※本記事は、ダイヤモンドエレクトリックホールディングス株式会社の有価証券報告書(第8期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ダイヤモンドエレクトリックホールディングスってどんな会社?
同社は、自動車機器、エネルギーソリューション機器、電子機器の開発・製造・販売をグローバルに展開しています。
■(1) 会社概要
2018年10月にダイヤモンド電機が単独株式移転を行うことで同社を設立し、株式上場を果たしました。その後、2019年に田淵電機(現ダイヤゼブラ電機)を連結子会社化、さらに同年10月に完全子会社化し、事業基盤を拡大しました。2022年にはクラフト(現ダイヤクラフト)を完全子会社化し、金型事業をグループに加えています。
同社グループの連結従業員数は3,503名です。大株主の状況としては、筆頭株主および第3位に資産管理業務を行う信託銀行が名を連ねており、第2位には事業会社のダイヤモンドエンジニアリングが位置しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本カストディ銀行(信託口) | 6.66% |
| ダイヤモンドエンジニアリング | 5.52% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 5.24% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.2%です。代表取締役社長CEO兼グループCEOは小野有理氏が務めています。また、役員のうち4名は社外取締役です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 小野 有理 | 代表取締役社長CEO兼グループCEO | 2005年ユーリズムコンサルティング代表。2016年ダイヤモンド電機代表取締役社長CEO。2018年より現職。 |
| 小谷 カオル | 取締役 | 1991年ダイヤモンド電機入社。2016年同社経理部鳥取経理課課長。2020年同社監査室室長補佐。2025年より現職。 |
| 入江 正孝 | 取締役(監査等委員) | 1979年和光証券(現みずほ証券)入社。2012年ダイヤモンド電機入社。2017年同社取締役(監査等委員)。2018年より現職。 |
社外取締役は、吉田夛佳志(元大東プレス工業代表取締役社長)、岡本岳(岡本・豊永法律事務所共同パートナー)、笠間士郎(元第一稀元素化学工業取締役財務部長)、奥下英己(元神戸土地建物常務取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「自動車機器事業」「エネルギーソリューション事業」「電子機器事業」および「その他」事業を展開しています。
■自動車機器事業
自動車用点火コイル及び電装品等の開発、製造、販売、保守サービスを提供しており、国内外の主要な自動車メーカーを顧客としています。
収益は製品の販売により得ており、主にダイヤモンド電機や米国ダイヤモンド電機などの子会社が運営を担っています。
■エネルギーソリューション事業
太陽光発電用パワーコンディショナ及び蓄電ハイブリッドシステムなどの開発、製造、販売、保守サービスを提供しています。
製品の販売や有償保証期間内の保証サービスから収益を得ており、主にダイヤゼブラ電機やゼブラ電子などが運営を行っています。
■電子機器事業
家庭向け冷暖房用及び給湯用着火装置、トランス・リアクター等の電子制御機器の開発、製造、販売、保守サービスを提供し、各種電気機器メーカーを顧客としています。
製品の販売により収益を認識し、主にダイヤゼブラ電機、ダイヤモンド電子などの子会社が運営しています。
■その他
報告セグメントに含まれない事業として、金型成型事業などを展開しています。
金型の製作や射出成型などの製品販売から収益を得ており、運営は主にダイヤクラフトなどの子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の売上高は増加傾向にあり、763億円から968億円へと順調に成長しています。経常利益も一時的な落ち込みを経て回復し、当期は21億円を計上して利益率も2.1%まで改善を見せています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 763億円 | 911億円 | 933億円 | 917億円 | 968億円 |
| 経常利益 | 13億円 | -8億円 | 13億円 | 15億円 | 21億円 |
| 利益率(%) | 1.7% | -0.9% | 1.4% | 1.6% | 2.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -4億円 | -24億円 | 3億円 | -28億円 | 16億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期の917億円から当期は968億円へと増加し、売上総利益も拡大しています。これに伴い営業利益も23億円から24億円へと微増し、着実な収益の伸びを示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 917億円 | 968億円 |
| 売上総利益 | 138億円 | 155億円 |
| 売上総利益率(%) | 15.1% | 16.1% |
| 営業利益 | 23億円 | 24億円 |
| 営業利益率(%) | 2.5% | 2.5% |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が33億円(構成比25.3%)、給与及び手当が31億円(同23.4%)、輸出諸掛・販売手数料・輸送費が15億円(同11.8%)を占めています。
■(3) セグメント収益
自動車機器事業が全体を牽引し、売上高を大きく伸ばしています。一方でエネルギーソリューション事業や電子機器事業は横ばいから微減となっており、事業ごとに異なる成長のペースが見られます。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 自動車機器事業 | 349億円 | 405億円 |
| エネルギーソリューション事業 | 245億円 | 241億円 |
| 電子機器事業 | 310億円 | 310億円 |
| その他 | 13億円 | 12億円 |
| 連結(合計) | 917億円 | 968億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業は赤字ですが、将来成長のため借入で投資を継続しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 36億円 | -14億円 |
| 投資CF | -6億円 | -13億円 |
| 財務CF | -38億円 | 13億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.7%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も16.7%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「私達はものづくりを通じてお客様の発展に寄与し、信頼を積み重ね、社会の豊かさに貢献することで、耀き疾走する傍楽(はたらく)仲間達の物心両面の幸せを追求します」という経営理念を掲げています。社会の公器として、ものづくりを通じた持続可能な社会の実現と、働く人々の幸福を追求しています。
■(2) 企業文化
多様な人材が生き生きと働ける会社を目指し、「国籍・性別・年齢・身上に関わりない人財の採用(ダイバーシティー推進)」や働き方、職場環境の整備を重視しています。また、ESG経営の強化として、「環境整備・地域共生・多面体に耀き傍楽仲間達を大切にする経営」を企業文化として実践しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、2028年3月期を最終年度とする中長期経営計画「炎のスクラム」を策定し、事業再生とさらなる成長を目指しています。2027年度の目標として以下の数値を掲げています。
- 売上高:1,500億円以上(ターゲット2,000億円)
- 営業利益率:6%
- ROE:20%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
新ビジョン「車と家を地球環境に資するものづくりでつなぐ」の下、カーボンニュートラル社会の実現に向けた戦略的な技術・製品開発を推進しています。特にV2X製品群の開発や次世代燃料点火燃焼技術開発を進めるとともに、グローバルサプライチェーンの再構築やESG経営の強化を重点方針として取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「最大の経営資源は『人』である」と位置づけ、従業員を「傍楽(はたらく)仲間達」と呼びます。多様性の尊重を起点とし、性別や国籍によらず優秀な人材を積極的に採用・登用する方針です。次世代リーダーの選抜育成や国内外のジョブローテーション、自律的キャリア形成の支援などを行い、多様な人材が活躍できる環境整備を進めています。
■(2) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.0% |
| 男性育児休業取得率 | 83.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 66.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 64.0% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 67.6% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員の割合(45.2%)、管理職の割合(12.4%)、管理職における女性社員の割合(21.5%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 海外での事業拡大に伴うリスク
同社グループは顧客のグローバル化に対応するため、海外事業を積極的に展開しています。そのため、政治・経済情勢の変動、社会環境や法制・税制の変更、人材確保の困難など、海外拠点特有のリスク要因が業績に影響を与える可能性があります。
■(2) 為替変動リスク
同社は海外売上高比率が高く、外貨建て取引や外貨建て資産の評価替えに伴う為替変動リスクが存在します。為替先物予約の活用や現地調達体制の整備を進めていますが、為替相場の変動が業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 災害等による影響
自然災害による火災や電力供給の中断等により、生産活動が中断するリスクがあります。また、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化や中東問題などの地政学リスクの高まりが、海外での生産拠点の操業やサプライチェーンに影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 財務制限条項による影響
同社グループが締結している借入金契約の中には財務制限条項が付されているものがあります。万が一、これらの条項に抵触し、金融機関から借入金の一括返済を求められた場合、同社グループの資金繰りや業績に重大な影響を与える可能性があります。



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