ベイシス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ベイシス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース上場。通信インフラ構築のノウハウに最新テクノロジーを掛け合わせた「インフラテック事業」を展開しています。当期は、IoTエンジニアリングサービスのストックビジネス拡大などが寄与し、売上高79.8億円(前期比17.0%増)、当期純利益0.9億円(同83.7%増)の増収増益となりました。


※本記事は、ベイシス株式会社 の有価証券報告書(第25期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ベイシスってどんな会社?


通信・電力・ガスなどのインフラ事業者に対し、通信インフラの構築・運用保守をテクノロジー活用で支援する企業です。

(1) 会社概要


2000年に有限会社サイバーコネクションとして設立され、モバイルエンジニアリングサービスを開始しました。2015年にIoTエンジニアリングサービスを開始し、2017年に現社名へ変更しています。2021年に東証マザーズ(現グロース)へ上場しました。2023年にはSaaS「BLAS」の販売を開始するなど、インフラ×テクノロジーの事業を拡大しています。

現在の従業員数は連結581名、単体402名です。筆頭株主は創業者の資産管理会社であるワイズマネージメントで、第2位は創業者の吉村公孝氏、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
ワイズマネージメント 41.71%
吉村 公孝 17.46%
日本カストディ銀行(証券投資信託口) 7.21%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.2%です。代表取締役社長は吉村公孝氏です。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
吉村 公孝 代表取締役社長 1995年阪南コーポレーション入社。2000年有限会社サイバーコネクション(現同社)を設立し社長に就任。以後、グループ経営を牽引し現職。
佐藤 倫大 取締役営業本部長 2008年同社入社。事業推進本部長などを歴任し、2020年取締役就任。2025年より現職。
田中 裕輔 取締役(モバイル・ITサービス本部、IoTサービス本部担当) 1999年サンロイヤル入社。スリープロ等を経て2014年同社入社。事業開発本部長などを経て2020年取締役就任。2025年より現職。


社外取締役は、植松祐二(田辺総合法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「インフラテック事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) インフラテック事業


通信事業者や電力・ガス会社に対し、通信インフラやIoT機器の設計・施工・運用保守を提供しています。自社開発システム「BLAS」やAI・RPAを活用し、現場管理やプロジェクト管理の効率化を推進している点が特徴です。モバイルエンジニアリングでは基地局の施工や電波対策、IoTエンジニアリングではスマートメーター等の機器設置やネットワーク構築を行います。

収益は、通信事業者やインフラ事業者などの顧客から受け取る工事請負代金、エンジニア常駐費用、運用保守費用などから成ります。モバイル領域は請負型のフロー収益に加え、常駐型のストック収益もあります。IoT領域も機器設置のフローと保守のストックを組み合わせたモデルです。運営は主に同社および子会社のアヴァンセ・アジルが行っています。

(2) その他事業


モバイルやIoTの現場で培ったノウハウを基に、サーバーやネットワーク等のITインフラ領域のエンジニアリングサービスを提供しています。また、RPAツールの販売や導入支援、自社開発システム「BLAS」の外販なども行っています。

収益は、顧客企業からのエンジニアリングサービス料、RPAツールの販売代金や導入支援料、システム利用料などから構成されています。運営は主に同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2024年6月期から2025年6月期にかけて、売上高は増加傾向にあります。モバイルエンジニアリングサービスにおいては通信キャリアの投資抑制の影響を受けましたが、IoTエンジニアリングサービスおよびITエンジニアリングサービスの拡大が寄与しました。利益面では、増収効果やIoT領域のストックビジネス拡大による収益性改善に伴い、経常利益、当期純利益ともに増加しています。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 68.2億円 79.8億円
経常利益 0.8億円 1.7億円
利益率(%) 1.1% 2.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 0.5億円 0.9億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益も増加していますが、売上総利益率は概ね横ばいで推移しています。営業利益率は前期の1.2%から当期は2.2%へと改善しており、販管費の抑制や収益性の高い案件の獲得が進んでいることがうかがえます。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 68.2億円 79.8億円
売上総利益 16.0億円 18.6億円
売上総利益率(%) 23.4% 23.4%
営業利益 0.8億円 1.8億円
営業利益率(%) 1.2% 2.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が5.6億円(構成比33%)、減価償却費が0.6億円(同3%)を占めています。

(3) セグメント収益


モバイルエンジニアリングサービスは通信キャリアの設備投資抑制の影響で減収となりましたが、IoTエンジニアリングサービスはスマートメーター設置等の堅調な推移により増収となりました。その他サービスもITインフラ領域の拡大等により売上を伸ばしています。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期)
モバイルエンジニアリングサービス 35.8億円 33.7億円
IoTエンジニアリングサービス 24.7億円 33.1億円
その他 7.7億円 13.1億円
連結(合計) 68.2億円 79.8億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF 0.4億円 4.6億円
投資CF -3.2億円 -0.5億円
財務CF 1.9億円 -4.7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は55.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「ICTで世の中をもっと便利に」をミッション(企業理念)として掲げています。インフラテック事業を通じて、インフラ業界のデジタル化遅れや多重下請け構造といった課題を解決し、より快適な社会の実現に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は「Update The World 変化し、変化させ、必要不可欠な会社に」をビジョンとしています。自律的でフラットな組織を構築し、ライフステージの変化に合わせた柔軟な働き方を推進することで、社員が成長し続け、顧客へ高い付加価値を提供できるプロフェッショナルの育成に努めています。

(3) 経営計画・目標


同社は、企業価値向上のための客観的な経営指標としてEBITDAを重視しています。中期経営計画(2024年6月期~2026年6月期)において、最終年度となる2026年6月期の数値目標を以下の通り掲げています。

* 売上高:96.1億円
* EBITDA:7.5億円

(4) 成長戦略と重点施策


中核事業であるモバイルエンジニアリングサービスの体制維持を図りつつ、IoTエンジニアリングサービスの圧倒的成長と、ITインフラ領域などの育成事業の立ち上げを重点施策としています。特にIoT領域では、機器設置のフロー案件から監視・保守のストック案件への拡大や、SaaS「BLAS」の外販強化を進めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「戦略的な人材活用を通じて、事業目標の達成と社員個人の成長を同時に促進する」を掲げ、人材を資本と捉えた経営を推進しています。具体的には、プロジェクトマネージャーの育成強化、ダイバーシティ経営の実践、キャリアパスの明確化などに取り組み、社員が自律的に成長できる環境整備に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 37.1歳 6.3年 5,145,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.8%
男性育児休業取得率 -%
男女賃金差異(全労働者) 73.0%
男女賃金差異(正規雇用) 78.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 52.1%


※男性育児休業取得率はHTML原文に数値の記載なし(-表記)のため、そのまま記載しています。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、正規雇用社員に占める女性比率(25.5%)、有給休暇取得率(65.5%)、テレワーク勤務利用率(89.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定取引先・業界に対する依存


同社グループは通信事業者との取引比率が高く、特にソフトバンクへの売上高依存度は24.5%(2025年6月期)となっています。通信業界の設備投資抑制や取引関係の変化が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、IoTエンジニアリングサービス等による顧客基盤の多様化を進めています。

(2) システムやサービスの品質


自社開発システム「BLAS」等の活用を強みとしていますが、外部要因によるシステム障害や欠陥が生じた場合、損害賠償や信用の失墜により業績に影響を与える可能性があります。情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の認証取得や定期的な監査を通じ、品質管理とセキュリティ強化に努めています。

(3) 人材の確保と育成


事業拡大には優秀な人材の確保と育成が不可欠です。求める人材が十分に確保できなかった場合や、人材流出が進んだ場合には、事業展開に支障をきたす可能性があります。積極的な採用活動や教育体制の強化、ダイバーシティ経営の推進により、人材力の向上に取り組んでいます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。