**記事タイトル:ユビテック転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態**
※本記事は、株式会社ユビテックの有価証券報告書(第49期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ユビテックってどんな会社?
IoT事業や受託開発を展開し、企業の安全運転管理や現場作業者の安全見守りなどのソリューションを提供する企業です。
■(1) 会社概要
1977年にタウ技研として設立されました。2004年にIRIユビテックへ社名変更し、2005年に現在の東証スタンダード市場へ上場を果たしました。2007年にはオリックスのグループ会社となっています。近年は2019年に「Work Mate」、2022年に「D-Drive」の提供を開始しています。
従業員数は連結で81名、単体で63名体制で事業を運営しています。筆頭株主は事業会社で親会社のオリックスで、第2位は個人株主、第3位は金融商品取引業者のGMOクリック証券です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| オリックス | 57.64% |
| 糸谷 輝夫 | 3.92% |
| GMOクリック証券 | 3.40% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は池田学氏が務めています。取締役における社外取締役の比率は約28.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 池田 学 | 代表取締役社長 | オリックス入社後、同社常務執行役員、専務執行役員などを経て、2025年9月より現職。 |
| 萩原 英樹 | 取締役 | オリックス入社後、同社事業開発部ONEエネルギー取締役等を経て、2025年9月より現職。 |
| 羽鳥 敦久 | 取締役 | 國洋電機工業入社後、同社新規事業開発部長、技術部門管掌執行役員等を経て、2025年9月より現職。 |
| 佐藤 厚範 | 非常勤取締役 | オリックス入社後、同社執行役、環境エネルギー本部副本部長等を経て、2024年9月より現職。 |
| 内藤 進 | 非常勤取締役 | オリックス入社後、オリックス自動車代表取締役社長などを経て、2025年9月より現職。 |
社外取締役は、中澤仁(慶應義塾大学環境情報学部教授)、早野順一郎(ハートビートサイエンスラボ代表取締役兼CEO)です。
2. 事業内容
同社グループは、IoT事業、製造受託事業、開発受託事業を展開しています。
■IoT事業
センサ搭載通信端末機器のハードウェア製品やサーバーアプリケーションサービス、クラウドサービス、IoTインフラの構築・運用などを提供しています。主な顧客は、カーシェアリング運営会社や現場作業者の安全管理を行う企業です。
収益源は、クラウドサービス導入に係る機器販売や利用料、運用・保守サービス料などです。運営は同社が行っており、アルコールチェックや体調管理など社会課題解決に向けたソリューションを展開しています。
■製造受託事業
通信アミューズメント機器および歯科診療向けなどの咬合力計測機器用回路基板の開発から生産までを受託し提供しています。顧客はアミューズメント機器メーカーや医療機器関連メーカーなどです。
収益源は、これら開発・生産した機器や基板を納品・検収した際に受け取る販売代金や受託開発費です。運営は同社が担い、外部の協力工場へ製造を委託するファブレス体制で事業を進めています。
■開発受託事業
組込み型ソフトウェアの受託開発およびシステム開発等の人材派遣サービスを提供しています。主に保険分野等のシステム開発を必要とする企業を顧客としています。
収益源は、進捗度に基づくソフトウェア受託開発費や、派遣社員による労働力提供に応じた人材派遣料などです。運営は主に子会社のユビテックソリューションズが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、事業構造の転換期にあたり売上高が一時減少したものの、直近では主力サービスの導入増により12.4億円まで回復しています。一方、先行投資や固定資産の減損損失計上の影響により、経常利益・当期利益ともに赤字が続いています。
| 項目 | 2021年6月期 | 2022年6月期 | 2023年6月期 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 12.9億円 | 11.7億円 | 9.9億円 | 10.2億円 | 12.4億円 |
| 経常利益 | -1.4億円 | -2.1億円 | -2.3億円 | -2.4億円 | -1.7億円 |
| 利益率(%) | -10.7% | -17.6% | -23.1% | -24.1% | -13.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -4.5億円 | -2.0億円 | -2.9億円 | -3.4億円 | -4.9億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増収となっており、売上総利益率も21.0%から28.2%へと大きく改善しています。事業転換に伴う先行投資等の影響で営業赤字が継続しているものの、増収と粗利率の改善によって赤字幅は縮小傾向にあります。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 10.2億円 | 12.4億円 |
| 売上総利益 | 2.1億円 | 3.5億円 |
| 売上総利益率(%) | 21.0% | 28.2% |
| 営業利益 | -2.5億円 | -1.7億円 |
| 営業利益率(%) | -24.2% | -13.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が1.7億円、支払手数料が1.0億円を占めています。売上原価の内訳についてはデータがありません。
■(3) セグメント収益
IoT事業は安全運転支援サービスなどの拡販により増収し、黒字転換を果たしています。製造受託事業も基板販売が好調で大幅増収増益となりましたが、開発受託事業は受託案件の減少により減収となり、営業損失を計上しています。
| 区分 | 売上(2024年6月期) | 売上(2025年6月期) | 利益(2024年6月期) | 利益(2025年6月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| IoT事業 | 7.2億円 | 8.5億円 | -0.4億円 | 0.6億円 | 6.8% |
| 製造受託事業 | 0.6億円 | 2.0億円 | 0.1億円 | 0.5億円 | 25.3% |
| 開発受託事業 | 2.4億円 | 1.9億円 | 0.1億円 | - | -0.9% |
| 連結(合計) | 10.2億円 | 12.4億円 | -2.5億円 | -1.7億円 | -13.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によるキャッシュ・フローがプラス、投資活動と財務活動がマイナス(またはゼロ)となっており、資金の回収によって投資等を手元資金で賄う健全型のキャッシュ・フローの状況となっています。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -3.6億円 | 0.4億円 |
| 投資CF | 2.8億円 | -2.3億円 |
| 財務CF | - | - |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-28.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は87.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「人と社会に安全と快適を」を企業理念とし、「お客さまの健康と安全を守る」「社会変革と多様性に応じた最適な答えを導き出す」を提供価値として事業活動を展開しています。人の安全と健康に関わるデータの価値創造を最優先とし、安全で快適な社会の発展に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
多様性を尊重し、働きがいを持って能力を発揮できる「ダイバーシティ&インクルージョン」を推進する文化を掲げています。また、マインドセットとして企業理念の理解・浸透を深め、より社会への貢献実感に繋がる風土づくりや、新規事業提案制度を通じて従業員の新たな発想を引き出す環境整備を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2026年6月期から2028年6月期までの「新3か年計画」を策定し、自社SaaSサービス成長期として以下の数値目標を掲げて経営を行っています。
* 2026年6月期での営業利益黒字化
* 2027年6月期での営業キャッシュフロープラス
* 2028年6月期での売上高16.6億円、営業利益2.2億円の達成
■(4) 成長戦略と重点施策
長期ビジョンとして「リスクをとらえ、備えは先に」を定め、IoTとAI・データ活用技術を活かして労働中の事故を未然予防する方針です。「D-Drive」の基幹事業への成長や「Work Mate」の安定成長に向け、営業パートナーシップの強化や蓄積データの活用による新たな事業の創出に注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
事業や専門性の転換を着実に実行するため、ハードウェア量産品中心からAI・IoTアプリケーション、SaaS型ビジネスへの転換に必要なスキル習得(リスキリング)を支援しています。さらに、持続的成長に向けた技能承継やマネジメントスキル向上、ダイバーシティ&インクルージョンの推進を掲げています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年6月期 | 42.2歳 | 8.8年 | 5,713,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 24.1% |
| 男性育児休業取得率 | 100% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 85.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 84.5% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 92.7% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 仕入・生産・品質管理に関するリスク
部材の調達において原材料の高騰や為替変動によるコスト増、納期の遅延が生じる可能性があります。また、外部委託するファブレス生産を採用しているため、委託先工場でのトラブル発生等が生産計画や業績に影響を及ぼすリスクがあります。
■(2) 保有技術・販売に関するリスク
急速な技術の進歩や代替技術の出現に対応できない場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。また、IoT事業において大手企業が同じ技術を内製化にシフトする可能性や、新市場の顧客ニーズが不透明で収益化までに長期間を要するリスクがあります。
■(3) 人材に関するリスク
事業拡大には、アナログ回路設計やネットワーク技術等の高度な知識と経験を持つ人材が不可欠ですが、これらの人材は絶対数が不足しています。人材の流出や採用計画の未達が発生した場合、事業の推進や内部管理体制の構築に悪影響を及ぼすリスクがあります。
■(4) 継続企業の前提に関する重要事象等
従来の主力製品の需要減少などにより、5期連続の営業赤字と当期純損失を計上したことで、継続企業の前提に重要な疑義が生じています。同社はSaaSサービスを主体とする事業ポートフォリオへの転換を進め、早期の黒字化による事象解消を目指しています。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。