※本記事は、AeroEdge株式会社 の有価証券報告書(第10期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. AeroEdgeってどんな会社?
航空機エンジン用チタンアルミブレードの量産加工を行うグローバルニッチ企業です。仏SAFRAN社と直接取引を行っています。
■(1) 会社概要
同社は、2015年に菊地歯車の航空宇宙部門が分社化する形で設立され、2016年に事業を承継しました。設立当初より仏SAFRAN社と航空機エンジン「LEAP」向け部品の供給契約を締結し、2016年に本社工場を竣工、初出荷を行いました。2023年7月に東証グロース市場へ上場を果たし、2024年6月には新工場(B棟)を竣工させるなど、事業基盤の拡大を続けています。
単体従業員数は132名です。筆頭株主は創業母体である菊地歯車で、第2位は大手総合商社の豊田通商、第3位は日本政策投資銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 菊地歯車 | 18.70% |
| 豊田通商 | 11.96% |
| 日本政策投資銀行 | 11.18% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長 兼 執行役員CEOは森西淳氏が務めています。社外取締役比率は約14.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 森西 淳 | 代表取締役社長 兼 執行役員CEO | 1994年菊地歯車入社、同社航空宇宙事業部長を経て、2015年AeroEdge設立に伴い代表取締役社長兼CEOに就任。2019年より現職。 |
| 水田 和裕 | 取締役 兼 執行役員COO/CTO | 2008年トヨタ自動車入社。ZMPを経て、2017年AeroEdgeに入社し執行役員CTOに就任。2020年より現職。 |
| 今西 貴士 | 取締役 兼 執行役員CFOコーポレート本部長 | 公認会計士。監査法人、ZMPを経て、2019年AeroEdgeに入社し執行役員CFOに就任。2020年より現職。 |
社外取締役は、安藤尚(元デクセリアルズ代表取締役専務執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「航空機エンジン部品加工」および「その他の加工」事業を展開しています。
■(1) 航空機エンジン部品加工
航空機エンジン「LEAP」に搭載されるチタンアルミ製低圧タービンブレードの製造・販売を行っています。LEAPエンジンは、エアバス社製A320neoファミリーやボーイング社製737MAXなどに搭載される主力エンジンです。同社は、難削材であるチタンアルミの量産加工技術を強みとしています。
収益は、航空機エンジンメーカーである仏SAFRAN社への製品販売代金です。同社はSAFRAN社と長期契約を締結しており、LEAPエンジンの生産に必要な当該部品の一定割合を供給しています。運営はAeroEdgeが行っています。
■(2) その他の加工
チタンアルミブレード加工で培った技術や積層造形(Additive Manufacturing)技術を活用し、eVTOL(電動垂直離着陸機)用部品やガスタービン用部品などの受託加工を行っています。
収益は、各メーカーからの受託加工料などです。運営はAeroEdgeが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は順調に拡大しており、特に直近数年は航空機需要の回復を受けて成長が加速しています。利益面では、増産対応や研究開発への投資負担がありつつも、高い利益率を維持しています。当期は経常利益が減少しましたが、これは為替差損やシンジケートローン手数料などの営業外費用増加によるものです。
| 項目 | 2021年6月期 | 2022年6月期 | 2023年6月期 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 8億円 | 20億円 | 29億円 | 34億円 | 36億円 |
| 経常利益 | -7.6億円 | 0.1億円 | 6億円 | 8億円 | 6億円 |
| 利益率(%) | -89.3% | 0.5% | 20.5% | 25.2% | 15.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -7.7億円 | 0.1億円 | 7億円 | 7億円 | 7億円 |
■(2) 損益計算書
前期と比較して売上高は増加しましたが、営業利益は減少しました。売上総利益率は向上しており、本業の収益性は高まっていますが、事業拡大に伴う販管費の増加が営業利益を圧迫しています。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 34億円 | 36億円 |
| 売上総利益 | 15億円 | 17億円 |
| 売上総利益率(%) | 45.1% | 46.8% |
| 営業利益 | 7億円 | 7億円 |
| 営業利益率(%) | 21.1% | 18.2% |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が2.0億円(構成比19.4%)、給料手当及び賞与が1.9億円(同18.1%)、役員報酬が1.2億円(同11.5%)を占めています。新材料開発や人員増強への投資がコスト増加の主な要因です。
■(3) セグメント収益
同社は「加工事業」の単一セグメントですが、航空機需要の回復により主力製品の販売が増加し、売上高は前期比で増加しました。
| 区分 | 売上(2024年6月期) | 売上(2025年6月期) |
|---|---|---|
| 加工事業 | 34億円 | 36億円 |
| 連結(合計) | 34億円 | 36億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業で得た現金を元手に、新工場建設などの設備投資を積極的に行っています。不足分は財務活動(借入等)で調達しており、将来の成長に向けた「積極型」の投資フェーズにあります。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 14億円 | 13億円 |
| 投資CF | -15億円 | -20億円 |
| 財務CF | 2億円 | 4億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は21.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は47.3%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「ゼロからイチを創る ~常識を疑い、組織力で難しい課題に挑戦する~」という経営理念を掲げています。日本のものづくり企業として、航空機エンジン部品などの難易度の高いものづくりや最先端技術の開発に取り組み、グローバルで成長することを目指しています。
■(2) 企業文化
「イノベーションで人と地球を美しく」というミッションステートメントの下、イノベーションを追求し、新たな価値を創造することを目指しています。また、従業員一人ひとりの能力を高めつつ、良好な関係性を築くことで組織力を最大化する「AeroEdge Human Capital Management Policy」を掲げています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、売上高、営業利益、EBITDA(営業利益+減価償却費)を重要な経営指標としています。事業ポートフォリオの多様化と特定製品への依存度低減を目指しつつ、新規量産案件拡大のための先行投資を行うため、減価償却費の影響を除いたEBITDAも重視しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
既存事業であるチタンアルミブレードの生産能力増強と原価低減を進める一方、新材料の内製化による垂直統合体制の構築を目指しています。また、航空機エンジン部品以外の新規量産案件の獲得や、AM(積層造形)技術、MRO(整備・補修)分野への展開により、収益源の多様化を図る方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
グローバルで活躍できる人材の確保と育成を重視しています。「AeroEdge Human Capital Management Policy」に基づき、専門性を高める「Professional教育」と人間力を養う「Human教育」を実施しています。また、多様な人材が活躍できるよう、自動化の推進や柔軟な勤務環境の整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年6月期 | 36.8歳 | 3.9年 | 5,997,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | -% |
| 男性育児休業取得率 | -% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 66.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 67.6% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 71.8% |
※女性管理職比率は、転居を伴う採用事情等により女性求職者が少ないため低くなっており、数値の記載はありません。
※男性育児休業取得率は、対象となる男性従業員がいないため記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員比率(23.7%)、年休取得率(78.4%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定取引先への依存
同社の売上高の大部分は、仏SAFRAN社向けのチタンアルミブレード販売が占めています。同社との販売契約は重要性が高く、契約の終了やマーケットシェアの変更、同社の航空機エンジン生産計画の変更などが生じた場合、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 原材料の供給リスク
主力製品であるチタンアルミブレードの材料は仏SAFRAN社から無償支給されていますが、その供給元は欧州企業1社に限定されています。供給元の事故や品質問題、国際情勢の悪化等により供給が滞った場合、生産スケジュールに遅延が生じ、業績に悪影響を与える可能性があります。
■(3) 新材料の量産
材料供給リスクの回避と収益拡大のため、チタンアルミブレードの新材料開発と量産化を進めています。鋳造による新材料の量産は同社にとって初の試みであり、量産化の失敗やスケジュールの遅延が発生した場合、業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 為替レートの変動
主力製品の販売は米ドル建てで行われているため、為替変動の影響を受けます。契約改定により一定のレンジ内での変動リスクには対応していますが、想定を超えた為替変動があった場合、業績に影響を与える可能性があります。また、原材料の一部輸入などもあり、円安・円高双方向のリスクがあります。



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