※本記事は、株式会社物語コーポレーション の有価証券報告書(第56期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 物語コーポレーションってどんな会社?
「焼肉きんぐ」や「丸源ラーメン」など、郊外ロードサイド型の飲食店を多業態で展開する外食企業です。
■(1) 会社概要
1949年に愛知県豊橋市でおでん屋「酒房源氏」として創業し、1969年に株式会社げんじを設立しました。1997年に現在の物語コーポレーションへ商号変更し、2008年にJASDAQへ上場、2011年には東証一部(現プライム)へ指定替えしました。2025年には台湾および米国に現地法人を設立し、米国企業の買収を行うなど海外展開を加速させています。
2025年6月30日現在の連結従業員数は2,069名(単体1,820名)です。大株主構成を見ると、筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(9.56%)で、第2位は個人株主の小林雄祐氏(4.12%)、第3位は株式会社日本カストディ銀行(2.97%)となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 9.56% |
| 小林 雄祐 | 4.12% |
| 株式会社日本カストディ銀行(信託口) | 2.97% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性3名の計11名で構成され、女性役員比率は27.2%です。代表取締役社長は加藤央之氏です。社外取締役比率は27.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 加藤 央之 | 代表取締役 社長国内事業統括マーケティング担当 | 2009年同社入社。お好み焼事業部事業部長、業態開発本部本部長、副社長執行役員、Storyteller株式会社代表取締役などを経て、2020年9月より現職。 |
| 岡田 雅道 | 代表取締役 専務執行役員海外事業統括海外営業担当 | 2001年同社入社。専門店事業部事業部長、執行役員、物語(上海)企業管理有限公司総経理、上級執行役員、取締役常務などを経て、2025年7月より現職。 |
| 津寺 毅 | 取締役 常務執行役員財務・成長戦略担当 | 1998年同社入社。成長戦略室室長、執行役員、上級執行役員、取締役財務・成長戦略担当兼管理本部本部長などを経て、2025年7月より現職。 |
| 木村 公治 | 取締役 上級執行役員FC事業推進・店舗・立地開発担当新事業担当 | 1999年同社入社。執行役員開発本部本部長、取締役・執行役員、物語(上海)企業管理有限公司総経理、焼肉事業部事業部長などを経て、2025年7月より現職。 |
社外取締役は、西川幸孝(株式会社ビジネスリンク代表取締役)、安田加奈(安田会計事務所所長)、倉島薫(日本うま味調味料協会会長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「焼肉部門」「ラーメン部門」「お好み焼部門」「ゆず庵部門」「専門店部門」「フランチャイズ部門」「その他部門」事業を展開しています。
■(1) 焼肉部門
テーブルオーダー形式の食べ放題店「焼肉きんぐ」を展開しています。「きんぐカルビ」などの名物商品や豊富なサイドメニューを取り揃え、ファミリー層を中心に利用される郊外型大型店です。
収益は、来店客への飲食サービスの提供による対価です。運営は主に物語コーポレーションが行っています。
■(2) ラーメン部門
「熟成醤油ラーメン 肉そば」を看板商品とする「丸源ラーメン」や、「熟成醤油ラーメン きゃべとん」を展開しています。ファミリー層を中心に、一人客の利用にも対応した郊外型店舗です。
収益は、来店客への飲食サービスの提供による対価です。運営は主に物語コーポレーションが行っています。
■(3) ゆず庵部門
寿司としゃぶしゃぶの食べ放題店「寿司・しゃぶしゃぶ ゆず庵」を展開しています。素材にこだわったメニューを提供し、日常使いからお祝いの席まで幅広い利用シーンに対応した郊外型大型店です。
収益は、来店客への飲食サービスの提供による対価です。運営は主に物語コーポレーションが行っています。
■(4) 専門店・お好み焼・その他部門
「焼きたてのかるび」「果実屋珈琲」などの専門店や、食べ放題店「お好み焼本舗」、海外子会社による飲食店運営(中国、インドネシア、香港、米国等)を行っています。
収益は、来店客への飲食サービスの提供による対価です。運営は物語コーポレーションおよび各海外現地法人が行っています。
■(5) フランチャイズ部門
「焼肉きんぐ」「丸源ラーメン」などのブランドについて、フランチャイズ加盟店への経営指導やノウハウ提供を行っています。
収益は、加盟企業からのロイヤルティ、加盟金、業務受託料、食材等の販売代金です。運営は物語コーポレーションが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、売上高、利益ともに右肩上がりの成長を続けています。特に直近の2025年6月期は売上高が1200億円を突破し、経常利益も90億円台に乗せるなど、順調に事業規模を拡大しています。利益率も7~8%台で安定して推移しており、増収増益基調を維持しています。
| 項目 | 2021年6月期 | 2022年6月期 | 2023年6月期 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 640億円 | 733億円 | 923億円 | 1,072億円 | 1,239億円 |
| 経常利益 | 43億円 | 62億円 | 72億円 | 86億円 | 90億円 |
| 利益率(%) | 6.7% | 8.4% | 7.8% | 8.0% | 7.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 20億円 | 40億円 | 47億円 | 56億円 | 64億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で約167億円増加し、売上総利益率も堅調に推移しています。営業利益は前期の82億円から92億円へと増加し、増収効果が利益増に寄与しています。売上高の拡大に伴いコストも増加していますが、利益を確保しながら成長していることがわかります。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,072億円 | 1,239億円 |
| 売上総利益 | 701億円 | 806億円 |
| 売上総利益率(%) | 65.5% | 65.1% |
| 営業利益 | 82億円 | 92億円 |
| 営業利益率(%) | 7.6% | 7.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が306億円(構成比43%)、賃借料が74億円(同10%)を占めています。
■(3) セグメント収益
全ての部門において売上高が増加しています。特に「その他部門」(海外事業等)は前期比50%以上の大幅な増収となり、「専門店部門」も30%を超える成長を見せています。主力の「焼肉部門」「ラーメン部門」も2桁成長を維持しており、国内外での出店拡大が寄与しています。
| 区分 | 売上(2024年6月期) | 売上(2025年6月期) |
|---|---|---|
| 焼肉部門 | -億円 | 616億円 |
| ラーメン部門 | -億円 | 218億円 |
| お好み焼部門 | -億円 | 22億円 |
| ゆず庵部門 | -億円 | 207億円 |
| 専門店部門 | -億円 | 56億円 |
| フランチャイズ部門 | -億円 | 73億円 |
| その他部門 | -億円 | 47億円 |
| 連結(合計) | 1,072億円 | 1,239億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
物語コーポレーションは、事業運営に必要な資金の流動性と源泉を安定的に確保することを基本方針としています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、主にフランチャイズ事業からのロイヤルティ収入などによって生み出されています。投資活動によるキャッシュ・フローは、店舗設備への投資などに活用されています。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済や調達などによって変動します。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 106億円 | 118億円 |
| 投資CF | -92億円 | -140億円 |
| 財務CF | 35億円 | 27億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは「Smile & Sexy(スマイル アンド セクシー)」という経営理念を掲げています。これは「自己実現を目指す」理念であり、素敵に自由に、正々堂々、人間味豊かな「物語人」が集う「個」が溢れる企業を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「『個』の尊厳を『組織』の尊厳の上位に置き、『とびっきりの笑顔と心からの元気』で世の中をイキイキさせる」ことを長期経営ビジョンに掲げています。社員一人ひとりの「個」を覚醒させる取り組みを行い、「個」の明言から生まれる議論が差別化要素を生み出す源泉であると捉えています。
■(3) 経営計画・目標
同社は2030年までの中期経営ビジョン「物語ビジョン2030」と「中期3カ年経営計画2026~2028」を策定しています。新たなビジョンでは「業態開発型リーディングカンパニー実現に向けた全方位成長戦略」を基本方針とし、国内外での事業拡大と売上・利益の最大化を図ることを目標としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「業態開発力×人財力で勝ち抜く成長戦略」として、「選ばれるブランドづくり」「新業態・新事業開発」「海外事業の拡大」を推進します。特に海外では米国企業の買収などを通じて展開地域を拡大させています。また、サステナビリティ経営や、資本効率を意識した財務戦略も重点的に推進していく方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「Smile & Sexy」の理念のもと、「自ら意思決定できる自立した“人財”」の活性化を成長戦略の軸としています。D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)や健康経営を推進し、多様な人財が自分らしくイキイキと働ける企業文化の醸成を図っています。人的資本への投資を通じて、社会課題解決と持続的発展に貢献できる企業を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年6月期 | 32.8歳 | 4.9年 | 5,459,129円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.4% |
| 男性育児休業取得率 | 61.2% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 69.9% |
| 男女賃金差異(正規) | 81.6% |
| 男女賃金差異(非正規) | 101.4% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市場環境の変化
国内人口の減少や中食市場の成長により、外食業界全体の市場規模は縮小傾向にあります。市場環境が悪化した場合には業績に影響を及ぼす可能性があります。対策として、既存顧客の満足度向上や新メニュー開発、積極的な出店を進めています。
■(2) ブランドコンセプトの陳腐化
同社は独自の企画開発によるブランドコンセプトで差別化を図っていますが、顧客ニーズの変化によりコンセプトが合わなくなった場合、業績に影響が出る可能性があります。顧客ニーズを常に把握し、時代の変化に応じた施策の立案に取り組んでいます。
■(3) 新規出店計画の未達
新規出店において、ニーズに合致する物件が確保できない場合や、出店後に計画通りの収益を確保できない可能性があります。取引先からの情報収集や、出店後の予実管理と課題分析を行うことでリスク低減を図っています。
■(4) 原材料価格の高騰
天候不順、海外情勢、為替変動などにより、野菜や輸入食材などの原材料価格が高騰した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。調達ルートの多様化などを推進し、安心かつ安全な原材料の調達に努めています。



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