※本記事は、株式会社レナサイエンスの有価証券報告書(第27期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. レナサイエンスってどんな会社?
同社は、大学等の研究機関で着想されたシーズを基に多様な医療ソリューションを開発しています。
■(1) 会社概要
レナサイエンスは、2000年に大学発の創薬ベンチャーとして設立されました。2005年に主力となるPAI-1阻害薬の特許を出願し、基礎研究から臨床開発までを一気通貫で推進しています。2021年には東京証券取引所マザーズ市場へ上場を果たし、2024年には本社を宮城県仙台市へ移転しました。
同社の従業員数は単体で3名となっています。筆頭株主は資産管理業務を行うSMBC信託銀行であり、第2位は代表取締役会長兼社長で創業者である宮田敏男氏、第3位は金融業を営む上田八木短資となっています。外部機関と連携し、少数の専門人材で効率的に研究開発を推進する体制を構築しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 特定有価証券信託受託者 SMBC信託銀行 | 31.65% |
| 宮田敏男 | 10.68% |
| 上田八木短資 | 2.18% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は17.0%です。代表取締役会長兼社長は宮田敏男氏が務めています。取締役6名のうち4名が社外取締役であり、社外取締役比率は66.7%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 宮田敏男 | 取締役会長兼社長 | 東海大学総合医学研究所所長、東北大学大学院医学系研究科教授等を経て、2020年より同社取締役会長。2025年より現職。 |
| 鎌田光明 | 取締役副社長 | 厚生省入省後、厚生労働省医政局経済課長や医薬・生活衛生局長等を歴任。2025年より現職。 |
社外取締役は、能城弘昭(元日本政策投資銀行法務・コンプライアンス部長)、高山和江(日本医療研究開発機構プログラムオフィサー)、伊藤彰彦(元東海旅客鉄道専務執行役員)、北浦聡(元七十七キャピタル取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「医薬品等の開発・販売等」事業を展開しています。
■医薬品・医療機器・AIプログラム医療機器開発事業
同社は、医療現場の課題を解決するため、PAI-1阻害薬などの医薬品、腹膜透析用の極細内視鏡といった医療機器、疾患の診断や治療を支援するAIを活用したプログラム医療機器の研究開発を行っています。外部の公的研究機関や医療機関と連携し、基礎研究から臨床開発(医師主導治験)までを一気通貫で推進しています。
収益は、開発品の実用化企業へのライセンスアウトによるアップフロント収入(契約一時金)や、開発の進捗に応じたマイルストーン収入が柱となっています。また、製品の上市後には販売額に応じたロイヤリティ収入を得るビジネスモデルです。事業の運営は主にレナサイエンス単体で行われています。
3. 業績・財務状況
同社の単体業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の利益推移を見ると、研究開発費の先行により恒常的に経常損失を計上する事業フェーズにあります。2025年3月期には債務免除益等の特別利益計上により一時的に最終黒字に転換したものの、2026年3月期は再び最終赤字となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 経常利益 | -2.4億円 | -3.3億円 | -2.5億円 | -1.8億円 | -3.0億円 |
| 当期利益 | -2.5億円 | -3.4億円 | -2.6億円 | 1.1億円 | -3.0億円 |
■(2) 損益計算書
収益源であるマイルストーン収入や契約一時金の獲得状況に依存するため、利益水準は年度によって大きく変動します。直近では一時的な収益の減少と研究開発費の増加が重なり、営業赤字幅が拡大する結果となりました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上総利益 | 1.3億円 | 0.6億円 |
| 営業利益 | -1.8億円 | -3.6億円 |
事業費用(販売費及び一般管理費相当)のうち、研究開発費が2.0億円(構成比48%)、業務委託費が0.8億円(同18%)、役員報酬が0.5億円(同12%)を占めています。また、事業原価については全額が労務費となっています。
■(3) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業CFがマイナス、投資CFが概ねゼロ、財務CFがプラスとなっており、先行投資による赤字を株式発行等の資金調達でカバーしながら研究開発を継続する「勝負型」の局面と言えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -1.8億円 | -2.9億円 |
| 投資CF | 3.8億円 | 0.0億円 |
| 財務CF | -0.5億円 | 18.9億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は当期純損失のため算出されていませんが、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は94.5%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「ヒトが心身ともに生涯にわたって健康を享受できるための新しい医療を創造する」ことを経営理念として掲げています。医療現場の課題を解決するため、医薬品や医療機器、AIを活用したプログラム医療機器など、多様なモダリティ(治療様式)を医療現場で研究開発し、医療イノベーションの創出に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「企業の最大の資源は人」という考えのもと、既存の価値観にとらわれず自ら考え行動できる人材の育成を企業の成長の礎と位置付けています。具体的には、「長期的な視野での行動」「多様性の尊重と相互成長」「立場にとらわれない積極的な意見発信」「迅速な情報共有」を重視する価値観を持っています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、研究開発の成果を実用化企業に導出して収益を得るビジネスモデルであるため、特定の売上高や利益目標ではなく、事業進捗を測る以下の経営指標を重視しています。
* 臨床段階(特に第II相試験以降)にある開発パイプライン数
* ライセンスやオプション契約等の契約締結パイプライン数
* 公的資金を活用した自己負担研究開発費の適正な管理
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、これまでの重点領域である「がん」分野での薬事承認と上市を目指すとともに、国際的な市場成長が見込まれる「抗加齢・長寿分野」の事業化に注力しています。特に、老化細胞を除去するセノリティクス医薬品(内服薬)の開発を推進し、多様なモダリティを組み合わせることでリスクを分散させ、早期の黒字化と将来の収益拡大を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、事業拡大と競争力強化のため、年齢や性別に関わらず、専門性と意欲に溢れる優秀な人材を積極的に採用・評価する方針です。特にビジネスデベロップメントや臨床開発の専門人材の確保を重視しており、リモートワークやフレックスタイム制を導入することで、効率的で多様な働き方ができる環境を整備しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 34.3歳 | 1.6年 | 4,984,000円 |
※平均年間給与は基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は常時雇用する労働者が300人以下等の理由により公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 開発フェーズにおける不確実性と収益リスク
同社の事業は、医薬品やプログラム医療機器の候補を実用化企業へ導出し、マイルストーン収入等を得るモデルです。しかし、臨床試験で期待される有効性や安全性が示されない場合や、規制当局の承認が得られない場合、開発の遅延や中止が生じるリスクがあります。これにより、想定した収入が得られず、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 競合品の先行による優位性低下リスク
同社が開発を進める医療領域は市場の拡大が見込まれており、国内外の多くの企業が参入しています。競合他社による同種製品の開発が先行した場合や、より優れた製品が上市された場合、同社の開発品の事業性が大きく毀損される可能性があります。これにより、ライセンス契約の解消や想定ロイヤリティの減少が生じるリスクがあります。
■(3) 開発人材および特定の経営層への依存リスク
同社の研究開発は、外部機関への委託や共同研究を主体としており、社内は少数の専門人材に強く依存しています。特に、創業メンバーであり代表取締役である宮田敏男氏への経営や技術的な依存度が極めて高く、同氏の職務執行が困難になった場合や、優秀な人材が流出した場合には、事業活動の継続に大きな支障を来すリスクがあります。



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