ラクスル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ラクスル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する、印刷・集客支援の「ラクスル」や広告の「ノバセル」等のプラットフォーム事業を展開する企業です。2025年7月期の業績は売上高620億円、営業利益38億円で増収増益を達成しました。積極的なM&Aや事業領域の拡張により、継続的な成長を実現しています。


※本記事は、ラクスル株式会社 の有価証券報告書(第16期、自 2024年8月1日 至 2025年7月31日、2025年10月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ラクスルってどんな会社?


インターネットとテクノロジーで伝統的な産業の仕組みを変革する企業です。印刷や広告、物流等の分野でプラットフォーム事業を展開しています。

(1) 会社概要


2009年に印刷の新しい発注の仕組み作りを目的として設立され、2013年に印刷のシェアリングプラットフォーム「ラクスル」を開始しました。2018年に東京証券取引所マザーズへ上場し、2019年に市場第一部へ変更、2022年にプライム市場へ移行しました。事業拡大に伴い、広告プラットフォーム「ノバセル」やコーポレートITの「ジョーシス」、物流の「ハコベル」を分社化する一方、2023年には梱包材プラットフォームのダンボールワンを吸収合併するなど、組織再編を積極的に進めています。

連結従業員数は791名、単体では385名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は創業者の松本恭攝氏、第3位は資産管理を行う日本カストディ銀行です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 13.71%
松本 恭攝 12.63%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 12.23%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性4名の計9名で構成され、女性役員比率は44.4%です。代表取締役社長グループCEOは永見世央氏が務めています。社外取締役比率は77.8%です。

氏名 役職 主な経歴
永見 世央 代表取締役社長グループCEO みずほ証券、カーライル・ジャパン、ディー・エヌ・エーを経て2014年に入社。CFO等を歴任し、2023年8月より現職。
松本 恭攝 取締役会長 A.T.カーニーを経て2009年に同社を設立し代表取締役社長CEOに就任。2023年10月より現職。


社外取締役は、宮内義彦(オリックス シニア・チェアマン)、小林賢治(シニフィアン共同代表)、村上由美子(MPower Partners GP)、森尚美(公認会計士)、琴坂将広(慶大教授)、宇都宮純子(弁護士)、黒澤久美子(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「調達プラットフォーム」「マーケティングプラットフォーム」および「その他」事業を展開しています。

調達プラットフォーム


印刷・集客支援の「ラクスル」、段ボール・梱包材の「ダンボールワン」、印鑑・スタンプの「ハンコヤドットコム」等を運営しています。全国の印刷会社等と提携し、非稼働時間を活用することで低価格かつ小ロットでの印刷サービスを提供しています。主な顧客は中小企業や個人事業主です。

収益は、顧客からの印刷物や梱包材等の注文に対する販売代金です。運営は主にラクスル、株式会社ラクスルファクトリー、株式会社ハンコヤドットコム、株式会社エーリンクサービス、ネットスクウェア株式会社等が行っています。

マーケティングプラットフォーム


運用型テレビCM・動画広告のプラットフォーム「ノバセル」や、ホームページ制作SaaS「ペライチ」を提供しています。「ノバセル」ではテレビCMの企画・制作・放映から効果分析までをワンストップで支援し、「ペライチ」では手軽なWebページ作成サービスを提供しています。

収益は、広告主からの広告放映料や制作費、SaaS利用料等です。運営はノバセル株式会社、株式会社ペライチ等が行っています。

その他


上記報告セグメントに含まれない事業として、システム構築支援事業等を行っています。

収益は、システム構築支援に係るサービス料等です。運営はラクスル等が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2022年7月期から2025年7月期までの業績を見ると、売上高は340億円から620億円へと大幅に拡大しており、力強い成長トレンドにあります。利益面でも、経常利益が赤字から黒字転換し、直近では35億円まで伸長するなど、収益性が着実に向上しています。

項目 2022年7月期 2023年7月期 2024年7月期 2025年7月期
売上高 340億円 410億円 511億円 620億円
経常利益 -1.7億円 12億円 20億円 35億円
利益率(%) -0.5% 2.8% 4.0% 5.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 10億円 13億円 21億円 27億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で約21%増加し、売上総利益も順調に拡大しています。売上総利益率は30%台半ばで推移しており、プラットフォームとしての付加価値を維持・向上させています。営業利益率は前期の4.9%から6.2%へ改善しており、事業拡大に伴う利益創出力の高まりが確認できます。

項目 2024年7月期 2025年7月期
売上高 511億円 620億円
売上総利益 172億円 217億円
売上総利益率(%) 33.6% 35.0%
営業利益 25億円 38億円
営業利益率(%) 4.9% 6.2%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が52億円(構成比29%)、広告宣伝費が42億円(同23%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の調達プラットフォームは、M&A効果もあり売上が約22%増加し、利益も大幅に伸長しました。マーケティングプラットフォームも増収となりましたが、投資等の影響により若干の損失を計上しています。全体として主力事業が利益成長を牽引する構造となっています。

区分 売上(2024年7月期) 売上(2025年7月期) 利益(2024年7月期) 利益(2025年7月期) 利益率
調達プラットフォーム 471億円 576億円 51億円 74億円 12.8%
マーケティングプラットフォーム 36億円 38億円 -4億円 -3億円 -6.8%
その他 5億円 5億円 1億円 -1億円 -20.2%
調整額 -億円 -億円 -24億円 -32億円 -
連結(合計) 511億円 620億円 25億円 38億円 6.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、本業で稼いだ資金で借入返済を行い、投資については資産売却や手元資金で調整しつつ進めている「健全型」です。

項目 2024年7月期 2025年7月期
営業CF 27億円 50億円
投資CF -69億円 -22億円
財務CF 57億円 -43億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は18.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は32.6%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」をビジョンとしています。デジタル化が進んでいない既存産業にインターネットを持ち込み、産業構造を変革することで効率化を図り、最終顧客に便益を提供することを通じて社会への貢献を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「ラクスル」というプラットフォームを通じ、ユーザーとサプライヤーの双方をエンパワメントし、Win-Winな関係を築くことを重視しています。インターネットによるシェアリングモデルで、サプライヤーの稼働率向上とユーザーへの低価格・小ロット提供を両立させるなど、既存の商習慣にとらわれない革新的なアプローチを推進する文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社は、利益とキャッシュ・フロー創出を伴った成長モード「Quality Growth」を目指しています。重要な経営指標として売上総利益と調整後EBITDAを位置づけ、中長期的な拡大を図っています。

(4) 成長戦略と重点施策


BtoB向けEC事業を軸に、ソフトウェアやファイナンス領域へサービスを拡張し、中小企業の経営課題をEnd-to-Endで解決するテクノロジープラットフォームを目指します。具体的には、印刷EC市場での競争優位性維持、マーケティング強化による顧客基盤拡大、AI技術の活用、連続的なM&Aとその統合プロセスの強化に取り組んでいきます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


ビジョンに共感する多様なバックグラウンドを持つ人材を採用し、成果に対して公平に報いる評価制度を運用しています。次世代リーダーの育成に向けて、プロジェクト制度やM&A後の統合プロセスでの経営経験機会を提供し、株式報酬制度を通じて中長期的な企業価値向上への意識を高める方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年7月期 35.9歳 3.0年 7,421,810円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 19.3%
男性育児休業取得率 58.3%
男女賃金差異(全労働者) 49.2%
男女賃金差異(正規雇用) 52.3%
男女賃金差異(非正規雇用) 74.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、取締役に占める女性取締役の割合(44.4%)、一定グレード以上の女性従業員の割合(16.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国内印刷EC市場について


主力事業が属する国内印刷EC市場の拡大を見込んでいますが、予測通りに拡大しなかった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、販促サービスの拡張や紙以外の商材への展開により、対象市場および収益の拡張を推進しています。

(2) 競合他社の動向について


印刷ECサービスを展開する競合企業が複数存在し、競争が激化した場合には業績に影響が出る可能性があります。顧客ニーズに対応した商品ラインナップの拡充や、マーケティング活動、サービス品質の向上に取り組み、競争優位性の維持に努めています。

(3) 登録ユーザーの獲得について


事業成長は登録ユーザー数の増加に依存しており、ユーザー獲得効率の低下等は業績に影響を及ぼす可能性があります。マーケティング手法の改善や新規手法のトライアルを継続し、ユーザー数の増加ペースを維持・拡大するための施策を推進しています。

(4) システムトラブルについて


事業はインターネットや通信ネットワークに依存しており、アクセス集中や不正アクセス等による大規模なシステム障害が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。監視システムの利用や多層防御による技術的対策に加え、組織的な対策にも取り組んでいます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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