サムコ  転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

サムコ  転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所プライム市場に上場しており、CVD装置やエッチング装置などの半導体等電子部品製造装置の製造・販売を主要事業としています。直近の業績においては、売上高が82億円から93億円へ、経常利益が21億円から24億円へと推移しており、増収増益を達成しています。


※本記事は、サムコ 株式会社 の有価証券報告書(第46期、自 2024年8月1日 至 2025年7月31日、2025年10月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. サムコってどんな会社?


同社は、半導体や電子部品の製造に不可欠な薄膜形成・加工装置を開発・製造する研究開発型企業です。

(1) 会社概要


同社は1979年にサムコインターナショナル研究所として設立され、翌年には国産初のプラズマCVD装置の開発・販売を開始しました。2001年に株式を店頭登録し、2004年に現在の社名であるサムコへ変更しました。その後、2014年には東証一部(現プライム市場)への指定を果たし、グローバルな展開を進めています。

同社は単体で事業を行っており、従業員数は191名です。筆頭株主は創業者が理事長を務める財団で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は創業者である辻理氏です。

氏名 持株比率
(一財)サムコ科学技術振興財団 12.45%
日本マスタートラスト信託銀行 11.46%
辻 理 10.76%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長兼COOは川邊史氏が務めています。社外取締役比率は44.4%です。

氏名 役職 主な経歴
辻 理 代表取締役会長兼CEO 1977年サムコインターナショナル創業。1979年同社設立に伴い社長就任。2018年より現職。
川邊 史 代表取締役社長兼COO 1999年中部電力入社。2008年同社入社。取締役常務執行役員等を経て2018年より現職。
山下 晴彦 取締役生産統括部長兼製造部長 1984年ローム入社。1996年同社入社。製造部長等を経て2023年より現職。
宮本 省三 取締役管理統括部長兼経理部長 1986年日立製作所入社。2005年同社入社。経理部長等を経て2020年より現職。
佐藤 清志 取締役営業統括部長 1988年同社入社。営業推進部長等を経て2024年より現職。


社外取締役は、村上正紀(京都大学名誉教授)、高須秀視(元ローム常務取締役)、藤田静雄(京都大学名誉教授)、桺本依子(アナテック・ヤナコ代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「半導体等電子部品製造装置の製造及び販売事業」および「その他」事業を展開しています。

CVD装置


反応性の気体や液体原料を用いて、基板上に半導体膜や絶縁膜などの薄膜を形成する装置です。同社独自のLS-CVD装置は安全性に優れた液体原料を使用し、低温・高速での成膜が可能です。また、原子層堆積装置(ALD)もこの区分に含まれます。

収益は、半導体・電子部品メーカーや研究機関等の顧客から支払われる装置の販売代金等によって得ています。運営は主にサムコが行っています。

エッチング装置


プラズマを利用して、半導体基板上の薄膜や材料を微細加工するドライエッチング装置です。同社独自のトルネードICP技術により、高密度プラズマを安定生成し、高速・高精度な微細加工を実現しています。

収益は、国内外のデバイスメーカーや大学・官公庁の研究機関等から支払われる装置の対価として得ています。運営は主にサムコが行っています。

洗浄装置


プラズマやオゾンを用いて、基板表面の有機汚れ除去や表面改質を行うドライ洗浄装置です。水蒸気を用いたアクアプラズマ洗浄装置など、環境に配慮した製品も展開しており、電子部品やヘルスケア分野で使用されます。

収益は、製造業や研究開発機関等の顧客から支払われる装置代金等によって得ています。運営は主にサムコが行っています。

部品・メンテナンス


納入した各種装置の交換部品の販売や、保守・修理サービスなどを提供しています。装置の安定稼働を支援し、顧客の生産活動をサポートする重要な役割を担っています。

収益は、既存顧客から支払われる部品代金やメンテナンス料等によって得ています。運営は主にサムコが行っており、台湾では現地法人が保守サービスを受託しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は57億円から93億円へと着実に拡大しています。経常利益も10億円から24億円へと増加傾向にあり、利益率も20%台半ばの高い水準を維持しています。当期純利益についても右肩上がりで推移しており、収益力の強化と事業規模の拡大が順調に進んでいることが読み取れます。

項目 2021年7月期 2022年7月期 2023年7月期 2024年7月期 2025年7月期
売上高 57億円 64億円 78億円 82億円 93億円
経常利益 10億円 15億円 19億円 21億円 24億円
利益率(%) 18.2% 23.1% 24.6% 25.5% 25.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 8億円 11億円 14億円 15億円 17億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益、営業利益ともに増加しています。売上総利益率は50%以上の高水準を維持しており、営業利益率も約25%と高い収益性を確保しています。増収効果が利益拡大に直結する効率的な経営が行われていることがわかります。

項目 2024年7月期 2025年7月期
売上高 82億円 93億円
売上総利益 42億円 47億円
売上総利益率(%) 51.1% 50.0%
営業利益 20億円 23億円
営業利益率(%) 24.6% 25.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が7億円(構成比29%)、研究開発費が3億円(同13%)を占めています。

(3) セグメント収益


全ての製品区分で売上が増加しています。特に主力の「エッチング装置」が大きく伸長し、全体を牽引しました。「CVD装置」や「洗浄装置」、「部品・メンテナンス」も堅調に推移しており、各分野でバランスよく成長しています。

区分 売上(2024年7月期) 売上(2025年7月期)
CVD装置 16億円 18億円
エッチング装置 47億円 55億円
洗浄装置 6億円 7億円
部品・メンテナンス 13億円 14億円
連結(合計) 82億円 93億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

サムコは、半導体等電子部品製造装置の製造・販売事業を展開しており、当事業年度の現金及び現金同等物は増加しました。営業活動によるキャッシュ・フローは、売上債権等の増加や法人税等の支払いがあったものの、堅調な利益によりプラスとなりました。投資活動では、定期預金の預け入れや有形固定資産の取得により資金を使用しました。財務活動では、配当金の支払い等により資金が使用されました。

項目 2024年7月期 2025年7月期
営業CF 16億円 12億円
投資CF -3億円 -4億円
財務CF -1億円 -4億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「薄膜技術で世界の産業科学に貢献する」ことを経営理念として掲げています。企業の永続的な発展と適正な利益確保を通じて、利害関係者と共に成長することを目指しています。社員の創造性を重視した独創的な技術提供、直販体制によるタイムリーな製品提供、そして高い付加価値の創出と適切な成果配分を基本方針としています。

(2) 企業文化


同社は「勇気・創造・勤勉」を行動指針とし、仕事を通じて楽しく面白くあるべきだという考えを持っています。常に「学ぶ」ことを念頭に置き、自己の価値を高めることを推奨しています。また、組織の新陳代謝を図り、多様な人材を積極的に登用することで、新たな能力の開拓につなげる風土があります。

(3) 経営計画・目標


同社は、第47期から第49期(2025年8月〜2028年7月)までの中期経営計画において、収益力の更なる強化と事業規模の拡大を目指しています。中長期的な重要経営指標として、以下の数値を掲げています。

* 装置製造原価率:45.0%未満
* 売上高営業利益率:25.0%以上
* 海外売上高比率:50.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、独自技術による新プロセス・新装置の開発や、生産機販売の強化に注力しています。特に、生産現場のニーズに対応した提案力強化とアフターサービス体制の拡充を進めています。また、海外市場においては、現地の人員強化と新たな市場開拓により、シェア拡大を図っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人材を最大の資産と位置づけ、「勇気・創造・勤勉」を行動指針としています。若手の能力向上やシニア社員のリスキリング、外国籍社員の採用拡大によるグローバル人材の育成に注力しています。また、女性社員が技術職や管理職で活躍できる環境整備や、組織の新陳代謝による多様な人材の登用を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年7月期 41.1歳 13.1年 6,675,421円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は常時雇用する労働者が300人以下であるため、公表義務の対象ではないため、有報には本稿の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全従業員に占める女性比率(14.1%)、新卒採用における女性比率(26.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場変動リスク


半導体や電子部品製造装置の市場は、通信システムやAI関連投資などの技術動向に左右されます。需要が急増する一方で、経済環境の変化による顧客の設備投資凍結や減産が起きた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、急激な需要増への供給遅延による機会損失リスクもあります。

(2) カントリーリスク


同社は北米、アジア、欧州など世界各国で事業を展開しており、海外市場の拡大を目指しています。各国の法令、政治・社会情勢、商慣習の違いや、関税政策、地政学的リスク(米中対立等)が顕在化した場合、想定通りの事業展開ができず、業績に悪影響を与える可能性があります。

(3) 資材等の調達に関するリスク


製品の製造に必要な原材料や部品の一部は、特殊性から仕入先が限定されています。仕入先の災害、事故、倒産等により安定調達が困難になった場合、製品の出荷遅延や機会損失が発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は複数社購買や在庫の適正化等で対策を進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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