※本記事は、株式会社はてな の有価証券報告書(第25期、自 2024年8月1日 至 2025年7月31日、2025年10月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. はてなってどんな会社?
ブログサービス「はてなブログ」などを運営する技術力に強みを持つ企業です。個人向けサービスの知見を活かし、法人向けの技術支援やマーケティング支援も展開しています。
■(1) 会社概要
2001年に京都で有限会社として設立され、「人力検索サイトはてな」を開始しました。その後、2003年にブログサービス、2005年にソーシャルブックマークサービス「はてなブックマーク」を開始し、日本のWebサービスの草分け的存在となりました。2016年に東証マザーズ(現グロース)へ上場を果たしています。2024年には生成AIを活用した発話分析ソリューション「toitta」をリリースするなど、新技術への取り組みも続けています。
同社は連結子会社を持たず、単体で事業を行っており、従業員数は217名です。大株主については、筆頭株主は創業者の近藤淳也氏で、第2位は証券会社です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 近藤 淳也 | 32.66% |
| SBI証券 | 5.56% |
| 新村 健造 | 4.79% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名、計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は栗栖義臣氏が務めています。社外取締役比率は16.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 栗栖 義臣 | 代表取締役社長 | TISを経て2008年に入社。プロデューサー、サービス開発本部長などを歴任し、2014年より現職。 |
| 大西 康裕 | 取締役コンテンツ本部長 | 2001年に入社。チーフエンジニア、サービス・システム開発本部長などを経て2025年より現職。 |
| 田中 慎樹 | 取締役コーポレート本部長 | アクセンチュアを経て2004年に入社。執行役員コーポレート本部長などを経て2020年より現職。 |
| 近藤 淳也 | 取締役 | 同社創業者。2001年設立とともに代表取締役社長に就任。現在はOND代表取締役社長などを兼任し、2017年より現職。 |
| 毛利 裕二 | 取締役 | アイレップ執行役員などを経て2010年に入社。ビジネス開発本部長などを務め、2020年より現職(非常勤)。 |
社外取締役は、リチャード チェン(元Google Inc.シニアビジネスプロダクトマネージャー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「UGCサービス事業」の単一セグメントですが、サービスの内容により「コンテンツプラットフォームサービス」、「コンテンツマーケティングサービス」、「テクノロジーソリューションサービス」および「その他」に区分して事業を展開しています。
■コンテンツプラットフォームサービス
ブログサービス「はてなブログ」やソーシャルブックマーク「はてなブックマーク」などのUGC(User Generated Content)サービスを提供しています。ITリテラシーの高いユーザー層を持つことが特徴です。
収益は、ユーザーからの有料プラン課金収入や、アフィリエイト広告収入等からなります。運営ははてなが行っています。
■コンテンツマーケティングサービス
企業のオウンドメディア構築・運用を支援する「はてなCMS」の提供や、自社メディアの広告枠を活用した集客支援を行っています。
収益は、CMS利用料やコンテンツ制作費、ネイティブ広告やタイアップ広告などの広告掲載料からなります。運営ははてなが行っています。
■テクノロジーソリューションサービス
マンガビューワ「GigaViewer」の提供や受託開発、サーバー監視サービス「Mackerel」などを展開しています。出版社向けのマンガアプリ開発や運用支援に注力しています。
収益は、受託開発料、保守運用料、レベニューシェア(広告・課金収益の分配)、およびSaaS型サービスの利用料からなります。運営ははてなが行っています。
■その他サービス
ブロックチェーン技術を活用した取り組みなどを行っています。
収益は、ブロックチェーン・インフラ「Japan Open Chain」のバリデータ(共同運営者)としての報酬などからなります。運営ははてなが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は増加傾向にあり、特に直近の2025年7月期は前期比で大きく伸長しました。利益面では、2024年7月期に一時落ち込みましたが、2025年7月期には回復し、高い利益率を確保しています。
| 項目 | 2021年7月期 | 2022年7月期 | 2023年7月期 | 2024年7月期 | 2025年7月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 26億円 | 31億円 | 32億円 | 33億円 | 38億円 |
| 経常利益 | 2.5億円 | 3.4億円 | 1.8億円 | 0.9億円 | 3.4億円 |
| 利益率(%) | 9.7% | 11.2% | 5.8% | 2.8% | 8.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.7億円 | 2.4億円 | 1.0億円 | 0.6億円 | 2.3億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益も拡大しています。利益率の高いサービスの貢献や増収効果により、営業利益率は前期の2.1%から8.9%へと大幅に改善しました。
| 項目 | 2024年7月期 | 2025年7月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 33億円 | 38億円 |
| 売上総利益 | 27億円 | 32億円 |
| 売上総利益率(%) | 82.0% | 85.6% |
| 営業利益 | 0.7億円 | 3.4億円 |
| 営業利益率(%) | 2.1% | 8.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が12億円(構成比40%)、データセンター利用料が8億円(同27%)を占めています。売上原価においては、労務費が2.8億円(構成比50%)と高い割合を占めています。
■(3) セグメント収益
単一セグメントのため、サービス領域ごとの売上高を開示しています。テクノロジーソリューションサービスが売上の大半を占め、成長を牽引しています。コンテンツマーケティングサービスとコンテンツプラットフォームサービスは横ばいまたは微減傾向にあります。
| 区分 | 売上(2024年7月期) | 売上(2025年7月期) |
|---|---|---|
| テクノロジーソリューションサービス | 23億円 | 28億円 |
| コンテンツマーケティングサービス | 6億円 | 6億円 |
| コンテンツプラットフォームサービス | 4億円 | 3億円 |
| その他サービス | - | 0.1億円 |
| 連結(合計) | 33億円 | 38億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本的な財務方針としています。
営業活動では、主に税引前当期純利益の計上により、前事業年度から大幅に増加した資金を獲得しました。投資活動では、投資有価証券の売却収入があったものの、無形固定資産の取得による支出が主な資金使用となりました。財務活動では、新株予約権の行使による株式発行により、わずかながら資金を獲得しました。
| 項目 | 2024年7月期 | 2025年7月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1.5億円 | 7.1億円 |
| 投資CF | -1.1億円 | -0.4億円 |
| 財務CF | 0.0億円 | 0.0億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、『「知る」「つながる」「表現する」で新しい体験を提供し、人の生活を豊かにする』をミッションに掲げています。インターネットテクノロジーカンパニーとして技術を磨き、便利で質の高いサービスを提供することで、より豊かなインターネット社会の実現を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「技術で支えられているサービスを提供する会社」として、技術力の向上や活用を重視する文化があります。従業員が新規サービスのアイデアを自発的に具現化する施策を行うなど、モチベーションを喚起しイノベーションを創り出す組織風土の醸成に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社は、売上高、営業利益、経常利益を重視する経営指標として掲げています。これらを継続的に成長させることで、事業の安定的な成長と企業価値・株主価値の向上を目指しています。具体的な数値目標としては、中長期的な市場環境の変化に対応しながら、付加価値の高いサービスを提供していく方針です。
■(4) 成長戦略と重点施策
自社プラットフォームで培った資産と知見を法人向けサービス(はてなCMS、Mackerel等)に展開するハイブリッド戦略を推進しています。特にマンガ領域やサーバー監視等のBtoBストック型ビジネスを成長事業と位置づけ、機能開発や営業強化を行います。また、生成AI活用サービス「toitta」などの新規事業創出にも注力します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
変化の激しい市場に対応するため、専門的技術や知識を持つ優秀な人材の採用と、能力を最大限発揮できる組織体制の強化を課題としています。即戦力となる中途採用と将来を担う新卒採用を積極的に行い、職種別研修や資格取得支援などを通じて、業界を牽引する人材の育成に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年7月期 | 36.1歳 | 4.8年 | 6,123,369円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 35.3% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 100.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 74.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 81.3% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用) | 122.1% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) インターネットマーケティング関連市場に係るリスク
インターネット広告市場は拡大傾向にありますが、景気動向やデバイス環境の変化、競合他社の影響を受けやすい性質があります。技術や顧客ニーズの変化も速く、これらに迅速に対応できない場合や、広告手法の変化により従来の価値基準が通用しなくなった場合、収益が低下する可能性があります。
■(2) 特定の取引先への依存に係るリスク
同社のサービスの一部は、特定の検索エンジンからの集客や、外部の生成AI技術基盤に依存しています。検索アルゴリズムの変更や外部サービスの停止、または特定の大口顧客との取引関係に変化が生じた場合、事業機会の損失や売上の減少につながる可能性があります。
■(3) 人材の確保及び育成に係るリスク
事業拡大には優秀な人材の継続的な確保と育成が不可欠です。計画通りに採用が進まない場合や、中核となる社員が退職した場合、業務遂行や事業計画の達成に支障をきたす可能性があります。競争力のある労働環境の整備や研修制度の充実を図っています。
■(4) 技術革新や市場変化への対応
インターネット業界は技術革新が速く、特に生成AIの普及によりサービス価値が大きく変動する可能性があります。大手IT企業との競争や新たな代替サービスの登場に対し、技術開発や適応が遅れた場合、サービスの陳腐化や競争力の低下を招く恐れがあります。



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