あいホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

あいホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場のあいホールディングスは、セキュリティ機器や情報機器、設計事業等を展開する持株会社です。当連結会計年度は、岩崎通信機やナカヨの子会社化による「負ののれん発生益」等により大幅な増収増益(親会社株主に帰属する当期純利益ベース)を達成しました。


※本記事は、あいホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第19期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. あいホールディングスってどんな会社?

セキュリティ機器やカッティングマシン等の情報機器、設計、通信機器等を展開し、M&Aで成長を続ける企業グループです。

(1) 会社概要

2007年4月、ドッドウエル ビー・エム・エスとグラフテックの経営統合により設立され、東証一部に上場しました。2009年にはあい設計が事業を譲り受け設計事業を開始し、多角化を推進。2015年にはNBS Technologies Inc.等を子会社化し海外展開を加速しました。近年では2024年9月に岩崎通信機、2025年4月にナカヨを連結子会社化し、情報通信分野を強化しています。

同グループは連結従業員2,794名、単体36名の体制で運営されています。筆頭株主は代表取締役会長の佐々木秀吉氏で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。安定株主として創業家や金融機関が名を連ねています。

氏名 持株比率
佐々木 秀吉 20.48%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.79%
光通信 5.57%

(2) 経営陣

同社の役員は男性9名、女性2名、計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役会長兼CEOは佐々木秀吉氏、代表取締役社長は荒川康孝氏が務めています。社外取締役比率は約27.3%です。

氏名 役職 主な経歴
佐々木 秀吉 取締役会長(代表取締役)最高経営責任者(CEO) 1982年東洋ホーム代表取締役。ドッドウエル ビー・エム・エス社長等を経て、2007年同社代表取締役会長兼CEOに就任。グラフテック会長等を兼務し、グループ経営を牽引。
荒川 康孝 取締役社長(代表取締役) 1989年アイワ入社。グラフテック入社後、海外子会社社長や同社代表取締役社長を歴任。2020年9月より現職。シルエットジャパン社長も兼務。
山本 裕之 取締役経営戦略本部長 1979年東京スター銀行入社。ドッドウエル ビー・エム・エス入社後、経営戦略室長等を歴任。2022年9月より現職。
三田 浩司 取締役管理本部長 1986年グラフテック入社。同社取締役情報機器営業本部長、経営企画室長等を経て、2024年9月より現職。
清水 慶典 取締役 1991年飛鳥建設入社。あい設計代表取締役社長等を務め、2024年9月より現職。アービカルネット会長も兼務。


社外取締役は、河本博隆(元特許庁審査第一部長)、佐野恵子(元ベインキャピタル・アジアLLC日本担当IR室長)、髙橋一夫(元大和証券グループ本社副社長)です。

2. 事業内容

同社グループは、「セキュリティ機器」「カード機器及びその他事務用機器」「情報機器」「計測機器」「情報通信」「設計事業」および「その他」事業を展開しています。

セキュリティ機器

マンションや一般法人向けに、セキュリティシステム機器の開発・製造・販売を行っています。防犯カメラシステム等の「見える化」ニーズやAI活用などに対応しています。
収益は、機器の販売やリース契約、保守サービス料等から得ています。運営は主に株式会社ドッドウエル ビー・エム・エス、あいエンジニアリング株式会社等が担当しています。

カード機器及びその他事務用機器

病院向けの診察券発行機や金融機関向けのカード発行システム、鉄構業界向けの専用CADソフトなどを提供しています。
収益は、カード発行機器や事務用機器の販売、ソフトウエア販売等から得ています。運営は主に株式会社ドッドウエル ビー・エム・エスが行っています。

情報機器

業務用および個人向けのカッティングマシン、スキャナ等のコンピュータ周辺機器を提供しています。特にコンシューマ向け小型カッティングマシンが主力商品の一つです。
収益は、製品の販売および保守サービス等から得ています。運営はグラフテック株式会社、シルエットジャパン株式会社および海外現地法人が行っています。

計測機器

各種電子計測器や計測システムの開発・製造・販売を行っています。当期より岩崎通信機の電子計測事業が加わりました。
収益は、計測機器等の製品販売から得ています。運営はグラフテック株式会社、岩崎通信機株式会社等が担当しています。

情報通信

ビジネスホンシステム等の情報通信機器の開発・製造・販売を行っています。当期より岩崎通信機とナカヨが連結に加わったことで新設されたセグメントです。
収益は、情報通信システム等の製品販売から得ています。運営は岩崎通信機株式会社、株式会社ナカヨ等が担当しています。

設計事業

構造設計や耐震診断を主体とした建築設計事業を展開し、官公庁や民間からの受注に対応しています。
収益は、設計業務や耐震診断業務の受託料から得ています。運営は株式会社あい設計、株式会社田辺設計が行っています。

その他

節電・省エネシステム(脱炭素システム)、カードリーダー、自動おしぼり製造機、ソフトウエア開発、リース・割賦事業などを展開しています。
収益は、製品販売、保守サービス、リース料収入等から得ています。運営は株式会社ドッドウエル ビー・エム・エス、株式会社アイグリーズ等、グループ各社が行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

売上高はM&Aの効果もあり大幅な増加傾向にあります。利益面では、当期は「負ののれん発生益」の計上により親会社株主に帰属する当期純利益が過去最高水準となりましたが、本業の儲けを示す経常利益は一時的な費用の発生等により減少しました。

項目 2021年6月期 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上高 462億円 471億円 464億円 498億円 662億円
経常利益 99億円 108億円 105億円 199億円 90億円
利益率(%) 21.4% 23.1% 22.7% 39.9% 13.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 17億円 45億円 63億円 45億円 43億円

(2) 損益計算書

売上高は前期比で大きく伸長しましたが、売上原価や販管費も増加しています。営業利益率は低下しましたが、これは新規連結子会社の影響やM&A関連費用等の計上によるものです。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 498億円 662億円
売上総利益 248億円 303億円
売上総利益率(%) 49.7% 45.8%
営業利益 99億円 89億円
営業利益率(%) 19.8% 13.4%


販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が62億円(構成比29.0%)、その他経費が125億円(同58.3%)を占めています。

(3) セグメント収益

当期より「情報通信」「計測機器」セグメントが加わり、事業ポートフォリオが拡大しました。セキュリティ機器は堅調に推移しましたが、情報機器は海外市場の冷え込みにより減収減益となりました。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期) 利益(2024年6月期) 利益(2025年6月期) 利益率
セキュリティ機器 142億円 152億円 - 62億円 40.5%
カード機器及びその他事務用機器 30億円 31億円 - 8億円 26.8%
情報機器 162億円 135億円 - 5億円 3.4%
計測機器 20億円 50億円 - 8億円 16.5%
情報通信 - 118億円 - 7億円 5.7%
設計事業 56億円 56億円 - 5億円 8.5%
その他 88億円 120億円 - 2億円 1.4%
調整額 - - - -7億円 -
連結(合計) 498億円 662億円 - 89億円 13.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

営業CFはプラスを維持し、投資CFも当期は有形固定資産売却や子会社取得に伴う現金受入によりプラスとなりました。財務CFは配当金の支払い等によりマイナスで推移しており、改善型のキャッシュ・フロー状態を示しています。

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF 84億円 76億円
投資CF -64億円 71億円
財務CF -47億円 -54億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は22.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は77.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社グループは、「すべては『信頼』と『誠実』から始まり人と社会に認められる価値を創造する」を経営の基本理念としています。この理念のもと、国内外から顧客ニーズを汲み上げ、それに応える商品の企画・開発・製造・販売を行うことを基本方針としています。

(2) 企業文化

同社は、戦略的なコア事業をセキュリティ市場およびニッチ市場に絞り込み、他社に先駆けた商品やビジネスモデルを提供することを重視しています。また、積極的なM&Aや業務提携を通じて商品開発力や営業力を強化し、事業拡大を目指す姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標

商社部門とメーカー部門が共存し売上構成が変動するため、経営計画においては営業利益に絶対値目標を定めて経営を推進しています。また、M&Aによる成長を継続する方針から、長期的にはEPS(1株当たり当期純利益)を重要な経営指標と設定し、その最大化を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策

今後は、セキュリティ市場やニッチ市場での競争力強化に加え、節電・省エネシステムの開発、製品・サービスのIoT化・AI化に注力します。また、新たにグループ入りした岩崎通信機とナカヨのビジネスホン事業の統合を早期に進め、シナジー効果の実現を図ることが重点課題です。M&Aも引き続き重要な成長戦略として位置づけています。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

「人材」を経営上最も重要な資本と捉え、多様なスキルを持つ人材を性別等を問わず採用し、中途採用者も含め積極的に管理職に登用する方針です。安定とインセンティブのバランスを考慮した人事制度によりモチベーション向上を図り、各社の事業に合わせた教育研修を通じて人材育成を行っています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 48.9歳 17.8年 5,717,226円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.8%
男性育児休業取得率 22.2%
男女賃金差異(全労働者) 66.4%
男女賃金差異(正規) 63.9%
男女賃金差異(非正規) 88.1%


※上記は主要子会社である株式会社ドッドウエル ビー・エム・エスの実績です。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員構成(25.0%)、中途採用社員構成(46.8%)、中途採用管理職構成(48.2%)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) M&Aに関するリスク

事業拡大の手段としてM&Aを重視していますが、対象企業の財務内容や契約関係のデューデリジェンスを行っても、買収後に期待した利益が得られない場合や、未認識債務が顕在化した場合、減損処理などにより業績や財務状況に悪影響が生じる可能性があります。

(2) 製品の需要変動と競争リスク

市場動向や技術革新により、製品需要が予想を大幅に下回る可能性があります。特に革新的技術の登場や競合他社の動向により競争力が低下した場合、在庫リスクや収益性の悪化を招き、業績に影響を与えるおそれがあります。

(3) カントリーリスク及び為替変動

海外での販売や輸入を行っているため、各国の政治・経済情勢の変化や為替変動の影響を受けます。米中対立や地政学的リスクの高まり、急激な為替変動が発生した場合、業績や財務状況に悪影響が生じる可能性があります。

(4) 外部生産委託及び調達リスク

製品の多くを外部委託生産や購入に依存しているため、材料費の高騰、部品不足(半導体等)、納入遅延、品質問題、自然災害等により調達に支障が生じた場合、製品供給が滞り、業績に悪影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。