※本記事は、株式会社エイチームホールディングス の有価証券報告書(第26期、自 2024年8月1日 至 2025年7月31日、2025年10月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. エイチームホールディングスってどんな会社?
比較サイトやECサイトの運営、モバイルゲーム開発などを手掛ける総合IT企業です。「売上向上支援カンパニー」への変革を掲げています。
■(1) 会社概要
2000年に有限会社エイチームとして設立され、2006年に引越し比較サイトを開始しました。2012年に東証マザーズ上場を経て同年東証一部へ上場。2021年には持株会社体制へ移行し、各事業を子会社へ承継しました。2025年4月には商号をエイチームホールディングスへ変更しています。
連結従業員数は783名、単体では70名です。筆頭株主は創業者の林高生氏の資産管理会社である株式会社林家族で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位には従業員持株会が入っており、経営陣と従業員が株式を保有するオーナーシップの高い資本構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 林家族 | 29.74% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 6.25% |
| エイチームホールディングス従業員持株会 | 4.54% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は林高生氏が務めています。社外取締役比率は66.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 林 高生 | 代表取締役社長 | 1997年にエイチームを創業し、2000年の法人化以降、代表取締役社長を務める。グループ各社の取締役を歴任し、現在はエイチームライフデザインの代表取締役も兼務する。 |
| 中内 之公 | 取締役 | 2009年に入社し、エンターテインメント事業本部長などを歴任。現在はベトナム子会社およびエイチームエンターテインメントの代表取締役社長を兼任し、2025年10月より現職。 |
社外取締役は、火浦俊彦(元ベイン・アンド・カンパニー日本代表)、加藤淳也(城南法律事務所所長)、北川ひろみ(南山大学法務研究科教授)、土井竜二(土井会計事務所所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「メディア・ソリューション」、「D2C」および「エンターテインメント」事業を展開しています。
■(1) メディア・ソリューション
日常生活に密着した比較サイト・情報サイトの運営や、法人向けのデジタル集客支援サービスを提供しています。引越し、自動車、金融、人材などの領域でメディアを展開するほか、エンジニアコミュニティ「Qiita」等の運営も行っています。
収益は、提携事業者への送客に対する紹介手数料や成約報酬、広告掲載料などが主です。運営は主に株式会社エイチームライフデザイン、株式会社エイチームフィナジー、Qiita株式会社、株式会社microCMSなどの連結子会社が行っています。
■(2) D2C
化粧品ブランド「lujo」やドッグフードブランド「OBREMO」など、複数の商材を取り扱うECサイトの企画・運営を行っています。商品の企画・開発・販促を自社で行い、製造は外部委託するOEMモデルを採用しています。
収益は、一般消費者への商品販売代金です。主に継続的な購入が見込める定期販売モデルを展開しています。運営は、株式会社エイチームウェルネスおよび株式会社エイチームコマーステックが行っています。
■(3) エンターテインメント
「人と人とのつながりの実現」をテーマに、スマートデバイス向けのゲームやツールアプリケーションの企画・開発・運営を行っています。世界中の市場をターゲットに、グローバルIPとの連携なども進めています。
収益は、アプリ内でのアイテム販売による課金収入が中心です。基本プレイ無料のモデルを採用しています。運営は、株式会社エイチームエンターテインメントが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は第23期をピークに減少傾向にありましたが、直近では下げ止まっています。経常利益は第23期に赤字となりましたが、その後回復し、当期は大幅な増益を達成しました。利益率は改善傾向にあり、当期は6.6%まで上昇しています。
| 項目 | 2021年7月期 | 2022年7月期 | 2023年7月期 | 2024年7月期 | 2025年7月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 313億円 | 318億円 | 276億円 | 239億円 | 239億円 |
| 経常利益 | 9億円 | -2.2億円 | 7億円 | 6億円 | 16億円 |
| 利益率(%) | 2.9% | -0.7% | 2.6% | 2.5% | 6.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 11億円 | -6億円 | 2億円 | 7億円 | 6億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期と同水準でしたが、売上原価の減少により売上総利益は微増しました。販管費の抑制も進み、営業利益率は前期の2.4%から3.5%へ改善しています。
| 項目 | 2024年7月期 | 2025年7月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 239億円 | 239億円 |
| 売上総利益 | 204億円 | 205億円 |
| 売上総利益率(%) | 85.2% | 85.8% |
| 営業利益 | 6億円 | 8億円 |
| 営業利益率(%) | 2.4% | 3.5% |
販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が118億円(構成比60%)、給料及び手当が24億円(同12%)、支払手数料が24億円(同12%)を占めています。
■(3) セグメント収益
メディア・ソリューション事業は増収となった一方、D2Cとエンターテインメント事業は減収でした。しかし、利益面ではD2Cとエンターテインメントが黒字転換し、メディア・ソリューションも高水準の利益を維持したことで、全体としての収益性は向上しています。
| 区分 | 売上(2024年7月期) | 売上(2025年7月期) | 利益(2024年7月期) | 利益(2025年7月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| メディア・ソリューション | 172億円 | 175億円 | 14億円 | 13億円 | 7.6% |
| D2C | 24億円 | 22億円 | -1.5億円 | 0.1億円 | 0.3% |
| エンターテインメント | 44億円 | 42億円 | -0.4億円 | 5億円 | 12.3% |
| 連結(合計) | 239億円 | 239億円 | 6億円 | 8億円 | 3.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動および投資活動によって創出したキャッシュを、自己株式の取得を中心とした財務活動に充てる構造となっています。
本業による収益に加え、投資有価証券の売却等により計20億円規模の資金を創出しましたが、それを上回る37.1億円を自己株式の取得等の財務活動に投じた結果、現預金残高は前期末比で17.4億円減少しました。
| 項目 | 2024年7月期 | 2025年7月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 8億円 | 16億円 |
| 投資CF | -10億円 | 4億円 |
| 財務CF | 22億円 | -37億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は59.3%で市場平均を上回っています(いずれも市場平均を上回る)。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「みんなで幸せになれる会社にすること」「今から100年続く会社にすること」を経営理念として掲げています。この理念のもと、技術と創造性を活かして世の中を便利で楽しくすることを目指しています。
■(2) 企業文化
“Ateam Purpose”として「Creativity × Techで、世の中をもっと便利に、もっと楽しくすること」を掲げています。また、“Ateam People”という価値観のもと、「お互いを認め合う」「オープンでフラットな経営」「コミュニケーションを大切にする」「挑戦と変化を楽しむ」といった企業文化を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
「売上向上支援カンパニー」への変革を基本方針としています。これまで培ったデジタルマーケティングのノウハウや技術力を活かし、法人向けに集客支援コンサルティングや業務支援ツールを提供することで、クライアント企業の売上向上を支援する新たな事業ポートフォリオの構築を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
中長期的な成長に向け、デジタルマーケティング事業ではM&Aを活用したソリューションの拡充を進め、エンターテインメント事業ではグローバル市場での成長を目指します。また、優秀な人材の確保と育成、コーポレートブランドの向上、サステナビリティ経営の推進なども重点課題として取り組んでいく方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「才能の発見」と「成長の促進」をテーマに人材育成を行っています。新規事業案コンテスト「A+」や自発型研修制度「チームラーニング」などを通じて社員の挑戦を支援しています。また、多様な働き方の推進や、ジョブポスティング制度などの機動的な人材活用により、企業と共に成長する人材の育成に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年7月期 | 38.9歳 | 8.3年 | 7,163,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 46.7% |
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 74.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 68.3% |
| 男女賃金差異(非正規) | 129.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性労働者の育休復帰率(87.5%)、女性労働者の平均勤続年数(7.6年)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) IT市場の外部環境
モバイルゲーム市場やインターネット市場の規模縮小、景況感の悪化などが業績に影響を与える可能性があります。また、D2C事業においては、原材料価格の高騰などがリスク要因となります。
■(2) 事業に関するリスク
取引先の経営状況悪化による売掛金回収の遅延や不能、保有する暗号資産の流出や価格変動、海外展開における為替変動などが業績に影響を及ぼす可能性があります。また、商品の品質問題やM&A後の減損リスクなども存在します。
■(3) 組織体制に関するリスク
創業者の林高生社長への過度な依存や、事業拡大に伴う内部管理体制の構築遅れ、優秀な人材の確保・流出などが、今後の事業展開や業績に影響を与える可能性があります。
■(4) コンプライアンスに関するリスク
景品表示法や個人情報保護法などの法的規制の強化や改正、知的財産権の侵害、個人情報の漏洩、サービスの安全性に関するトラブルなどが、事業運営や企業イメージに影響を及ぼす可能性があります。



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