※本記事は、株式会社ブシロード の有価証券報告書(第19期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ブシロードってどんな会社?
トレーディングカードゲームを軸に、モバイルゲーム、音楽、イベント、グッズ、プロレス興行などを多角的に展開する「IPディベロッパー」です。
■(1) 会社概要
2007年5月に設立され、2008年に主要TCG「ヴァイスシュヴァルツ」を発売しました。2012年には新日本プロレスリングを子会社化し、スポーツ事業へ参入しています。2019年7月に東京証券取引所マザーズ(現グロース)へ上場を果たしました。同年に女子プロレス事業「スターダム」を譲受し、事業ポートフォリオを拡大しています。
2025年6月30日時点で、連結従業員数は873名、単体では259名です。筆頭株主は創業者親族の資産管理を行う信託銀行で、第2位は創業者の資産管理会社、第3位は創業者の木谷高明氏です。創業者およびその関係先が株式の多くを保有するオーナー系企業と言えます。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 三井住友信託銀行(信託口 甲9号) | 29.90% |
| 中野坂上 | 13.58% |
| 木谷 高明 | 11.60% |
■(2) 経営陣
同グループの役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は木谷高明氏です。社外取締役比率は42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 木谷 高明 | 代表取締役社長ブシロードユニットユニット長TCG本部長 | 山一證券を経てブロッコリーを設立。2007年5月同社を設立し社長に就任。2017年よりブシロードミュージック社長等を歴任し、2022年7月より現職。 |
| 村岡 敏行 | 取締役ブシロードユニット副ユニット長経理財務本部長経営管理本部長 | ファイブフォックス、楽天、葵プロモーションを経て2017年7月同社入社。同年10月執行役員を経て2019年5月より現職。 |
| 根本 雄貴 | 取締役ライブエンタメユニットユニット長ブシロードユニットコンテンツ本部長 | 2016年4月同社入社。2022年7月ブシロードミュージック社長、同年10月同社執行役員を経て2023年9月より現職。 |
| 成田 耕祐 | 取締役MDユニットユニット長 | メディアファクトリーを経て2016年7月同社入社。同年9月ブシロードクリエイティブ社長に就任(現任)。2017年10月同社執行役員を経て2024年9月より現職。 |
社外取締役は、稲田洋一(元レコフ社長)、水野道訓(元ソニー・ミュージックエンタテインメント会長)、鳥嶋和彦(元白泉社社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「エンターテイメント事業」および「スポーツ事業」を展開しています。
■エンターテイメント事業
トレーディングカードゲーム(TCG)、モバイル・コンソールゲーム、音楽・舞台、グッズ販売、広告代理店業務などを展開しています。TCGユニットでは「ヴァイスシュヴァルツ」等の企画・開発・販売を行い、ライブエンタメユニットでは音楽コンテンツやライブイベントの制作を手掛けています。
主な収益源は、TCGやグッズ等の製品販売収入、ゲームの課金収入、ライブチケット収入、広告代理手数料などです。運営は、ブシロード(TCG・ゲーム)、ブシロードミュージック(音楽・ライブ)、ブシロードクリエイティブ(グッズ)、ブシロードムーブ(広告・イベント)などのグループ各社が担っています。
■スポーツ事業
プロレスリングの興行、関連グッズの企画・販売、映像コンテンツの制作・配信、ファンクラブ運営を行っています。主要ブランドとして「新日本プロレス」および女子プロレス「スターダム」を展開し、国内外で興行を実施しています。
収益源は、興行のチケット販売収入、動画配信サービスの課金収入、グッズ販売収入、コンテンツ配信権料などです。運営は、新日本プロレスリング、スターダム、および米国のNew Japan Pro-Wrestling of America Inc.が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は変動を伴いつつも拡大傾向にあり、当期は過去最高を記録しました。利益面では、2024年6月期に一時的な落ち込みが見られましたが、当期はV字回復し、高い利益水準を達成しています。
| 項目 | 2021年6月期 | 2022年6月期 | 2023年6月期 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 326億円 | 420億円 | 488億円 | 463億円 | 562億円 |
| 経常利益 | 6億円 | 51億円 | 45億円 | 19億円 | 48億円 |
| 利益率(%) | 1.8% | 12.2% | 9.2% | 4.1% | 8.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -9億円 | 12億円 | 8億円 | 13億円 | 16億円 |
■(2) 損益計算書
前期と比較して売上高が大きく伸長し、それに伴い売上総利益率および営業利益率が改善しました。特に営業利益率は大幅に向上しており、収益性が高まっていることがわかります。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 463億円 | 562億円 |
| 売上総利益 | 154億円 | 200億円 |
| 売上総利益率(%) | 33.3% | 35.6% |
| 営業利益 | 9億円 | 49億円 |
| 営業利益率(%) | 1.9% | 8.7% |
販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費及び販売促進費が53億円(構成比35%)、給与手当が17億円(同12%)、研究開発費が15億円(同10%)を占めています。
■(3) セグメント収益
エンターテイメント事業はTCGやライブイベント等の好調により大幅な増収増益となりました。一方、スポーツ事業は売上が減少し、利益面でも減益となりました。
| 区分 | 売上(2024年6月期) | 売上(2025年6月期) | 利益(2024年6月期) | 利益(2025年6月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| エンターテイメント事業 | 397億円 | 499億円 | 4億円 | 47億円 | 9.4% |
| スポーツ事業 | 66億円 | 63億円 | 4億円 | 2億円 | 2.7% |
| 調整額 | -2億円 | -1億円 | -億円 | -億円 | -% |
| 連結(合計) | 463億円 | 562億円 | 9億円 | 49億円 | 8.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業活動によるキャッシュ・フローがプラス、投資活動によるキャッシュ・フローがプラス、財務活動によるキャッシュ・フローがマイナスであることから「改善型」に分類されます。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -4億円 | 58億円 |
| 投資CF | -0.5億円 | 9億円 |
| 財務CF | -2億円 | -50億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は47.7%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、時代の潮流と本質をとらえ、型にはめずに挑戦することで「新時代のエンターテイメントを創出する」ことをミッションとしています。そして、「エンターテイメントで世界を代表する企業になること」を目指して経営を行っています。
■(2) 企業文化
「IPディベロッパー2.0」戦略を掲げ、他社IPや自社IPを活用し、カードゲーム、ライブ、MD、デジタル等の多面的な展開を行うことでIP価値を向上させる文化があります。特に、声優が楽器を演奏する「バンドリ!」のように、リアルなライブ活動とアニメ、ゲーム等を連動させるメディアミックスを得意としています。
■(3) 経営計画・目標
同社は「中期ビジョン2030」のもと、Sランク(年商100億円以上)IPを3本以上、Aランク(年商40億円以上)IPを4本以上、Bランク(年商10億円以上)IPを5本以上保有することを事業目標としています。また、経営効率向上と企業価値拡大の観点から、売上総利益金額と売上高経常利益率を経営指標としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「中期ビジョン2030」に基づき、「自社IPの活性化および新規IPの創出」「カードゲーム世界一を目指す」「海外進出を加速する」の3つを柱としています。既存の有力IPを強化しつつ、音楽ライブ等を起点とした大型IPの立ち上げや出版事業による多点数展開を進めます。また、海外売上高比率を中期的に50%へ引き上げることを目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「優秀な人材の採用・育成」を重要課題とし、大幅な権限委譲により若手でも責任ある仕事を任せる体制を構築しています。また、10以上の国籍の社員を擁するなどダイバーシティに注力し、グローバルマーケットでのプレゼンスを高めることで採用力を強化する方針です。男女ともに活躍できる雇用環境の整備も進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年6月期 | 31.9歳 | 4.5年 | 5,063,497円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 12.9% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 66.7% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 89.7% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 87.6% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用) | 91.9% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、外国人及び英語人材の比率(41.7%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 組織体制に関するリスク
新製品(TCGやゲーム)の開発遅延や品質問題は業績に大きな影響を与えます。また、人材の流動性が高い業界であるため、優秀な人材の確保が重要です。さらに、創業者である木谷高明氏への事業依存度が高いため、同氏に過度に依存しない経営体制の構築を進めています。
■(2) 事業環境に関するリスク
多角的なメディアミックス展開を行っているため、多額の広告宣伝費が発生しますが、意図した効果が得られない場合、利益に影響が出る可能性があります。また、TCG市場の成長鈍化や、モバイルゲーム市場における競争激化もリスク要因として認識しており、グローバル展開やマルチプラットフォーム戦略で対応しています。
■(3) 海外展開におけるリスク
海外売上高比率が高まっており、為替レートの変動や、進出国のカントリーリスク、法規制の変化などが業績に影響を与える可能性があります。また、M&Aや資本提携による事業拡大を進めていますが、計画通りに進捗しない場合、財務状態に影響を及ぼす可能性があります。



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