※本記事は、アシードホールディングス株式会社の有価証券報告書(第54期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アシードホールディングスってどんな会社?
アシードホールディングスは、自販機による飲料等の小売や、各種飲料の企画・製造を主軸に事業を展開しています。
■(1) 会社概要
同社は1972年に日本バンテンとして設立され、食品機器の販売を開始しました。1980年には乳飲料の自動販売を開始し、1989年にアシードへ商号を変更しました。その後、2001年に東京証券取引所市場第二部へ上場を果たし、2008年には持株会社体制への移行に伴いアシードホールディングスへ社名を変更して現在に至ります。
同社グループは連結で741名、単体で22名の従業員を擁しています。筆頭株主は事業会社のサンコモトで、第2位は代表取締役社長の河本大輔氏、第3位は大戸綾加氏です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| サンコモト | 38.11% |
| 河本 大輔 | 8.24% |
| 大戸 綾加 | 6.00% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性2名の計7名で構成され、女性役員比率は28.6%です。代表取締役社長は河本大輔氏が務めています。社外取締役の比率は42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 河本 大輔 | 代表取締役社長 | 1992年住友商事入社。アシード情報システム代表取締役社長などを経て、2013年より現職。 |
| 大戸 章浩 | 取締役常務執行役員 | 1992年東洋信託銀行入行。アシードブリュー代表取締役社長などを経て、2024年より現職。 |
| 久保 一史 | 取締役執行役員 | 1987年広島銀行入行。アシード代表取締役社長などを経て、2024年より現職。 |
| 岡﨑 仁 | 取締役(監査等委員) | 1985年同社入社。執行役員九州支社長や業務本部長などを経て、2018年より現職。 |
社外取締役は、清原昭子(福山市大学都市経営学部教授)、豊田基嗣(豊田公認会計士事務所代表)、下岡郁(アペックス取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「自販機運営リテイル事業」、「飲料製造事業」、「不動産運用事業」および「その他事業」を展開しています。
■自販機運営リテイル事業
主に缶・ボトル飲料やカップ飲料、紙パック飲料、スナック食品などのスマートストア(自販機)を通じた小売販売と運営管理を行っています。事業所や工場、商業施設などを中心に、一般消費者に対して直接飲料等を提供しています。
自販機を通じた商品の小売代金が主な収益源です。事業の運営は主にアシードやいいじまが担当しており、効率化による収益性の向上とM&Aによる規模の拡大を通じて業界再編を進めています。
■飲料製造事業
清涼飲料、ソフトパウチ飲料、低アルコール飲料、健康茶飲料の企画・製造・販売のほか、自社ブランド商品の展開や茶葉の受託加工などを行っています。飲料メーカーやブランドオーナーが主な顧客です。
ブランドオーナーからの受託製造にかかる対価や、自社商品の販売代金が収益源となります。事業の運営はアシードビバレッジプラスやアシードブリュー、静岡ローストシステムなどが行っています。
■不動産運用事業
オフィスビルや商業施設などの開発および賃貸等を行い、グループ所有の不動産の有効活用と効率的な管理を実施しています。テナント企業や利用者が主な顧客となります。
テナント等からの不動産賃貸収入が主な収益源です。事業の運営は主に同社およびアオンズエステートが行っています。
■その他事業
自社グループ内を含む倉庫事業および物流事業を展開し、ロジスティクスサービス(3PL)の強化を図っています。商品の保管や配送を必要とする企業が主な顧客です。
物流・保管業務に関するサービス提供料が主な収益源です。事業の運営は主にロジックイノベーションが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、売上高が順調に拡大を続けており、成長傾向にあります。経常利益も売上拡大に伴って安定的に増加しており、直近の期間では利益率も向上しています。利益水準を確保しながら着実な事業拡大を実現していることが分かります。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 193億円 | 212億円 | 233億円 | 240億円 | 254億円 |
| 経常利益 | 9億円 | 9億円 | 10億円 | 11億円 | 14億円 |
| 利益率(%) | 4.7% | 4.4% | 4.5% | 4.6% | 5.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3億円 | 2億円 | 4億円 | 3億円 | 3億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は着実に増加し、売上総利益率も安定した水準を維持しています。営業利益および営業利益率も前期と比較して向上しており、事業の収益性が高まっていることがうかがえます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 240億円 | 254億円 |
| 売上総利益 | 91億円 | 97億円 |
| 売上総利益率(%) | 38.0% | 38.3% |
| 営業利益 | 8億円 | 11億円 |
| 営業利益率(%) | 3.2% | 4.2% |
販売費及び一般管理費のうち、販売交付金が31億円(構成比36%)、従業員給与が18億円(同21%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の自販機運営リテイル事業は安定した売上を維持し、全体を牽引しています。また、飲料製造事業が前期から順調に売上を伸ばしており、全体の増収に大きく貢献しています。その他事業も着実な成長を見せています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 自販機運営リテイル事業 | 136億円 | 139億円 |
| 飲料製造事業 | 100億円 | 111億円 |
| 不動産運用事業 | 1億円 | 1億円 |
| その他事業 | 3億円 | 3億円 |
| 連結(合計) | 240億円 | 254億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業活動で得た資金と借入による調達資金を組み合わせて積極的な投資を行う「積極型」の傾向を示しています。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は32.9%で市場平均を下回っています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 8億円 | 20億円 |
| 投資CF | -8億円 | -25億円 |
| 財務CF | 2億円 | 26億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「人、地球、未来-すべての笑顔と健康のために」というグループビジョンを掲げています。財務的な事業価値の向上だけでなく、事業を通じた社会的課題の解決に貢献し、人間価値、社会価値、そして資本価値の最大化を目指しています。
■(2) 企業文化
同社グループは「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の「三位一体となった哲学」をもって経営を推進しています。価格ではなく「価値」で勝負することを事業コンセプトの基盤とし、最高水準の商品とサービスを提供するために活動する文化を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、付加価値の増殖による株主資本の充実と総資本の効率的運用を目標としています。企業価値を高める中期的な経営指標として、以下の数値目標を設定しています。
・ROE(自己資本当期純利益率)12%以上
・ROA(総資産経常利益率)7%以上
・自己資本比率35%程度
・配当性向30%程度
■(4) 成長戦略と重点施策
「ブランド創造企業への挑戦」を最優先とし、商品開発やマーケティングの強化を進めています。自販機運営リテイル事業の効率化や飲料製造事業における東西2工場体制での生産性向上を図りつつ、M&Aを通じた規模の拡大にも注力し、国内外での新規事業展開を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループは、人材を持続的成長を支える重要な基盤と位置づけ、「働き方改革の推進」「多様性の推進」「女性活躍推進」「次世代経営人材育成」などを重点テーマとしています。グループ採用や異動制度を通じて多様な人材を確保し、一人ひとりが能力を発揮できる組織づくりを推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.5歳 | 13.3年 | 4,980,951円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 20.0% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 65.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 62.6% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
※男性育児休業取得率および非正規雇用の男女賃金差異は該当者がいないため省略されています。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、グループ連結の女性管理職比率(7.0%)、グループ連結の男性育児休業取得率(100.0%)、新卒採用における女性比率(過去3年間平均で50%以上)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 遊技場業界への売上依存
自販機運営リテイル事業において遊技場業界に対する売上構成が比較的高い状況にあり、同業界の環境変化や規制変更が業績に影響を及ぼす可能性があります。同社はオフィスや工場への営業を強化し、バランスの取れた売上構成を目指しています。
■(2) 飲料受託生産における環境変化
飲料製造事業ではブランドオーナーからの受託生産が高い水準にあります。天候やブランドオーナーの外注政策の変更によって受注量が変動し、経営に影響を与える可能性があるため、自社ブランドの拡充を図りリスクの低減に努めています。
■(3) アルコール摂取への価値観の変化
低アルコール飲料を製造・販売しているため、健康志向の高まりや酒類販売に関する規制の強化により、消費者需要が縮小する可能性があります。同社は健康被害の予防に努め、健康に配慮した商品の提供を進めています。



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