大盛工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

大盛工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の総合建設会社です。東京都発注の上下水道工事を主力とする建設事業に加え、不動産、OLY(土木仮設材リース)、通信関連事業を展開しています。第59期は、建設事業での高収益工事の完工や不動産事業の入居率向上等により、売上高は前期比7.7%増、経常利益は27.6%増の増収増益となりました。


※本記事は、株式会社大盛工業 の有価証券報告書(第59期、自 2024年8月1日 至 2025年7月31日、2025年10月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 大盛工業ってどんな会社?


東京都の公共事業を中心とした土木建設業を中核に、不動産や通信インフラ保守なども手掛ける企業グループです。

(1) 会社概要


1967年に東京都北区で設立され、土木建設業を開始しました。1996年に東京証券取引所市場第二部(現スタンダード市場)へ上場を果たしています。独自の土木技術であるOLY工法やピカルス工法の特許を取得し、差別化を図ってきました。近年では、2017年に東京テレコムエンジニアリング、2018年に井口建設などを子会社化し、事業領域と規模を拡大しています。

連結従業員数は135名、単体では87名です。筆頭株主はWINBASE TECHNOLOGIES LIMITEDで、第2位は個人株主の高野廣克氏、第3位は神奈川県に拠点を置くプラスです。その他、役員持株会や金融機関、証券会社などが名を連ねています。

氏名 持株比率
WINBASE TECHNOLOGIES LIMITED 5.58%
高野 廣克 3.36%
プラス 2.82%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は栗城幹雄氏です。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
栗城 幹雄 代表取締役社長 2001年キャピタル建設入社。大盛工業取締役OLY本部長、取締役土木副本部長などを経て、2023年10月より現職。
山口 伸廣 取締役会長 1970年大道建設代表取締役。ヒューネット建設代表取締役などを経て、2010年大盛工業取締役就任。2021年10月より現職。
福井 龍一 取締役相談役 1977年入社。土木本部長、代表取締役社長などを歴任。井口建設代表取締役会長も務める。2023年10月より現職。
織田 隆 取締役土木本部長 1981年大成土木入社。1987年大盛工業入社。執行役員土木副本部長などを経て、港シビル代表取締役社長(現任)。2021年10月より現職。
及川 光広 取締役経営管理本部長 1985年入社。イメージクエストインタラクティブ、ビック東海を経て2015年大盛工業入社。2021年10月より現職。
尾﨑 忠弘 取締役事業開発本部長 1994年ヒューネット入社。ウィークリーセンター営業部長などを経て2020年大盛工業入社。東京テレコムエンジニアリング取締役(現任)。2021年10月より現職。


社外取締役は、池田裕彦(池田裕彦法律事務所代表)、三浦暢之(公認会計士三浦暢之事務所代表)、熊谷恵佑(シンシア会計事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建設事業」「不動産事業」「OLY事業」「通信関連事業」を展開しています。

**(1) 建設事業**
東京都発注の上・下水道工事を主体とした土木工事の請負、施工、監理を行っています。特に都市土木におけるシールド工事や推進工事などの特殊技術を強みとしています。
収益は、官公庁や民間顧客からの工事請負代金によるものです。運営は主に大盛工業、および子会社の井口建設、港シビルが行っています。

**(2) 不動産事業**
マンションやアパート等の不動産販売・賃貸、太陽光発電設備の販売、クローゼットレンタル業務を展開しています。収益性の高い物件の取得と販売、保有物件の稼働率向上に注力しています。
収益は、不動産の売却代金や賃貸収入、売電収入などから得ています。運営は主に大盛工業が行っています。

**(3) OLY事業**
独自の土木仮設資材である「OLY工法」関連機材のリースや、鉄骨加工業を行っています。OLY工法は都市土木工事における路面覆工などで活用されています。
収益は、建設会社等からの機材リース料や鉄骨加工の対価によるものです。運営は主に大盛工業が行っています。

**(4) 通信関連事業**
通信インフラ設備における回線の保守・管理業務を行っています。NTT等の通信事業者向けの業務が中心です。
収益は、通信事業者等からの保守・管理業務委託料によるものです。運営は子会社の東京テレコムエンジニアリングが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は49億円台から64億円まで増加傾向にあります。経常利益も3億円台から7億円台へと順調に拡大しており、利益率は6%台から11%台後半へと向上しています。当期純利益も増加基調を維持しており、全体として増収増益のトレンドが継続しています。

項目 2021年7月期 2022年7月期 2023年7月期 2024年7月期 2025年7月期
売上高 50億円 52億円 61億円 60億円 64億円
経常利益 3.1億円 3.2億円 4.3億円 6.0億円 7.6億円
利益率(%) 6.3% 6.1% 7.2% 10.0% 11.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.9億円 2.8億円 2.4億円 3.2億円 4.9億円

(2) 損益計算書


売上高は前期の60億円から64億円へ増加しました。売上総利益も12億円から14億円へ増加し、売上総利益率は19.9%から21.0%へ改善しています。営業利益も6億円から8億円へと伸長し、営業利益率は10.4%から12.2%へ上昇しました。増収効果に加え、利益率の改善が進んでいます。

項目 2024年7月期 2025年7月期
売上高 60億円 64億円
売上総利益 12億円 14億円
売上総利益率(%) 19.9% 21.0%
営業利益 6億円 8億円
営業利益率(%) 10.4% 12.2%


販売費及び一般管理費のうち、その他経費が1.4億円(構成比24%)、役員報酬が1.3億円(同23%)を占めています。売上原価においては、完成工事原価が39億円(構成比76%)と大半を占めています。

(3) セグメント収益


建設事業は高収益工事の完工により増収増益となりました。不動産事業は販売減で減収となりましたが、入居率向上により増益を達成しました。OLY事業は増収ながら減益、通信関連事業は工事量増加により増収増益となりました。

区分 売上(2024年7月期) 売上(2025年7月期) 利益(2024年7月期) 利益(2025年7月期) 利益率
建設事業 43億円 48億円 4億円 5億円 10.5%
不動産事業 7億円 6億円 0.7億円 1億円 19.4%
OLY事業 5億円 6億円 1億円 0.9億円 15.5%
通信関連事業 4億円 4億円 0.6億円 0.8億円 16.7%
連結(合計) 60億円 64億円 6億円 8億円 12.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

大盛工業のキャッシュ・フローの状況についてご説明します。

営業活動によるキャッシュ・フローは、主に利益の計上や売上債権の減少があったものの、棚卸資産の増加や未成工事受入金の減少などにより、資金が減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得や保険積立金の積立などにより、資金が減少しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入れや長期借入れによる収入があったものの、借入金の返済や配当金の支払いなどにより、資金が増加しました。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「建設業を通じて人と社会に大きく貢献していくこと」を基本理念としています。建設事業における上下水道工事のプロフェッショナルとして社会資本整備に貢献し、高収益体質企業を目標に社会とともに発展していくことを目指しています。

(2) 企業文化


「人と地球に優しい、クリーンな環境を未来へ」を基本テーマに掲げています。創業以来半世紀以上にわたり培ってきた技術と経験を基盤に、法令順守やサステナビリティ経営を重視し、誠実な施工とサービス提供を通じて社会からの信頼獲得を目指す文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


「中期経営計画(ACTION PLAN 2025)」を策定し、企業価値の向上を目指しています。具体的な数値目標として「売上高営業利益率7%以上」の継続を掲げ、経済的価値と社会的価値の双方の向上を図っています。

* 2026年7月期:売上高72億円、営業利益6.6億円
* 2027年7月期:売上高77億円、営業利益7.2億円
* 2028年7月期:売上高84億円、営業利益8.1億円

(4) 成長戦略と重点施策


建設事業では、収益性の高い機械推進工事の受注やM&Aによる事業基盤拡大を推進します。不動産事業では優良賃貸物件の取得と販売、OLY事業では関東以南へのエリア拡大、通信関連事業では新規受注獲得に注力し、全部門での収益力強化を図る方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


技術と経験の継承を重要課題とし、定年者の継続雇用やリファラル採用、女性・外国籍職員の積極採用を進めています。新卒採用では対象学科を拡大し、若手育成や資格取得支援を強化することで、即戦力の確保と定着を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年7月期 36.7歳 9.1年 6,821,516円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 9.5%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規雇用) -


※一部項目は、同社および連結子会社が公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、1級土木施工管理資格取得率(75.0%)、工事施工管理者に占める女性労働者の割合(5.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 建設事業における市場変動


主力である建設事業は、公共投資の動向に強く影響を受けます。公共工事予算の削減等は受注量減少に直結する可能性があります。また、入札における価格競争の激化は利益率の低下を招くリスクがあります。

(2) 建設資材・労務費の高騰


工事期間が長期にわたるため、契約後に資材価格や労務費が高騰した場合、請負金額への転嫁が難しく、採算が悪化する可能性があります。同社は市場動向を監視し、適切な入札価格の設定や代替工法の提案で対応を図っています。

(3) 人材の確保・育成


建設業界全体の就労人口減少や高齢化が進む中、施工管理技士等の有資格者や熟練技術者の不足は、施工能力の低下や受注機会の喪失につながる可能性があります。同社は採用強化や定年後再雇用などで人材確保に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。