※本記事は、株式会社ボルテージ の有価証券報告書(第26期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ボルテージってどんな会社?
モバイル端末向けに「恋愛と戦いのドラマ」をテーマとしたストーリー型コンテンツの企画・開発・運営を行う企業です。
■(1) 会社概要
1999年に有限会社として設立され、翌2000年に株式会社化しました。2006年に現在の主力となる「恋愛ドラマアプリ」シリーズを開始し、2010年に東証マザーズへ上場、2011年には東証一部へ市場変更しました。2020年には電子コミックストアサービスを開始し、2022年の市場区分見直しに伴い東証スタンダード市場へ移行しています。
同社の従業員数は連結・単体ともに143名です。筆頭株主は創業者で社長の津谷祐司氏で、第2位は同氏の資産管理会社と思われるサードストリート、第3位は大手証券会社です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 津谷祐司 | 10.45% |
| サードストリート | 10.27% |
| SBI証券 | 7.38% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は津谷祐司氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 津谷祐司 | 代表取締役社長 | 博報堂を経て同社設立。会長等を経て2020年より現職。ボルピクチャーズ取締役を兼任。 |
| 東奈々子 | 取締役副社長 | 博報堂を経て2000年同社取締役。副会長等を経て2020年より現職。ボルピクチャーズ取締役を兼任。 |
| 加藤慶太 | 取締役副社長 | 同社入社後、タイトーを経て再入社。執行役員、取締役を経て2024年より現職。 |
| 松永浩 | 取締役総務IT本部管轄 | 情報開発センターを経て2002年同社入社。2005年より現職。 |
社外取締役は、永山憲一(元りそなビジネスサービス執行役員)、小笠原寿男(元日本板硝子関連会社役員)、川西祐輔(公認会計士・税理士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「モバイルコンテンツ事業」および「その他」事業を展開しています。
**(1) モバイルコンテンツ**
スマートフォン等のモバイル端末利用者向けに、「恋愛と戦いのドラマ」をテーマとしたストーリー型コンテンツを提供しています。女性向けには「読み物型」「アバター型」等のアプリを、男性向けにはカード型バトルゲーム等を配信しており、国内外のユーザーが主要顧客です。
収益は、主にアプリ内でのアイテム課金(従量課金制)やストーリー単位の個別課金による利用料収入です。プラットフォーム(App Store、Google Play等)を通じてユーザーから回収されます。運営は主に同社が行っています。
**(2) 電子コミック・コンシューマ**
オリジナルコミックの制作・配信や、Nintendo Switch等の家庭用ゲーム機(コンシューマ)向けタイトルの開発・販売を行っています。また、アプリ以外のリアルイベントやグッズ販売、映像等の展開も行い、ファンダムの醸成を図っています。
収益は、電子コミックストアでの販売収入や、コンシューマゲームソフトの販売代金、グッズ販売収入などです。運営は同社および子会社のボルピクチャーズが映像分野等を担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は減少傾向にあります。利益面では赤字の期間もありましたが、コスト削減等の施策により、直近の2025年6月期には営業黒字および最終黒字を確保しています。利益率は低い水準ながらも改善傾向にあります。
| 項目 | 2021年6月期 | 2022年6月期 | 2023年6月期 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 69.0億円 | 53.9億円 | 42.6億円 | 34.6億円 | 28.2億円 |
| 経常利益 | 1.8億円 | -3.0億円 | -0.6億円 | 0.2億円 | 0.2億円 |
| 利益率 | 2.6% | -5.5% | -1.5% | 0.5% | 0.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.6億円 | -4.1億円 | -0.4億円 | 0.1億円 | 0.1億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で減少しましたが、売上原価および販売費及び一般管理費を大幅に圧縮したことで、各利益段階で黒字を維持・拡大しています。特に営業利益率はマイナスからプラスへ転換しており、収益構造の改善が進んでいます。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 35億円 | 28億円 |
| 売上総利益 | 18億円 | 15億円 |
| 売上総利益率(%) | 53.0% | 52.3% |
| 営業利益 | -0.9億円 | 0.1億円 |
| 営業利益率(%) | -2.7% | 0.5% |
販売費及び一般管理費のうち、販売手数料が6億円(構成比42%)、広告宣伝費が3億円(同20%)を占めています。売上原価では、労務費が7億円(構成比54%)、外注費が4億円(同30%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の日本語女性向けコンテンツをはじめ、全区分で減収となりました。特に英語・アジア女性向けは大きく減少しています。一方、コスト削減効果により全社的な利益確保には至っています。
| 区分 | 売上(2024年6月期) | 売上(2025年6月期) |
|---|---|---|
| 日本語女性向け | 21億円 | 17億円 |
| 英語・アジア女性向け | 4億円 | 3億円 |
| 男性向け | 7億円 | 6億円 |
| 電子コミック・コンシューマ | 3億円 | 3億円 |
| 連結(合計) | 35億円 | 28億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は営業活動で得た資金で借入返済を行いつつ、投資は手元資金で賄っている健全型のキャッシュ・フロー状態です。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -0.4億円 | 0.4億円 |
| 投資CF | -0.8億円 | -0.0億円 |
| 財務CF | -0.3億円 | -0.0億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は0.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は78.3%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「アート&ビジネス」を企業理念として掲げています。「アート」とは感動コンテンツを自らの力で生み出すことであり、「ビジネス」として成功させて利益を次の作品作りに投資するという循環を通じて、社会に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
「恋愛と戦いのドラマ」という独自スタイルを世界へ広めることを目指しています。また、「自律成長」する個人、組織になることを掲げ、自らの能力と環境を見極めて高いゴールを設定し、戦略と計画を立てて実行することを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
売上高と売上高営業利益率を重要な経営指標とし、特に売上高営業利益率を一定水準以上とすることを目標としています。2027年6月期頃には、アプリと新分野(電子コミック・コンシューマ)での「事業3本柱」を成立させることを目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
既存の物語アプリ事業では、ファンダムの充実やアプリ形態の進化により採算性を向上させる「ファンダム戦略」を推進しています。新分野では、事業拡大と強力な知的財産(IP)の創出に向けた「ヒットIP戦略」を掲げ、電子コミックやコンシューマ向け事業への投資を進めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
今後の成長のために、優秀な人材の確保と組織体制の強化が不可欠であると認識しています。新卒採用を中心としつつ必要に応じて中途採用も行い、企業風土に合った人材を登用する方針です。また、入社年数に応じた研修プログラムを実施し、個々のスキル向上を促進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年6月期 | 34.9歳 | 9.4年 | 5,431,444円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 56.5% |
| 男性育児休業取得率 | 200.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | -% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | -% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | -% |
※男女賃金差異については、有価証券報告書に記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性正社員比率(66%)、女性の新規管理職登用率(0%)、新卒採用者に占める女性の割合(100%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) プラットフォームへの依存
GoogleやApple等のプラットフォーム運営会社を介してコンテンツを提供しているため、これら運営会社の事業方針変更、手数料率の改定、またはシステム上の不測の事態が発生した場合、同社の業績や事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。
■(2) ヒットIPの創出と競合
事業拡大には魅力的なオリジナルコンテンツ(ヒットIP)の連続創出が不可欠ですが、ユーザーニーズの変化は速く、競合も多数存在します。魅力あるコンテンツを提供できず差別化が図れない場合、ユーザー数が減少し業績に悪影響を与える可能性があります。
■(3) システム障害とセキュリティ
モバイル端末を通じたインターネット上でサービスを提供しているため、アクセス過多によるサーバー停止やサイバー攻撃、自然災害等によるシステムトラブルが発生するリスクがあります。これにより配信障害が生じた場合、業績に影響を与える可能性があります。
■(4) 人材の確保と育成
事業拡大にはスキルとセンスを持つ人材の確保と育成が重要ですが、必要な人材を十分に確保・育成できない場合、競争力の低下を招き、業績に影響を与える可能性があります。また、制作の一部を委託する外部クリエイターとの関係維持も重要です。



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