スカラ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

スカラ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場。企業のDX推進支援を行うDX事業を主力に、人材、EC、インキュベーション事業を展開しています。当連結会計年度は、人材事業などが減収となったものの、DX事業での大型案件計上やコスト削減などの事業構造改革が奏功し、営業損益および最終損益ともに黒字転換(増益)を果たしました。


※本記事は、株式会社スカラの有価証券報告書(第39期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. スカラってどんな会社?


DX支援、人材採用支援、トレーディングカードEC、官民共創事業などを多角的に展開するIT企業グループです。

(1) 会社概要


1991年にデータベース・コミュニケーションズとして創業し、2001年に上場しました。その後、CRMやIVR(音声自動応答)分野の企業を相次いで子会社化し、2016年に現商号へ変更しました。近年では、2019年にジェイ・フェニックス・リサーチを子会社化(後に譲渡)、2022年に日本ペット少額短期保険を子会社化(2025年に譲渡)するなど、M&Aや事業の入れ替えを積極的に行いながら事業領域を拡大・再編しています。

同社グループは連結408名、単体37名の体制で運営されています。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位はシステム開発会社のクエストです。クエストとはDX事業などで連携しており、資本業務提携の関係にあります。第3位も同様にシステム開発会社のICが名を連ねています。

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表執行役社長は新田英明氏です。社外取締役比率は44.4%です。

氏名 役職 主な経歴
清見 征一 取締役 代表執行役会長 1990年システムズ入社。データベース・コミュニケーションズ等を経て、2021年スカラ代表執行役社長。2024年4月より現職。
新田 英明 取締役 代表執行役社長 1998年ザピック入社。デジアナコミュニケーションズ(現スカラコミュニケーションズ)取締役等を経て、2024年4月より現職。
鈴木 卓人 取締役 執行役 2006年SBIホールディングス入社。スカラ事業開発部長、スカラプレイス代表取締役等を経て、2025年9月より現職。
相田 武夫 取締役 1977年岡三証券入社。スカラ管理部長、常勤監査役、スカラサービス取締役副社長等を経て、2021年9月より現職。


社外取締役は、渡辺昇一(弁護士)、宇賀神哲(公認会計士)、川西拓人(弁護士)、風口悦子(JTB執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「DX事業」、「人材事業」、「EC事業」、「インキュベーション事業」を展開しています。

DX事業


大手企業や官公庁向けに、サイト内検索やFAQシステムなどのSaaS/ASPサービス、システム開発、コールセンター運営などのDX推進支援を提供しています。また、自治体向けにはふるさと納税管理システムやガバメントクラウド対応などのソリューションも展開しています。

収益は、システム開発や導入支援による一時的な開発売上、SaaSサービスの月額利用料、従量課金などが主な柱です。運営は、主にスカラコミュニケーションズ、エッグ、スカラサービスが行っています。

人材事業


体育会系学生や女子学生に特化した新卒採用支援、キャリア教育、中途採用支援サービスなどを提供しています。就職情報サイト「アスプラ」「女子キャリ」の運営や、合同企業説明会などのイベント企画も手がけています。

収益は、採用イベントへの出展料や、人材紹介における成功報酬などが中心です。運営は、主にアスリートプランニング、GeaREmakeが行っています。

EC事業


対戦型ゲームのトレーディングカード(TCG)を専門とするリユースECサイト「カードショップ-遊々亭-」を運営しています。カードの買取・販売に加え、攻略情報の提供も行い、ユーザーコミュニティとしての機能も有しています。

収益は、トレーディングカードの販売代金です。運営は、スカラプレイスが行っています。

インキュベーション事業


自治体と企業をマッチングする官民共創プラットフォーム「逆プロポ」の運営や、地域課題解決型事業の推進、M&Aアドバイザリー、事業投資などを行っています。社会課題解決とビジネスの両立を目指す新規事業開発を支援しています。

収益は、コンサルティングフィーやアドバイザリー手数料、投資収益などです。運営は、主にスカラ、ソーシャル・エックスが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上収益は事業ポートフォリオの入れ替え等の影響もあり、増減を繰り返しています。利益面では、2024年6月期に大きな赤字を計上しましたが、当期は事業構造改革の効果によりV字回復し、黒字転換を果たしました。

項目 2021年6月期 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上収益 87億円 96億円 118億円 82億円 82億円
税引前利益 4億円 -2億円 4億円 -15億円 7億円
利益率 4.4% -2.2% 3.2% -17.9% 8.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 31億円 -5億円 -2億円 -29億円 10億円

(2) 損益計算書


前期は営業赤字でしたが、当期は売上原価や販管費の抑制が進み、営業黒字化を達成しました。特に販管費の大幅な削減が利益改善に寄与しています。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上収益 82億円 82億円
売上総利益 41億円 40億円
売上総利益率 49.7% 48.3%
営業利益 -14億円 8億円
営業利益率 -17.7% 9.2%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が23億円(構成比67%)、その他が9億円(同26%)を占めています。売上原価においては、その他が26億円(構成比61%)、委託費が9億円(同21%)となっています。

(3) セグメント収益


DX事業とEC事業が増益となり、全体の利益を牽引しました。人材事業は減収減益、インキュベーション事業は赤字縮小となりました。DX事業は大型案件の寄与やコスト削減が効いています。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期) 利益(2024年6月期) 利益(2025年6月期) 利益率
DX事業 46億円 47億円 -12億円 8億円 16.6%
人材事業 10億円 10億円 3億円 1億円 14.7%
EC事業 22億円 23億円 2億円 3億円 11.6%
インキュベーション事業 3億円 3億円 -3億円 -0.2億円 -5.7%
その他 0.7億円 0.01億円 - - -
調整額 -0.7億円 -0.8億円 -5億円 -4億円 -
連結(合計) 82億円 82億円 -14億円 8億円 9.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、事業活動に必要な資金を安定的に調達するとともに、成長領域への投資において追加的に資金が必要な場合に備え、金融機関からの借入や社債発行等による資金調達を行っております。

営業活動では、税引前利益や子会社株式売却益等により、キャッシュ・フローは増加しました。投資活動では、有価証券の売却や敷金・保証金の回収、事業整理等による収入があり、キャッシュ・フローは増加しました。財務活動では、借入金の返済や配当金の支払い等により、キャッシュ・フローは大きく流出しました。

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF 3億円 6億円
投資CF 2億円 8億円
財務CF -13億円 -36億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「中期経営計画2026-2028」において、「信頼と共創で、未来をともに育む。」という指針を掲げています。社会課題を客観的に認識し、安定した財務基盤の維持と効率的な資本運用により企業価値を向上させるとともに、透明性の高い情報開示とガバナンスを徹底し、ステークホルダーからの信頼獲得を最優先としています。

(2) 企業文化


社会課題やクライアントの課題に対し、国や企業、立場の枠を超えて主体的に向き合う「共創」を重視しています。また、ITと人材事業のポートフォリオを活かし、多様なパートナーと共に成長することを志向しています。変化の激しい環境に適応できる人と人とのつながりを大切にする文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社は、中長期的な企業価値向上を測る指標として、Non-GAAP指標における売上収益および営業利益、投下資本利益率(ROIC)、資本コスト(WACC)を重要視しています。中期経営計画では、新たな価値の創出、成長機会の提供、ベストマッチの実現・リスキリング促進、デジタルデバイドの解消、AI技術向上と倫理的利用の両立を重要テーマとして掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策


「人材採用・育成及び組織力の強化」を掲げ、ポテンシャルの高いスタッフや専門エキスパートの採用を強化し、グループ内での適材適所配置を進めます。また、「M&Aや事業提携による成長」として、新規事業ドメインへの参入や顧客基盤の獲得、技術力の強化を目指します。さらに、「積極的な投資と財務の強化」により、各事業の事業性評価とPDCAサイクルを徹底し、財務体質の向上を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を最も重要な資産と位置づけ、事業成長を支える優秀な人材の採用・育成に注力しています。特にIT人材の需要増に対応するため、年齢等の属性を問わず意欲ある人材や専門家を積極的に採用しています。また、グループ内での柔軟な配置により組織力を強化し、社員一人ひとりの個性や価値観を尊重するダイバーシティの推進にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 40.1歳 7.2年 6,790,785円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 28.6%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 55.6%
男女賃金差異(正規雇用) 53.5%
男女賃金差異(非正規雇用) 71.5%


※男性労働者の育児休業取得率は対象者がいなかった等の理由により「-」と表示されています。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済情勢とIT投資動向


連結売上の約半分を占めるDX事業は、国内大手企業のIT投資動向の影響を強く受けます。主要顧客のIT投資は景気情勢との相関が高いため、国内経済が悪化した場合、受注減少や価格競争の激化により、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 技術革新への対応遅れ


IT業界は技術進歩が急速であり、予想を超える革新的な技術が出現した場合、対応に遅れるリスクがあります。新技術への対応に多額の資金を要し、迅速な資金調達ができない場合、サービスの陳腐化や競争力低下を招き、業績に影響を与える可能性があります。

(3) プロジェクト管理リスク


DX事業におけるシステム開発では、案件の大型化・複雑化が進んでいます。顧客からの仕様変更や追加要求により開発が遅延した場合、追加コストの発生や納期の遅れが生じ、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) システム障害とサービス停止


SaaS/ASPサービス等は通信ネットワークやシステム基盤に依存しています。ハードウェア・ソフトウェアの不具合、サイバー攻撃、通信回線障害、自然災害等によりシステムがダウンした場合、サービス提供不能や情報漏洩が発生し、損害賠償や信用の失墜を招くリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。