ダイヤモンドエレクトリックホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ダイヤモンドエレクトリックホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の持株会社です。自動車用点火コイル、太陽光発電用パワーコンディショナ、電子制御機器などの製造・販売を主要事業としています。2025年3月期の連結業績は、価格転嫁の進展や生産性改善により、売上高は微減ながらも経常利益は増益となり、親会社株主に帰属する当期純利益は黒字転換しました。


※本記事は、株式会社ダイヤモンドエレクトリックホールディングス の有価証券報告書(第7期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ダイヤモンドエレクトリックホールディングスってどんな会社?


自動車機器、エネルギーソリューション、電子機器の3事業を展開し、「車と家をものづくりでつなぐ」企業です。

(1) 会社概要


2018年にダイヤモンド電機が単独株式移転により同社を設立し上場しました。2019年には田淵電機(現ダイヤゼブラ電機)を完全子会社化し、経営再建を主導しました。2021年に事業再編を行い、2022年4月に東証プライム市場へ移行しました。同年8月にはダイヤクラフトを完全子会社化し、グループ体制を強化しています。

連結従業員数は3,681名、単体従業員数は持株会社のため記載がありません。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位も信託銀行です。第3位はダイヤモンドエンジニアリングです。

氏名 持株比率
日本カストディ銀行(信託口) 8.66%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 8.62%
ダイヤモンドエンジニアリング 7.31%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長CEO兼グループCEOは小野有理氏です。社外取締役比率は57.1%です。

氏名 役職 主な経歴
小野 有理 代表取締役社長CEO兼グループCEO 2005年ユーリズムコンサルティング代表。NST社長を経て2016年ダイヤモンド電機社長。2018年同社社長就任(現任)。ダイヤゼブラ電機社長等を兼務。
小谷 カオル 取締役 1991年ダイヤモンド電機入社。2016年同社経理部鳥取経理課課長、2020年同社監査室室長補佐。2025年6月より現職。
入江 正孝 取締役(監査等委員) 1979年和光証券入社。2012年ダイヤモンド電機入社、社長室長等を経て2018年同社取締役(監査等委員)。2025年1月多面体人財再点火反転攻勢監査役より現職。


社外取締役は、吉田夛佳志(元大東プレス工業代表取締役社長)、岡本岳(岡本・豊永法律事務所共同パートナー)、笠間士郎(元第一稀元素化学工業常勤監査役)、奥下英己(元神戸土地建物常務取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「自動車機器事業」、「エネルギーソリューション事業」、「電子機器事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 自動車機器事業


ガソリンエンジン用点火コイル、ミッションスイッチ、回転センサー、車載用制御基板等の開発、製造、販売および保守サービスを行っています。主な顧客は国内外の自動車メーカーや自動車部品メーカーです。

収益は、製品の販売対価として顧客から受け取ります。運営は主に、中核事業会社であるダイヤゼブラ電機、ダイヤモンド電機、米国ダイヤモンド電機などが担っており、グローバルに事業を展開しています。

(2) エネルギーソリューション事業


太陽光発電用パワーコンディショナ、蓄電ハイブリッドシステムなどの開発、製造、販売および保守サービスを行っています。再生可能エネルギーの活用や、V2H(Vehicle to Home)など車と住宅をつなぐ製品を手掛けています。

収益は、製品の販売および保守サービスの対価として顧客から受け取ります。運営は主に、ダイヤゼブラ電機やゼブラ電子が行っています。

(3) 電子機器事業


家庭向け冷暖房用および給湯用着火装置、電子制御機器、トランス・リアクター等の電子デバイスの開発、製造、販売および保守サービスを行っています。主要顧客にはダイキン工業などが含まれます。

収益は、製品の販売対価として顧客から受け取ります。運営は主に、ダイヤゼブラ電機、ダイヤモンド電子、海外の製造子会社などが担当しています。

(4) その他


金型製作や射出成型などの事業を展開しています。

収益は、金型や成型品の販売対価として顧客から受け取ります。運営は主に、ダイヤクラフト、インドクラフト、タイクラフトが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期の業績推移です。売上高は増加傾向にありましたが、直近では横ばいとなっています。利益面では、原材料高騰等の影響により赤字の期もありましたが、2025年3月期は価格転嫁や生産性改善が進み、経常利益が増加し当期純利益も黒字化しました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 706億円 763億円 911億円 933億円 917億円
経常利益 25億円 13億円 -8.2億円 13億円 15億円
利益率(%) 3.5% 1.7% -0.9% 1.4% 1.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 5.4億円 -4.0億円 -24億円 3.3億円 -28億円

(2) 損益計算書


売上高は微減となりましたが、売上原価の低減により売上総利益および利益率は改善しました。営業利益は前期比で大幅に増加し、営業利益率も向上しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 933億円 917億円
売上総利益 125億円 138億円
売上総利益率(%) 13.4% 15.1%
営業利益 23億円 23億円
営業利益率(%) 2.5% 2.5%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が33億円(構成比29%)、給与及び手当が28億円(同25%)を占めています。

(3) セグメント収益


自動車機器事業は増収黒字転換、エネルギーソリューション事業も増収増益となりました。一方、電子機器事業は欧州市場の影響などで減収となりましたが、利益は確保しています。全体として利益体質への改善が見られます。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
自動車機器事業 329億円 349億円 -9.0億円 3.8億円 1.1%
エネルギーソリューション事業 227億円 245億円 23億円 28億円 11.5%
電子機器事業 364億円 310億円 10億円 11億円 3.4%
その他 14億円 13億円 -0.7億円 -1.8億円 -14.2%
調整額 - - -21億円 -18億円 -
連結(合計) 933億円 917億円 2.3億円 23億円 2.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は「健全型」です。本業の営業活動でキャッシュを獲得しつつ、借入金の返済を進めています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 21億円 36億円
投資CF -40億円 -6.4億円
財務CF 1.3億円 -38億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.8%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も14.4%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「ものづくりを通じてお客様の発展に寄与し、信頼を積み重ね、社会の豊かさに貢献することで、耀き疾走する傍楽仲間達(はたらくなかまたち)の物心両面の幸せを追求します。」という経営理念を掲げています。

(2) 企業文化


同社は、社員を「傍楽仲間達(はたらくなかまたち)」と呼び、共に働く仲間を大切にする文化を持っています。また、「炎のスクラム」というスローガンのもと、困難な状況でも諦めずに結束し、全社一丸となって課題に取り組む姿勢を重視しています。社長による「現場、現場、現場、相手の立場に立つ、本当に立つ」という行動指針も示されています。

(3) 経営計画・目標


2028年3月期を最終年度とする中長期経営計画「炎のスクラム」を策定しています。2027年度の経営指標として、以下を掲げています。

* 売上高:1,500億円以上
* 営業利益率:6%
* ROE:20%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「車と家を地球環境に資するものづくりでつなぐ」を新ビジョンに掲げ、3事業のシナジーを活かしてカーボンニュートラル社会の実現を目指しています。特に、車と家、電力系統をつなぐV2X製品群の開発を推進しています。

* 自動車機器事業:「点火コイル世界シェアNo.1」を目指し、市場占有率向上と収益構造改革を進めます。
* エネルギーソリューション事業:「住宅用蓄電システム国内シェア1位の堅持」を掲げ、社会インフラ確立を目指した製品開発を促進します。
* 電子機器事業:「国内インバーターエアコン用リアクター市場シェア1位」等の獲得を目指します。
* 新規事業:超高エネルギー点火システムや熱電発電システムなどの開発を進めます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


優秀な人材については性別や国籍等に関わりなく積極的に採用・登用する方針です。中長期的な企業価値向上のため、女性社員や外国人社員の比率、女性管理職比率などの目標を設定し、多様な人材が活躍できる環境整備を推進しています。また、独自の研修や「女性取締役候補傍楽仲間達抜擢プロジェクト」などを通じて、次世代リーダーの育成に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社は純粋持株会社のため、平均年間給与等は開示していません。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.1%
男性育児休業取得率 77.8%
男女賃金差異(全労働者) 69.8%
男女賃金差異(正規) 68.7%
男女賃金差異(非正規) 68.7%


※上記数値は、主要な連結子会社であるダイヤゼブラ電機株式会社の実績です。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職の割合(12.5%)、女性社員の割合(45.6%)、女性の積極採用(34.2%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場動向の変化


自動車機器事業では電動化シフトによる点火コイル市場の縮小、エネルギーソリューション事業ではエネルギー政策の変更、電子機器事業ではエアコン需要の変動などがリスクとして挙げられます。同社は、点火コイルでのシェア拡大や新技術開発、海外生産の拡大などで対応を図っています。

(2) 原材料の調達難と価格高騰


金属や樹脂、半導体などの主要原材料について、市況変動による価格高騰や供給不足のリスクがあります。これに対し、原価構造の見直しや価格転嫁、グローバル調達による物流費低減、セカンドソースの確保などを進め、サプライチェーンの強靭化に取り組んでいます。

(3) 海外事業展開に伴うリスク


海外売上高比率が高く、各国の政治・経済情勢、法規制の変更、為替変動などが業績に影響を与える可能性があります。現地調達体制の整備や為替予約の活用、コンプライアンス教育の徹底などでリスク低減に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。