※本記事は、株式会社明豊エンタープライズ の有価証券報告書(第57期、自 2024年8月1日 至 2025年7月31日、2025年10月31日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 明豊エンタープライズってどんな会社?
東京23区の城南・城西エリアを中心に、新築1棟投資用賃貸住宅の開発・販売を行う不動産会社です。
■(1) 会社概要
1968年に設立され、仲介・賃貸業から始まりました。2004年にジャスダック証券取引所に上場しています。2014年に賃貸アパートメントブランド「MIJAS」、2019年に賃貸マンションブランド「EL FARO」を竣工させ、現在の主力事業を確立しました。2022年には総合建設会社の協栄組を子会社化し、2024年には新ブランド「LOS ARCOS」を発表するなど、事業基盤の拡大を進めています。
連結従業員数は151名、単体従業員数は49名です。筆頭株主は代表取締役会長兼社長の矢吹満氏、第2位はプリマベーラ、第3位は田中成奉氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 矢吹 満 | 44.82% |
| プリマベーラ | 8.14% |
| 田中 成奉 | 4.10% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役会長兼社長は矢吹満氏が務めています。取締役8名のうち5名が社外取締役であり、社外取締役比率は62.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 矢吹 満 | 代表取締役会長兼社長 | 麻布ビルディング代表取締役社長、ランド・キャピタルパートナーズ代表取締役社長を経て、2020年同社代表取締役会長、2022年より現職。 |
| 安田 俊 治 | 取締役専務執行役員管理担当 | 大豊建設経営企画室経営企画課長兼法務課長等を経て、2006年同社入社。管理部長などを歴任し、2021年より現職。 |
| 吉 田 茂 樹 | 取締役執行役員営業本部長 | 近鉄不動産執行役員名古屋支店長等を経て、2015年同社入社。営業統括部長などを歴任し、2022年より現職。 |
社外取締役は、萱野唯(弁護士)、山本泰史(元ゴールドマン・サックス証券)、松本悠平(元カチタス取締役)、神田有宏(元PGMホールディングス社長)、柴田陽子(柴田陽子事務所代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「不動産開発事業」「不動産賃貸事業」「不動産仲介事業」「建設事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 不動産開発事業
「EL FARO(エルファーロ)」「MIJAS(ミハス)」「LOS ARCOS(ロスアルコス)」ブランドによる新築1棟投資用賃貸住宅の開発および不動産再生事業を行っています。東京23区内でも人気の高い城南・城西エリアに集中して展開しています。
収益は、開発した物件の販売による売上高が中心です。運営は主に明豊エンタープライズが行っています。
■(2) 不動産賃貸事業
マンションおよびビル等の賃貸、不動産管理受託、サブリース事業を行っています。自社保有物件の賃貸に加え、オーナーから受託した建物管理や、一括借上による転貸業務を手掛けています。
収益は、賃貸物件からの賃料収入や、オーナーからの管理委託手数料等です。運営は連結子会社の明豊プロパティーズやハウスセゾンエンタープライズなどが行っています。
■(3) 不動産仲介事業
主に不動産開発事業に関連するマンション用地等の仲介業務を行っています。また、台湾現地法人を通じて海外顧客に向けた国内不動産の仲介業務も手掛けています。
収益は、不動産売買に伴う仲介手数料です。運営は明豊エンタープライズおよび連結子会社、台湾現地法人が行っています。
■(4) 建設事業
工事請負、リフォーム工事の施工および工事監理を行っています。
収益は、顧客からの工事請負代金です。運営は連結子会社が行っています。
■(5) その他
上記セグメントに含まれない事業として、主に保険代理業を行っています。
収益は、保険代理店手数料等です。運営は明豊エンタープライズおよび連結子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は第53期の102億円から第57期の298億円へと約3倍に拡大しています。利益面でも、経常利益は10億円前後で推移した後、第56期以降に急伸し、第57期には27億円に達しました。利益率も9%台の高水準を維持しており、事業規模の拡大とともに収益性も向上していることがわかります。
| 項目 | 2021年7月期 | 2022年7月期 | 2023年7月期 | 2024年7月期 | 2025年7月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 102億円 | 112億円 | 152億円 | 206億円 | 298億円 |
| 経常利益 | 10億円 | 9億円 | 10億円 | 19億円 | 27億円 |
| 利益率(%) | 9.4% | 8.4% | 6.4% | 9.2% | 9.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 7億円 | 14億円 | 9億円 | 18億円 | 16億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で大きく増加し、それに伴い売上総利益も拡大しています。営業利益率も11.3%と高い水準を維持しており、収益性の高さがうかがえます。
| 項目 | 2024年7月期 | 2025年7月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 206億円 | 298億円 |
| 売上総利益 | 46億円 | 57億円 |
| 売上総利益率(%) | 22.1% | 19.1% |
| 営業利益 | 23億円 | 34億円 |
| 営業利益率(%) | 11.4% | 11.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が7億円(構成比28%)、賞与引当金繰入額が2億円(同10%)、役員報酬が2億円(同9%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の不動産開発事業が売上高・利益ともに大きく伸長し、全社業績を牽引しました。建設事業は売上が増加したものの、セグメント損失となっています。不動産賃貸事業は減収減益となりました。
| 区分 | 売上(2024年7月期) | 売上(2025年7月期) | 利益(2024年7月期) | 利益(2025年7月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 不動産開発事業 | 159億円 | 244億円 | 29億円 | 36億円 | 14.7% |
| 不動産賃貸事業 | 20億円 | 16億円 | 0.5億円 | 0.0億円 | 0.1% |
| 不動産仲介事業 | 0.0億円 | 0.5億円 | 0.0億円 | 0.5億円 | 97.9% |
| 建設事業 | 26億円 | 37億円 | -4億円 | -0.8億円 | -2.2% |
| その他 | 0.5億円 | 1億円 | 0.5億円 | 1億円 | 95.4% |
| 調整額 | -0.3億円 | -0.4億円 | -3億円 | -3億円 | - |
| 連結(合計) | 206億円 | 298億円 | 23億円 | 34億円 | 11.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のCF状況は「改善型」です。本業で得た資金と資産売却等による収入を、借入金の返済に充てている改善局面にあると言えます。
| 項目 | 2024年7月期 | 2025年7月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -46億円 | 29億円 |
| 投資CF | 5億円 | 3億円 |
| 財務CF | 36億円 | -13億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は21.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は32.7%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「企業を通じてよりよい社会を建設しよう」を経営理念として掲げています。物造りにこだわったデベロッパーとして、新築1棟投資用賃貸住宅を主力商品とし、他社との差別化を図りながら安定的な企業成長を続けることを経営目標としています。
■(2) 企業文化
「物造りにこだわったデベロッパー」としての価値観を重視しています。また、経営理念に基づき、「一生涯のお付き合い」という精神のもと、ステークホルダーとの信頼と協力を大切にし、地域社会とともに未来を切り拓くロングパートナーであり続けることを目指しています。
■(3) 経営計画・目標
安定的な企業成長を目指し、収益性を重視した経営を行っています。具体的な経営指標として、以下の2点を重視し、安定的な業績の実現を目指しています。
* 売上高経常利益率
* 自己資本比率
■(4) 成長戦略と重点施策
これまでに確立した垂直統合モデルをさらに発展させ、他地域や他分野へ横展開する水平展開戦略を推進しています。既存事業モデルの強みを活かし、収益の安定化と持続的な成長機会の拡大を図ります。
* 不動産開発事業:城南・城西エリアの実績を基盤に、国内外の投資家ネットワークを拡大。海外投資家や富裕層との連携強化、フィービジネスの導入による役務収益の拡大。
* 不動産賃貸事業:AI・ITを活用した効率的な管理サービスの提供による管理戸数および収益源の拡大。
* 建設事業:非住宅案件やリニューアル工事の受注拡大、自社ノウハウの外部展開による収益基盤の構築。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「社員一人一人の人生を明るく豊かにする」という考えのもと、若手が主体となるPJチーム制や職種別キャリア設計を導入しています。入社2年目社員が新卒教育を担う循環型成長システムの導入などにより、人材育成の継続性と組織の活性化を図り、主体的に挑戦できる組織風土を育成しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年7月期 | 33.4歳 | 4.3年 | 8,109,000円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでいます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 不動産市況等の変動
不動産開発事業は、景気、金利、地価、建築費等の外部環境の影響を受けやすい特性があります。景気悪化や金利上昇、建築費高騰などは、購入意欲の減退やコスト増を通じて業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は短期サイクルのビジネスモデル構築により環境変化への対応を図っています。
■(2) 有利子負債への依存
事業資金を主に金融機関からの借入で調達しており、有利子負債依存度が高い水準にあります。金利水準の大幅な変動は、業績や財政状態に影響を与える可能性があります。
■(3) 棚卸資産の評価
「棚卸資産の評価に関する会計基準」を適用しており、保有する棚卸資産の時価(正味売却価額)が取得原価を下回った場合、その差額を費用処理する必要があります。景気変動や不動産市況の悪化により評価損が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。



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