※本記事は、株式会社ユビテックの有価証券報告書(第49期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年11月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ユビテックってどんな会社?
IoT技術とデータを活用し、カーシェアリングや企業の安全運転管理、労働者の安全見守り支援を行う企業です。
■(1) 会社概要
1977年にタウ技研として設立され、2005年にヘラクレス(現スタンダード)へ上場しました。2007年にオリックスグループ入りし、現社名へ変更しています。現在はハードウェア製造受託から、IoT・AI技術を活用したSaaS型サービス事業への転換を進めており、カーシェアリング車載機の開発などを手がけています。
連結従業員数は81名、単体では63名です。筆頭株主は親会社のオリックスで、発行済株式の57.64%を保有しています。第2位は個人株主、第3位はインターネット証券会社となっており、親会社との連携が強い経営体制です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| オリックス | 57.64% |
| 糸谷 輝夫 | 3.92% |
| GMOクリック証券 | 3.40% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は池田 学氏です。社外取締役比率は20.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 池田 学 | 代表取締役社長 | 1987年オリックス入社。オリックス自動車専務執行役員などを経て、2025年9月より現職。 |
| 萩原 英樹 | 取締役 | 1997年オリックス入社。ONEエネルギー取締役などを経て、2025年9月より現職。 |
| 羽鳥 敦久 | 取締役 | 2004年IRIユビテック(現ユビテック)入社。第1技術部部長、技術部門管掌執行役員などを経て、2025年9月より現職。 |
| 佐藤 厚範 | 非常勤取締役 | 1995年オリックス入社。オリックス環境エネルギー本部副本部長、執行役などを経て、2024年9月より現職。 |
| 内藤 進 | 非常勤取締役 | 1990年オリックス入社。オリックスグループ執行役員、オリックス自動車代表取締役社長などを経て、2025年9月より現職。 |
社外取締役は、中澤 仁(慶應義塾大学環境情報学部教授)、早野 順一郎(元名古屋市立大学大学院教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「IoT事業」「製造受託事業」「開発受託事業」の3つのセグメントで事業を展開しています。
■(1) IoT事業
センサ搭載通信端末機器(カーシェアリング車載機等)の開発・生産、サーバー/Webアプリケーション開発、IoTプラットフォーム提供、インフラ構築・運用・保守サービスなどを提供しています。企業の安全運転管理を支援する「D-Drive」や、作業者の安全見守りサービス「Work Mate」などが主力製品です。
収益は、ハードウェア製品の販売代金や、クラウドサービスおよびアプリケーションの利用料として顧客から受領します。主な顧客にはオリックス自動車や積水ハウスなどが含まれます。運営は主にユビテックが行っています。
■(2) 製造受託事業
通信アミューズメント機器や、歯科診療向けの咬合力計測機器用回路基板などの開発・生産を行っています。顧客の仕様に基づいた電子機器の受託製造(EMS)が中心です。
収益は、開発した製品の納入に対する対価として顧客から受領します。主な顧客には住友理工などが含まれます。運営はユビテックが行っています。
■(3) 開発受託事業
保険分野などを中心とした組込み型ソフトウェアの受託開発や、システム開発等に関わる人材派遣サービスを提供しています。
収益は、ソフトウェア開発の受託費や、派遣契約に基づく対価として顧客から受領します。主な顧客には明治安田システム・テクノロジーなどが含まれます。運営は連結子会社のユビテックソリューションズが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は10億円から12億円台で推移していますが、利益面では赤字が続いています。直近の第49期は売上高が増加したものの、事業転換に伴う先行投資や固定資産の減損損失計上などが影響し、経常損失および当期純損失を計上しています。
| 項目 | 2021年6月期 | 2022年6月期 | 2023年6月期 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 13億円 | 12億円 | 10億円 | 10億円 | 12億円 |
| 経常利益 | -1.4億円 | -2.1億円 | -2.3億円 | -2.4億円 | -1.7億円 |
| 利益率(%) | -10.7% | -17.6% | -23.1% | -24.1% | -13.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -4.5億円 | -2.0億円 | -2.9億円 | -3.5億円 | -4.9億円 |
■(2) 損益計算書
前期と比較すると売上高は約22%増加し、売上総利益率も改善していますが、営業損失の状態が続いています。販管費が増加しており、事業拡大に向けた体制強化や研究開発への投資が継続していることがうかがえます。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 10億円 | 12億円 |
| 売上総利益 | 2億円 | 3億円 |
| 売上総利益率(%) | 21.0% | 28.2% |
| 営業利益 | -2.5億円 | -1.7億円 |
| 営業利益率(%) | -24.2% | -13.6% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が2.1億円(構成比40%)、支払手数料が1.0億円(同20%)を占めています。
■(3) セグメント収益
IoT事業と製造受託事業は大幅な増収となり、セグメント損益も黒字化しました。一方、開発受託事業は受託案件の減少により減収となり、わずかながら損失を計上しています。全社費用の配賦により、連結全体では営業損失となっています。
| 区分 | 売上(2024年6月期) | 売上(2025年6月期) | 利益(2024年6月期) | 利益(2025年6月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| IoT事業 | 7.2億円 | 8.5億円 | -0.4億円 | 0.6億円 | 6.8% |
| 製造受託事業 | 0.6億円 | 2.0億円 | 0.1億円 | 0.5億円 | 25.3% |
| 開発受託事業 | 2.4億円 | 1.9億円 | 0.1億円 | -0.0億円 | -0.9% |
| 調整額 | - | - | -2.3億円 | -2.7億円 | - |
| 連結(合計) | 10億円 | 12億円 | -2.5億円 | -1.7億円 | -13.6% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業の営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはゼロであるため「健全型」に分類されます。営業損益は赤字ですが、減損損失などの非資金費用の計上や運転資本の改善により、営業キャッシュ・フローはプラスを確保しています。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -3.6億円 | 0.4億円 |
| 投資CF | 2.8億円 | -2.3億円 |
| 財務CF | -0.0億円 | - |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-28.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は87.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは「人と社会に安全と快適を」を企業理念として掲げています。この理念のもと、「お客さまの健康と安全を守る」こと、「社会変革と多様性に応じた最適な答えを導き出す」ことを提供価値と定めて事業活動を展開しています。
■(2) 企業文化
2035年に向けた長期ビジョンとして「リスクをとらえ、備えは先に」~未然予防×スマートオペレーションで安全の共創パートナーへ~を掲げています。IoTとAI技術を活用し、事故の未然予防や業務効率化を通じて社会課題の解決と企業の持続的成長を支援する姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
新3か年計画(2026年6月期~2028年6月期)を策定し、自社SaaSサービスの成長期と位置づけています。最終年度の数値目標として以下を掲げています。
* 売上高:16.6億円
* 営業利益:2.2億円
■(4) 成長戦略と重点施策
「D-Drive」のインターロックシステムの早期拡販による基幹事業化、「Work Mate」の安定成長、蓄積データを活用した第3の柱の創出を基本方針としています。特に、親会社であるオリックス自動車との協業強化や、法制度・企業ニーズに対応した機能開発、品質・セキュリティ対策の高度化に注力します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
SaaSビジネスへの転換や新たな価値創造を実現するため、マインドセットの浸透、リスキリングによるスキル習得、次世代リーダー育成、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)の推進を重視しています。また、新規事業提案制度などを通じて社員の発想機会を創出し、エンゲージメント向上を図る方針です。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年6月期 | 42.2歳 | 8.8年 | 5,713,000円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 25.9% |
| 男性育児休業取得率 | 100% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 85.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 82.9% |
| 男女賃金差異(非正規) | 106.9% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 継続企業の前提に関する重要事象等
主力製品の需要減少等の影響で営業損失および当期純損失の計上が続いており、継続企業の前提に疑義を生じさせる事象が存在しています。新3か年計画によるSaaS事業の成長と収益改善により、早期の黒字化とキャッシュフロー改善を目指しています。
■(2) 保有技術に関するリスク
IT分野の技術革新は急速であり、予想を超えた技術進歩や代替技術の出現があった場合、対応が困難となり業績に影響を及ぼす可能性があります。研究開発や機能強化に注力していますが、競争力の維持が課題となります。
■(3) 仕入・生産・品質管理に関するリスク
半導体などの部材価格の高騰や調達難、外部委託工場のトラブル等が業績に影響を与える可能性があります。また、新製品開発に伴う品質問題や製造物責任賠償等のリスクも存在しており、サプライチェーン管理と品質保証体制の強化が重要です。
■(4) 販売に関するリスク
IoT事業等の新市場においては、顧客ニーズや市場規模が不透明な部分があり、新サービスが収益化するまでに時間を要する可能性があります。また、大手メーカーの内製化シフトなどが競合リスクとなり得ます。



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