※本記事は、株式会社山王 の有価証券報告書(第67期、自 2024年8月1日 至 2025年7月31日、2025年10月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 山王ってどんな会社?
電子機器に不可欠なコネクタ等の精密プレス加工と貴金属表面処理加工を一貫して行う技術力が特徴の企業です。
■(1) 会社概要
1958年に有限会社山王鍍金工業所として設立され、電気部品の金めっき加工を開始しました。1988年に山王へ商号変更し、2007年にジャスダック証券取引所へ上場しました。その後、2022年の市場区分見直しに伴い東証スタンダード市場へ移行しています。2024年には明王化成を完全子会社化し、射出成形技術を獲得しました。
従業員数は連結で403名、単体で285名です。筆頭株主は個人の荒巻芳幸氏で、第2位は有限会社山旺商事、第3位は山王貴金属です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 荒巻 芳幸 | 17.10% |
| 有限会社山旺商事 | 12.21% |
| 山王貴金属株式会社 | 4.85% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は荒巻拓也氏です。社外取締役比率は20.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 荒巻 拓也 | 代表取締役社長 | 2003年同社入社。営業部各課長、海外営業部等を歴任。東北事業部事業部長兼営業部部長等を経て2024年8月より現職。 |
| 三浦 尚 | 取締役会長 | 協和銀行(現りそな銀行)出身。2008年同社入社。経営企画部部長、営業部部長、代表取締役社長等を歴任し、2024年8月より現職。 |
| 井上 哲也 | 取締役SPMC代表取締役社長 | 1988年同社入社。各工場長、事業統括本部副本部長等を歴任。2020年12月より現職。 |
| 浜口 和雄 | 取締役 | 1991年同社入社。経営企画部、経理部部長、管理本部本部長兼総務部部長等を歴任し、2023年9月より現職。 |
| 樋口 雅信 | 取締役東北事業部事業部長兼技術部部長 | 1999年同社入社。技術部部長、東北事業部生産技術部部長等を歴任し、2024年8月より現職。 |
| 井上 治雄 | 取締役東北事業部副事業部長明王化成代表取締役社長プレス成形技術部部長 | 市村製作所を経て2021年同社入社。東北事業部各部長を歴任し、2025年8月より現職。 |
| 河面 康大 | 取締役事業開発部部長兼東北事業部品質保証部部長 | 1997年同社入社。鈴川工場長、SPMC社長等を歴任し、2024年10月より現職。 |
| 渡邊 和久 | 取締役(常勤監査等委員) | 1992年同社入社。山王電子(無錫)有限公司総経理等を歴任し、2017年10月より現職。 |
社外取締役は、肥後治樹(元熊本国税局長)、神尾諭(元りそなビジネスサービス常務取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」および「フィリピン」セグメントを展開しています。
■日本
コネクタメーカー等を主な顧客とし、電子部品の精密プレス加工、金型製作、貴金属表面処理加工を行っています。また、インサート成形加工等のプラスチック部品製造も手掛けています。製品はPC、スマホ、車載機器などに使用されます。
収益は、顧客からの製品販売代金や加工賃として得ています。運営は主に同社および明王化成が行っています。
■フィリピン
フィリピンにおいて、コネクタ、スイッチ、ICソケット等の接点部品であるプレス成型品への表面処理加工を行っています。自動車向けや通信向け分野などの需要に対応しています。
収益は、顧客に対する表面処理加工サービスの提供対価として得ています。運営は主にSanno Philippines Manufacturing Corporationが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
第67期は売上高が大幅に増加し、利益面でも大きく伸長しました。過去5期間を見ると、売上高は80億円台から100億円台へと拡大傾向にあります。利益率は変動があるものの、当期は7.5%と高い水準を記録しており、収益性が向上しています。
| 項目 | 2021年7月期 | 2022年7月期 | 2023年7月期 | 2024年7月期 | 2025年7月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 81億円 | 95億円 | 96億円 | 88億円 | 108億円 |
| 経常利益 | 2億円 | 5億円 | 2億円 | 4億円 | 8億円 |
| 利益率(%) | 3.0% | 5.4% | 2.5% | 4.1% | 7.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 6億円 | 5億円 | 1億円 | -0.4億円 | 11億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益および営業利益が大きく改善しました。売上総利益率は16.4%から20.3%へ、営業利益率は2.6%から7.4%へと上昇しており、収益体質の強化が進んでいます。
| 項目 | 2024年7月期 | 2025年7月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 88億円 | 108億円 |
| 売上総利益 | 14億円 | 22億円 |
| 売上総利益率(%) | 16.4% | 20.3% |
| 営業利益 | 2億円 | 8億円 |
| 営業利益率(%) | 2.6% | 7.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給与が3億円(構成比20%)、役員報酬が2億円(同15%)を占めています。売上原価の内訳等の詳細データはありません。
■(3) セグメント収益
日本セグメントは増収となり、利益も黒字転換して大きく貢献しました。フィリピンセグメントも増収でしたが、原材料価格高騰等の影響で減益となりました。全体としては日本事業の回復が業績を牽引しています。
| 区分 | 売上(2024年7月期) | 売上(2025年7月期) | 利益(2024年7月期) | 利益(2025年7月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | 59億円 | 77億円 | -2億円 | 5億円 | 6.6% |
| フィリピン | 29億円 | 32億円 | 3億円 | 2億円 | 7.7% |
| 連結(合計) | 88億円 | 108億円 | 2億円 | 8億円 | 7.4% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業活動によるキャッシュ・フローを増加させ、投資活動によるキャッシュ・フローも増加に転じました。財務活動では、短期借入金の増加があったものの、長期借入金の返済や自己株式の取得などが行われました。これにより、現金及び現金同等物の残高は増加しています。
| 項目 | 2024年7月期 | 2025年7月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 11億円 | 5億円 |
| 投資CF | -3億円 | 0.3億円 |
| 財務CF | -5億円 | -0.4億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「わたしたちの働きで、社会のインフラを支え人々の暮らしの安全、便利な社会の実現に貢献する」を存在意義(パーパス)として設定しています。この理念のもと、経営の公正性・透明性・迅速性を確保し、ステークホルダーとの協働や地域社会・自然環境との調和によるサステナブル経営を推進しています。
■(2) 企業文化
「100年継続企業 すべての点で常に業界のトップを目指します」を経営ビジョンに掲げています。市場動向を見極め、絶えざるチャレンジによって「できないをできる」に変え、新たな価値を創造することを重視しています。また、公正・適正な取引や従業員の健康・労働環境への配慮など、サステナビリティを意識した企業活動を行っています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、将来の目標として以下の数値を掲げて経営を行っています。
* 連結売上高:109億円
* 営業利益:5億円
* 経常利益:4.9億円
■(4) 成長戦略と重点施策
受注拡大、収益改善、生産設備拡充、カーボンニュートラルへの取り組み、工場増強、働く環境整備、人事・教育強化を主要戦略としています。特に、成長領域である自動車、通信、産業機器向け分野への設備投資を継続し、安定収益基盤の確保と新規事業領域の開拓により、経営体質の強化を図る方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
サステナブル戦略の実現において、人材の確保と育成を重要課題としています。「人材育成の推進」「多様な人材の活躍」「エンゲージメントの向上」を柱とし、次世代人材の活躍を支援しています。また、外部教育システムによる研修やキャリアパス教育を推進し、社員の成長意欲とキャリアビジョン実現に向けた環境整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年7月期 | 41.2歳 | 12.5年 | 4,757,390円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 7.0% |
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 63.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 57.0% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 83.2% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 業界動向と内製化の影響
主要製品はコネクタメーカー等の電子部品であり、顧客の内製化が進む傾向にあります。IT産業等の動向に加え、顧客によるプレス加工や表面処理加工の内製化が想定以上に進展した場合、受注減少につながり、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 為替変動の影響
フィリピンに生産拠点を有しており、主にドル建て決済を行っています。海外取引規模の拡大に伴い、為替相場の変動が財政状態や経営成績に影響を与える可能性があります。また、国内取引先の生産拠点が海外へ移管されることで、国内での円建て取引が減少するリスクもあります。
■(3) 政情不安が与える影響
フィリピンに生産拠点を展開していますが、アジア諸国の一部における政情不安や、法令、政策、規制、税制等の変更が生じた場合、事業運営に支障をきたし、財政状態や経営成績に重大な影響を与える可能性があります。
■(4) 事故災害等による影響
国内外に生産拠点を有していますが、過去に発生した火災や汚染水流出事故等の経験を踏まえ対策を講じているものの、地震等の自然災害や事故により製造設備に被害が生じた場合、復旧に多大な時間と費用を要し、業績に影響を与える可能性があります。



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