※本記事は、株式会社オープンアップグループ の有価証券報告書(第21期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. オープンアップグループってどんな会社?
技術者派遣を主軸に、機電・IT、建設領域などで人材サービスを展開。M&Aによる事業拡大と持株会社体制が特徴です。
■(1) 会社概要
1997年に共生産業として設立され、2005年に技術労働者派遣事業を開始しました。2007年にJASDAQ証券取引所へ上場し、2020年に持株会社体制へ移行してビーネックスグループへ商号変更しました。2021年には夢真ホールディングスと経営統合し、2022年に現在の商号となりました。
連結従業員数は26,978名、単体従業員数は123名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は中山隼雄氏、第3位は株式会社アミューズキャピタルです。第3位の企業は第2位の株主が代表を務める資産管理会社です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 14.10% |
| 中山 隼雄 | 9.60% |
| アミューズキャピタル | 7.20% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性3名の計10名で構成され、女性役員比率は30.0%です。代表取締役会長兼社長CEOは西田 穣氏です。社外取締役比率は70.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 西田 穣 | 代表取締役会長兼社長CEO | リクルート入社後、リクルートスタッフィング執行役員等を経て2014年同社顧問。2016年代表取締役社長、2025年7月より現職。 |
| 佐藤 博 | 取締役CFO | 日本電気入社。NECエレクトロニクス、NECネッツエスアイ、テクノプロ・ホールディングス等のCFOを歴任。2023年6月より現職。 |
| 佐藤 大央 | 取締役 | 野村不動産を経て夢真ホールディングス入社。同社代表取締役社長、夢真代表取締役等を歴任。2025年7月より現職。 |
社外取締役は、川上 智子(早稲田大学大学院教授)、清水 新(ミスミグループ本社専務)、和田 洋一(元スクウェア・エニックス社長)、大島 まり(東京大学教授)、残間 里江子(クラブ・ウィルビー代表)、高橋 信太郎(元Indeed Japan社長)、六川 浩明(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「機電・IT領域」「建設領域」「海外領域」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 機電・IT領域
国内メーカーにおける開発、設計、製造技術等の機械・電気・電子系技術者や、IT企業等におけるネットワーク、サーバー、ソフトウエア等の構築、開発、運用系のIT技術者の派遣及び業務請負を行っています。
収益は、顧客企業からの派遣料金や業務請負代金等から構成されています。運営は、株式会社ビーネックステクノロジーズ、株式会社オープンアップITエンジニア、株式会社ビーネックスソリューションズ等が行っています。
■(2) 建設領域
国内建設業界の企業に対し、施工管理技術者やCAD技術者の派遣を主として行っています。
収益は、建設会社等の顧客企業からの技術者派遣料金等から構成されています。運営は、株式会社夢真、株式会社オープンアップコンストラクション等に加え、新たに連結子会社となったアイアール株式会社が行っています。
■(3) 海外領域
海外における技術・製造分野に対する派遣・請負や、有料職業紹介などの人材サービス事業を展開しています。
収益は、海外の顧客企業からの派遣料金や紹介手数料等から構成されています。従来英国を中心に展開していましたが、英国子会社の全株式を譲渡しポートフォリオを見直しました。現在は中国、インドネシア、ベトナムの現地法人において事業を継続しています。
■(4) その他
上記の報告セグメントに含まれない事業として、障がい者雇用促進事業やオンラインプログラミング教育事業等を展開しています。
収益は、グループ内サービスや受講料等から構成されています。運営は、特例子会社の株式会社オープンアップウィズ、株式会社SAMURAI等が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上収益は毎期増加を続けています。2021年6月期は赤字計上となりましたが、翌期以降は黒字転換し、利益額も増加傾向にあります。
| 項目 | 2021年6月期 | 2022年6月期 | 2023年6月期 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 989億円 | 1,486億円 | 1,507億円 | 1,732億円 | 1,880億円 |
| 税引前利益 | -251億円 | 102億円 | 125億円 | 146億円 | 162億円 |
| 利益率(%) | -25.3% | 6.9% | 8.3% | 8.4% | 8.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -271億円 | 70億円 | 95億円 | 118億円 | 126億円 |
■(2) 損益計算書
売上収益の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに増加しています。利益率も改善傾向にあり、安定した収益構造となっています。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 1,732億円 | 1,880億円 |
| 売上総利益 | 420億円 | 474億円 |
| 売上総利益率(%) | 24.2% | 25.2% |
| 営業利益 | 143億円 | 162億円 |
| 営業利益率(%) | 8.3% | 8.6% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給付費用が159億円(構成比50.0%)、求人費が51億円(同15.9%)を占めています。
■(3) セグメント収益
機電・IT領域と建設領域が大幅な増収増益となり、全社の成長を牽引しています。一方、海外領域は事業ポートフォリオの見直しに伴う英国子会社の売却により減収となりましたが、利益は増加しました。
| 区分 | 売上(2024年6月期) | 売上(2025年6月期) | 利益(2024年6月期) | 利益(2025年6月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 機電・IT領域 | 911億円 | 1,015億円 | 89億円 | 110億円 | 10.9% |
| 建設領域 | 450億円 | 569億円 | 69億円 | 75億円 | 13.2% |
| 海外領域 | 357億円 | 278億円 | 6億円 | 9億円 | 3.4% |
| その他 | 26億円 | 31億円 | 3億円 | 2億円 | 7.4% |
| 調整額 | -12億円 | -14億円 | -21億円 | -33億円 | - |
| 連結(合計) | 1,732億円 | 1,880億円 | 143億円 | 164億円 | 8.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 192億円 | 142億円 |
| 投資CF | -50億円 | -56億円 |
| 財務CF | -89億円 | -97億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は64.2%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、事業の存在意義および判断基準として「幸せな仕事を通じてひとりひとりの可能性をひらく社会に」というパーパスを設定しています。このパーパスのもと、各事業子会社はそれぞれの事業特性に沿った経営理念やビジョンを持って経営を行っています。
■(2) 企業文化
同社グループは、パーパスを基軸に据え、就業者や取引先を含むすべてのステークホルダーと連携・協働し、事業を通じて社会課題の解決を推進することを目指しています。また、社員一人ひとりの技術や知識の向上を重視し、未経験者からの育成やキャリア形成を支援する風土があります。
■(3) 経営計画・目標
2025年6月期までの経営計画「BY25」を達成し、新たに2028年6月期を目標年度とする成長ステージを設定しました。以下の財務指標および非財務指標を掲げています。
* 売上高:2,000億円
* 営業利益:200億円
* 収益指標:売上高・営業利益の年率10%以上成長、営業利益率10%以上
* 成長指標:国内エンジニア数の年率10%以上拡大
* 還元指標:配当性向50%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
国内の技術者派遣において、中途・新卒の積極採用と未経験者からの育成プログラムにより技術者の定着率を高め、LTV(ライフタイムバリュー)を向上させる方針です。また、自立成長に加え、シナジーが見込まれるM&Aやグループ内再編を積極的に行うことで、事業規模の拡大と収益性の向上を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
エンジニアの採用競争が激化する中、新卒・中途を問わず多様なチャネルで積極的な採用を行っています。また、トレーニングセンターの設置や資格取得支援を通じて未経験者をエンジニアに育成する仕組みを強化しています。さらに、DX活用やきめ細やかなフォローにより、適正なマッチングとキャリア支援を行い、社員満足度と定着率の向上に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年6月期 | 44.4歳 | 5.8年 | 7,505,414円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 15.9% |
| 男性育児休業取得率 | 74.2% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 86.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 87.9% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 56.9% |
※上記の数値は、主要な連結子会社である株式会社ビーネックステクノロジーズの実績です。提出会社およびその他の連結子会社については、公表義務の対象外のため記載を省略しています。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、オープンアップ・パーパス・インデックス(OPI)(3.3ポイント)、内勤エンゲージメントスコア(eNPS)(-13.8)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済安全保障等の国際社会状況
グローバルなサプライチェーンへの直接的な依存は少ないものの、顧客企業の国際情勢対応に伴う生産・開発拠点の移転や稼働変化により、人材ニーズが変動し、業績に影響を与える可能性があります。
■(2) 気候変動
直接的な環境負荷は軽微ですが、炭素税の導入や顧客企業からのカーボンニュートラルへの取り組み要請等があった場合、対応コストの増加等が業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 自然災害
国内外に拠点を展開しているため、地震や台風などの大規模な自然災害が発生した場合、事業活動の停止や顧客企業の被災による就業不能等の事態が生じ、業績に悪影響を与える可能性があります。
■(4) 法的規制
労働者派遣法や職業安定法等の法的規制下にあるため、法令違反による許可取消や事業停止処分のリスクがあります。また、将来の法改正や規制強化により顧客企業の派遣利用が抑制され、需要が低下する可能性があります。



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