※本記事は、株式会社エム・エイチ・グループ の有価証券報告書(第36期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. エム・エイチ・グループってどんな会社?
美容室「モッズ・ヘア」の運営およびフランチャイズ展開を中心に、ヘアメイクや美容室支援を行う企業です。
■(1) 会社概要
1990年に設立され、1999年に株式を店頭登録、2004年にジャスダックへ上場しました。2009年に持株会社体制へ移行し、現社名に変更しています。2024年には事業承継に伴う組織再編を行い、美容室運営事業等を子会社へ承継しました。美容業界のリーディングカンパニーとして多角的な事業を展開しています。
同グループの従業員数は連結で228名、単体で14名です。筆頭株主は香港の投資会社である潤首有限公司、第2位は貿易・投資事業を行う剣豪集団、第3位は個人株主となっています。第2位株主の代表者は同社の取締役を兼任しており、両社とも「その他の関係会社」として位置づけられています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 潤首有限公司 | 32.02% |
| 剣豪集団 | 16.47% |
| 青山洋一 | 5.68% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性4名の計12名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役会長兼社長は朱峰玲子氏が務めています。社外取締役比率は22.2%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 朱峰 玲子 | 代表取締役会長兼社長 | シーボン取締役兼執行役員などを経て、2016年同社入社。2017年より社長、2025年より現職。 |
| 鈴木 浩喜 | 専務取締役 | アライアンス、コマーシャル・アールイー専務などを経て、2016年同社監査役。2025年より現職。 |
| 家島 広行 | 専務取締役 | 1997年同社入社。経営企画室長、管理本部長などを経て、2025年より現職。 |
| 徐 芳萍 | 取締役 | 剣豪実業総経理などを経て、2002年剣豪集団社長就任。2017年より現職。 |
| 宋 宇海 | 取締役 | 長江証券などを経て、2011年JW君威集団総経理就任。2015年より現職。 |
| 麻 浩珍 | 取締役 | 医師を経て、2012年乾寧斎集団総経理兼董事長就任。2015年より現職。 |
| 富 東澤 | 取締役 | 北京正源倉庫経理などを経て、2018年中国北京美美公社健康管理総合部経理就任。2023年より現職。 |
社外取締役は、林忠治(ORIX Asia Capital Limited Senior Executive Director)、生田目崇(中央大学理工学部教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「直営サロン運営事業」「BSサロン運営事業」「ヘアメイク事業」「美容室支援事業」「キャリアデザイン事業」を展開しています。
(1) 直営サロン運営事業
「モッズ・ヘア」ブランドのフラッグシップサロンとして、首都圏主要地域を中心に直営サロンを展開しています。高い技術力とサービスを提供する美容室運営を行っています。
顧客からの施術料金や商品販売代金が主な収益源です。運営は主に株式会社エム・エイチ・プリュスが行っています。
(2) BSサロン運営事業
「モッズ・ヘア」ブランドのフランチャイズ事業として、ブランドシェア(BS)サロンを国内外で展開しています。加盟店に対するブランド貸与や経営指導、商品販売を行っています。
加盟店からのロイヤリティ収入や商品販売収益が主な収益源です。運営は主に株式会社エム・エイチ・プリュスが行っています。
(3) ヘアメイク事業
パリコレクションや東京コレクションへの参加、CM・雑誌撮影など、メディア向けのヘアメイクサービスを提供しています。また、ブライダルヘアメイクも手がけています。
メディアやイベント主催者、ブライダル顧客からの技術料が主な収益源です。運営は主に株式会社エム・エイチ・プリュスおよびアーツ株式会社が行っています。
(4) 美容室支援事業
美容室向けのクレジット決済代行サービスやPOSシステム販売、物件紹介などを行っています。スケールメリットを活かしたバックオフィス支援を提供します。
提携サロンからの手数料収入やシステム利用料が主な収益源です。運営は主に株式会社ライトスタッフが行っています。
(5) キャリアデザイン事業
人材派遣や人材紹介を行う事業で、特にタワーマンションのコンシェルジュ派遣に注力しています。シニア人材の活用なども推進しています。
派遣先企業からの派遣料や紹介手数料が主な収益源です。運営は主に株式会社オンリー・ワンが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は18億円から19億円前後で推移しており、大きな変動はありません。利益面では黒字と赤字を繰り返しており、安定性に課題が見られます。直近の2025年6月期は減収となり、経常損益、当期純損益ともに赤字に転落しました。
| 項目 | 2021年6月期 | 2022年6月期 | 2023年6月期 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 18.1億円 | 18.5億円 | 19.0億円 | 18.8億円 | 18.4億円 |
| 経常利益 | -0.4億円 | 0.4億円 | 0.6億円 | 0.3億円 | -0.1億円 |
| 利益率(%) | -2.2% | 2.0% | 3.0% | 1.4% | -0.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -1.7億円 | -0.2億円 | -1.6億円 | 0.6億円 | 0.2億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上高は微減しています。売上総利益率は高い水準を維持していますが、販管費の負担が重く、営業損益は赤字に転じました。コストコントロールと売上拡大の両立が課題となっています。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 18.8億円 | 18.4億円 |
| 売上総利益 | 5.3億円 | 5.0億円 |
| 売上総利益率(%) | 28.0% | 27.0% |
| 営業利益 | 0.2億円 | -0.1億円 |
| 営業利益率(%) | 1.2% | -0.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給料・手当が1.3億円(構成比25%)、役員報酬が1.1億円(同21%)を占めています。売上原価については内訳データがありません。
■(3) セグメント収益
主力の直営サロン運営事業とBSサロン運営事業はともに減収減益となりました。ヘアメイク事業は増収増益と好調でしたが、全社的な減収を補うには至りませんでした。美容室支援事業は微減収ながら増益、キャリアデザイン事業は減収減益となりました。
| 区分 | 売上(2024年6月期) | 売上(2025年6月期) | 利益(2024年6月期) | 利益(2025年6月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 直営サロン運営事業 | 9.3億円 | 9.2億円 | 0.7億円 | 0.6億円 | 6.3% |
| BSサロン運営事業 | 1.7億円 | 1.6億円 | 0.8億円 | 0.7億円 | 43.8% |
| ヘアメイク事業 | 3.6億円 | 3.7億円 | 0.0億円 | 0.1億円 | 3.4% |
| 美容室支援事業 | 1.2億円 | 1.2億円 | 0.7億円 | 0.8億円 | 67.1% |
| キャリアデザイン事業 | 2.9億円 | 2.8億円 | 0.2億円 | 0.1億円 | 4.8% |
| 連結(合計) | 18.8億円 | 18.4億円 | 0.2億円 | -0.1億円 | -0.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-3.3%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は28.4%で市場平均(48.5%)を下回っています。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 0.5億円 | 0.3億円 |
| 投資CF | -0.5億円 | -0.1億円 |
| 財務CF | -0.0億円 | -0.5億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「お客様に寄り添うライフスタイルパートナーであり続ける」を経営理念として掲げています。美容を通じて顧客の豊かな生活や心の形成に貢献し、株主、取引先、従業員と共に喜びを享受し、将来にわたり大きく成長することを目指しています。
■(2) 企業文化
「モッズ・ヘア」ブランドをグループのシンボルとし、本部と加盟店が対等な立場でブランドを共有する「ブランドシェアサロン(BSサロン)」という独自の概念を持っています。単なる利益追求だけでなく、顧客満足と従業員満足の充実を図り、生涯利用されるサロンづくりを目指す風土があります。
■(3) 経営計画・目標
2030年6月期を第二創業期の節目と位置づけ、2027年6月までの3年間を「助走」、その後の3年間を「飛躍」と定めています。株主に対する収益還元を重視し、重要な経営指標として株主資本利益率(ROE)の向上に重点を置いています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「助走」期間においては収益力の底上げを重視し、既存事業の再構築を図ります。直営サロンでは顧客・従業員満足度の向上、BSサロンではリブランディングやPB商品の強化を行います。また、美容室支援事業ではBtoB決済サービスの普及に取り組み、M&Aによる事業拡大やDX化の推進にも注力します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
事業の持続的成長には優秀な人材の確保が重要であると考え、人的資本経営に積極的に取り組んでいます。年齢、国籍、性別等にとらわれない能力主義の人事評価を基本とし、従業員が能力を最大限発揮できる職場環境の整備や、成果に応じた公正な処遇の実現を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均(598万円)をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年6月期 | 44.2歳 | 8.0年 | 5,158,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職に占める女性の割合(58.3%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済動向と個人消費の影響
グループの主要事業である美容室運営は国内景気や個人消費の動向に強く影響を受けます。景気後退による消費マインドの冷え込みや節約志向の高まりは、来店客数や顧客単価の減少につながり、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 気象状況による需要変動
美容室の需要は季節性が強く、特に7月、12月、3月が繁忙期となります。冷夏や暖冬などの天候不順や予測不能な気象状況が発生した場合、これらの書き入れ時の集客に影響を与え、事業展開や経営成績にマイナスの影響を与えるリスクがあります。
■(3) 商標ライセンス契約の継続性
美容室運営事業は海外提携先との契約に基づく「モッズ・ヘア」ブランドのライセンス使用を基盤としています。契約更改時に条件変更や契約終了となった場合、ブランド基盤を失うことになり、経営成績や事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 美容師人材の確保と定着
事業運営には国家資格を持つ美容師が不可欠であり、業績は人気スタイリストの売上に依存する傾向があります。人材不足や流動性の高まりの中で、優秀な技術者が多数退職した場合、サービス品質の低下や売上減少を招くリスクがあります。



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