AIメカテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

AIメカテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場する、FPD・半導体製造装置メーカーです。インクジェット技術や高精度貼合せ技術を核に、半導体関連事業が牽引する形で業績を伸ばしています。直近の決算では、半導体パッケージ向け装置の好調により、売上高は前期比36.2%増、経常利益は同1059.9%増と大幅な増収増益を達成しました。


#記事タイトル:AIメカテック転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、AIメカテック株式会社 の有価証券報告書(第9期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. AIメカテックってどんな会社?


独自の微細塗布・貼合せ技術を強みに、液晶・有機ELディスプレイや半導体製造装置を展開する企業です。

(1) 会社概要


同社は、1990年に日立テクノエンジニアリング(現・日立製作所)の竜ヶ崎工場として操業を開始しました。2016年に日立製作所から液晶パネル等製造設備事業を新設分割して設立され、2021年に東京証券取引所市場第二部へ上場しました。2022年の市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行しています。2023年には東京応化工業から事業を承継したほか、オプトランとの合弁会社ナノリソティックスを設立するなど、事業拡大を進めています。

従業員数は連結で251名、単体で221名です。大株主構成は、事業パートナーである化学メーカーの東京応化工業と、光学薄膜装置メーカーのオプトランが同率で筆頭株主となっており、両社との資本業務提携関係が伺えます。第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
東京応化工業 17.79%
オプトラン 17.79%
日本カストディ銀行(信託口) 6.05%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表取締役執行役員社長は阿部猪佐雄氏です。社外取締役比率は27.3%です。

氏名 役職 主な経歴
阿部 猪佐雄 代表取締役執行役員社長 1978年日立産機エンジニアリング入社。日立製作所産業・流通ビジネスユニットメカトロニクス本部長などを経て、2016年7月より現職。
石田 茂 取締役執行役員常務 1984年日立産機エンジニアリング入社。日立製作所産業・流通ビジネスユニットメカトロニクス本部副本部長などを経て、2018年7月より現職。
松浦 康晴 取締役執行役員経営サポート本部長 1992年日立テクノエンジニアリング入社。日立製作所産業・流通財務部担当部長などを経て、2024年8月より現職。
浜﨑 藤人 取締役執行役員営業本部長 1987年日立家電入社。日立製作所産業・流通ビジネスユニットメカトロニクス本部電子システム営業部部長などを経て、2024年9月より現職。
海津 拓哉 取締役執行役員製品・LCS本部長 1990年日立テクノエンジニアリング入社。日立製作所産業プラント事業部メカトロニクス本部竜ヶ崎事業所FPD設計部主管技師などを経て、2024年9月より現職。


社外取締役は、檜山英男(元SMBCインターナショナルオペレーションズ社長)、宮岡一夫(元住友三井オートサービス取締役)、本間裕一(東京応化工業執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「IJPソリューション事業」「半導体関連事業」「LCD事業」の3つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) IJPソリューション事業


有機ELディスプレイやマイクロディスプレイ(OLEDoS、μLEDoS)などの次世代ディスプレイ製造に向けたプロセスと設備を提案しています。また、ナノインプリント技術を活用したスマートグラス等の次世代コミュニケーションツール向け設備や、フレキシブルデバイス向けフィルム応用設備も手掛けています。主な顧客はディスプレイパネルメーカーなどです。

収益は、顧客への製造装置の販売および関連サービスの提供から得ています。運営は主に同社(AIメカテック)が行っており、関連会社のナノリソティックスとも連携して光学製品・精密加工装置の開発を進めています。

(2) 半導体関連事業


半導体パッケージ製造過程で用いられるはんだボールマウンタ装置やウエハハンドリングシステム(ボンダー・デボンダー)、および回路形成過程で用いられるUV装置やエッチング・アッシング装置等の開発・製造・販売を行っています。高機能化・小型化が進む半導体関連メーカーが主な顧客です。

収益は、装置の販売およびアフターサービスから得ています。運営は主に同社(AIメカテック)が行っており、連結子会社の南京新創機電科技有限公司が中国市場での部品販売やサポート支援を行っています。

(3) LCD事業


テレビやスマートフォン等の液晶ディスプレイパネル生産工程で使用されるシール塗布装置、液晶滴下装置、真空貼合せ装置等の開発・製造・販売を行っています。これらの装置は、高速・高精度な塗布や真空技術を応用し、パネル生産の効率化に貢献しています。

収益は、装置本体の販売に加え、部品販売や既存設備の改造・リプレース等のアフターサービスから得ています。運営は主に同社(AIメカテック)が行っており、連結子会社の南京新創機電科技有限公司が部品販売等を支援しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は第6期に一時減少しましたが、その後は増加傾向にあり、特に直近の第9期では200億円を突破しました。利益面では、第8期に利益率が低下したものの、第9期には経常利益率が約9.0%まで回復し、利益額も大幅に伸長しています。

項目 2021年6月期 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上高 161億円 147億円 155億円 154億円 210億円
経常利益 9億円 7億円 5億円 2億円 19億円
利益率(%) 5.7% 4.6% 3.0% 1.1% 9.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 7億円 5億円 12億円 1億円 3億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益および営業利益が大きく伸長しました。売上総利益率は前期の21.0%から25.8%へと改善しています。営業利益は前期比で約8倍となり、営業利益率も10.0%へと大幅に向上しました。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 154億円 210億円
売上総利益 32億円 54億円
売上総利益率(%) 21.0% 25.8%
営業利益 3億円 21億円
営業利益率(%) 1.7% 10.0%


販売費及び一般管理費のうち、販売促進費が10億円(構成比31%)、荷造運搬費が6億円(同17%)を占めています。売上原価においては、製品構成の変化や操業度の向上などが影響していると考えられます。

(3) セグメント収益


半導体関連事業が売上・利益ともに大幅に拡大し、全社業績を牽引しました。一方、IJPソリューション事業は売上が減少し損失を計上しています。LCD事業は売上は減少したものの、黒字を確保しました。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期) 利益(2024年6月期) 利益(2025年6月期) 利益率
IJPソリューション事業 19億円 6億円 2億円 -2億円 -38.8%
半導体関連事業 114億円 195億円 16億円 38億円 19.3%
LCD事業 20億円 9億円 -1億円 1億円 15.5%
調整額 - - -14億円 -16億円 -
連結(合計) 154億円 210億円 3億円 21億円 10.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業活動で得た資金と借入金を活用して、設備投資や条件付取得対価の支払いなどの投資活動を積極的に行っている「積極型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF -11億円 15億円
投資CF -9億円 -25億円
財務CF 21億円 18億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.1%で市場平均を下回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は39.7%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「先進・革新技術で未来を創造(Create the Next by Advanced and Innovative technologies)」を企業理念として掲げています。この理念のもと、先進・革新技術により、人々がより便利に、より豊かに生活する社会の実現に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、「お客様の要望を迅速に具体化し、他に先んじて高品質な製品を提供する、不断のモノづくり力強化」を経営方針の一つとしています。また、きめ細かなLCS(ライフサイクルサポート)活動による顧客満足度の向上を重視し、従業員がプライドを持って能動的に働き、自らの成長と仲間の成長を実感できる会社を目指しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、中期経営計画(2026年6月期から2028年6月期)において、「グローバルニッチトップのポジション確立」をテーマに掲げています。2028年6月期(最終年度)の定量目標として以下の数値を設定しています。

* 売上高:300億円
* 営業利益:38億円
* 営業利益率:12%
* ROE:17%

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、LCD事業での安定的収益確保を図りつつ、IJPソリューション事業と半導体関連事業へ経営資源を集中し、持続的成長を目指しています。半導体分野では、AI用先端半導体パッケージ向け装置やパネルレベルパッケージング(PLP)向け装置の開発・拡販に注力します。また、顧客ニーズに最適な材料・装置・プロセスを一体で提供する「A-PI戦略」を推進し、新たな市場創出や差別化を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、グローバルなニッチ分野におけるトップ企業を目指し、高度な専門性と技術を持つ人材の育成に注力しています。性別や年齢を問わず公平な挑戦と活躍の機会を提供することを方針としており、社会・顧客の動向に敏感で、国や場所を超えて課題にチャレンジし、高い誠実さを持って行動できる人材を求めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 46.2歳 18.0年 6,939,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.7%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 60.2%
男女賃金差異(正規) 62.5%
男女賃金差異(非正規) 63.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、自然エネルギーによる電力利用率(21%)、従業員満足度(58.4%)、知財報奨率(60%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済動向による影響


同社グループの製品は企業向け生産設備であり、ディスプレイ・半導体市場の需給動向や顧客の設備投資計画の影響を強く受けます。市場環境の変化により顧客の投資計画が凍結・変更された場合、受注キャンセルや売上時期の変動が生じ、業績に影響を与える可能性があります。

(2) 海外販売に関するリスク


売上高の大半が海外向けであり、特に中国、台湾、韓国に集中しています。これらの地域における政治・経済状況の急変、法規制の変更、自然災害や社会的混乱などが発生した場合、同社グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 技術革新の動向による影響


属する業界は技術革新が急速であり、市場ニーズの変化への迅速な対応が求められます。技術変化に対応できず製品が陳腐化した場合、競争力を失う恐れがあります。これに対し、同社は技術動向の調査や研究開発に努めています。

(4) 価格競争による影響


主要顧客であるディスプレイ・半導体市場は価格変動が激しく、厳しい価格競争に晒される可能性があります。原価低減や高付加価値化に取り組んでいますが、過度な価格競争が発生した場合は、業績や財務状況に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。