出前館 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

出前館 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場。主要事業は国内最大級のデリバリーサービス「出前館」の運営です。2025年8月期は、巣ごもり需要の一服や競争激化等を背景に売上高が前期比で減収となりました。利益面ではコスト適正化を進めるも、営業損失および当期純損失を計上し、赤字が継続しています。


#出前館転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、株式会社出前館 の有価証券報告書(第26期、自 2024年9月1日 至 2025年8月31日、2025年11月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 出前館ってどんな会社?


国内最大級のデリバリーサービス「出前館」を運営し、加盟店とユーザーをつなぐライフインフラ企業です。

(1) 会社概要


1999年に夢の街創造委員会として設立され、2000年にデリバリー総合サイト「出前館」をオープンしました。2006年に大阪証券取引所ヘラクレス(現スタンダード)へ上場を果たしています。2016年にはLINE(現LINEヤフー)と資本業務提携を行い、2019年に現社名へ変更しました。2021年には第三者割当増資等により約830億円の資金調達を実施しています。

同社の連結従業員数は392名、単体では356名です。筆頭株主は、同社と資本業務提携を結ぶIT大手のLINEヤフーであり、同社を持分法適用関連会社としています。第2位は、LINEグループとの事業シナジー創出を目的とした投資を行う未来Fund有限責任事業組合です。第3位は、韓国の預託決済機関であるKOREA SECURITIES DEPOSITORY-SAMSUNGです。

氏名 持株比率
LINEヤフー 35.30%
未来Fund有限責任事業組合 18.42%
KOREA SECURITIES DEPOSITORY-SAMSUNG(常任代理人 シティバンク、エヌ・エイ東京支店) 13.14%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性3名の計9名で構成され、女性役員比率は33.0%です。代表取締役社長(CEO)は矢野哲氏が務めています。取締役6名のうち5名が社外取締役であり、社外取締役比率は約83%と高い水準にあります。

氏名 役職 主な経歴
矢野  哲 代表取締役社長(CEO) JPモルガン証券、インテルを経て、2016年LINE入社。執行役員を務めた後、2021年出前館執行役員CFOに就任。2024年9月より現職。


社外取締役は、富山浩樹(サツドラホールディングス代表取締役社長CEO)、森一生(代官山綜合法律事務所代表)、舛田淳(LINEヤフー上級執行役員)、坂上亮介(LINEヤフー上級執行役員CFO)、小笹文(合同会社カラフル代表社員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「出前館事業」および「その他」事業を展開しています。

出前館事業


国内最大級のデリバリーサービス「出前館」を運営しており、ユーザー、飲食店、配達員をつなぐプラットフォームを提供しています。ユーザーはアプリ等を通じて多彩なジャンルの加盟店から料理等を注文でき、自社配達機能を持たない飲食店向けには、配達代行機能「シェアリングデリバリー」を提供しています。

収益は主に、加盟店から受け取るサービス利用料や配達代行手数料(注文金額に一定料率を乗じたもの)、およびユーザーから受け取る送料や手数料から構成されます。また、サイト上への広告掲載による広告収入も得ています。運営は主に株式会社出前館と、子会社の株式会社出前館コミュニケーションズが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年8月期から2025年8月期までの業績を見ると、売上高は2023年8月期まで拡大傾向にありましたが、直近2期は減少に転じています。利益面では、積極的な事業投資や市場環境の影響により、表示期間を通じて営業損失および当期純損失を計上しており、赤字の状態が続いています。

項目 2021年8月期 2022年8月期 2023年8月期 2024年8月期 2025年8月期
売上高 290億円 473億円 514億円 504億円 397億円
経常利益 -191億円 -366億円 -121億円 -59億円 -50億円
利益率(%) -66.1% -77.3% -23.6% -11.6% -12.5%
当期利益(親会社所有者帰属) -219億円 -362億円 -122億円 -37億円 -50億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で減少しました。コスト面では売上原価および販売費及び一般管理費ともに圧縮されましたが、売上の減少幅をカバーするには至らず、営業損失は縮小したものの赤字が継続しています。売上総利益率は低下しています。

項目 2024年8月期 2025年8月期
売上高 504億円 397億円
売上総利益 116億円 46億円
売上総利益率(%) 23.0% 11.5%
営業利益 -60億円 -49億円
営業利益率(%) -11.9% -12.4%


販売費及び一般管理費のうち、業務委託費が28億円(構成比29%)、給与手当が24億円(同25%)を占めています。売上原価においては、外注費が293億円(構成比83%)と大半を占めています。

(3) セグメント収益


主力の出前館サービス利用料、その他ともに減収となりました。特にサービス利用料の減少が全体の減収に大きく影響しています。なお、同社は単一セグメントであるため、利益情報は連結数値を記載しています。

区分 売上(2024年8月期) 売上(2025年8月期) 利益(2024年8月期) 利益(2025年8月期) 利益率
出前館サービス利用料 453億円 350億円 - - -
その他 50億円 47億円 - - -
連結(合計) 504億円 397億円 -60億円 -49億円 -12.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

出前館のキャッシュ・フローの状況は、営業活動によるキャッシュ・フローが減少したものの、投資活動によるキャッシュ・フローの減少幅が縮小し、財務活動によるキャッシュ・フローの減少幅も縮小しました。営業活動では、損失の発生や未収入金の減少、未払金の減少などが資金減少の主な要因となりました。投資活動では、投資有価証券の売却収入があったものの、敷金及び保証金の差入により資金が減少しました。財務活動では、自己株式の取得やそのための預け金の減少により、資金が減少しました。

項目 2024年8月期 2025年8月期
営業CF -46億円 -50億円
投資CF 22億円 -0.0億円
財務CF -40億円 -10億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「テクノロジーで時間価値を高める」をミッションに掲げ、テクノロジーの力を駆使して人々の生活や時間をより価値あるものにすることを目指しています。また、ビジョンとして「地域の人々の幸せをつなぐライフインフラ」を掲げ、地域密着型のサービス展開を通じて地域活性化や社会課題の解決に貢献することを基本方針としています。

(2) 企業文化


同社は、業界のリーディングカンパニーとして、ユーザー、加盟店、配達員といった全てのステークホルダーに対して価値を提供することを重視しています。特に、変化の激しい市場環境において、テクノロジーを活用したサービス体験の向上や、地域社会との共生を図る姿勢が企業文化として根付いていることがうかがえます。

(3) 経営計画・目標


同社は、フードデリバリー市場での継続的な拡大と高いシェアの獲得を経営目標としています。重要な経営指標として、GMV(流通取引総額)、売上高、売上総利益率、営業利益などを重視しています。

* 2026年8月期 売上高:441億円
* 2026年8月期 営業利益:-40億円

(4) 成長戦略と重点施策


「デリバリーの日常化」を実現するため、ユーザー体験の向上、ユニットエコノミクスの改善、新しい収益モデルの拡大に取り組んでいます。具体的には、シェアリングデリバリーのエリア・店舗拡大、柔軟な配達員体制の構築、配達効率の向上によるコスト低減を推進しています。また、アクティブユーザー数の拡大に向けた投資も継続する方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業拡大において優秀な人材の確保を不可欠と考え、適切な人材配置と評価制度・給与体系の整備を進めています。社員がパフォーマンスを最大限発揮し、モチベーションを高められる環境づくりに注力しています。また、性別や国籍等によらず能力や適性を総合的に判断して登用を行う方針のもと、ダイバーシティ&インクルージョンの推進にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年8月期 36.4歳 3.0年 6,623,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 12.5%
男性育児休業取得率 70.0%
男女賃金差異(全労働者) 74.6%
男女賃金差異(正規雇用) 85.3%
男女賃金差異(非正規雇用) 94.3%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) インターネットの普及状況


スマートフォン等の普及や通信環境の整備、インターネット関連市場の拡大が事業成長の前提となっています。新たな法的規制、技術革新の遅れ、通信料金改定など予期せぬ要因により市場の発展が阻害された場合、事業及び業績に影響を与える可能性があります。

(2) フードデリバリー市場動向


国内フードデリバリー市場は急成長しましたが、直近では市場成長が一服しているとの予測もあります。景気悪化による消費低下や予期せぬ要因で市場が想定通り成長しない場合、同社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 災害等による影響


地震や台風などの自然災害により、加盟店の食材仕入コストが上昇したり、通信網障害などで事業運営に支障が出たりする可能性があります。特に大規模災害が発生し、物的・人的損害が甚大となった場合、事業継続自体が困難になるリスクがあります。

(4) 事業等に係る法律等の規制


「個人情報保護法」や「消費者契約法」、「特定商取引法」など関連法令を遵守していますが、これらの法令改正や解釈変更、新法施行により事業展開に制約が生じる可能性があります。また、予期せぬ法令違反が発生した場合、社会的信用の低下などを招く恐れがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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