ヤマトインターナショナル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ヤマトインターナショナル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所スタンダード市場に上場するアパレル企業です。「クロコダイル」ブランドを中心とした繊維製品の製造販売と不動産賃貸事業を展開しています。2025年8月期の業績は、主力のアパレル事業が天候不順等の影響を受け、減収および各利益段階で減益となりました。


※本記事は、ヤマト インターナショナル株式会社 の有価証券報告書(第79期、自 2024年9月1日 至 2025年8月31日、2025年11月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ヤマト インターナショナルってどんな会社?


同社は「クロコダイル」ブランドを主力とするカジュアルウェア中心のアパレル企業です。

(1) 会社概要


1947年に大阪で株式会社ヤマト被服工業所として設立され、1963年より「クロコダイル」ブランドの販売を開始しました。1980年に株式を公開し、1982年には大阪証券取引所市場第二部に上場しました。その後、東京証券取引所市場第一部指定を経て、2022年4月の市場区分見直しに伴い、現在はスタンダード市場に上場しています。

連結従業員数は159名、単体では151名です。筆頭株主は創業家の資産管理会社であるセネシオ有限会社で、第2位はインタラクティブ・ブローカーズ証券(常任代理人)です。第3位にはメインバンクである三菱UFJ銀行が名を連ねており、創業家と金融機関が安定的に株式を保有しています。

氏名 持株比率
セネシオ有限会社 12.70%
INTERACTIVE BROKERS LLC 5.52%
三菱UFJ銀行 4.98%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長は盤若智基氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
盤若 智基 取締役社長(代表取締役) 伊藤忠商事入社後、1999年に同社入社。営業企画、生産管理部門を経て、2004年より現職。
梅川 実 取締役常務執行役員事業統括本部長兼ブランドディレクター 1993年同社入社。クロコダイル事業部門長、事業統括本部長などを歴任し、2025年より現職。
川島 祐二 取締役常務執行役員総務人事部長兼人財開発室担当 1990年同社入社。IR室長、IR経営企画室長などを経て、2025年より現職。


社外取締役は、北村禎宏(元ワールド部長、現有限会社KBC代表)、森山義子(TMI総合法律事務所カウンセル弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「繊維製品製造販売業」および「不動産賃貸事業」を展開しています。

(1) 繊維製品製造販売業


主力ブランド「クロコダイル」を中心に、カジュアルウェア(カットソー、シャツ、セーター、アウター、ボトム等)の企画・製造・販売を行っています。メンズおよびレディス製品を展開し、GMS(総合スーパー)や直営店、ECサイトを通じて顧客へ提供しています。

収益は、一般消費者や取引先への製品販売代金です。運営は同社が行い、連結子会社のヤマト ファッションサービス株式会社が商品の入出荷や在庫管理等の物流業務を受託しています。

(2) 不動産賃貸事業


同社が保有する自社物件(東京本社ビル、大阪の旧本社跡地等)を有効活用し、オフィスビルや土地の賃貸事業を行っています。

収益は、テナントからの賃貸料収入です。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2024年8月期までは売上高211億円台まで回復していましたが、2025年8月期は消費低迷や天候不順の影響を受け194億円へ減収となりました。利益面では、2023年8月期をピークに減少傾向にあり、直近の2025年8月期は営業損失および経常損失を計上しています。特別利益の計上により当期純利益は確保しましたが、大幅な減益となっています。

項目 2021年8月期 2022年8月期 2023年8月期 2024年8月期 2025年8月期
売上高 137億円 194億円 208億円 211億円 194億円
経常利益 0.9億円 6.4億円 5.9億円 3.9億円 -0.6億円
利益率(%) 0.7% 3.3% 2.8% 1.8% -0.3%
当期利益(親会社所有者帰属) -0.1億円 4.4億円 5.5億円 3.3億円 1.3億円

(2) 損益計算書


売上高の減少に伴い売上総利益が約10億円減少しました。販売費及び一般管理費を抑制しましたが、減収の影響をカバーしきれず営業損失となりました。一方、投資有価証券売却益などの特別利益を計上したことで、最終的な当期純利益は黒字を維持しています。

項目 2024年8月期 2025年8月期
売上高 211億円 194億円
売上総利益 120億円 110億円
売上総利益率(%) 56.7% 56.4%
営業利益 2.6億円 -2.0億円
営業利益率(%) 1.2% -1.0%


販売費及び一般管理費のうち、販売手数料が46億円(構成比41%)、従業員給料が32億円(同29%)を占めています。売上原価率は44%です。

(3) セグメント収益


主力の繊維製品製造販売業は、猛暑や残暑による販売機会の損失、主要取引先の店舗閉鎖などが響き、減収およびセグメント損失となりました。不動産賃貸事業は安定的に推移し、増収増益を確保しています。

区分 売上(2024年8月期) 売上(2025年8月期) 利益(2024年8月期) 利益(2025年8月期) 利益率
繊維製品製造販売業 209億円 192億円 8億円 3億円 1.6%
不動産賃貸事業 3億円 3億円 1億円 1億円 48.1%
調整額 - - -7億円 -6億円 -
連結(合計) 211億円 194億円 3億円 -2億円 -1.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。

項目 2024年8月期 2025年8月期
営業CF 10.4億円 -9.0億円
投資CF -0.6億円 -0.4億円
財務CF -5.3億円 -3.3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は0.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は74.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「ものを創り 人を創り お客様と共に心豊かな毎日を創る」というミッションを掲げています。いつの時代でも顧客の問題を解決し、最初に想起される真のブランド「シン・ブランド創り」を目指しています。

(2) 企業文化


原点である顧客起点に立ち返ることを重視しています。時代や環境の変化を敏感に察知し、柔軟に対応することでベストなパフォーマンスを発揮することを是としています。また、各種表彰制度を設けるなど、従業員のモチベーション向上を図り、チャレンジが推奨される風土の定着を目指しています。

(3) 経営計画・目標


中長期的な経営戦略として中期ビジョン「Yamato 2026」を始動しています。株主資本の効率的運用および収益性追求の観点から、以下の指標を重要な経営目標としています。

* ROE(自己資本当期純利益率)の向上

(4) 成長戦略と重点施策


「Yamato 2026」に基づき、基幹事業「クロコダイル」では既顧客の活性化に加え、次の世代の潜在顧客獲得に注力します。GMS(総合スーパー)分野での収益率向上、EC事業および「CITERA」の売上伸長、直営事業による将来の成長基盤確立を重点施策として推進します。

* 戦略的な価格設定と供給体制の構築によるGMS店舗あたりの収益率向上
* アプリ刷新やオムニチャネル化によるEC事業の拡大
* 直営事業のSC市場への展開と顧客層の若返り

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


ミッションである「人創り」のもと、階層別研修や次世代への経験伝承を実施しています。多様な人材の活躍を支援するため、障がい者雇用や外国人技能実習生の受け入れも推進しています。また、出勤時間選択制やフリーアドレス化を導入し、ワークライフバランスの実現とコミュニケーションの活性化を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年8月期 41.3歳 16.9年 5,386,504円


※平均年間給与は基準外賃金及び賞与その他の臨時給与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 25.0%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 53.0%
男女賃金差異(正規) 82.5%
男女賃金差異(非正規) 71.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性育児休業取得率(100.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定製品への依存リスク


同社グループの売上高において、基幹ブランドである「クロコダイル」グループが約88%を占めています。当該ブランドの売上動向がグループ全体の業績に大きく影響を及ぼす可能性があります。

(2) 消費者の嗜好変化と市場リスク


取扱う衣料品は比較的トレンドの影響を受けにくい層をターゲットとしていますが、個人消費の低迷や競合他社の動向、消費者の嗜好変化によっては、業績に悪影響が生じる可能性があります。

(3) 天候および自然災害リスク


衣料品の売上高は気象条件の影響を受けやすく、特に売上比率の高い冬季の天候不順(暖冬等)や冷夏、台風や地震等の自然災害が発生した場合、業績に大きな影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。