にも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


AI/DXの活用により一人当たりの生産性を向上させつつ、コンサルティングビジネスの核心である優秀な人材の確保と育成を最重要課題と位置付けています。中途採用を中心に即戦力人材を獲得するとともに、質の高い研修プログラムや柔軟な働き方の提供、福利厚生の充実等を通じて、従業員エンゲージメントと定着率の向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年5月期 34.7歳 1.3年 15,206,000円


※平均年間給与は、基準外賃金及び手当を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 16.2%
男性育児休業取得率 66.7%
男女賃金差異(全労働者) 67.3%
男女賃金差異(正規雇用) 67.6%
男女賃金差異(非正規) 69.4%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 優秀な人材の獲得・育成について


コンサルティングビジネスにおいて人材は最も重要な資産ですが、人材獲得競争の激化により、優秀な人材の確保が事業拡大のスピードに追いつかない場合や、既存人材の離職、採用コストの増大が生じた場合、同社グループの事業展開や業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 競合について


コンサルティング業界は参入障壁が比較的低く、大手から個人まで多数の事業者が存在します。同社は顧客内部に入り込む支援やAI活用等で差別化を図っていますが、価格やサービス面での競争が激化し、これに適切に対応できない場合、事業展開や業績に影響が出る可能性があります。

(3) 収益の認識基準とプロジェクトの採算管理について


コンサルティング業務の収益は進捗度に応じて認識していますが、プロジェクトが長期化したり、予期せぬ事象により作業工程に遅れが生じたりした場合、総役務提供時間の見積もりに変動が生じ、業績に影響を与える可能性があります。同社は見積もりの精査やモニタリングで管理を行っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。