#記事タイトル:VALUENEX転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、VALUENEX株式会社 の有価証券報告書(第19期、自 2024年8月1日 至 2025年7月31日、2025年10月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. VALUENEXってどんな会社?
同社は、独自のアルゴリズムを用いたビッグデータ解析ツールの提供と、それを活用したコンサルティング事業を展開しています。
■(1) 会社概要
2006年に株式会社創知として設立され、2007年に特許可視化ツールサービスの提供を開始しました。2014年には米国子会社を設立し、2015年に現社名へ変更しました。2018年に東京証券取引所マザーズ(現グロース)へ上場を果たし、2025年には生成AIを活用した新サービス「Radar QFD」の提供を開始するなど、技術開発を進めています。
同社グループは連結従業員33名、単体28名の体制で運営されています。筆頭株主は早稲田大学系のベンチャーキャピタルである早稲田1号投資事業有限責任組合で、第2位は創業社長の中村達生氏、第3位もベンチャーキャピタルのウエルインベストメントとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 早稲田1号投資事業有限責任組合 | 38.83% |
| 中村 達生 | 23.20% |
| ウエルインベストメント | 4.39% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名(監査役含む)の計8名で構成され、女性役員比率は14.0%です。代表取締役社長CEOは中村達生氏が務めています。取締役5名のうち1名が社外取締役で、社外取締役比率は20.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 中村 達生 | 代表取締役社長CEO | 三菱総合研究所、東大工学部助手を経て、2006年に同社(旧創知)を設立し社長に就任。独自アルゴリズムを開発。2019年より現職。 |
| 鮫島 正明 | 専務取締役CFO | 三井住友銀行出身。SMBCコンサルティング出向などを経て、2019年に同社入社。コーポレート本部長等を歴任し、2021年より現職。 |
| Choi Jiyoung | 取締役 | モルガン・スタンレー証券を経て2017年に米国子会社入社。同社COOを務め、2024年より現職。 |
| 瀧口 匡 | 取締役 | 野村證券を経てウエルインベストメント代表取締役社長。早稲田大学客員教授も務める。2020年より現職。 |
社外取締役は、鈴木理晶(弁護士・ターナー法律事務所所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「アルゴリズム事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) ASPサービス
独自開発のアルゴリズムを基盤としたビッグデータ解析ツール「VALUENEX Radar」をライセンス提供しています。大量の文書情報を俯瞰図として可視化することで、全体像の把握や新たな気付き(インサイト)を得られる点が特徴です。利用者は主に企業の知財部門や研究開発部門、経営企画部門などです。
収益は、顧客企業からのライセンス利用料収入です。運営は主に同社および米国子会社が行っています。提供パッケージには、文書全般を扱う「Documents」、特許に特化した「Patents DB」、高速検索の「Scope」、品質表作成支援の「Radar QFD」などがあります。
■(2) コンサルティングサービス
「VALUENEX Radar」を活用した調査・解析業務を受託しています。分析スコープの検討からデータセット作成、俯瞰図の解釈まで、一連のプロセスを支援する「調査コンサルティング」と、顧客内部の解析人材を育成する「コーチング」を提供しています。
収益は、顧客企業からの業務委託費やコンサルティングフィーです。運営は同社および米国子会社が行っており、ASPサービスと併用して活用されるケースが多くなっています。
■(3) その他
上記に含まれない事業として、解析レポートの作成・販売や書籍執筆などを行っています。企業情報やマーケット情報を解析し、レポートとして顧客に提供するビジネスです。
収益は、レポートや書籍の販売代金です。運営は同社グループが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は4.7億円から7.9億円まで拡大傾向にありましたが、第19期は6.9億円へと減少しました。利益面では黒字と赤字を繰り返しており、第19期は税引前利益、当期利益ともにマイナスとなり、赤字転落しています。利益率は変動が大きく、安定的な収益確保が課題となっています。
| 項目 | 2021年7月期 | 2022年7月期 | 2023年7月期 | 2024年7月期 | 2025年7月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 4.7億円 | 6.5億円 | 7.0億円 | 7.9億円 | 6.9億円 |
| 経常利益 | -1.7億円 | 0.5億円 | 0.4億円 | 0.1億円 | -0.7億円 |
| 利益率(%) | -35.2% | 8.0% | 5.4% | 0.8% | -10.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -1.8億円 | 0.3億円 | 0.4億円 | -0.2億円 | -0.8億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の比較では、売上高が減少した一方で、コスト構造の変化が見られます。売上総利益率は高い水準を維持していますが、販管費の負担により営業損益が悪化しました。第19期は売上の減少が利益を圧迫し、営業赤字となっています。
| 項目 | 2024年7月期 | 2025年7月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 7.9億円 | 6.9億円 |
| 売上総利益 | 6.0億円 | 5.3億円 |
| 売上総利益率(%) | 76.1% | 76.6% |
| 営業利益 | 0.0億円 | -0.7億円 |
| 営業利益率(%) | 0.6% | -10.6% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が2.6億円(構成比43%)、役員報酬が0.9億円(同15%)を占めています。また、売上原価ではコンサルティング原価やシステム管理費などが計上されています。
■(3) セグメント収益
第19期は、ASPサービスは微増収となりましたが、コンサルティングサービスが大幅な減収となりました。海外大手顧客の体制変更等の影響により、コンサルティング案件の一部が翌期へ持ち越されたことが主な要因です。
| 区分 | 売上(2024年7月期) | 売上(2025年7月期) |
|---|---|---|
| ASP | 3.2億円 | 3.3億円 |
| コンサルティング | 4.6億円 | 3.6億円 |
| その他 | 0.1億円 | 0.1億円 |
| 連結(合計) | 7.9億円 | 6.9億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
**【勝負型】**
本業の営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスとなる一方、財務活動によるキャッシュ・フローはプラスとなっており、借入や資金調達によって事業運営資金を賄っている状況です。
| 項目 | 2024年7月期 | 2025年7月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 0.3億円 | -1.1億円 |
| 投資CF | -0.0億円 | -0.0億円 |
| 財務CF | -0.0億円 | 0.0億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-10.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は77.5%で市場平均(グロース非製造業:43.3%)を大きく上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「世界に氾濫する情報から”知”を創造していく」ことをミッションとしています。他に類のない自然言語処理や可視化技術を駆使し、独自のアルゴリズムをあらゆる形でビジネス化することで、持続的な成長を実現することを目指しています。
■(2) 企業文化
世界中に溢れる大量の情報を、「信頼性」「俯瞰性」「客観性」「正確性」「最適性」という5つの独自の視点で融合し、価値を創造することを理念として掲げています。独自のアルゴリズムを成長の源泉と捉え、多様な事業化の形を模索する姿勢を持っています。
■(3) 経営計画・目標
高い成長性と収益性、および企業価値の向上を経営上の重点課題として認識しており、成長性については「売上高」、収益性については「経常利益」を経営指標として設定しています。具体的な数値目標の記載はありませんが、新規顧客開拓やグローバル展開を通じてこれらの指標の向上を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の成長に向けて、以下の優先的に対処すべき課題を挙げています。
* 新規事業分野の開拓:知財分野に加え、マーケティング、投資、医療、法曹分野などへの展開。
* ブランド強化:「VALUENEX」の知名度向上とブランド化。
* 人材確保・育成:優秀な人材の獲得と定着、能力向上。
* 海外展開の強化:特に米国での営業・開発体制の強化。
* 内部管理体制の強化:業務効率化とコンプライアンス徹底。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材育成・社内環境整備の取組として、「多様な個性と能力の尊重」および「多様な働き方の実現」を基本方針に掲げています。性別や国籍等を問わず多様な人材を採用し、フレックス制度や在宅勤務等の柔軟な働き方をサポートすることで、社員の強みが発揮できる体制づくりを進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年7月期 | 40.4歳 | 5.0年 | 7,318,301円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 巨大資本データベース事業会社の参入
同社の解析技術は独自のものですが、巨大資本を持つデータベース事業会社が同市場に参入してくる可能性があります。競合の出現により競争が激化した場合、同社グループの業績に影響が生じる可能性があります。
■(2) システム障害および通信ネットワーク
ASPサービスを提供しているため、自然災害やサイバー攻撃、事故等によるシステム障害のリスクがあります。データバックアップ等の対策は講じていますが、大規模な障害によりサービス提供が停止した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 知的財産権に関するリスク
同社は特許や商標権を取得していますが、第三者による侵害が発生した場合、解決に時間や費用を要する可能性があります。また、他社の特許権を意図せず侵害してしまうリスクもあり、その場合は損害賠償請求等により業績に影響が出る可能性があります。
■(4) 季節変動および四半期業績の偏重
顧客である企業や官公庁の予算消化の関係で、3月にコンサルティング売上が増加する傾向があります。このため第3四半期の業績比重が高く、特定の四半期業績のみで通期見通しを判断することが困難です。季節変動の緩和を図っていますが、依然として偏重傾向が続く可能性があります。



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