ダイヤモンドエレクトリックホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ダイヤモンドエレクトリックホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ダイヤモンドエレクトリックホールディングスは、東京証券取引所スタンダード市場に上場し、自動車用点火コイル、太陽光発電用パワーコンディショナ、電子制御機器などの製造・販売を主力とする企業です。直近の連結業績では、売上高が968億円で増収、営業利益が24億円で増益となる一方、純利益は2億円で減益となりました。


※本記事は、ダイヤモンドエレクトリックホールディングス株式会社の有価証券報告書(第8期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年7月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ダイヤモンドエレクトリックホールディングスってどんな会社?


同社は、自動車機器、エネルギーソリューション、電子機器の3領域で製品開発から製造・販売までを展開しています。

(1) 会社概要


同社グループのルーツは1937年に創業した自動車用点火コイルメーカーに遡ります。2018年に単独株式移転によりダイヤモンドエレクトリックホールディングスを設立し上場を果たしました。2019年には田淵電機を、2022年にはクラフトを完全子会社化するなど、継続的なM&Aで事業領域を拡大しています。

現在の従業員数は連結で3,503名です。大株主の構成を見ると、筆頭株主は資産管理業務などを行う日本カストディ銀行(信託口)、第2位は関連会社のダイヤモンドエンジニアリング、第3位は日本マスタートラスト信託銀行(信託口)となっており、金融機関と事業会社が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本カストディ銀行(信託口) 6.66%
ダイヤモンドエンジニアリング 5.52%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 5.24%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.2%です。代表取締役社長CEO兼グループCEOは小野有理氏が務めています。また、取締役7名のうち4名が社外取締役であり、過半数を占めています。

氏名 役職 主な経歴
小野 有理 代表取締役社長CEO兼グループCEO NST代表取締役社長、ダイヤモンド電機代表取締役社長CEO等を経て、2018年10月より同社代表取締役社長CEO兼グループCEO。
小谷 カオル 取締役 ダイヤモンド電機経理部鳥取経理課課長、ハンガリーダイヤモンド電機Auditor等を経て、2025年6月より同社取締役。
入江 正孝 取締役(監査等委員) 和光証券入社。ダイヤモンド電機社長室長、同社取締役等を経て、2018年10月より同社取締役(監査等委員)。


社外取締役は、吉田夛佳志(元大東プレス工業社長)、岡本岳(岡本・豊永法律事務所共同パートナー)、笠間士郎(元第一稀元素化学工業取締役財務部長)、奥下英己(元神戸土地建物常務取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「自動車機器事業」「エネルギーソリューション事業」「電子機器事業」および「その他」事業を展開しています。

自動車機器事業


自動車用点火コイルおよび電装品の開発・製造・販売を展開しています。世界的なモータリゼーションの進展や環境規制に対応し、内燃機関からハイブリッド車向けまで幅広い用途の点火システムを国内外の自動車メーカー等の顧客に提供しています。

顧客に対する製品の販売代金が主な収益源です。国内外の自動車メーカーへの納入を通じて収益を獲得しています。事業の運営は主にダイヤモンド電機や米国ダイヤモンド電機をはじめとする国内外の子会社が行っています。

エネルギーソリューション事業


太陽光発電用パワーコンディショナや蓄電ハイブリッドシステムなどの開発・製造・販売を展開しています。再生可能エネルギーの普及やカーボンニュートラル社会に向けたレジリエンス需要に対応する製品を市場に供給しています。

製品の販売代金に加え、有償保証期間内の保守サービス提供による収益も獲得しています。運営は主にダイヤゼブラ電機が行っており、同社独自の技術を活かした高付加価値システムの提供を推進しています。

電子機器事業


家庭向け冷暖房用および給湯用着火装置、トランス・リアクターなどの電子デバイスや電子制御機器の開発・製造・販売を展開しています。エアコンのインバーター化などホームエレクトロニクス市場の省電力化ニーズに応えています。

国内外の空調機器メーカーや家電メーカーへの製品販売から収益を得ています。運営は主にダイヤゼブラ電機やダイヤモンド電子、およびアジア地域の複数の製造・販売子会社が連携して行っています。

その他事業


金型成型事業などを展開しています。グループ内の製造基盤を支えるとともに、外部顧客に対するプラスチック射出成型品の製造・提供を行っています。

製品の販売を通じた収益モデルです。事業の運営は主にダイヤクラフトや、インド、タイに拠点を置く海外の関連子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は安定して推移しており、直近期には968億円に達しています。経常利益も直近期に21億円と回復傾向を示していますが、期間中には赤字を計上する期もあるなど、事業環境や原材料費の変動などの影響を受けて利益水準が変動している様子がうかがえます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 763億円 911億円 933億円 917億円 968億円
経常利益 13億円 -8億円 13億円 15億円 21億円
利益率(%) 1.7% -0.9% 1.4% 1.6% 2.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 13億円 -11億円 -19億円 4億円 2億円

(2) 損益計算書


売上高は前期の917億円から968億円へ増収となり、売上総利益も138億円から155億円へと増加しました。これに伴い売上総利益率も15.1%から16.1%へと改善しています。営業利益は24億円を確保し、営業利益率は2.5%で推移しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 917億円 968億円
売上総利益 138億円 155億円
売上総利益率(%) 15.1% 16.1%
営業利益 23億円 24億円
営業利益率(%) 2.5% 2.5%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が33億円(構成比25%)、給与及び手当が31億円(同23%)を占めています。売上原価は812億円で、売上原価合計に対する構成比は明らかにされていないものの、部材調達の改善等による製造原価低減が寄与しています。

(3) セグメント収益


セグメント別の売上高を見ると、自動車機器事業は米国や中国における内燃機関搭載車の増産などの影響により、売上高が前期の349億円から405億円へと大きく伸長し、全体の成長を牽引しました。一方、エネルギーソリューション事業や電子機器事業、その他事業の売上高は前期とほぼ同水準で安定的に推移しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
自動車機器事業 349億円 405億円
エネルギーソリューション事業 245億円 241億円
電子機器事業 310億円 310億円
その他事業 13億円 12億円
連結(合計) 917億円 968億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業キャッシュ・フローと投資キャッシュ・フローがマイナスである一方、財務キャッシュ・フローがプラスとなっており、本業での資金創出がマイナスとなる中で借入等の資金調達を行いながら将来の成長に向けた投資を継続している局面にあると言えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 36億円 -14億円
投資CF -6億円 -13億円
財務CF -38億円 13億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も16.7%であり、いずれも市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「私達はものづくりを通じてお客様の発展に寄与し、信頼を積み重ね、社会の豊かさに貢献することで、耀き疾走する傍楽仲間達の物心両面の幸せを追求します。」という経営理念を掲げています。社会の公器として、ものづくりを通じた社会貢献と、共に働く仲間(傍楽仲間達)の幸福を同時に追求する姿勢を示しています。

(2) 企業文化


同社は「多面体に耀き傍楽仲間達を大切にする経営」を重視し、国籍や性別に関わらず多様な人材が活躍できる企業文化を醸成しています。働くことを「傍(はた)を楽(らく)にする」ことと捉える「傍楽仲間達」が、一人ひとりの個性を発揮し、志操を高め、自律的に成長する集団を目指す価値観が根付いています。

(3) 経営計画・目標


中長期経営計画「炎のスクラム」を策定し、2028年3月期を最終年度として事業の成長を目指しています。カーボンニュートラル社会の実現に向け、三事業のクロスチャンネルの強みを活かし、車と家をつなぐ製品開発を推進しています。具体的な財務目標として以下を掲げています。

* 売上高1,500億円以上
* 営業利益率6%
* ROE20%以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、脱炭素社会やモータリゼーションへの対応を中長期的な成長機会と捉えています。「車と家を地球環境に資するものづくりでつなぐ」というビジョンのもと、次世代燃料点火燃焼技術やV2X製品群の開発を重点施策としています。また、グローバルサプライチェーンの再構築やESG経営の強化を通じて持続的な成長基盤を確立する戦略です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「公器」として持続的に社会に貢献するため、最大の経営資源である「人」を重視する人材戦略を掲げています。「公器」の志を持つ人材、変化を創出する技術人材、グローバルな多様性を強みとする人材の確保と育成に注力しています。次世代リーダーの選抜育成やジョブローテーション、多様性が活きる土壌づくりとしてのダイバーシティ推進や健康経営の実践を進めています。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.0%
男性育児休業取得率 83.3%
男女賃金差異(全労働者) 66.1%
男女賃金差異(正規雇用) 64.0%
男女賃金差異(非正規雇用) 67.6%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員の割合(45.2%)、管理職の割合(12.4%)、子会社における現地社員の取締役の登用割合(9.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 海外での事業拡大に伴うリスク


顧客のグローバル化に対応するため海外事業を積極的に展開しており、政治や経済情勢の変動、法制・税制の変更、人材確保の困難さといった海外拠点特有のリスクが存在します。ロシアによるウクライナ侵攻や中東問題など地政学リスクの高まりがサプライチェーンに影響を及ぼす可能性があります。

(2) 為替変動リスク


同社の海外売上高比率は高く、外貨建て取引や外貨建て資産の評価替えに伴う為替変動リスクが存在します。為替先物予約の活用や現地調達体制の整備などを進めていますが、為替相場の変動がグループの業績に影響を与える可能性があります。

(3) 財務制限条項による影響


同社グループが締結している借入金契約の中には財務制限条項が付されているものがあります。万が一、これらの条項に抵触し、金融機関から借入金の一括返済を求められた場合、同社の資金繰りや業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。