※本記事は、株式会社アスア の有価証券報告書(第31期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アスアってどんな会社?
物流事業者向けの安全活動支援コンサルティングや、通信機器販売などを展開する企業です。
■(1) 会社概要
1994年、有限会社アスアサービスとして設立されました。1998年に燃費改善製品販売(現コンサルティング事業)を開始し、2002年に燃費管理システムをリリースしました。2020年にクラウド型サービス「TRYESレポート」を開始し、2024年9月に東証グロースおよび名証ネクスト市場へ上場を果たしました。
同社(単体)の従業員数は91名です。筆頭株主は創業者で代表取締役社長の間地寛氏の資産管理会社である株式会社間地で、第2位は間地寛氏本人、第3位は従業員持株会となっており、創業者とその関連で過半数の株式を保有するオーナー企業としての側面を持ちます。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 株式会社間地 | 33.50% |
| 間地寛 | 21.59% |
| アスア社員持株会 | 3.60% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は間地寛氏です。社外取締役比率は57.1%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 間地 寛 | 代表取締役社長 | 1994年、同社設立とともに代表取締役社長に就任。以来、トップとして経営を牽引し、関連会社の代表や業界団体の理事なども歴任して現職。 |
| 浅井 慎司 | 常務取締役事業本部長 | 中部テラオカ等を経て2005年に入社。取締役、常務取締役コンサルティング事業本部長などを経て、2024年より現職。 |
| 植村 恒明 | 取締役管理本部長兼経営企画室責任者 | 医療法人徳洲会、朝日インテック等を経て2022年に入社。管理本部副本部長などを経て、2025年より現職。 |
社外取締役は、上田雅彦(BOSパートナーズ代表取締役社長)、鈴村文雄(元トヨタファイナンス代表取締役社長)、山田明紀(名古屋倉庫代表取締役)、関口智弘(弁護士法人大江橋法律事務所パートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「コンサルティング事業」「CRMイノベーション事業」「通信ネットワークソリューション事業」の3つのセグメントを展開しています。
■(1) コンサルティング事業
物流事業者に対し、燃費改善や事故削減のための安全活動支援サービス「TRYESプログラム」を提供しています。対面型の指導や、クラウド型で教育コンテンツを提供する「TRYESレポート」を通じ、管理業務の削減と安全教育を支援します。
収益は、物流事業者からのコンサルティングフィーやクラウドサービスのシステム利用料(サブスクリプション収入)などから構成されます。運営は主にアスアが行っています。
■(2) CRMイノベーション事業
自動車の走行データ等を分析し、ドライバーに対し安全運転やエコドライブを促すメッセージを生成・配信するサービスを展開しています。コネクティッドカーのデータ解析技術を活用し、個別に最適化されたコミュニケーション支援を行います。
収益は、自動車メーカーや損害保険会社等からのシステム開発受託費や、メッセージングサービスの運用対価として受け取ります。運営は主にアスアが行っています。
■(3) 通信ネットワークソリューション事業
一般企業を対象に、ビジネスフォン、複合機、サーバー、ネットワーク機器などのICT機器販売・施工・保守を行っています。オフィスの移転や拡張に伴う設備導入から、コスト最適化提案までトータルでサポートします。
収益は、顧客企業からの機器販売代金、工事費、保守運用費などから構成されます。創業時からの事業であり、東海地区を中心に強固な顧客基盤を有しています。運営は主にアスアが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は順調に拡大傾向にあり、直近の第31期は13.9億円で過去最高を更新しています。経常利益も増益基調を維持しており、第31期には1.8億円となりました。利益率も高水準で推移していますが、当期純利益は特別損失の計上により前期比で減少しました。
| 項目 | 2021年6月期 | 2022年6月期 | 2023年6月期 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 11.4億円 | 12.3億円 | 12.4億円 | 13.6億円 | 13.9億円 |
| 経常利益 | 0.6億円 | 1.1億円 | 1.1億円 | 1.7億円 | 1.8億円 |
| 利益率(%) | 5.4% | 8.8% | 9.3% | 12.3% | 12.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 0.3億円 | 0.7億円 | 0.7億円 | 1.2億円 | 1.1億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加しましたが、売上原価も増加しており、売上総利益は若干減少しました。一方で、販売費及び一般管理費の抑制により、営業利益率は上昇しています。営業外費用として上場関連費用等を計上したものの、経常利益は増益を確保しました。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 13.6億円 | 13.9億円 |
| 売上総利益 | 6.2億円 | 6.0億円 |
| 売上総利益率(%) | 45.7% | 43.4% |
| 営業利益 | 1.6億円 | 2.0億円 |
| 営業利益率(%) | 12.0% | 14.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が1.3億円(構成比32%)、役員報酬が0.8億円(同20%)を占めています。売上原価においては、労務費が3.7億円(売上原価に対し47%)、経費(主に外注費)が2.4億円(同31%)を占めています。
■(3) セグメント収益
コンサルティング事業は法規制強化を背景にクラウドサービスが伸長し増収増益となりました。通信ネットワークソリューション事業も機器販売が好調で増収増益です。一方、CRMイノベーション事業はシステム開発の遅延や一部撤退により減収減益となりました。
| 区分 | 売上(2024年6月期) | 売上(2025年6月期) | 利益(2024年6月期) | 利益(2025年6月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| コンサルティング事業 | 7.0億円 | 7.7億円 | 2.8億円 | 3.1億円 | 39.5% |
| CRMイノベーション事業 | 3.2億円 | 2.1億円 | 0.9億円 | 0.6億円 | 30.2% |
| 通信ネットワークソリューション事業 | 3.4億円 | 4.1億円 | 0.6億円 | 0.8億円 | 19.5% |
| 連結(合計) | 13.6億円 | 13.9億円 | 1.6億円 | 2.0億円 | 14.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
アスア社のキャッシュ・フローは、通信ネットワークソリューション事業の好調な販売実績に支えられ、営業活動による収入が堅調に推移しました。一方で、無形固定資産の取得により投資活動では支出が増加しました。財務活動では、株式発行による収入が大きく、資金調達が活発に行われたことがうかがえます。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1.3億円 | 1.0億円 |
| 投資CF | -0.2億円 | -0.5億円 |
| 財務CF | -0.6億円 | 2.1億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」を経営理念として掲げています。また、「物流現場の知見とデータを融合し、持続可能な魅力ある物流を実現します。」をパーパスとし、顧客ニーズに応えステークホルダーに信頼される企業を目指しています。
■(2) 企業文化
社名の由来である「ひとりひとりの輝きが明日の未来を開ける」を社是としています。目標に向かって努力し光り輝く人材になることを目指し、「ASUA QUALITY」という理念手帳を作成して全従業員に理念浸透と人間力向上を促すなど、人材教育を重視する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
売上・利益の成長と顧客満足度の向上により企業価値最大化を目指し、経営目標の達成度を測る客観的指標として以下を掲げています。
* 売上高営業利益率
* TRYESサポート年間実施件数
* TRYESレポート契約社数
* TRYESレポート登録人数
■(4) 成長戦略と重点施策
物流業界の「2024年問題」等の課題解決に向け、既存事業強化、新規事業創出、経営基盤強化に取り組んでいます。特に関東エリアでの営業強化や、ドライバー確保支援、積載率改善、倉庫内安全対策等の新サービス開発を推進するほか、M&AやICT投資も積極的に行う方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「ASUA QUALITY」に基づき、従業員の資質向上と能力開発を推進しています。人事評価制度によるキャリアアップ支援に加え、相談窓口の設置や長時間労働の抑制など、心身ともに健康で働きやすい労働環境の確保に努めており、リファラル採用の強化等で優秀な人材の確保を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年6月期 | 36.7歳 | 7.1年 | 4,873,412円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 11.8% |
| 男性育児休業取得率 | 0.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 42.8% |
| 男女賃金差異(正規) | 74.9% |
| 男女賃金差異(非正規) | -% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 物流業界の市場環境変化
主力事業の顧客である物流業界は中小事業者が多く、法改正や景気変動の影響を受けやすい環境にあります。特に「2024年問題」等による経営環境の変化が顧客の投資意欲に影響を与え、同社の新規獲得や解約率に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) システムトラブルと情報管理
事業基盤がインターネットや通信ネットワークに依存しており、サイバー攻撃や自然災害等によるシステム障害が発生した場合、業務に支障が出る恐れがあります。また、機密情報や個人情報の漏洩が発生すれば、社会的信用の失墜により業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 特定事業・顧客への依存
コンサルティング事業が売上の過半を占めており、同事業の動向が業績に大きく影響します。また、東京都トラック協会向けの売上が全体の約1割強を占めており、同協会の助成金制度変更や方針転換があった場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。



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