エアークローゼット 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エアークローゼット 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東証グロース市場に上場し、プロのスタイリストが選定した洋服をレンタルするパーソナルスタイリング事業を主軸としています。直近の業績は、会員数の順調な増加により売上高が前期比で伸長し、損益面でも営業利益・経常利益・当期純利益のすべてにおいて黒字化を達成しています。


※本記事は、株式会社エアークローゼット の有価証券報告書(第11期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. エアークローゼットってどんな会社?


プロのスタイリストが選定した洋服を自宅に届ける月額制ファッションレンタルサービス「airCloset」を運営する企業です。

(1) 会社概要


2014年に設立され、翌2015年にファッションレンタルサービス「airCloset」を開始しました。2020年にはメーカー公認のレンタルモール「airCloset Mall」をリリースし、事業領域を拡大しています。2022年に東京証券取引所グロース市場へ上場を果たし、2024年にはベトナムにシステム開発を行う子会社を設立しました。

2025年6月末時点の従業員数は単体で79名です。筆頭株主は創業者で社長の天沼聰氏、第2位はシンガポールの投資会社であるMonoful Pte. Ltd.、第3位は事業提携先でもある寺田倉庫となっています。

氏名 持株比率
天沼 聰 16.78%
Monoful Pte. Ltd. 13.40%
寺田倉庫 10.24%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長兼CEOは天沼聰氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
天沼 聰 代表取締役社長兼CEO アビームコンサルティング、楽天を経て、2014年7月に同社代表取締役社長兼CEOに就任(現任)。日本パーソナルスタイリング振興協会理事も務める。
前川 祐介 取締役副社長 アビームコンサルティング、楽天を経て、2014年7月に同社取締役副社長に就任(現任)。日本パーソナルスタイリング振興協会事務局長も務める。
小谷 翔一 取締役 NTT西日本、アビームコンサルティング等を経て、2014年7月に同社取締役就任(現任)。BAKERU取締役、YOUR MEAL社外取締役も務める。


社外取締役は、武市智行(マーベラス元社長)、月森正憲(寺田倉庫執行役員)、榊原健太郎(サムライインキュベート代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「パーソナルスタイリング事業」のみの単一セグメントで事業を展開しています。

(1) airCloset事業


国内在住の女性をターゲットに、プロのスタイリストが顧客の好みに合わせて選定した洋服を配送・レンタルするサービス「airCloset」を提供しています。顧客は届いた洋服を日常で楽しみ、返却すると次の洋服が届くサイクルを利用できます。気に入ったアイテムは購入も可能です。

主な収益源は、会員から支払われる月額の会費収入です。これに加え、レンタルアイテムの購入代金、オプション料金、および返却されたアイテムを販売する「エコセール」などの販売収入があります。運営は主に同社が行っています。

(2) airCloset Mall事業


生活家電や寝具などのライフスタイル商材を、購入前に自宅で試すことができるメーカー公認の月額制レンタルモールを提供しています。顧客は商品をレンタルし、気に入れば購入を検討できる仕組みです。

メーカーから受領するプラットフォーム利用料と、顧客からのレンタル売上および販売売上の一部(レベニューシェア)が収益となります。一部商品は同社が直接仕入れて提供しており、その場合はレンタルおよび販売売上が収益となります。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は順調な拡大傾向にあります。利益面では、過去の赤字基調から脱却し、直近では経常利益および当期純利益ともに黒字化を達成しました。

項目 2021年6月期 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上高 29億円 34億円 37億円 42億円 50億円
経常利益 0.3億円 -0.7億円 -2.3億円 -0.5億円 0.9億円
利益率(%) 1.0% -2.0% -6.1% -1.2% 1.8%
当期利益(親会社所有者帰属) -3.4億円 -3.8億円 -3.5億円 -0.5億円 0.2億円

(2) 損益計算書


直近2期間の業績を見ると、売上高の伸長に伴い売上総利益が増加し、営業利益も黒字に転換しています。収益性が着実に改善していることが読み取れます。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 42億円 50億円
売上総利益 20億円 24億円
売上総利益率(%) 47.4% 48.0%
営業利益 -0.4億円 1.0億円
営業利益率(%) -0.8% 2.1%


販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が8億円(構成比33%)、支払手数料が4億円(同19%)を占めています。売上原価においては、倉庫検品料が13億円(構成比49%)、その他が5億円(同21%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社はパーソナルスタイリング事業の単一セグメントであるため、セグメント別の詳細な増減分析はありませんが、全社売上高は会員数の増加により前期比で伸長しています。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期)
パーソナルスタイリング事業 42億円 50億円
連結(合計) 42億円 50億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF 8.0億円 10.6億円
投資CF -7.8億円 -13.9億円
財務CF 1.8億円 -0.3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は19.6%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「“ワクワク”が空気のようにあたりまえになる世界へ」をビジョンに掲げ、「発想とITで人々の日常に新しいワクワクを創造する」というミッションのもと事業を展開しています。生活に溶け込み、長く愛されるサービスを作ることで世界に笑顔を生み出すことを目指しています。また、シェアリングの概念を通じて持続可能な経済社会の創造に貢献し、パーソナライズ市場におけるリーディングカンパニーとしての地位確立を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、すべての人が平等に持つ「時間」の使い方を最適化し、時間価値を向上させることを重視しています。単なる利便性を超えたユーザー体験(UX)を追求し、「感動」と「出会い」を届けることを価値観としています。また、サーキュラー・エコノミーに立脚し、衣服廃棄ゼロの実現を目指すなど、サステナブルな消費行動を拡大する文化を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社は、中期的に売上高1,000億円を実現するという目標を掲げており、そのマイルストーンとして、まずは早期の売上高100億円突破を目指しています。事業成長の重要な指標(KPI)として、「月額会員数」と「一人当たり限界利益」を設定しており、これらの向上を通じて事業基盤の拡大を図っています。

* 売上高100億円(早期達成目標)
* 売上高1,000億円(中期的目標)

(4) 成長戦略と重点施策


売上高100億円の達成に向け、会員制サブスクリプションの強化、都度レンタル・物品販売の拡大、および法人向けサービスの展開の3本柱に注力しています。特に主力事業では、広告依存からの脱却と獲得手段の多様化を進め、法人向けでは自社開発の物流プラットフォーム「AC-PORT」の外販を推進します。また、メンズ向けサービスやアジア展開も視野に入れています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


今後の事業拡大に向け、優秀な人材の確保と定着、および組織力の強化を重要課題としています。適正な人事評価を行い、従業員のモチベーション向上に努めるほか、全社会議や合宿などを通じてコミュニケーションを促進しています。また、開発体制の強化のためベトナムに子会社を設立するなど、人材の教育・育成を進めていく方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均(629万円)をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 32.0歳 3.8年 5,708,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率(23%)、男性育休取得率(50%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 競合優位性について


大手企業の参入等により競争が激化する可能性がありますが、同社は独自の物流プラットフォームやスタイリングのノウハウ、データの蓄積等により高い参入障壁を築いています。しかし、新たな付加価値サービスの登場等により競争環境が変化した場合、影響を受ける可能性があります。

(2) 物流機能について


ユーザー増加に伴う在庫や作業スペースの確保が遅れた場合、事業に影響が出る可能性があります。また、自然災害等により物流拠点が被害を受けた場合もリスクとなります。これに対し、同社はクリーニング工場の分散化や保険の付保、オペレーションの強化等によりリスク軽減を図っています。

(3) 在庫リスクについて


同社の主力サービスでは、自社で商品を仕入れてレンタル・販売を行っています。市場の流行や顧客の嗜好の変化により、商品の需要が想定と大きく異なった場合、レンタル用資産の減損処理が必要となり、業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。