※本記事は、株式会社Arent の有価証券報告書(2025年6月期、2024年7月1日 ~ 2025年6月30日、2025年9月26日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。
1. 企業概要:どんな会社?
同社グループは、建設業界およびプラントエンジニアリング業界の大手企業向けに、DX推進のためのコンサルティングとシステム開発を提供しています。属人化された高度な暗黙知を解き明かし、ビジネス化することで業界の課題解決を目指しています。
単体従業員数は131名、連結従業員数は247名です。セグメントはプロダクト共創開発、共創プロダクト販売、自社プロダクトの3つです。
主な国内グループ会社は、Arent AI(ソフトウエアの開発・販売)、PlantStream(同)、構造ソフト(同)などです。
2025年3月には株式会社PlantStreamを、2025年1月には株式会社構造ソフトを完全子会社化し、プロダクトラインナップの拡充を図っています。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
株式会社Arentは、建設業界のDXを推進する企業として、専門性の高いエンジニア人材を重視しています。柔軟な働き方を可能にする環境整備に力を入れており、従業員が能力を最大限に発揮できるような体制づくりを目指していることがうかがえます。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
同社は、平均年齢が30代後半であり、比較的若い世代が中心となって活躍している傾向が見られます。平均勤続年数は短めですが、これは事業の成長フェーズや人材の流動性を示唆している可能性があります。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 7,651,000円 |
| 平均勤続年数 | 1.9年 |
| 平均年齢 | 39.2歳 |
| 単体従業員数 | 131人 |
| 連結従業員数 | 247人 |
| 単体のグループ内比率 | 53.0% |
退職給付制度に関する記載はありません。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
同社グループは、高い技術力と深い業界知識を持つエンジニアを中心とした人的資本の維持向上を、経営戦略における最重要課題と位置付けています。この方針に基づき、多様な人材が能力を発揮できる環境づくりに注力しています。
具体的には、フルリモートワークとフレックスタイム制を導入し、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方を推進しています。これにより、多様で優秀な人材の確保を目指しています。
また、従業員の安全と健康を重視し、ハラスメントや心身の健康に関する相談窓口を設置しています。定期的なハラスメント防止研修も実施しており、安心して働ける職場環境の整備に努めています。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
提出会社単体の法定開示データは開示されていません。
多様性・登用
外国籍従業員の割合は同社グループの人材の多様性を示す指標の一つとして記載されていますが、特定の数値にとらわれず人材を確保する観点から、目標値は設けられていません。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 外国籍従業員の割合 | 6% |
人材育成・エンゲージメント
エンジニアのリモートワーク率は単体のデータです。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| エンジニアのリモートワーク率 | 100% |
有報に開示される平均年収は全社平均です。職種・年次・職位ごとの実際の給与水準は、社員・OBOGの給与明細データで確認できます。
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
Arentは、建設業界およびプラントエンジニアリング業界の大手企業に対し、DX(デジタルトランスフォーメーション)による業務効率化と生産性向上を支援する企業グループです。コンサルティング、システム開発、そして自社開発やM&Aによって拡充したプロダクトの販売を通じて収益を上げています。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
同社グループは、「暗黙知を民主化する」というミッションのもと、属人化された高度な知識をソフトウェアとして形にし、建設業界のニッチな課題解決を目指しています。クライアント企業と協同でBIM(Building Information Modeling)化やSaaS(Software as a Service)化されたシステムを開発し、旧来の非効率なシステムを置き換えることで、業界全体の業務効率化・生産性向上を実現しています。
同社グループの事業は、主に以下の3つのセグメントで構成されています。
プロダクト共創開発
このセグメントは、同社グループの主要事業であり、建設業界の大手企業などに対し、DX支援のためのコンサルティングとシステム開発を行っています。主に準委任契約に基づき、コンサルティングから本開発、事業化後の継続開発まで、長期にわたりクライアント企業と協同するビジネスモデルです。
収益は、コンサルティングやシステム開発の対価として得ています。運営は、Arent、Arent AIが行っています。
共創プロダクト販売
このセグメントでは、プロダクト共創開発の成果を商品化し、外部に販売しています。具体的には、プラント設計における配管作業を自動的に行うソフトウェア「PlantStream®」のライセンス販売を通じて、利用期間に応じた継続的な収益を得ています。
収益は、ソフトウェアのライセンス販売から得ています。運営は、PlantStreamが行っています。
自社プロダクト
このセグメントは、自社開発やM&Aによって拡充したソフトウェアのライセンス販売などを行い、継続的な収益獲得を目指す事業です。米国のAutodesk社が提供するBIMツール「Revit」のアドインである「LightningBIM 自動配筋」や「Lightning BIM ファミリ管理」といった自社開発プロダクトのほか、M&Aにより子会社化した構造ソフトが展開する構造計算および工程管理ソフト、PlantStreamが展開するプラント設計自動化ソフトなどを提供しています。
収益は、ソフトウェアのライセンス販売から得ています。運営は、Arent、PlantStream、構造ソフトが行っています。
同社グループの売上高は、当連結会計年度において高砂熱学工業株式会社が30.8%、株式会社PlantStreamが17.7%を占めており、特定の顧客への収益集中が見られます。また、本邦の外部顧客への売上高が連結損益計算書の売上高の90%を超えるため、事業活動は主に国内で行われています。
| セグメント | 売上高(2024年6月期) | 売上高(2025年6月期) |
|---|---|---|
| プロダクト共創開発 | 22.0億円 | 25.0億円 |
| 自社プロダクト | 24百万円 | 3.4億円 |
| 共創プロダクト販売 | 2.3億円 | 2.7億円 |
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
同社グループの業績は、過去5年間で売上高が大きく増加傾向にあります。売上高は第9期(2021年6月期)の7.2億円から、当期(2025年6月期)には40.3億円へと成長しました。営業利益も同様に増加傾向にあり、当期は16.9億円となっています。
一方で、経常利益は前期(2024年6月期)の9.6億円から当期は8.7億円に、親会社株主に帰属する当期純利益も前期の6.6億円から当期は6.3億円に減少しました。これは主に、持分法による投資損失の増加や、連結子会社であったPlantStreamにおけるソフトウェアの減損損失計上などが影響しています。
| 項目 | 2021年6月期 | 2022年6月期 | 2023年6月期 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 7.2億円 | 10.1億円 | 20.2億円 | 29.4億円 | 40.3億円 |
| 経常利益 | 45百万円 | 15百万円 | 4.2億円 | 9.6億円 | 8.7億円 |
| 経常利益率 | 6.3% | 1.5% | 20.6% | 32.7% | 21.5% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | △20百万円 | △48百万円 | 3.2億円 | 6.6億円 | 6.3億円 |
| 1株当たり当期純利益(円) | △4.24 | △9.42 | 57.41 | 106.16 | 100.91 |
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
同社グループの従業員1人あたりの売上高(連結)は、前期の19.2百万円から当期は16.3百万円へと減少しています。また、従業員1人あたりの営業利益(連結)も、前期の8.1百万円から当期は6.8百万円へと減少しました。
これは、事業の拡大に伴う増員や連結子会社の増加により、連結従業員数が前期の153名から当期は247名へと大きく増加した一方で、売上高や営業利益の伸びが従業員数の増加率を下回ったためと考えられます。
| 指標 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 従業員1人あたり売上高(連結) | 19.2百万円 | 16.3百万円 |
| 従業員1人あたり営業利益(連結) | 8.1百万円 | 6.8百万円 |
業績データからは見えない「この会社で実際に働くとどうか」は、社員・OBOGの口コミで確認できます。
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
Arentは、本業で得た資金を将来の成長に向けた投資に積極的に充てている状況です。これにより、事業拡大を目指すフェーズにあることが示されています。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
Arentは強固な財務基盤を築いています。自己資本比率はプライム市場の非製造業平均を大きく上回る水準で推移しており、財務の安定性を示しています。また、ROE(自己資本利益率)もプライム市場平均を上回る水準であり、効率的な経営が行われていることがうかがえます。手元資金も潤沢に確保されており、事業運営における安定性が期待できる状況です。
| 指標 | 2024年6月期(前期) | 2025年6月期(当期) |
|---|---|---|
| 純資産 | 41.3億円 | 48.0億円 |
| 自己資本比率 | 81.4% | 78.9% |
| ROE(自己資本利益率) | 17.4% | 14.2% |
| 現金及び預金 | 38.5億円 | 38.3億円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
Arentのキャッシュフローは、本業で安定した資金を生み出しつつ、将来の成長に向けた投資を積極的に行っている状況を示しています。営業活動によるキャッシュフローは、税金等調整前当期純利益の計上などによりプラスとなっています。一方で、投資活動によるキャッシュフローは、M&Aに伴う子会社株式の取得による支出や関連会社への貸付けなど、戦略的な成長投資を実行したことによりマイナスとなりました。その結果、フリーキャッシュフローはマイナスとなっています。財務活動によるキャッシュフローは、社債の償還による支出などによりマイナスです。この資金の流れは、同社グループが事業拡大フェーズにあり、将来の成長を見据えた投資を優先していることを示しており、今後の事業展開とそれに伴う雇用・給与の安定性につながる可能性があります。
| 項目 | 2024年6月期(前期) | 2025年6月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | 8.5億円 | 8.4億円 |
| 投資CF | △43百万円 | △8.4億円 |
| 財務CF | △1.7億円 | △20百万円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | 8.1億円 | △1百万円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
継続企業の前提に関する特記事項はありません。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社グループは、プラント・建設業界のIT投資動向や市況悪化、市場規模の縮小が事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。また、特定の販売先である高砂熱学工業株式会社への売上依存度が高い水準で継続しており、取引が縮小した場合には事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 人材・組織に関するリスク
同社グループは、事業の急速な成長と企業規模の拡大に伴い、優秀な人材の継続的な採用と育成が必須であると認識しています。特にエンジニア等の人材確保競争が激しく、計画通りに進まない場合や、高額な報酬を支払うことになった場合には、事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
報酬等の総額が1億円以上の役員は存在しないため、個人別の開示は行われていません。
※本記事は、有価証券報告書などの公開情報から、転職・就職活動に役立つ情報をまとめたものです。内容の充実に努めていますが、掲載時点の情報であることをご留意ください。気になる点やご指摘があればお気軽にお知らせください。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
Arentは、建設業界の深い課題をデジタルの力で解決し、業界全体の変革を目指す企業です。職人の持つ高度な知見をシステム化し、未来へとつなぐことを重視しています。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
同社グループは、「建設業界のニッチ領域の課題を解決するデジタル事業を創造し続ける企業」というミッションを掲げています。職人が持つ高度な暗黙知をシステムとして具現化し、クライアント企業の業務効率化から新事業創出へとつなぐ新たなDXの実現を目指しています。
3Dを核としたシステム開発の技術力、建設業に特化した開発実績によるナレッジ、課題発見から事業化までをハンズオンで実施する事業創出力の3つの強みを活かしています。建設業界の労働生産性低迷や就業者の高齢化といった深い課題を解決し、DX化において大きなポテンシャルを持つ業界内でユニークなポジショニングを構築していく方針です。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
同社グループは、サステナビリティに関する考え方として、建設業界の課題解決とサステナビリティ向上に取り組んでいます。「暗黙知を民主化する。」というミッションのもと、熟練工の持つ暗黙知をシステム化し、次世代へ受け継ぐことで、将来の建設業の生産体制維持に貢献しています。
人的資本の維持向上が最重要課題と認識されており、多様な人材が活躍できる社内環境整備に注力しています。具体的には、フルリモートワークやフレックスタイム制の採用により、場所や時間にとらわれない働き方を可能とする環境を整備しています。また、ハラスメント等に関する相談窓口や心とからだの相談窓口を設置し、ハラスメント防止研修を実施するなど、従業員の安全と健康を重視するカルチャーがあります。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
同社グループは、事業上の優先課題として、採用の強化と組織体制の整備を挙げています。事業規模拡大に伴い、コンサルタント、エンジニア、プログラマー、プロジェクトマネージャー等のIT人材の確保が必要不可欠であると考えています。積極的な採用活動を推進するとともに、従業員が中長期にわたって活躍しやすい環境の整備、人事制度の構築、カルチャーの推進を進めていく方針です。
また、管理体制の強化も重点テーマであり、業務運営の効率化やリスク管理のための内部管理体制の整備、マネジメント人材の拡充に取り組んでいます。社内基幹システムのリプレイスやバックオフィス業務の整備、内部監査の強化、監査役監査によるコーポレート・ガバナンスの充実も図っています。
会社が掲げる価値観と現場の実態が一致しているかどうかは、社員・OBOGの口コミが参考になります。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
Arentは、取締役会と監査役会を設置し、内部監査担当や会計監査人と連携しながら企業価値向上を目指す体制を構築しています。経営の効率化と迅速化を図りつつ、事業活動の透明性及び客観性の確保に努めています。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
Arentの株主構成を見ると、代表取締役社長である鴨林広軌氏が筆頭株主となっており、代表取締役副社長の佐海文隆氏も上位に名を連ねています。創業者が上位株主として経営を支える体制であり、安定した経営基盤がうかがえます。また、信託銀行や投資事業有限責任組合も上位株主として名を連ねています。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| 鴨林広軌 | 35.79% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 8.68% |
| 佐海文隆 | 5.44% |
| SBI4&5投資事業有限責任組合 | 4.72% |
| 中川高志 | 4.20% |
なお、レオス・キャピタルワークスは2024年12月13日時点で560,800株(9.04%)を所有している旨が大量保有報告書に記載されていますが、同社として2025年6月30日現在における実質所有株式数の確認ができないため、上記大株主の状況には含めていません。
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
Arentの役員は8名(男性8名・女性0名)で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長兼経営戦略本部長は鴨林広軌氏が務めています。社外取締役比率は20.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 鴨林 広軌 | 代表取締役社長 兼経営戦略本部長 | 2007年4月MU投資顧問(現三菱UFJアセットマネジメント)入社、2012年6月グリー(現グリーホールディングス)入社。2015年7月株式会社CFlat(現同社)取締役、2019年4月同社代表取締役社長を経て、2024年7月より現職。 |
| 佐海 文隆 | 代表取締役副社長 兼事業本部長 | 2008年4月アルモニコス入社。2012年7月株式会社CFlat(現同社)設立、代表取締役社長。2019年4月同社代表取締役副社長兼事業部長を経て、2024年7月より現職。 |
| 織田 岳志 | 常務取締役 | 2008年4月アルモニコス入社。2019年7月株式会社CFlat(現同社)取締役。2020年7月VTP(現PlantStream)代表取締役。2025年3月より同社常務取締役。 |
| 中嶋 翼 | 取締役管理本部長 | 2012年3月タイホー入社。2019年6月株式会社CFlat(現同社)入社。2020年7月VTP(現PlantStream)監査役。2021年9月同社取締役管理部長を経て、2024年7月より現職。 |
社外取締役は、幸田博人氏(京都大学経営管理大学院特別教授)です。
Arentは監査役会設置会社であり、株主総会、取締役会、監査役会、会計監査人、内部監査担当を設置しています。社外取締役1名と社外監査役3名が独立した立場から経営を監視し、客観的な意見表明を行うことでガバナンスの強化を図っています。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
Arentの役員報酬は、金銭による月額報酬で構成されています。経済情勢や会社業績、各役員の会社への貢献度などを考慮して決定され、株主総会で決議された報酬総額の範囲内で支給されています。取締役の個人別の金銭報酬額の決定は代表取締役社長に一任されており、その決定には社外取締役の意見が踏まえられています。
| 区分 | 人数 | 総額 | 1人あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 取締役(社外除く) | 4名 | 38百万円 | 9.4百万円 |
| 社外役員 | 4名 | 15百万円 | 3.7百万円 |
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