アバントグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アバントグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場のソフトウエア企業。連結会計システム「DivaSystem」を軸に、連結決算開示、DX推進、経営管理ソリューション事業を展開しています。業績は売上高282億円、経常利益46億円と増収増益を達成。連結会計・経営管理領域での強固な顧客基盤を背景に成長を続けています。


※本記事は、株式会社アバントグループ の有価証券報告書(第29期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アバントグループってどんな会社?


企業のグループ経営を高度化するソフトウエアの開発・販売およびコンサルティングを行う企業グループです。

(1) 会社概要


1997年に株式会社ディーバとして設立され、連結会計ソフトウエア「DivaSystem」の販売を開始しました。2007年にヘラクレス(現グロース)へ上場し、2013年に持株会社体制へ移行して株式会社アバントへ商号変更しました。2018年には東証一部へ市場変更を果たし、2022年に現在の株式会社アバントグループへ商号変更しています。

連結従業員数は1,707名、単体では56名です。筆頭株主は代表取締役社長の森川徹治氏で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位には取締役(監査等委員)の野城剛氏が名を連ねており、経営陣が主要株主として一定の株式を保有しています。

氏名 持株比率
森川 徹治 26.27%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 10.11%
野城 剛 5.02%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.0%です。代表は代表取締役社長(グループCEO)の森川 徹治氏が務めています。社外取締役比率は57.1%です。

氏名 役職 主な経歴
森 川 徹 治 代表取締役社長(グループCEO) 1990年4月プライスウォーターハウスコンサルタント入社。1997年5月同社設立、代表取締役社長。2020年9月より現職。
春 日 尚 義 取締役財務担当(グループCFO) 1987年4月日本長期信用銀行入行。ニューヨーク証券取引所執行役員などを経て、2010年10月同社入社。2020年9月より現職。
野 城 剛 取締役(監査等委員) 1985年10月青山監査法人入所。1998年2月同社入社。管理本部長、取締役財務担当、常勤監査役を経て、2022年9月より現職。


社外取締役は、ジョンロバートソン(ヴイエムウェア代表取締役社長)、鴨居 達哉(アビームコンサルティング代表取締役)、後藤 千惠(弁護士・公認会計士)、中野 誠(一橋大学大学院教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「連結決算開示事業」「デジタルトランスフォーメーション推進事業」および「経営管理ソリューション事業」を展開しています。

(1) 連結決算開示事業


連結経営支援および連結会計向けの自社パッケージソフト「DivaSystem」の開発・保守を行うほか、連結決算・単体決算のアウトソーシングサービスを提供しています。また、開示書類の情報検索サービスも含まれます。

収益は、顧客企業からのソフトウエアライセンス料、保守料、およびアウトソーシングサービスの利用料から得ています。運営は主に株式会社ディーバおよび株式会社インターネットディスクロージャーが行っています。

(2) デジタルトランスフォーメーション推進事業


データプラットフォームの構築から、AI・BIソリューションによるデータの分析・予測・可視化までを、コンサルティングおよびシステム開発を通じて提供しています。企業のデータドリブン経営の推進を支援する事業です。

収益は、顧客企業に対するシステム開発、コンサルティングサービスの対価、および関連するソフトウエアやハードウエアの販売から得ています。運営は主に株式会社ジールが行っています。

(3) 経営管理ソリューション事業


グループ経営、連結会計、事業管理を中心に、コンサルティングからシステムの企画、構築、導入、運用、保守までをワンストップで支援します。自社ソフトウエアの開発や他社製品との組み合わせによるソリューション提供を行います。

収益は、顧客企業からのシステム導入コンサルティング料、ソフトウエアライセンス料、および保守運用サービスの対価から得ています。運営は主に株式会社アバントが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は右肩上がりで推移しており、毎期着実に事業規模を拡大しています。経常利益も売上の伸長に伴い増加傾向にあり、利益率も15〜16%台と高い水準を維持しています。特に直近では売上高、利益ともに過去最高水準に達しており、成長性と収益性を両立した経営が続いています。

項目 2021年6月期 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上高 162億円 187億円 214億円 244億円 282億円
経常利益 28億円 30億円 33億円 41億円 46億円
利益率(%) 17.3% 16.0% 15.2% 16.9% 16.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 15億円 6億円 20億円 11億円 29億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、それに伴い売上総利益も拡大しています。売上総利益率は高い水準を維持しており、付加価値の高いビジネスモデルであることがうかがえます。営業利益も増加しており、事業拡大に伴うコスト増を吸収して利益を確保しています。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 244億円 282億円
売上総利益 109億円 126億円
売上総利益率(%) 44.8% 44.6%
営業利益 41億円 46億円
営業利益率(%) 16.8% 16.3%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び賞与が21億円(構成比27%)、その他が14億円(同17%)を占めています。売上原価においては、人件費や外注費などが主な構成要素となっています。

(3) セグメント収益


全てのセグメントで増収増益を達成しました。連結決算開示事業はアウトソーシングやソフトウエアの価格改定が寄与しました。デジタルトランスフォーメーション推進事業はデータ活用ニーズの高まりを捉えて伸長しましたが、一部案件の影響で利益率はやや低下しました。経営管理ソリューション事業はグループ経営管理領域での成果が出て大幅な増益となりました。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期) 利益(2024年6月期) 利益(2025年6月期) 利益率
連結決算開示事業 72億円 84億円 18億円 22億円 25.6%
デジタルトランスフォーメーション推進事業 88億円 103億円 16億円 17億円 16.7%
経営管理ソリューション事業 84億円 95億円 14億円 17億円 18.4%
調整額 -5億円 -3億円 -8億円 -10億円 -
連結(合計) 244億円 282億円 41億円 46億円 16.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

アバントグループは、持続的な企業価値向上と株主還元を目指し、資本効率と財務の健全性・柔軟性を両立させた資本構成を追求しています。

営業活動によるキャッシュ・フローは増加しており、これは主に事業活動で得た利益によるものです。投資活動では、一部の有価証券の売却収入などにより、使用額は前年度より減少しました。財務活動では、自己株式の取得や配当金の支払いなどにより資金を使用しましたが、自己株式の売却収入もあり、使用額は前年度より減少しています。

同社グループは、事業モデルの特性から運転資金の必要性が低く、またグループ内での資金融通や金融機関とのコミットメントライン設定により、資金繰りに懸念はなく、今後は余剰資金を戦略的な投資に活用していく意向です。

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF 37億円 45億円
投資CF -6億円 -2億円
財務CF -20億円 -10億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、組織に参加するメンバーの自己実現を支援し、変化の激しい市場環境に対して適応能力の高い自立した組織による継続的な事業成長の実現を「100年企業の創造」と掲げ、最大の経営目標としています。

(2) 企業文化


お客様への貢献に専心するため、「信用第一」「赤字は悪」「創意工夫で高価値化を追求する」「人の成長のための事業成長を創る」「一芸を極めて社会に役立つ」の5つを経営の原則としています。これらの原則は経営判断の優先順位も示しており、信用を守ることや高収益の志向、従業員の成長などが重視されています。

(3) 経営計画・目標


2028年6月期までの中期経営計画「BE GLOBAL 2028」において、「企業価値の向上に役立つソフトウエア会社になる」ことを目指しています。主な経営指標として以下の目標を掲げています。

* 売上高:400~450億円
* 純利益:60~70億円
* 1人当たりの営業利益:3.5~4.3百万円
* ソフトウエア粗利益:55~60億円
* ROE:20%以上
* DOE(純資産配当率):8%

(4) 成長戦略と重点施策


「ソフトウエアドリブン戦略」を掲げ、自社ソフトウエアの成長性や収益性を明確にし、顧客貢献度を測定しながら最適化を図ります。また、「価値創造生産性」の向上を重視し、ソフトウエアとサービスを組み合わせたソリューションの高付加価値化や、生成AI等を活用した業務効率化を推進します。さらに、経営のデジタルトランスフォーメーション市場での需要顕在化に向け、顧客ニーズを的確に捉えた展開を進めます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「OPEN、VALUE、STRETCH」を行動指針とし、お客様のために挑戦し続ける人材の育成・採用に注力しています。ソフトウエアドリブン戦略に基づき、事業ポートフォリオに応じた人材ポートフォリオ戦略を検討し、必要な人材の採用・育成を進めています。また、次世代リーダーの育成を最重要課題と位置づけ、専用部署の設置や経営専門職の定義など、体系的な取り組みを行っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 45.6歳 5.4年 9,735,544円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.7%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 73.9%
男女賃金差異(正規雇用) 75.4%
男女賃金差異(非正規雇用) -


※提出会社において、男性育児休業取得率および非正規雇用の男女賃金差異は、算定対象となる従業員がいないため「-」となっています。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、GHG排出量(15,121t-CO2)、電力使用量(1,021千kWh)、GPTWスコア(73)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) サイバー攻撃によるリスク


同社グループのクラウドサービスは顧客の重要データを取り扱っており、サイバー攻撃によるサービス停止やデータ喪失が発生した場合、損害賠償や信頼性低下により業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。これを「特に重要なリスク」と位置づけ、セキュリティ対策の強化に投資しています。

(2) 出資・M&Aに関するリスク


持続的な成長のためM&Aを行う方針ですが、適切な候補が見つからない、条件が合わない等で想定通りに進まない可能性があります。また、買収後の偶発債務や未認識債務の判明などにより、のれんの減損等が発生し、業績や財政状態に影響を与える可能性があります。

(3) 事業投資・設備投資に関するリスク


製品競争力強化や事業基盤拡充のための投資を行っていますが、市場環境の変化やニーズとのギャップにより期待した成果が得られない可能性があります。投資効果が期待を下回る場合、中長期的に業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。