レナサイエンス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

レナサイエンス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所グロース市場に上場する研究開発型企業です。医薬品、医療機器、AIソリューション等の研究開発を行っています。直近の業績は、ライセンス収入等の減少により事業収益は減収、営業損失は縮小しました。一方で、特別利益の計上等により当期純利益は黒字に転換しています。


※本記事は、株式会社レナサイエンスの有価証券報告書(第26期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. レナサイエンスってどんな会社?


医薬品や医療機器、AIプログラム等の多様なモダリティで医療課題の解決を目指す研究開発型ベンチャーです。

(1) 会社概要


2000年2月に設立され、2021年9月に東京証券取引所マザーズ(現グロース)市場に上場しました。2022年1月には東北大学に、2023年4月には広島大学にオープンイノベーションラボを開設し、産学連携を推進しています。2022年12月にはディスポーザブル極細内視鏡の薬事承認を取得しました。

2025年3月31日時点で、連結子会社を持たず単体での従業員数は3名です。筆頭株主は特定有価証券信託受託者(実質保有者は創業者の宮田敏男氏及びその親族)で、第2位は取締役会長の宮田敏男氏、第3位はベンチャーキャピタルの投資事業有限責任組合となっています。

氏名 持株比率
特定有価証券信託受託者 SMBC信託銀行 34.30%
宮田 敏男 11.57%
大和日台バイオベンチャー投資事業有限責任組合 5.13%

(2) 経営陣


同社の役員は男性4名、女性1名の計5名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は古田圭佑氏です。社外取締役比率は60.0%です。

氏名 役職 主な経歴
宮田 敏男 取締役会長 東海大学医学部教授等を経て、2007年より東北大学大学院医学系研究科教授。2020年4月より現職。
古田 圭佑 代表取締役社長 三井住友銀行、SMBC日興証券を経て、2024年3月同社入社。2024年6月より現職。


社外取締役は、能城弘昭(元日本政策投資銀行法務・コンプライアンス部長)、西山泰倫(元三井化学執行役員)、高山和江(元林原研究員・広島大学特命教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「医薬品、医療機器などの開発・販売等」および「その他」事業を展開しています。

(1) 医薬品


老化関連疾患や女性・小児疾患等を対象とした医薬品の研究開発を行っています。主なパイプラインには、慢性骨髄性白血病や悪性黒色腫等を対象としたPAI-1阻害薬(RS5614)や、更年期障害を対象としたピリドキサミン(RS8001)などがあります。

製薬企業等へ開発権や販売権をライセンスアウトすることで、契約一時金、マイルストーン収入、ロイヤリティ収入等を得ています。また、共同研究費を得ることもあります。運営は同社が行っています。

(2) 医療機器


医療現場のニーズに基づき、使い捨ての極細内視鏡(RS9001)などの医療機器を開発しています。腹膜透析患者の腹腔内を非侵襲的に観察する内視鏡などで、2022年に薬事承認を取得しました。

医療機器メーカー等へのライセンスアウトによる契約一時金やマイルストーン収入、製品上市後のロイヤリティ収入等が収益源となります。運営は同社が行っています。

(3) プログラム医療機器(AIソリューション)


AIを活用した診断や治療支援システムの開発を行っています。呼吸機能検査診断、維持血液透析医療支援、糖尿病治療支援などのパイプラインがあり、大学やITベンダーと連携して開発を進めています。

共同開発パートナーや導出先企業からの契約一時金やマイルストーン収入、事業化後のロイヤリティ収入等が収益となります。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの業績において、事業収益はライセンス契約や共同研究の状況により変動しています。利益面では研究開発費の先行投資により損失計上が続いていましたが、2025年3月期は特別利益の計上等により当期利益が黒字化しました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
事業収益 2.1億円 1.4億円 1.0億円 1.9億円 1.3億円
経常利益 -0.9億円 -2.4億円 -3.3億円 -2.5億円 -1.8億円
利益率(%) - - - - 6.8%
当期利益(親会社所有者帰属) -1.0億円 -2.5億円 -3.4億円 -2.6億円 1.1億円

(2) 損益計算書


直近2期間において、事業収益は減少しました。一方で、コスト削減効果により営業損失は縮小しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1.9億円 1.3億円
売上総利益 1.7億円 1.3億円
売上総利益率(%) 85.3% 97.2%
営業利益 -2.5億円 -1.8億円
営業利益率(%) -130.0% -134.8%


事業費用(販売費及び一般管理費含む)のうち、研究開発費が1.3億円(構成比43.2%)、役員報酬が0.5億円(同15.8%)を占めています。売上原価は375万円と少額です。

(3) セグメント収益


同社グループは、「医薬品、医療機器などの開発・販売等」の単一セグメントであり、サービスごとの収益は開示していません。

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業が低迷し、事業の見直しが迫られる状況にある「事業検討型」です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -2.3億円 -1.8億円
投資CF -0.0億円 3.8億円
財務CF 0.5億円 -0.5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は91.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


医療現場の課題を解決するための多様なモダリティ(医薬品、医療機器、AIを活用したプログラム医療機器)を医療現場で研究開発し、医療イノベーションの創出に貢献することで、ヒトが心身ともに生涯にわたって健康を享受できるための新しい医療を創造することを掲げています。

(2) 企業文化


基礎研究から臨床試験まで広く研究を実施している医師(physician-scientist)との共同研究を重視しています。また、外部機関のリソースを活用し、オープンイノベーションを推進することで、効率的な開発を実践する文化があります。

(3) 経営計画・目標


研究開発成果を実用化企業に導出して得る一時金、マイルストーン及びロイヤリティ収入を主たる収益源としています。そのための経営指標として、臨床段階にある開発パイプライン数、契約締結パイプライン数、医師主導臨床試験数を重視し、継続的に少なくとも年間5件程度の治験等を医師主導で実施することを目標としています。

(4) 成長戦略と重点施策


多様なモダリティ(医薬品、医療機器、AI)の開発と、アカデミアや医療機関とのネットワークを活用した効率的な研究開発を推進します。特に、PAI-1阻害薬のがん・呼吸器疾患領域での開発や、AIを活用したプログラム医療機器の開発加速、オープンイノベーションラボの活用に注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


外部機関とのアライアンスをもとに多くのバリューチェーンを構築するため、自社の人員は少数精鋭とする方針です。年齢や性別に関わらず、事業拡大に貢献できる意欲溢れる優秀な人材を積極的に採用し、オープンイノベーション拠点への参画を通じて育成を図ります。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 33.3歳 0.6年 4,464,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は常時雇用する労働者が300人以下のため、有報には本稿の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 医薬品、医療機器及びプログラム医療機器開発の事業全般に係るリスク


研究の初期段階から製造販売に至るまでには長期間と多額の資金を要し、規制当局からの承認が必要です。競合も多く、研究開発が成功し収益化に至る保証はありません。ライセンス契約の締結やマイルストーン達成が想定通りに進まない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 製造並びに安定供給に関するリスク


製造を外部委託しているため、委託先において技術的・規制上の問題や自然災害等により操業停止などが起こった場合、事業に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、製造委託候補施設を複数確保するよう努めています。

(3) 為替変動リスク


海外企業とのライセンス契約等により、主に外貨建での決済が行われていますが、特段の為替リスクヘッジは行っていません。そのため、想定以上に為替相場が変動した場合には、業績が影響を受ける可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。