※本記事は、株式会社文教堂グループホールディングス の有価証券報告書(第75期、自 2024年9月1日 至 2025年8月31日、2025年11月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 文教堂グループホールディングスってどんな会社?
書店チェーン「文教堂」を展開し、書籍・雑誌の販売を中心に文具・雑貨や教育事業も手がける企業グループです。
■(1) 会社概要
1949年に神奈川県川崎市で設立され、1978年より書店チェーン展開を開始しました。1994年に日本証券業協会へ店頭登録(現・東証スタンダード市場)し、2008年に純粋持株会社体制へ移行しました。2010年には大日本印刷と資本・業務提携を結んでいます。2019年には事業再生ADR手続が成立し、経営再建に取り組んでいます。
2025年8月31日現在、連結従業員数は131名、持株会社単体では1名です。筆頭株主は出版取次大手の日販グループホールディングスで、第2位は印刷大手の大日本印刷、第3位はネット証券大手の楽天証券です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日販グループホールディングス | 8.97% |
| 大日本印刷 | 7.57% |
| 楽天証券 | 2.32% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は佐藤協治氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 佐藤 協治 | 代表取締役社長 | 1988年本の店岩本入社。文教堂グループホールディングス店舗開発部長、常務取締役を経て、2018年より現職。文教堂代表取締役社長も兼務。 |
| 佐藤 弘志 | 取締役副社長経営推進室長 | 1995年マッキンゼー入社。ブックオフコーポレーション社長、ダルトン社長を経て、2017年より現職。日販グループホールディングス執行役員も兼務。 |
| 小林 友幸 | 取締役財務経理部長 | 1992年文教堂グループホールディングス入社。執行役員経理部長、文教堂取締役管理本部長などを経て、2019年より現職。 |
| 飯田 直樹 | 取締役 | 1999年弁護士登録。トレイダーズ証券監査役、山野楽器監査役などを経て、2009年より現職。弁護士法人黒田法律事務所パートナー。 |
| 森 俊明 | 取締役 | 1991年公認会計士登録。ブリッジ共同公認会計士事務所シニアパートナーなどを経て、2009年より現職。BE1総合会計事務所代表。 |
| 平岡 隆 | 取締役 | 1992年日本出版販売入社。同社執行役員経営戦略室長、日販グループホールディングス執行役員などを経て、2023年より現職。 |
社外取締役は、飯田直樹(弁護士)、森俊明(公認会計士・税理士)、平岡隆(日本出版販売執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「書籍・雑誌等の販売業」および「教育プラットフォーム事業」を展開しています。
■書籍・雑誌等の販売業
全国で書店チェーン「文教堂」などを展開し、一般消費者向けに書籍、雑誌、文具、雑貨などを販売しています。また、ジェイブックが通信販売を手がけています。近年は収益性の高い文具・雑貨やトレーディングカード、ガシャポンなどの取り扱いを強化しています。
収益は主に店舗での商品販売による代金です。運営は主に株式会社文教堂が行い、通信販売事業はジェイブック株式会社、図書カード等の販売は有限会社文教堂サービスが担っています。
■教育プラットフォーム事業
プログラミング教育「HALLO」や、シニア向け脳活性ブックプログラム教室「Gakken脳げんきサロン」などを展開しています。従来の書店事業に教育サービスを融合させた新しいパッケージの開発を進めています。
収益は生徒からの授業料や入会金、教材販売代金などです。運営は株式会社文教堂が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は減少傾向にあり、店舗数の減少や出版市場の縮小が影響しています。利益面では低水準での推移が続いており、直近の2025年8月期は営業赤字および最終赤字に転落しました。
| 項目 | 2021年8月期 | 2022年8月期 | 2023年8月期 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 188億円 | 165億円 | 155億円 | 149億円 | 145億円 |
| 経常利益 | 3.8億円 | 0.8億円 | 1.0億円 | 0.6億円 | -0.8億円 |
| 利益率(%) | 2.0% | 0.5% | 0.6% | 0.4% | -0.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3.7億円 | 0.7億円 | 1.0億円 | 0.4億円 | -1.5億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の減少に加え、コスト増加により各段階利益が悪化しています。2025年8月期は営業損失、経常損失を計上しました。
| 項目 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 149億円 | 145億円 |
| 売上総利益 | 42億円 | 41億円 |
| 売上総利益率(%) | 28.0% | 28.5% |
| 営業利益 | 0.3億円 | -0.9億円 |
| 営業利益率(%) | 0.2% | -0.6% |
販売費及び一般管理費のうち、その他が14億円(構成比32%)、賃借料が13億円(同31%)を占めています。売上原価は売上高の約72%を占めています。
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 8.0億円 | 0.3億円 |
| 投資CF | 0.3億円 | -0.9億円 |
| 財務CF | -1.7億円 | -3.7億円 |
営業CFで得た資金を借入金の返済に充てているため「健全型」に分類されますが、営業CFの規模は縮小しており、事業再生プロセスの一環として債務返済が進められています。
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は赤字のため算出できません(前期は3.3%)。財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は12.1%で、スタンダード市場の非製造業平均(48.5%)を大きく下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
創業以来、「豊かな未来に向けて-総合生活産業へ」を合言葉としています。単なる本の販売にとどまらず、様々なソフトを取り扱うメディアコンプレックス店として、顧客満足度の高い品揃えを提供し、地域の文化向上や出版界の発展に寄与することを目指しています。
■(2) 企業文化
「お客様が毎日寄ってみたくなる楽しい書店づくり」を目指す文化があります。良書をはじめとする多様な情報の提供を通じて、地域の文化拠点としての役割を果たすことを重視しています。また、効率経営を追求しつつも、きめ細かい店舗運営を行う姿勢を持っています。
■(3) 経営計画・目標
収益力の向上と財務体質の強化を最優先課題としています。具体的な数値目標として、以下の指標を安定的に実現すること掲げています。
* 自己資本利益率(ROE):10%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
事業再生計画に基づき、既存店舗の収益力向上と財務体質強化に取り組んでいます。主力の書籍・雑誌販売に加え、教育プラットフォーム事業との融合による新パッケージ開発や、収益性の高い商材の導入拡大を推進しています。
* 文具・雑貨、トレーディングカード、ガシャポンの導入拡大
* 教育事業(プログラミング教室、シニア向け脳活性教室)とのシナジー創出
* インセンティブ商品の取扱い拡大
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
事業発展と新たな価値創造のため、中核人材の登用における多様性の確保を重視しています。現在は性別や国籍、中途採用の区別なく能力・適性に応じて管理職登用を行っていますが、今後は女性や外国人の管理職登用を増やすべく、育成方針や環境整備を進める方針です。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年8月期 | 50.7歳 | 24.6年 | 6,157,562円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
※同社は持株会社であり、上記データは単体(従業員数1名)のものです。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.8% |
| 男性育児休業取得率 | 0.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 54.9% |
| 男女賃金差異(正規) | 87.8% |
| 男女賃金差異(非正規) | 96.5% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 継続企業の前提に関する重要事象
同社グループは債務超過を解消し事業再生ADR手続が成立しましたが、計画期間終了となる2025年8月以降の中期計画や借入金返済等について金融機関との合意がなされていません。また、直近で赤字を計上しており、資金繰りに影響を及ぼす可能性があることから、継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められます。
■(2) 同業種内の競争激化及び消費低迷
出版流通業界は個人消費の低迷や電子化の影響で市場縮小が続いており、競合他社との競争も激化しています。これにより売上が減少し、業績や財務状況に悪影響を与える可能性があります。同社はエリアマネージャー制の全国展開や店舗運営の改善等で対抗しています。
■(3) 店舗における万引き行為
書店における万引き被害は業界全体の課題であり、発生頻度が高まれば業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は出版社へのICタグ導入要請や新古書店への対策支援要請、店舗での警備員増員、従業員の意識徹底などの対策を講じています。



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