技研製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

技研製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場。無公害杭圧入引抜機「サイレントパイラー」の開発・製造・販売および圧入工事を行う建設関連企業です。第44期は国内での製品販売減少などが影響し、売上高263億円(前期比10.7%減)、経常利益27億円(同23.7%減)の減収減益となりました。


※本記事は、株式会社技研製作所 の有価証券報告書(第44期、自 2024年9月1日 至 2025年8月31日、2025年11月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 技研製作所ってどんな会社?


独自の無公害工法である「圧入工法」を核に、建設機械の開発・製造と工事施工を両輪で展開する企業です。

(1) 会社概要


1967年に高知技研コンサルタントとして創業し、1975年に無公害杭圧入引抜機「サイレントパイラー」の第1号機を完成させました。1978年に技研製作所を設立し、製造販売を開始。1993年に大阪証券取引所市場第二部に上場し、2017年には東京証券取引所市場第一部へ上場を果たしました。近年はオランダや米国など海外拠点での展開も加速させています。

連結従業員数は703名、単体では515名です。筆頭株主は創業家の資産管理会社である有限会社北村興産で、第2位、第3位には信託銀行の信託口が名を連ねています。

氏名 持株比率
有限会社北村興産 22.69%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 7.87%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 5.28%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長CEOは大平厚氏が務めています。社外取締役比率は30.0%です。

氏名 役職 主な経歴
大平 厚 代表取締役社長CEO 1981年技研施工入社。米国法人出向、技研施工社長等を経て、2023年11月より現職。
森部 慎之助 代表取締役会長 高知県庁を経て2012年入社。常務、専務、副社長、社長を経て、2023年11月より現職。
前田 みか 取締役専務執行役員BX推進室担当 1989年入社。経営戦略部部門リーダー、常務取締役管理本部担当、技研施工専務等を経て、2025年5月より現職。
森野 有晴 取締役専務執行役員開発製造本部・圧入技術研究開発センター担当 1996年入社。生産管理部部門リーダー、執行役員製品事業担当、取締役管理本部担当等を経て、2025年9月より現職。


社外取締役は、久松朋水(株式会社太陽代表取締役社長)、岩城孝章(元高知県副知事)、澤祥雅(弁護士法人大江橋法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建設機械事業」および「圧入工事事業」を展開しています。

(1) 建設機械事業


無公害工法である圧入工法を実現する油圧式杭圧入引抜機「サイレントパイラー」および周辺機械の開発・製造・販売・レンタルを行っています。また、これに付帯する保守サービスも提供し、無公害圧入工法の普及拡大を図っています。

主な収益は、建設会社等の顧客からの機械販売代金、レンタル料、保守サービス料です。運営は主に同社が行っており、海外においてはGiken Europe B.V.、Giken Seisakusho Asia Pte., Ltd.、Giken America Corporation等の子会社も販売とサービスを担っています。

(2) 圧入工事事業


圧入技術を用いた新工法による工事や、機械式駐車場「エコパーク」、機械式駐輪場「エコサイクル」の設置工事を行っています。「地上に文化を、地下に機能を」というコンセプトのもと、独自技術を活かしたインフラ整備に貢献しています。

主な収益は、発注者や元請建設会社からの工事代金です。国内では子会社の株式会社技研施工が、海外では各海外子会社が、同社製の機械を用いて施工を行っています。また、現場データのフィードバックにより機械開発との相乗効果を生み出しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は300億円前後で推移していましたが、直近の2025年8月期は263億円と減少しました。経常利益も2022年8月期の48億円をピークに減少傾向にあり、当期は27億円となっています。利益率は10%台を維持しており、一定の収益性は確保されていますが、減益基調が続いています。

項目 2021年8月期 2022年8月期 2023年8月期 2024年8月期 2025年8月期
売上高 276億円 304億円 293億円 295億円 263億円
経常利益 42億円 48億円 31億円 36億円 27億円
利益率(%) 15.1% 15.9% 10.5% 12.2% 10.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 31億円 32億円 8億円 24億円 15億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で減少しており、それに伴い売上総利益、営業利益ともに減少しました。営業利益率は11.3%から9.7%へと低下しています。原価率の上昇や販管費の負担増などが利益を圧迫している様子がうかがえます。

項目 2024年8月期 2025年8月期
売上高 295億円 263億円
売上総利益 109億円 101億円
売上総利益率(%) 36.9% 38.5%
営業利益 33億円 26億円
営業利益率(%) 11.3% 9.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び雑給が22億円(構成比29%)、試験研究費が10億円(同14%)を占めています。売上原価では、製品売上原価やレンタル売上原価等が計上されています。

(3) セグメント収益


建設機械事業は、国内での販売減少が響き減収減益となりました。一方、圧入工事事業は売上高が微増しましたが、高付加価値案件の減少により減益となっています。全体として国内市場の影響を強く受けています。

区分 売上(2024年8月期) 売上(2025年8月期) 利益(2024年8月期) 利益(2025年8月期) 利益率
建設機械事業 209億円 177億円 46億円 39億円 22.0%
圧入工事事業 85億円 87億円 12億円 11億円 12.6%
連結(合計) 295億円 263億円 33億円 26億円 9.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動によるキャッシュ・フローはプラスを維持しており、本業で資金を獲得できています。その資金を元に、投資活動や財務活動(配当支払や自己株式取得など)を行っており、健全型のキャッシュ・フローパターンを示しています。

項目 2024年8月期 2025年8月期
営業CF 31億円 14億円
投資CF 1億円 -11億円
財務CF -25億円 -10億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は84.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「世の中の役に立つ独創的な『物』『方法』を創造し世の中に貢献する」ことを経営理念として掲げています。また、「建設の五大原則」(環境性・安全性・急速性・経済性・文化性)を定め、これを遵守する新しい建設業界への転換を図る「工法革命」を提唱しています。

(2) 企業文化


同社は「インプラント工法で世界の建設を変える」を経営方針とし、独創性・創造性に富む開発を重視する文化があります。難易度の高い課題や未知の分野に果敢に挑戦し、イノベーションを創出することを企業文化として定着させることを目指しています。

(3) 経営計画・目標


「中期経営計画2027」(2025年8月期-2027年8月期)を策定し、最終年度の数値目標として以下を掲げています。
* 連結売上高:300億円〜330億円
* 海外売上高:75億円以上
* 連結営業利益:32億円以上
* ROE:6.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「中期経営計画2027」に基づき、海外市場への積極展開、独創的な開発の強化、国内市場の着実成長を基本戦略としています。特に海外では、東南アジアや欧州での工法普及を加速させます。開発面では、DXを活用した自動運転技術や、脱炭素に対応した電動化技術の開発に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「社員一人ひとりが専門性と独創性を磨き、挑戦を重ねながら、未来につなげる価値を創造する」という人材ビジョンを掲げています。新しいことにチャレンジする文化の醸成、異業種交流による価値創出、イノベーション人材の補強を戦略とし、人的資本への投資を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年8月期 35.3歳 12.0年 6,295,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 18.3%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 79.7%
男女賃金差異(正規雇用) 79.6%
男女賃金差異(非正規雇用) 72.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、外国籍社員雇用数(2名採用/9名在籍)、精密検査受診率(39.1%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場環境について


国内外の建設市場、特に公共投資の動向は経営成績に影響を及ぼす可能性があります。国土強靭化やインフラ更新需要は見込まれるものの、建設投資全体の変動がリスク要因となります。

(2) 海外事業について


アジア・欧州・米国などを中心に海外展開を進めていますが、商慣行の違い、為替変動、法制度の変更、地政学リスク、原材料価格の変動等が経営成績に影響を与える可能性があります。

(3) 自然災害・感染症等について


重大な自然災害や感染症の発生により、サプライチェーンや社会全体が混乱した場合、事業活動や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 製造環境について


機械の製造は協力企業への外注で行っており、素材・エネルギーコストの変動や、外注先の経営状況悪化、協力関係の解消などが生じた場合、生産体制や経営成績に影響が出る可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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