アイキューブドシステムズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アイキューブドシステムズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース市場に上場し、法人向けモバイル端末管理サービス「CLOMO MDM」を主力とするSaaS事業を展開しています。第24期は、端末管理需要の拡大や連結子会社化の影響により、売上高37億円(前期比27.2%増)、営業利益9億円(同30.8%増)といずれも大幅な増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社アイキューブドシステムズ の有価証券報告書(第24期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アイキューブドシステムズってどんな会社?


法人向けモバイル端末管理サービス「CLOMO」シリーズを開発・提供し、企業のDXやセキュリティ対策を支援するIT企業です。

(1) 会社概要


2001年に福岡県で有限会社として設立され、2010年に現在の主力であるMDMサービス「CLOMO MDM」の提供を開始しました。2020年に東証マザーズ(現グロース)へ上場を果たし、その後もCVCの設立やベトナム開発子会社の設立を行うなど事業基盤を拡大しています。2025年にはセキュリティ企業のワンビを子会社化しました。

連結従業員数は197名、単体では139名体制です。筆頭株主は創業者の佐々木勉氏で発行済株式の約55.56%を保有しており、第2位は個人株主の畑中洋亮氏、第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。オーナーシップの強い経営体制が特徴です。

氏名 持株比率
佐々木 勉 55.56%
畑中 洋亮 8.62%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 2.43%

(2) 経営陣


同社の役員は男性4名、女性2名の計6名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役執行役員社長CEOは佐々木勉氏が務めています。社外取締役比率は66.7%です。

氏名 役職 主な経歴
佐々木 勉 代表取締役執行役員社長CEO 2001年アイキューブドシステムズ創業。以来、代表取締役社長CEOとして経営を牽引。2022年より現職。
坂田 崇典 取締役執行役員管理本部長CFO 凸版印刷(現TOPPAN)、アウンコンサルティング取締役副社長等を経て、2024年4月同社入社。2024年9月より現職。


社外取締役は、東能利生(公認会計士)、内田裕子(株式会社スイングバイクリエーション代表取締役社長)、古宮洋二(九州旅客鉄道代表取締役社長執行役員)、舞田靖子(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「CLOMO事業」および「投資事業」を展開しています。

CLOMO事業


法人向けモバイル端末(スマートフォン、タブレット等)を一元管理・運用するサービス「CLOMO MDM」や、セキュリティアプリ「CLOMO SECURED APPs」、PC向け情報漏洩対策「TRUST DELETE」等をSaaSとして提供しています。企業や教育機関、医療機関などが主な顧客です。

主な収益源は、サービス利用に伴う月額や年額のサブスクリプション利用料です。クラウド上での提供により、継続的な収益が見込めるストック型ビジネスモデルを採用しています。運営は主に同社が行い、Windows PC向け対策などは子会社のワンビが担っています。

投資事業


ベンチャーキャピタル子会社を通じて投資事業組合を組成し、モバイル、SaaS、セキュリティ領域など、同社事業と親和性の高いスタートアップ企業等への投資を行っています。

投資先企業の成長支援を通じたキャピタルゲイン等を収益源としています。また、九州の地場企業や社会課題解決型企業への投資を通じ、イノベーションの創出や新たな価値創造への貢献を目指しています。運営は子会社のアイキューブドベンチャーズが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は順調に拡大を続けており、特に直近の第24期は前期比で大幅な増収となりました。利益面でも、売上規模の拡大に伴い経常利益が増加傾向にあり、高い利益率を維持しています。当期利益も安定して推移しており、成長と収益性を両立させた経営が継続しています。

項目 2021年6月期 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上高 - 25億円 27億円 29億円 37億円
経常利益 - 8億円 6億円 7億円 9億円
利益率(%) - 33.3% 22.9% 22.7% 23.4%
当期利益(親会社所有者帰属) - 5億円 4億円 5億円 6億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益も拡大しています。営業利益率も向上しており、効率的な事業運営が行われていることがわかります。コストコントロールと売上成長のバランスが取れた収益構造となっています。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 29億円 37億円
売上総利益 22億円 27億円
売上総利益率(%) 74.2% 71.9%
営業利益 7億円 9億円
営業利益率(%) 23.5% 24.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が5.4億円(構成比30.2%)を占めています。売上原価については、労務費や経費が主な構成要素となっています。

(3) セグメント収益


主力のCLOMO事業は、導入法人数の増加や子会社化の影響により売上が伸長し、利益も大きく増加しました。投資事業は、営業投資有価証券の売却益計上により売上が発生しましたが、営業損失となっています。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期) 利益(2024年6月期) 利益(2025年6月期) 利益率
CLOMO事業 29億円 36億円 8億円 9億円 25.6%
投資事業 - 1億円 -0.7億円 -0.3億円 -20.8%
連結(合計) 29億円 37億円 7億円 9億円 24.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


* パターン:**健全型**
* 営業CFはプラス、投資CFと財務CFはマイナスとなっており、本業で稼いだ現金を投資や株主還元、自己株式取得に充てている健全な状態です。

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF 8億円 10億円
投資CF -6億円 -0.4億円
財務CF -5億円 -6億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は21.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は57.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社はパーパスとして「笑顔につながる、まだ見ぬアイデア実現の母体となる」を、提供価値として「デザインとエンジニアリングの力で、挑戦を支える」を定義しています。これらを通じ、ITを軸とした様々な挑戦を積極的に進めていく企業を目指しています。

(2) 企業文化


「挑戦を、楽しもう。」をブランドスローガンに掲げています。挑戦的な文化を醸成し、従業員が様々な挑戦を楽しみながら取り組むこと、そして挑戦を楽しむ人や組織を支えることを重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、主軸事業であるCLOMO事業の「導入法人数」と「ライセンス継続率」を重要な経営指標として位置づけています。これらを向上させることで、安定的かつ持続的な成長を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


MDM市場におけるシェア拡大に向け、技術開発力を活かした高機能化や周辺機能の拡充を進め、アップセル・クロスセルを強化します。また、M&Aや海外オフショア開発の活用による開発体制の抜本的強化、サービス品質の向上、カスタマーサクセス活動の効率化にも取り組みます。さらに、PC資産管理市場への領域拡大や新規事業開発により、新たな収益源の開拓を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


多様なバックグラウンドを持つ人材の採用と、公平性(Equity)や帰属意識(Belonging)を重視した「DEIB」の推進により、能力を最大限発揮できる組織を目指しています。人材育成では、階層別研修や技術カンファレンス参加支援を行い、社内環境整備ではフルフレックスやテレワークの活用、健康増進施策などを通じ、働きがいのある環境作りを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 35.3歳 4.9年 6,142,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 20.0%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規) -


※男女賃金差異については、同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全労働者に占める女性労働者の割合(43.2%)、全労働者に占める外国籍労働者の割合(10.1%)、一人あたり1か月の平均時間外労働時間(4.2時間)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場動向と主軸事業の変化


主力のCLOMO事業は技術進化や顧客ニーズの変化が速いMDM市場に属しており、競合環境や経済情勢の影響を受けます。市場環境の変化への対応が遅れた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 特定取引先への依存


CLOMO事業の販売チャネルは携帯電話販売会社等のパートナー経由が多く、特定の上位販売先グループへの売上依存度が高くなっています。販売パートナーの方針変更や関係悪化が生じた場合、業績に影響が出る可能性があります。

(3) 特定事業への依存


現在はCLOMO事業が収益の大半を占めており、投資事業は安定収益化の途上にあります。MDM市場の成長鈍化や環境変化に適切に対応できない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。収益源多様化のため新規事業等を推進しています。

(4) 新規事業について


収益源の多様化を目指し新規事業を展開していますが、開発や収益化が計画通り進まない場合、投資回収ができず減損損失が発生するなど、財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。