インテリジェント ウェイブ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

インテリジェント ウェイブ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の情報サービス企業です。大日本印刷の連結子会社として、クレジットカード決済システム等の金融業界向け事業や情報セキュリティ対策事業を展開しています。2025年6月期は、決済領域のクラウドサービス等が伸長し増収となる一方、品質強化対応や先行投資等の影響で減益となりました。


※本記事は、株式会社インテリジェント ウェイブ の有価証券報告書(第42期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. インテリジェント ウェイブってどんな会社?


クレジットカード決済システムやセキュリティ製品の開発・販売を主力とする、大日本印刷グループのIT企業です。

(1) 会社概要


同社は1984年に設立され、ストラタスコンピュータの日本初導入などを経て事業を拡大しました。2004年にJASDAQへ上場し、2010年に大日本印刷の子会社となりました。その後、2019年に東証一部(現プライム市場)へ指定替えを果たしています。近年では、放送分野などの新規領域への展開も推進しています。

2025年6月30日現在の従業員数は単体で519名です。筆頭株主は親会社である大日本印刷で、発行済株式の50.73%を保有しています。第2位は個人の安達一彦氏(9.11%)、第3位は金融機関の常任代理人である証券会社となっています。

氏名 持株比率
大日本印刷 50.73%
安 達 一 彦 9.11%
MSIP CLIENT SECURITIES(常任代理人)モルガン・スタンレーMUFG証券 3.50%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性1名の計13名で構成され、女性役員比率は7.7%です。代表取締役社長は川上晃司氏です。社外取締役比率は23.1%です。

氏名 役職 主な経歴
佐 藤 邦 光 代表取締役会長 大日本印刷情報イノベーション事業部C&Iセンター長などを経て2020年同社社長。2024年より現職。
川 上 晃 司 代表取締役社長 大日本印刷情報イノベーション事業部副事業部長などを経て2024年より現職。
立 野 岡 健 一 取締役 専務執行役員品質共奏本部担当兼情報セキュリティ管理部担当 1988年同社入社。証券ソリューション事業部長、常務執行役員などを経て2025年より現職。
後 藤 泰 佐 取締役 常務執行役員第二システム本部担当兼第三システム本部担当兼R&D推進センター担当 2005年同社入社。第三システム開発本部長、常務執行役員経営企画室担当などを経て2025年より現職。
斎 藤 香 織 取締役 執行役員人事総務本部担当 大日本印刷人事本部人事部長、DNPヒューマンサービス取締役などを経て2024年より現職。


社外取締役は、渡部晃(弁護士)、三木健一(元大和総研ビジネス・イノベーション専務)、直田宏(元コネクシオ社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「金融業界向け事業」および「情報セキュリティ対策事業」を展開しています。

(1) 金融業界向け事業


クレジットカード会社、銀行、証券会社などの金融機関を主要顧客とし、決済ネットワーク接続・認証システムや不正検知システムなどの業務システムを開発・保守しています。特に決済領域においては、自社開発パッケージを基盤としたシステムをオンプレミスおよびクラウド型で提供し、顧客の多様なニーズに対応しています。

収益は、顧客である金融機関等からのシステム開発費、パッケージライセンス料、保守運用費、クラウドサービス利用料などから得ています。また、蓄積した技術力を活かし、放送分野などの新規領域への展開も進めています。運営は同社が行っています。

(2) 情報セキュリティ対策事業


企業の内部情報漏えい対策を目的とした自社製品(CWAT等)の開発・販売に加え、サイバーセキュリティ関連製品の販売および保守サービスを提供しています。特定の業界に限らず、幅広い企業・組織を対象としています。

収益は、製品導入企業からのライセンス料、保守サービス料、他社製品の販売手数料などから得ています。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、事業規模の拡大が続いています。利益面では、2024年6月期まで増加基調でしたが、直近の2025年6月期は減益となりました。利益率は10%台前半から中盤で推移しており、安定した収益性を維持しています。

項目 2021年6月期 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上高 112億円 115億円 134億円 145億円 156億円
経常利益 12億円 16億円 16億円 21億円 19億円
利益率(%) 10.5% 13.5% 12.0% 14.3% 12.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 8億円 11億円 12億円 14億円 13億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高は増加しましたが、売上原価の増加率が売上高の伸びを上回り、売上総利益は微減となりました。販管費も増加したため、営業利益および営業利益率は低下しています。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 145億円 156億円
売上総利益 47億円 47億円
売上総利益率(%) 32.4% 29.9%
営業利益 20億円 18億円
営業利益率(%) 14.0% 11.9%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が9.5億円(構成比35.1%)、賞与引当金繰入額が1.0億円(同3.5%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の売上高を見ると、主力の決済領域が堅調に推移し、売上全体の増加を牽引しました。セキュリティ領域も大幅な増収となりましたが、データ通信・分析基盤領域は横ばいとなっています。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期)
決済 122億円 128億円
セキュリティ 16億円 20億円
データ通信・分析基盤 8億円 8億円
連結(合計) 145億円 156億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、手許の資金と営業活動によるキャッシュ・フローを主な財源として事業運営を行っています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前当期純利益や売上債権の減少などにより、大幅な収入を確保しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、主にソフトウェア構築に係る無形固定資産の取得により支出となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払いが主な要因となり支出となりました。

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF 38億円 43億円
投資CF -27億円 -16億円
財務CF -10億円 -11億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「IT基盤の提供により社会の仕組みを支える」というミッションを掲げ、「人々の生活に価値をもたらし、新たな信頼性を創造する」ことをビジョンとしています。この理念のもと、社会インフラを支えるIT企業としての役割を果たし、持続可能な成長と企業価値の向上を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、ミッション・ビジョンの実現に向けて、個人として「探究と研鑽」を通じて成長し、チームとして「対話と創造」により創発することを重視しています。また、事業を「大局的な視点」で推進し、社会において「誠実さと価値を追求」していくことを行動指針としています。

(3) 経営計画・目標


同社は2030年代を見据えた3カ年中期経営計画を策定しています。「Transformation for the Future」を掲げ、最終年度である2027年6月期には以下の数値目標の達成を目指しています。

* 売上高:190億円
* 営業利益:28.5億円(営業利益率15.0%)
* ROE:17.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画では、「事業」「技術」「人財」の3つの変革に注力します。事業面では、決済・セキュリティ・データ通信等の各領域で自社製品・サービスを活かした拡大を図り、DNPグループとの連携も強化します。技術面では高速データ処理技術とAI等の先端技術を融合させ、人財面ではプロフェッショナル集団の形成を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人財の変革」を掲げ、変化を恐れず社内外と共奏できる「信頼されるプロフェッショナル集団」の形成を目指しています。スキル・経験の可視化やリスキリングによる戦略的配置、管理職層の育成を通じた組織力の強化、多様なキャリア機会の提供による柔軟な視野を持つ人財の育成に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 39.2歳 10.5年 7,248,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでいます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 17.0%
男性労働者の育児休業取得率 129.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 77.1%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 77.3%
労働者の男女の賃金の差異(非正規) 67.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、月平均残業時間(22時間38分)、女性管理職/高度専門職数(17名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業環境について


主力の決済領域では、電子マネーの普及や異業種の参入により競争が激化する可能性があります。また、クレジットカード業界の再編・統合が進む中、主要顧客の統合による発注減少や、各社の業績動向、法規制の変更などが、同社の受注および業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) システム開発について


長期プロジェクトにおける要件変更や工数増加、納期遅延などが採算性を損なうリスクがあります。また、品質トラブルや外部クラウドサービスの障害が発生した場合、追加コストや損害賠償の発生、信用の低下を招き、業績に悪影響を与える可能性があります。

(3) 人財について


IT人材の獲得競争が激化する中、必要な人材を確保できない場合、事業遂行や成長力に影響が出る可能性があります。また、労働環境の悪化による生産性低下や人材流出が生じた場合、開発体制の維持が困難となり、品質低下や顧客信頼の喪失につながるリスクがあります。

(4) 親会社の影響力について


親会社である大日本印刷は同社の議決権の過半数を保有しており、同社との間で決済・セキュリティ領域を中心に協業や取引を行っています。親会社が自らの利益を優先し、少数株主の利益に反する行動をとる可能性がありますが、同社は独立役員で構成される特別委員会での検討等により対応しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。