タウンズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

タウンズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

タウンズは、東京証券取引所スタンダード市場に上場する、感染症臨床検査用の抗原検査キットメーカーです。インフルエンザや新型コロナウイルス等の検査薬を主力としています。2025年6月期の業績は、売上高186億円(前期比1.0%増)、営業利益83億円(同2.9%増)で増収増益となりました。


※本記事は、株式会社タウンズ の有価証券報告書(第10期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. タウンズってどんな会社?


同社は、感染症の迅速診断に用いる抗原検査キットの開発・製造・販売を主力とする体外診断用医薬品メーカーです。

(1) 会社概要


同社のルーツは1987年に静岡県沼津市で設立された前身企業に遡ります。2001年以降、結核菌やインフルエンザウイルスの抗原検査キットを順次発売し事業を拡大しました。2016年に投資ファンドの資本参加に伴う組織再編を経て現在の商号となり、2020年には新型コロナウイルス抗原検査キットを発売しました。その後、2024年6月に東京証券取引所スタンダード市場へ株式を上場しました。

同社(単体)の従業員数は316名です。筆頭株主は投資ファンドで、第2位は同社代表取締役社長(創業者親族)、第3位は信託銀行の信託口となっています。

氏名 持株比率
CITIC CAPITAL JAPAN PARTNERS Ⅲ, L.P. 40.50%
野中 雅貴 26.73%
日本カストディ銀行 1.70%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長は野中 雅貴氏が務めています。社外取締役比率は22.2%です。

氏名 役職 主な経歴
野中 雅貴 代表取締役社長 監査法人、日本総合研究所等を経て2007年に同社入社。事業開発部長兼海外担当取締役などを歴任し、2014年4月より現職。
内山 義雄 取締役管理本部長 監査法人を経て公認会計士登録。スミダコーポレーション、小松ストアー等を経て2018年に同社入社。2020年9月より現職。
永井 淳平 取締役経営企画室長 三井住友銀行、Accenture Strategy等を経て2021年に同社入社。執行役員経営企画室ゼネラルマネージャー等を経て2024年9月より現職。
伊藤 政宏 取締役 ベイン・アンド・カンパニー等を経てトラスター・キャピタル・パートナーズ・ジャパン・リミテッド(現職)に入社。2017年6月より現職。


社外取締役は、三品 聡範(サイネス合同会社代表社員)、千葉 理(曙綜合法律事務所代表弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「体外診断用医薬品事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

体外診断用医薬品事業


同社は、イムノクロマト法を用いた感染症迅速診断キット(POCT製品)を開発・製造しています。主力製品には、インフルエンザウイルス、新型コロナウイルス、アデノウイルス、RSウイルスなどを検出する抗原検査キットがあります。特別な装置を必要とせず、患者のそばで迅速に判定できる点が特徴であり、医療機関や研究機関などで利用されています。

収益は主に、医薬品卸売販売業者等への製品販売から得ています。製品は国内だけでなく海外へも販売しており、WHO等の国際機関にも提供実績があります。事業の運営は主にタウンズが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年6月期から2025年6月期までの業績推移です。売上高は第6期は持株会社体制のため計上がありませんでしたが、第7期以降は150億円から180億円規模で推移しています。第8期に一時的な減収減益がありましたが、その後は回復基調にあり、直近の第10期では売上高186億円、経常利益82億円と過去最高水準を更新しています。利益率も40%台と高い水準を維持しています。

項目 2021年6月期 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上高 -億円 175億円 157億円 184億円 186億円
経常利益 -0.5億円 112億円 50億円 78億円 82億円
利益率(%) - 64.2% 31.6% 42.5% 44.1%
当期利益(親会社所有者帰属) -0.6億円 45億円 30億円 58億円 63億円

(2) 損益計算書


直近2期間の業績を比較すると、売上高は微増し、利益面でも増加傾向にあります。売上総利益率は68.6%と高く、営業利益率も44.4%と非常に高い収益性を誇っています。感染症の流行状況に左右される面はありますが、高付加価値な製品構成により高い利益率を確保しています。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 184億円 186億円
売上総利益 125億円 128億円
売上総利益率(%) 67.8% 68.6%
営業利益 80億円 83億円
営業利益率(%) 43.6% 44.4%


販売費及び一般管理費のうち、その他経費が23億円(構成比51%)、給料及び手当が13億円(同28%)を占めています。また、売上原価(59億円)の内訳は、材料費が32億円(構成比54%)、経費が27億円(同46%)となっています。

(3) セグメント収益


同社は単一セグメントですが、製品別の売上構成を見ると、新型コロナ/インフルエンザコンボ検査キットが前期比24.2%増と大きく伸長しました。一方で、インフルエンザ単独キットやその他製品は減少しました。全体としては、高単価なコンボキットの需要拡大が寄与し、増収を確保しています。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期)
新型コロナ単品検査キット 47億円 49億円
新型コロナ/インフルエンザコンボ検査キット 64億円 79億円
インフルエンザ検査キット 41億円 33億円
その他 33億円 25億円
連結(合計) 184億円 186億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

タウンズは、体外診断用医薬品事業において、社会的な検査キット供給責任を果たすべく事業を展開しています。

営業活動では、売上債権の減少などが主な要因となり、資金を獲得しました。一方、投資活動では、有形固定資産や投資有価証券の取得により、資金を使用しました。財務活動では、長期借入れによる収入があったものの、配当金の支払いなどにより、資金を獲得しました。

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF 99億円 68億円
投資CF -41億円 -93億円
財務CF 24億円 23億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「私たちタウンズは、独自の体外診断用医薬品により、人々の生活に安心と潤いを届けます。そのために、技術・知識を集積し、新たな製品の開発、品質改善に取り組み続けます。」を経営理念として掲げています。独自の診断技術を通じて、世界に向けて高品質な製品を提供し続けることを目指しています。

(2) 企業文化


同社は「診断技術で、安心な毎日を。」をコーポレートスローガンとして掲げています。創業以来30年以上にわたり培ってきた感染症POCT(臨床現場即時検査)分野での技術力を基盤に、人々の健康と安心に貢献することを重視する姿勢を持っています。また、新たな事業の柱を築き、高付加価値企業への進化を目指す変革の意識も共有されています。

(3) 経営計画・目標


同社は、体外診断用医薬品の競争力強化と業績向上を重要視しており、中期経営計画において以下の指標を経営上の目標として掲げています。具体的な数値目標は開示されていませんが、これらを重視して経営を行っています。

* 売上高
* 営業利益
* 当期純利益
* 営業利益率
* EBITDA
* ROE

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、既存の感染症検査に加え、新たな検査技術の開発や慢性疾患領域への進出を重点施策としています。具体的には、次世代技術「D-IA(デジタルイムノアッセイ)」の実用化や、新工場設立による生産体制の強化、海外市場の開拓などを推進しています。また、戦略的な投資や人的資本への投資を通じて、持続的な成長基盤の構築を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、国内外での高い成長を実現するために、多様な人材の登用と能力発揮のための仕組みづくりを重視しています。AIなどの先端技術を取り込む教育や、現社員と融合した組織作りを進めるとともに、重要課題の解決に直結する戦略人事を実行する方針です。また、専門人材の積極採用や教育体制の強化にも努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 38.9歳 5.9年 8,212,281円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 15.8%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 53.7%
男女賃金差異(正規雇用) 66.7%
男女賃金差異(非正規雇用) 48.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、正社員に占める女性比率(39.4%)、健康診断受診率(100%)、ストレスチェック受検率(95.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 法的規制等に関するリスク


同社は体外診断用医薬品等の製造販売のため、薬機法等の許認可を受けています。法令違反による許認可取り消しや、法規制の強化による対応コストの増加が業績に影響する可能性があります。特に海外展開においては、欧州のIVDR規制や米国のQMSRなどの規制変更への対応が必要となり、これらが円滑に進まない場合、事業活動が制限される恐れがあります。

(2) 感染症の動向による業績への影響


同社の売上高において、新型コロナウイルスやインフルエンザなどの感染症検査キットが大きな割合を占めています。これらの感染症の流行規模が想定より小さかった場合や、予期せぬ事由で売上が減少した場合、在庫の評価減や廃棄損を含め、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 特定の販売先への依存によるリスク


2025年6月期において、主要顧客であるスズケングループへの売上が約6割を占めており、特定の販売先への依存度が高い状態にあります。取引方針の変更や取引額の減少があった場合、業績に影響が生じる可能性があります。同社は販路の分散化を進めていますが、信用リスク管理を含め注意が必要です。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。