アシードホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アシードホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場企業。主力事業は自販機運営リテイル事業と飲料製造事業で、自販機運営や飲料の受託製造等を行う。当期の連結業績は、売上高240億円(前期比3.0%増)と増収、経常利益11億円(同5.4%増)と増益を達成したが、当期純利益は減益となった。


※本記事は、アシードホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第53期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アシードホールディングスってどんな会社?


自販機運営と飲料製造を中核とする企業グループ。自販機ネットワークと製造工場の双方を持つ点が特徴。

(1) 会社概要


1972年に日本バンテンとして設立され、1989年にアシードへ商号変更しました。2001年に東京証券取引所市場第二部(現スタンダード市場)へ上場を果たし、2008年には持株会社体制へ移行して現社名となりました。2024年にはグループ内の飲料製造機能を再編し、アシードビバレッジプラス等を核とする体制を整備しています。

現在の従業員数は連結751名、単体25名です。筆頭株主は代表取締役社長の河本大輔氏が代表を務める資産管理会社のサンコモト㈲で、第2位は河本大輔氏本人、第3位は大戸綾加氏となっています。経営陣による持株比率が高く、オーナーシップの強い資本構成です。

氏名 持株比率
サンコモト㈲ 38.20%
河本 大輔 8.21%
大戸 綾加 5.99%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は河本大輔氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
河本 大輔 代表取締役社長 住友商事入社後、アシード情報システム社長等を経て、2013年より現職。
大戸 章浩 取締役常務執行役員 東洋信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)出身。グループ各社の役員を歴任し、2024年より現職。
久保 一史 取締役執行役員 広島銀行出身。アシード社長等を経て、2024年より現職。
岡﨑 仁 取締役(監査等委員) 1985年同社入社。業務本部長やグループ各社監査役を経て、2018年より現職。


社外取締役は、佐久間建弘(元福山市農業協同組合代表理事組合長)、下岡郁(アペックス取締役)、小野隆平(弁護士)、豊田基嗣(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「自販機運営リテイル事業」「飲料製造事業」「不動産運用事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 自販機運営リテイル事業


主に缶・ボトル飲料、カップ飲料、紙パック飲料、スナック食品などを取り扱う「スマートストア(自販機)」による小売販売および運営管理を行っています。ロケーションの開拓から商品補充、メンテナンスまでを一貫して手がけています。

収益は、自販機を利用する一般消費者からの商品購入代金が主な源泉です。運営は主にアシード、および株式会社いいじまが行っています。

(2) 飲料製造事業


清涼飲料、ソフトパウチ飲料、低アルコール飲料、健康茶飲料などの企画・製造・販売を行っています。大手飲料メーカーからの受託製造(OEM)に加え、自社ブランド商品の開発・販売も展開しています。

収益は、ブランドオーナーからの製造受託費や、小売店・消費者への自社製品の販売代金から得ています。運営は主にアシードビバレッジプラス、アシードブリュー、株式会社河村農園、静岡ローストシステム株式会社などが担っています。

(3) 不動産運用事業


グループが所有するオフィスビルや商業施設などの不動産の有効活用と効率管理を目的として、開発および賃貸事業を行っています。

収益は、テナントからの賃貸料収入が主な源泉です。運営は主に同社およびアオンズエステート株式会社が行っています。

(4) その他事業


倉庫事業、物流事業、環境事業などを展開しています。グループ内の物流機能の強化や効率化を担うとともに、外部顧客へのサービス提供も行っています。

収益は、物流・保管業務の対価としてのサービス料などから得ています。運営は主にロジックイノベーション株式会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は193億円から240億円へと拡大傾向にあります。経常利益も6億円台から11億円台へと増加しており、利益率は4%台で安定的に推移しています。全体として事業規模の拡大とともに利益水準も向上していることが読み取れます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 239億円 193億円 212億円 233億円 240億円
経常利益 6億円 9億円 9億円 10億円 11億円
利益率(%) 2.7% 4.7% 4.4% 4.5% 4.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円 3億円 2億円 4億円 3億円

(2) 損益計算書


売上高は前期の233億円から当期は240億円へ増加しました。売上総利益率は38%前後で安定しています。営業利益は前期とほぼ同水準を維持しており、売上増に伴い利益の絶対額も確保されています。コストコントロールを継続しつつ、事業拡大を図っている状況です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 233億円 240億円
売上総利益 88億円 91億円
売上総利益率(%) 37.8% 38.0%
営業利益 8億円 8億円
営業利益率(%) 3.3% 3.2%


販売費及び一般管理費のうち、販売交付金が31億円(構成比37%)、従業員給与が17億円(同21%)を占めています。

(3) セグメント収益


当期は全セグメントで増収となりました。主力の自販機運営リテイル事業は価格改定等の効果で微増収、飲料製造事業はOEM受注増や茶葉加工の好調により堅調に推移しました。その他事業も物流内製化の進展等により売上を伸ばしています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
自販機運営リテイル事業 134億円 136億円
飲料製造事業 94億円 100億円
不動産運用事業 1億円 1億円
その他事業 2億円 3億円
連結(合計) 233億円 240億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業で稼いだ資金を投資や借入返済だけでなく、新たな成長投資にも積極的に回している「積極型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 17億円 8億円
投資CF -10億円 -8億円
財務CF -2億円 2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は36.8%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「ミッション(使命)」「ビジョン(理想)」「バリュー(価値)」の三位一体となった哲学を経営の根幹としています。事業の全プロセスにおいて最高水準の商品・サービス価値を創造し、顧客・社員・社会・投資家のロイヤリティを高めることを「価値命題」と定めています。

(2) 企業文化


同社グループは、「価格」ではなく「価値」で勝負することをコンセプトとし、人間性・社会性・経済性を重視した事業行動を規範としています。また、「ASEEDING THE FUTURE 人、地球、未来-すべての笑顔と健康のために」というグループビジョンのもと、持続的な企業価値拡大を目指す文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、付加価値の増殖による株主資本の充実と効率的運用を目標としています。企業価値を高めるための中期的な経営指標として、以下の数値目標を設定し、その実現と恒常的な確保に努めています。

* ROE(自己資本当期純利益率):12%以上
* ROA(総資産経常利益率):7%以上
* 自己資本比率:35%程度
* 配当性向:30%程度

(4) 成長戦略と重点施策


「ブランド創造企業への挑戦」や「自販機運営リテイル事業の競争力強化」など、6つの重要な成長戦略を推進しています。特に自社ブランド商品の開発・輸出強化、業界再編を見据えた自販機事業の拡大、製造拠点の統合・新設による生産性向上に注力する方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人間尊重と人材育成」を基本とし、働きがいのある環境づくりを推進しています。具体的には、働き方改革による有給休暇取得促進や長時間労働の是正、キャリア採用やグループ採用を通じた人材の多様化、階層別研修やリスキリングによる能力開発に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 46.4歳 14.2年 4,838,140円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 12.5%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 78.1%
男女賃金差異(正規雇用) 79.7%
男女賃金差異(非正規雇用) -


※男女賃金差異(非正規雇用)の数値がない理由は、該当者がいないためです。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職に占める女性労働者の割合(連結)(5.3%)、男女の賃金の差異(連結・全労働者)(57.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 法的規制や制度変更


食品衛生法、酒税法、環境関連法規など多岐にわたる法的規制を受けています。これらの法令変更や新たな規制導入、あるいはコンプライアンス違反が発生した場合、社会的制裁や処罰により、経営成績やブランドへの信頼に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 遊技場業界への依存


自販機運営リテイル事業において、遊技場業界向けの売上構成が比較的高い状況にあります。同業界の経営環境の変化や規制・条例の変更などにより市場が縮小した場合、同社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

(3) 飲料受託生産の変動


飲料製造事業では、ブランドオーナーからの受託生産(OEM)の比率が高くなっています。天候不順や委託元の外注政策の変更などにより受注量が変動し、経営成績や財政状態が左右される可能性があります。

(4) アルコール関連の規制・需要変化


低アルコール飲料(RTD)の製造・販売を行っていますが、健康被害への懸念から酒類販売規制が強化されたり、健康志向の高まりで需要が縮小したりした場合、売上収益の減少やブランド価値の毀損につながる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。