※本記事は、サイプレス・ホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第7期、自 2024年9月1日 至 2025年8月31日、2025年11月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. サイプレス・ホールディングスってどんな会社?
海鮮和食「築地食堂源ちゃん」を主力に、ショッピングセンターや都市部で多角的に店舗を展開する外食企業です。
■(1) 会社概要
1993年に居酒屋「串えもん」として創業し、1994年に前身となるサイプレスを設立しました。2006年に主力ブランド「築地食堂源ちゃん」の展開を開始し、2019年には持株会社体制へ移行してサイプレス・ホールディングスを設立しました。その後、2025年10月に東京証券取引所スタンダード市場へ上場を果たしました。
連結従業員数は411名、単体従業員数は4名です。筆頭株主は投資事業を行う丸の内キャピタル第二号投資事業有限責任組合で、第2位は資産管理会社の株式会社EAM、第3位は創業者の東稔哉氏となっています。丸の内キャピタルが運営するファンドが株式の過半数近くを保有する資本構成です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 丸の内キャピタル第二号投資事業有限責任組合 | 49.30% |
| EAM | 44.90% |
| 東稔哉 | 4.90% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は東稔哉氏が務めています。取締役7名のうち5名が社外取締役であり、経営の透明性を高める体制をとっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 東 稔哉 | 代表取締役社長 | 1993年「串えもん」創業。1994年サイプレス代表取締役社長。2019年EAM代表取締役、2023年サイプレス代表取締役会長を経て、2024年6月より現職。 |
| 尾澤 一彦 | 専務取締役 | 1983年共立建設入社。1997年サイプレス入社、常務取締役、取締役副社長を経て、2023年サイプレス代表取締役社長。2024年6月より現職。 |
社外取締役は、松下正(元アダストリア代表取締役最高執行責任者)、勝山章廣(元トリニティアーツ取締役会長)、福﨑昇平(丸の内キャピタル取締役)、奥見昌彦(丸の内キャピタル取締役)、宮永雅好(元シュローダー・インベストメント・マネジメント取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「飲食事業」を展開しています。
■飲食事業
海鮮系の和食業態である主力ブランド「築地食堂源ちゃん」をはじめ、グルメ回転寿司「回転ずしABURI百貫」、焼き鳥業態の「炭火焼鳥銀座惣菜店」など、多様なブランドを展開しています。ショッピングセンターや都市部の商業施設、路面店など、立地特性に合わせた店舗運営を行っています。
一般消費者への飲食提供や惣菜販売による対価が主な収益源です。また、フランチャイズ店舗からの加盟金やロイヤリティ収入も含まれます。事業の運営は主に連結子会社のサイプレスが担っており、KSフロンティアなどの子会社を通じてフランチャイズ展開も行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近3期間の業績を見ると、売上収益は順調に拡大傾向にあります。利益面でも、税引前利益および当期利益ともに増加しており、特に直近決算では大幅な増益を達成しました。新規出店や既存店の好調が寄与し、収益性が向上していることが読み取れます。
| 項目 | 2023年8月期 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 88億円 | 103億円 | 113億円 |
| 税引前利益 | 2億円 | 3億円 | 6億円 |
| 利益率(%) | 2.1% | 2.9% | 5.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 0.2億円 | 1.7億円 | 4.4億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の比較では、増収効果により売上総利益が増加しています。営業利益も大きく伸びており、収益構造の改善が進んでいます。売上総利益率は高い水準を維持しており、本業の儲ける力が強化されている様子がうかがえます。
| 項目 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 103億円 | 113億円 |
| 売上総利益 | 68億円 | 74億円 |
| 売上総利益率(%) | 66.7% | 65.5% |
| 営業利益 | 4.4億円 | 7.7億円 |
| 営業利益率(%) | 4.3% | 6.8% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給付費用が31億円(構成比48%)、その他経費が17億円(同26%)を占めています。売上原価については、食材費等の変動費が主な構成要素となっています。
■(3) セグメント収益
飲食事業単一セグメントであるため、全社業績と同様に売上収益、利益ともに前期を上回りました。新規出店や既存店売上の伸長が増収増益の主な要因となっています。
| 区分 | 売上(2024年8月期) | 売上(2025年8月期) | 利益(2024年8月期) | 利益(2025年8月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| Total | 103億円 | 113億円 | 4.4億円 | 7.7億円 | 6.8% |
| 連結(合計) | 103億円 | 113億円 | 4.4億円 | 7.7億円 | 6.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は20.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は68.3%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「食の喜びをすべての人へ、特別ではなく、毎日食べる食事に感動や喜びを提供出来る事を目指す」を企業理念として掲げています。外食企業として多くの人々に信頼され、地域に必要とされる店舗を創造し、社会に貢献することを目指して事業活動を行っています。
■(2) 企業文化
「店長自らが経営者」という考えのもと、現場レベルでの徹底した店舗利益管理と従業員へのインセンティブ設計を重視しています。各従業員が店舗利益の向上に意欲的に取り組める仕組みを構築し、自己成長力と社会人としての基礎力を高める「人財」教育にも力を注いでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社は、店舗出店等の投資効率性を示す指標としてROIC(投下資本利益率)を重視しています。また、成長性を判断する指標として売上収益や既存店売上高成長率、収益性を表す指標としてEBITDAおよびEBITDAマージンなどを重要な経営指標と定めています。
■(4) 成長戦略と重点施策
持続的な成長を実現するため、店舗開発体制の強化による新店開発の加速、特に路面店やロードサイドへの出店拡大を進めています。また、人財育成の強化として待遇面の向上や外国人採用に取り組み、M&Aやフランチャイズ化の推進によって事業基盤の拡大とシナジー効果の創出を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材を資本と捉え、確保と活躍推進を重視しています。待遇面の向上やインセンティブ制度の拡充、外国人採用の強化に取り組み、多様な人材にとって働きがいのある職場環境を整備しています。また、OJTを通じた教育や最適なシフト配置により、従業員の成長と店舗運営の効率化を両立させています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年8月期 | 48.2歳 | 1.3年 | 8,274,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.7% |
| 男性育児休業取得率 | 25.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 80.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 78.9% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 90.1% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 外食産業における競合環境
同社は飲食店やテイクアウト店など多数の競合と対峙しており、品質、味、価格が重要な競争要因となっています。人口減少による市場縮小や店舗過剰による客数減少のリスクがあり、競争力を維持できなければ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、競合他社とのマーケティング競争が激化した場合もリスク要因となります。
■(2) 食品の衛生管理と安全性
海産物等の食材を扱うため、食中毒や異物混入などの食品衛生上の問題が発生するリスクがあります。これらが発生した場合、ブランドの信用毀損や営業停止処分などにより、業績に重大な影響を与える可能性があります。同社は法令遵守や衛生管理体制の強化に努めていますが、供給業者起因のリスクも含め完全に排除することは困難です。
■(3) 食材等の調達と価格変動
鮮魚や米などの食材価格は、天候、為替変動、国際情勢などの影響を受けやすく、調達コストが高騰するリスクがあります。価格転嫁が困難な場合、利益率が低下する可能性があります。同社は取引先の分散やメニューの工夫で対応していますが、予期せぬ供給停止や価格高騰は経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。



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