Arent 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

Arent 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース上場のArentは、建設・プラント業界向けにDXコンサルティングやシステム開発を行う企業です。暗黙知をシステム化する技術力を強みとし、大手企業との共創や自社SaaSを展開しています。2025年6月期の連結業績は、売上高40億円(前期比37.0%増)、経常利益9億円(同9.8%減)の増収減益でした。


※本記事は、株式会社Arent の有価証券報告書(第13期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. Arentってどんな会社?


建設業界のニッチな課題を解決するDX企業です。高度な数学力と業界知識で職人の暗黙知をシステム化し、業務効率化と新規事業創出を支援しています。

(1) 会社概要


同社は2012年にCFlatとして設立され、2019年にシステム開発会社を吸収合併、2020年に現商号へ変更しました。2021年にプラント設計自動化ソフト「PlantStream」をリリースし、2023年3月に東証グロース市場へ上場しました。その後、2025年1月に構造ソフト、同年3月にPlantStreamを完全子会社化するなど、M&Aによる事業拡大を進めています。

現在の連結従業員数は247名、単体では131名です。筆頭株主は創業社長の鴨林広軌氏で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は創業メンバーで副社長の佐海文隆氏となっています。

氏名 持株比率
鴨林広軌 35.79%
日本カストディ銀行(信託口) 8.68%
佐海文隆 5.44%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長兼経営戦略本部長は鴨林広軌氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
鴨林広軌 代表取締役社長兼経営戦略本部長 三菱UFJアセットマネジメント、グリーホールディングスを経て、2015年に同社取締役、ASTROTECH SOFTWARE DESGN STUDIOS代表取締役に就任。2019年より現職。
佐海文隆 代表取締役副社長兼事業本部長 アルモニコスを経て、2012年に同社(旧CFlat)を設立し代表取締役社長に就任。2019年に代表取締役副社長兼事業部長となり、2024年より現職。
織田岳志 常務取締役 アルモニコスを経て、2019年に同社取締役就任。2020年にPlantStream代表取締役となり、2025年より現職。
中嶋翼 取締役管理本部長 タイホーを経て、2019年に同社入社。2021年に取締役管理部長に就任し、PlantStream監査役、構造ソフト取締役を兼任。2024年より現職。


社外取締役は、幸田博人(元みずほ証券副社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「プロダクト共創開発」「共創プロダクト販売」「自社プロダクト」の3つの報告セグメントを展開しています。

(1) プロダクト共創開発


建設業界の大手企業等に対し、DX支援のためのコンサルティングおよびシステム開発を行っています。顧客の課題発見からPoC(概念実証)、MVP(実用最小限の製品)開発、本開発、継続開発までを長期にわたり一気通貫で支援します。

収益は、コンサルティングフィーやシステム開発の委託料として顧客から受領します。高砂熱学工業などが主要顧客であり、開発終了後も継続的な収益獲得を目指すビジネスモデルです。運営は主にArentおよびArent AIが行っています。

(2) 共創プロダクト販売


プロダクト共創開発の成果を商品化し、外部へ販売する事業です。代表的な製品として、プラント設計における配管作業を自動化するソフトウエア「PlantStream®」があります。

収益は、ソフトウエアのライセンス販売料として顧客から受領します。運営は主にPlantStreamが行っており、同社は2025年3月に完全子会社化されました。

(3) 自社プロダクト


建設業界に対し、自社開発やM&Aによって拡充したソフトウエアのライセンス販売等を行っています。BIMツール「Revit」のアドインソフト「LightningBIM」シリーズや、構造計算・工程管理ソフトなどを展開しています。

収益は、ソフトウエアの利用期間に応じたライセンス料として顧客から受領します。運営はArent、PlantStream、構造ソフトが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は順調に拡大しており、直近の2025年6月期には40億円を突破しました。経常利益も高い水準を維持していますが、2025年6月期はM&A関連費用等の影響もあり減益となりました。利益率は依然として20%を超えており、高収益体質を維持しています。

項目 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上高 10億円 20億円 29億円 40億円
経常利益 0.1億円 4.2億円 9.6億円 8.7億円
利益率(%) 1.5% 20.6% 32.7% 21.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 3.0億円 6.8億円 9.4億円 6.3億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な増加に伴い売上総利益も伸長していますが、販管費の増加により営業利益の伸び率は売上高の伸び率と同程度となっています。売上総利益率は約60%と高い水準を維持しており、付加価値の高いサービスを提供できていることがわかります。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 29億円 40億円
売上総利益 17億円 26億円
売上総利益率(%) 58.0% 63.4%
営業利益 12億円 17億円
営業利益率(%) 42.1% 42.0%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が2.3億円(構成比27%)、採用教育費が1.0億円(同12%)を占めています。売上原価においては、外注費が6.7億円(売上原価の45%)、労務費が6.9億円(同46%)を占めています。

(3) セグメント収益


「プロダクト共創開発」が売上の大半を占め、利益率も約40%と高く全社の利益を牽引しています。「共創プロダクト販売」と「自社プロダクト」は売上規模は小さいものの成長しており、特に自社プロダクトはM&A効果により売上が急拡大しました。一方で、これら2セグメントは償却費等の負担によりセグメント損失となっています。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期) 利益(2024年6月期) 利益(2025年6月期) 利益率
プロダクト共創開発 22億円 25億円 14億円 14億円 56.5%
共創プロダクト販売 2.3億円 2.7億円 -2.7億円 -2.1億円 -76.6%
自社プロダクト 0.2億円 3.4億円 -0.9億円 -0.9億円 -25.9%
調整額 -2.3億円 -2.7億円 -0.6億円 -2.5億円 -
連結(合計) 22億円 28億円 9.6億円 8.7億円 30.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は78.9%で市場平均を上回っています。

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF 8.5億円 8.4億円
投資CF -0.4億円 -8.4億円
財務CF -1.7億円 -0.2億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「暗黙知を民主化する」をミッションに掲げています。属人化しブラックボックス化した職人の高度な知識(暗黙知)を、高い数学力と深い業界知識で解き明かしシステム化することで、建設業界のニッチな課題を解決し、業務効率化から新事業の創出へとつなぐ新たな形のDXを実現することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、クライアント企業とパートナーとしての関係を構築し、課題発見からプロダクト開発、事業化までを一気通貫で支援する「共創」を重視しています。また、開発においてはアジャイル開発を採用し、クライアントとの対話を通じてIT知識と業務知識のギャップを埋めながら、実態に合ったシステムを構築する姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、事業の継続的な拡大と企業価値の向上を図るため、事業の成長性を表す「売上高成長率」と、収益力を表す「売上高営業利益率」を重要な経営指標として位置づけています。具体的な数値目標としては、建設業界におけるIT投資の市場規模の中で、将来的に10%のシェア(売上高約550億円)の獲得を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


短期(~2025年度)ではプロダクト共創開発の拡大による非連続成長を目指し、中長期(2025年度~)では共創プロダクトの拡販およびM&Aによるプロダクト拡充を実行し、継続的成長を実現する方針です。

* プロダクト共創開発の堅実な遂行とPR・ブランディングによる案件獲得
* AIブースト戦略:業務用ソフトにAI機能を組み込み高付加価値化
* プロダクト群戦略:M&Aにより中小規模のSaaSをグループ化し育成
* コンサルティング直営業戦略:業界ナレッジを持つ営業体制による拡販

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは技術力を維持しながら事業規模を拡大するため、優秀なエンジニアの採用を不可欠としています。フルリモートワーク可能な環境の整備や海外子会社の設立など、国内外を問わない積極的かつ柔軟な採用活動を展開しています。また、従業員が中長期にわたり活躍できるよう、人事制度の構築やカルチャーの推進、マネジメント人材の育成にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 39.2歳 1.9年 7,651,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は公認会計士等の規定により、常時雇用する労働者の数が300人を超えないため公表義務の対象ではなく、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンジニアのリモートワーク率(100%(単体))、外国籍従業員の割合(6%(単体))などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 業界や市場動向について


同社グループは建設業界のDXやシステム開発を主力としていますが、経済情勢の変化等により顧客企業のIT投資が大幅に縮小した場合、または市場成長が鈍化した場合には、事業及び業績に影響が及ぶ可能性があります。

(2) 技術革新への対応について


IT業界は技術変化が速く、同社も競争力維持のために対応を進めています。しかし、AI技術の急激な発達や、同社技術を上回る代替技術・競合商品の出現等により、競争力や付加価値を確保できなくなった場合、新規受注の減少や顧客離反を招く可能性があります。

(3) 特定の販売先への依存について


高砂熱学工業など特定の顧客に対する売上高比率が高い水準にあります。今後、他の顧客との取引拡大等により依存度は低下していく見込みですが、想定通りに進まず、かつ主要顧客との取引が縮小した場合には、業績に影響を与える可能性があります。

(4) 人材の採用・育成について


事業拡大には高度な技術力・企画力を持つ人材の確保が必須です。しかし、エンジニア等の獲得競争は激しく、採用や育成が計画通りに進まない場合や、コアメンバーの退職、人件費の高騰等が発生した場合には、事業展開や業績に影響が及ぶ可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。