自重堂 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

自重堂 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

自重堂は、スタンダード市場に上場するアパレルメーカーです。主にワークウェア(ユニフォーム)やメンズウェアの企画・製造・販売を行っています。直近の決算では、売上高は149億円(前期比11.4%減)、経常利益は16億円(同44.8%減)、当期純利益は11億円(同44.0%減)と減収減益でした。


※本記事は、株式会社自重堂の有価証券報告書(第65期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 自重堂ってどんな会社?


自重堂は、ワークウェア(作業服)や医療用白衣、セーフティシューズなどの企画・製造・販売を主力とするアパレルメーカーです。

(1) 会社概要


同社は1924年に創業し、1960年に設立されました。1994年に広島証券取引所へ上場し、翌1995年には大阪証券取引所市場第二部、2000年には東京証券取引所市場第二部へ上場しました。2018年には株式会社ライオン屋を完全子会社化し、2022年の市場区分見直しに伴い、現在はスタンダード市場に上場しています。

2025年6月30日現在、連結従業員数は179名、単体従業員数は139名です。筆頭株主は取締役の出原正博氏で、第2位、第3位にはそれぞれ資産管理会社と思われるMASANOBUINVESTMENTCAPITAL、出原ホールディングスが名を連ねています。

氏名 持株比率
出原正博 17.62%
MASANOBUINVESTMENTCAPITAL 8.51%
出原ホールディングス 8.51%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性3名の計9名で構成され、女性役員比率は33.0%です。代表取締役社長は出原正貴氏が務めています。取締役6名のうち3名が社外取締役であり、社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
出原正貴 代表取締役社長営業本部長商品本部長ユニフォーム事業部長 1987年全日本空輸入社。1998年同社入社。営業本部長、代表取締役会長CEOなどを経て2025年5月より現職。
出原正博 取締役業務本部長 1976年日本不動産銀行(現あおぞら銀行)入行。1998年同社入社。代表取締役社長、玄海ソーイング社長などを経て2024年9月より現職。
出原群三 取締役最高顧問 1961年明電舎入社。1970年同社監査役。代表取締役社長、代表取締役会長CEOなどを経て2014年9月より現職。


社外取締役は、入交佐和(株式会社食瑠代表取締役)、宇都さふか(小仕事株式会社代表取締役)、渡辺章子(一般社団法人都市農福を推進する会設立代表理事)です。

2. 事業内容


同社グループは、「衣料品製造販売事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

衣料品製造販売事業


同社グループは、主にユニフォーム(作業服、医療用白衣、セーフティシューズ等)およびメンズウェアの企画、製造、販売を行っています。製造面では、同社および子会社の玄海ソーイング、関連会社の南山自重堂防護科技有限公司などが一貫生産やパーツ組立を行っています。また、海外製品の開発輸入も行っています。

主な収益は、代理店やユーザーへの製品販売による代金です。販売は主に同社が行うほか、子会社のライオン屋が作業服及び作業用品の販売を、関連会社の立川繊維などが販売を行っています。製造から販売までをグループ内で連携して行う体制を構築しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は149億円から179億円の間で推移しており、第65期は減収となりました。経常利益は第63期の36億円をピークに減少傾向にあり、第65期は16億円となっています。利益率も低下傾向にありますが、依然として10%を超える高い水準を維持しています。

項目 2021年6月期 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上高 179億円 170億円 177億円 169億円 149億円
経常利益 22億円 30億円 36億円 29億円 16億円
利益率(%) 12.6% 17.8% 20.2% 17.5% 10.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 15億円 28億円 25億円 20億円 11億円

(2) 損益計算書


減収に伴い、売上総利益、営業利益ともに減少しました。原材料やエネルギー価格の高騰、円安などの影響を受けつつも、売上総利益率は30%台を維持しています。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 169億円 149億円
売上総利益 56億円 46億円
売上総利益率(%) 33.4% 30.6%
営業利益 26億円 14億円
営業利益率(%) 15.5% 9.7%


販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が8億円(構成比27%)、役員報酬・給料が8億円(同25%)、荷造運搬費が3億円(同9%)を占めています。売上原価については、商品評価損等が計上されています。

(3) セグメント収益


同社は単一セグメントですが、原材料費や物流コストの上昇、円安などの影響により利益面で苦戦しています。売上高の減少に加え、商品評価の見直し等が利益を圧迫しました。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期) 利益(2024年6月期) 利益(2025年6月期) 利益率
衣料品製造販売 169億円 149億円 26億円 14億円 9.7%
連結(合計) 169億円 149億円 26億円 14億円 9.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF 38億円 40億円
投資CF -0.7億円 -2億円
財務CF -14億円 -14億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は90.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「働く人を応援する」および「世界中の働く人を応援する」という基本理念を掲げています。この理念に基づき、ワークウェアとしての機能性とデザイン性を兼ね備え、かつ価格訴求力のある商品の提供を通じて、働く人々をサポートすることを目指しています。

(2) 企業文化


同社には、「揃わなければユニフォームとは言えない」というユニフォームの基本に立ち返る姿勢があります。これは「揃う自重堂」としての信頼を取り戻し、欠品や納期遅れによる販売機会ロスを低減するという、顧客への安定供給を重視する価値観を表しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、自己資本利益率(ROE)の維持・向上を重要な経営課題と認識していますが、備蓄型ビジネスモデルを維持するための健全な財務基盤を重視し、過度なROE向上は追求しない方針です。具体的には、ROE5%を目安としつつ、資本効率の向上を図るとしています。

* ROE目安:5%

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「揃う自重堂」の復活に向け、生産体制の再整備・強化に注力し、信頼回復と販売機会ロスの低減を図っています。商品面では、SDGsやサステナビリティに対応した商品、電動ファン付ウェア「空調服」、電熱ギアブランド「FEVER GEAR ADVANCE」など、働く人が求める機能性商品の開発・販売を強化しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は中長期的な企業価値向上において人材確保と育成を重視しており、新卒採用に加え、女性の登用を含む多様な人材確保に積極的に取り組んでいます。女性登用に関しては、採用者に占める女性割合50%以上、女性社員の育児休業取得率100%維持を目標に掲げ、環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 41.6歳 17.9年 4,367,138円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 26.7%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 57.0%
男女賃金差異(正規) 75.7%
男女賃金差異(非正規) 68.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用に占める女性の割合(60%)、女性社員の育児休業取得率(100%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定地域への生産依存


同社グループの製品の多くは海外拠点で生産されており、特に中国とミャンマーに集中しています。海外生産拠点の分散化を進めていますが、これらの国で何らかの要因により生産活動に支障が生じ、他地域への振替が円滑に行えない場合、経営成績に悪影響を与える可能性があります。

(2) 為替変動の影響


同社グループは輸入仕入比率が高く、仕入価格は米ドルや人民元と連動しています。為替予約取引によるリスクヘッジを行っていますが、完全にリスクを回避できるものではなく、円安などの為替変動により仕入コストが上昇し、経営成績に影響を与える可能性があります。

(3) 原材料価格の高騰とデリバティブ取引


原材料やエネルギー価格の高騰による物価上昇が続いており、生産コストの上昇要因となっています。また、輸入取引に係る為替リスク対応のために行うデリバティブ取引は時価評価されるため、為替レートや金利差の変動により評価損益が発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。