ヒマラヤ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

 ヒマラヤ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード、名証プレミア上場。スポーツ用品小売大手。直近決算は売上高604億円、経常利益3.8億円、当期純利益0.1億円で増収減益。独自のPB開発やEC強化、人事戦略「HIMARAYA3.0」による組織活性化を推進し、収益基盤の再構築を図っています。


※本記事は、株式会社ヒマラヤ の有価証券報告書(第50期、自 2024年9月1日 至 2025年8月31日、2025年11月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ヒマラヤってどんな会社?


スポーツ用品小売チェーンを展開する岐阜県拠点の企業です。リアル店舗とECの連携や独自商品開発に強みを持ちます。

(1) 会社概要


1976年に岐阜市でスキー用品等の販売を行う「有限会社岐阜ヒマラヤ」として設立されました。1996年に株式を店頭登録し、1999年に東証・名証二部へ上場、2012年には東証・名証一部へ指定替えとなりました。その後、2022年の市場区分見直しを経て、2023年に東証スタンダード市場へ移行しています。

連結従業員数は721名、単体従業員数は713名です。筆頭株主は創業家資産管理会社のコモリホールディングスで、第2位は大垣共立銀行、第3位は十六銀行といずれも地元の地方銀行が名を連ねています。

氏名 持株比率
コモリホールディングス 33.41%
大垣共立銀行 4.11%
十六銀行 3.94%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性2名の計7名で構成され、女性役員比率は28.6%です。代表取締役社長兼CEOは小田学氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
小田 学 代表取締役社長兼CEO 三菱商事に入社し、英国子会社会長や食品産業グループでの事業構想・デジタル戦略担当を経て、2023年に同社へ入社。販売本部長などを歴任し、2023年11月より現職。
三井 宣明 取締役管理本部長兼CFO 太田昭和監査法人、エー・ディー・ワークス、地域経済活性化支援機構等を経て、2020年に同社入社。管理部門や経営企画を統括し、2024年9月より現職。
小森 一輝 取締役 本田技研工業を経て2011年に同社入社。EC事業部長や販売チャネル統括本部長などを歴任し、専務取締役を経て2023年9月より現職。
川村 祥之 取締役(常勤監査等委員) 大垣共立銀行に入行し、取締役市場金融部長などを歴任。OKB総研取締役副社長を経て、2018年に同社取締役(常勤監査等委員)に就任。


社外取締役は、今井美香(MIKA代表取締役)、都筑直隆(都筑事務所代表取締役)、鈴木友美(鈴木法律事務所代表弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「一般小売事業」および「フルフィルメント事業」を展開しています。

(1) 一般小売事業


スキー・スノーボード、ゴルフ、アウトドア、一般スポーツ用品などの販売を行っています。全国に展開する「ヒマラヤ」等のリアル店舗に加え、自社ECサイトやモール型ECサイトを通じたインターネット販売も手掛けています。PB(プライベートブランド)商品の開発にも注力しています。

収益は主に一般消費者に対する商品販売代金です。また、店舗網を活かしたサービスの提供も行っています。運営は主にヒマラヤが行っています。

(2) フルフィルメント事業


インターネット販売におけるバックヤード業務全般を担う事業です。具体的には、商品の受注処理、梱包、発送、顧客への受け渡し、代金回収、顧客管理、問い合わせ対応といった一連の業務プロセスを提供しています。

収益は、EC事業者(現在は主に親会社のヒマラヤ)から受け取る業務受託手数料等です。運営は連結子会社のコアブレインが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は600億円前後で推移していますが、利益面では変動が見られます。2022年8月期には24億円規模の経常利益を計上していましたが、その後は減益傾向にあり、直近の2025年8月期は経常利益3.8億円、当期純利益0.1億円と低水準に留まっています。

項目 2021年8月期 2022年8月期 2023年8月期 2024年8月期 2025年8月期
売上高 621.4億円 589.3億円 601.9億円 585.1億円 604.5億円
経常利益 22.2億円 23.7億円 11.3億円 4.3億円 3.8億円
利益率(%) 3.6% 4.0% 1.9% 0.7% 0.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 14.1億円 14.2億円 5.7億円 2.0億円 0.1億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は3.3%増加し600億円台を回復しました。売上総利益も増加し、利益率も若干改善しています。一方で、販売費及び一般管理費の増加により営業利益は減少し、経常利益も前期を下回りました。

項目 2024年8月期 2025年8月期
売上高 585.1億円 604.5億円
売上総利益 204.6億円 212.0億円
売上総利益率(%) 35.0% 35.1%
営業利益 3.1億円 2.9億円
営業利益率(%) 0.5% 0.5%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が64億円(構成比30%)、賃借料が49億円(同23%)を占めています。売上原価は392億円で、売上高に対する構成比は65%です。

(3) セグメント収益


商品区分別に見ると、一般スポーツ用品が売上の約6割を占め、前期比で増加しました。ゴルフ用品やアウトドア用品は天候不順や需要回復の遅れにより減少しました。「その他」区分の売上が大きく伸長しています。

区分 売上(2024年8月期) 売上(2025年8月期)
スキー・スノーボード 30.0億円 31.1億円
ゴルフ 102.4億円 100.6億円
アウトドア 84.9億円 81.8億円
一般スポーツ 362.2億円 380.6億円
その他 5.6億円 10.4億円
連結(合計) 585.1億円 604.5億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年8月期 2025年8月期
営業CF 9.8億円 4.2億円
投資CF -5.5億円 -2.2億円
財務CF -7.1億円 -6.3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は0.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は47.1%で市場平均をやや下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


お客様第一主義のもと、独自の企業活動を通じてスポーツ文化の定着と発展を図り、多様化するライフスタイルにおけるスポーツの役割を考え続けることをミッションとしています。競技だけでなく日常生活のあらゆる場面で、スポーツを通じて人々の人生をより豊かにする存在となることを目指しています。

(2) 企業文化


「スポーツとウェルビーイングをデザインする」をパーパスとして掲げています。スポーツ専門店としての強みを活かしつつ、現場スタッフからのボトムアップによるアイデアを商品やサービスに反映させる姿勢を重視しています。また、商品を単に売るだけでなく独自の価値を付加することを行動指針としています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画の最終年度である2026年8月期に向け、前提条件の変化を踏まえて数値計画を修正し、収益基盤の再構築を目指す足場固めの期と位置付けています。

* EC売上:300億円体制の構築

(4) 成長戦略と重点施策


事業領域を「スポーツ」「ライフスタイル」「健康」の3領域に分類し、リアル店舗とECの運営ノウハウや商品開発力を軸に成長を目指します。国内ではEC専売や新業態(小型店)の開発、飲食や健康美をテーマとした事業を展開し、海外では自社ブランドの輸出や越境ECによる販路拡大に取り組みます。

* 既存店の収益力向上とEC事業拡大の加速
* 主力店の大規模リニューアルによる店舗販売力の強化
* PB(プライベートブランド)の規模拡大と在庫管理の強化
* 人事戦略「HIMARAYA3.0」による組織風土の醸成

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人事戦略「HIMARAYA3.0」に基づき、全従業員の活躍と多様性の尊重を目指しています。スキルとマインドの両面から公正に評価し、教育・研修制度を充実させることで人材育成を図るとともに、高度専門人材の確保に努めています。また、個性を尊重した社風の醸成や、従業員の業績貢献に対する還元強化も進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年8月期 39.6歳 13.7年 4,998,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.1%
男性育児休業取得率 68.0%
男女賃金差異(全労働者) 64.1%
男女賃金差異(正規雇用) 73.2%
男女賃金差異(非正規) 102.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、1人当たり年間教育研修時間(12時間)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 気象状況による売上変動リスク


取り扱うスポーツ用品、特にスキー・スノーボードなどのウインター用品の販売は、降雪量や気温などの気象状況に大きく左右されます。暖冬や少雪などの天候不順が発生した場合、主力商品の需要が減退し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 出店に関するリスク


大規模な店舗の新規出店や増床は、大規模小売店舗立地法の規制を受けます。調整過程で計画通りの出店ができない場合があり、事業計画の達成が困難になる可能性があります。また、敷金・保証金の未返還リスクや、収益性の低い店舗の減損リスクも存在します。

(3) 競合環境の激化と市場変化


スポーツ用品小売市場では、少子高齢化や購買行動の変化に加え、メーカーによるEC直販の拡大や異業種からの参入により競争が激化しています。価格競争や顧客の奪い合いが進む中、他社との差別化やプレゼンスの維持が課題となっています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。