※本記事は、株式会社篠崎屋の有価証券報告書(第39期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月15日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 篠崎屋ってどんな会社?
篠崎屋は、「三代目茂蔵」ブランドで豆腐や大豆加工食品を中心とした製造小売(SPA)事業を展開する企業です。
■(1) 会社概要
同社は1987年に有限会社篠崎屋食品として設立され、1995年に現在の株式会社篠崎屋へ商号変更しました。1999年に埼玉県春日部市に小売店「三代目茂蔵工場直売所」の第1号店を出店し、製造小売業としての基盤を築きました。その後、2003年に東証マザーズ市場へ上場を果たし、2015年には東証二部へ市場変更を行いました。2022年の市場区分見直しに伴い、現在は東証スタンダード市場に上場しています。
同社の従業員数は単体で20名です。筆頭株主は創業者の樽見茂氏で、第2位は取引先持株会、第3位は食品卸売業を営む取引先企業の鈴木物産です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 樽見茂 | 21.40% |
| 篠崎屋取引先持株会 | 3.55% |
| 鈴木物産 | 2.63% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長兼商品開発グループ長は関根雅之氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 関根雅之 | 代表取締役社長商品開発グループ長 | 1993年入社。商品開発部長、取締役社長を経て2023年12月より現職。 |
| 樽見茂 | 取締役会長 | 1987年同社設立。代表取締役社長、代表取締役会長を経て2023年12月より現職。 |
| 矢立実 | 取締役管理グループ長兼経営企画部長兼IR室長 | 2000年入社。営業本部長、管理グループ長などを経て2014年2月より現職。 |
社外取締役は、永田淳一(元セブン-イレブン・ジャパン、バリュークリエイション社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「小売事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 小売事業
店舗名「三代目茂蔵」の直営店による小売事業を行っています。豆腐、豆乳、大豆加工食品をはじめ、健康を意識したオリジナル商品を消費者へ直接販売しており、2025年9月末時点で30店舗を展開しています。
収益は、一般消費者への商品販売による代金です。SPA(製造小売)モデルを採用し、企画・開発から販売までを手掛けています。運営は主に同社が行っています。
■(2) その他事業
「三代目茂蔵」の加盟店への卸売事業および販売指導、業務用得意先への卸売、通販事業を行っています。加盟店に対しては商品の供給とともに店舗運営のノウハウ提供も行っています。
収益は、加盟店や業務用取引先への商品卸売代金、および通販サイトでの販売代金等です。加盟店ネットワークを通じた販売チャネルの拡大を担っており、運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は20億円台後半から30億円前後で推移しています。利益面では第36期から第38期にかけて経常損失および当期純損失を計上し苦戦していましたが、直近の第39期においては増収となり、経常利益、当期純利益ともに黒字転換を果たしています。
| 項目 | 2021年9月期 | 2022年9月期 | 2023年9月期 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 30億円 | 28億円 | 27億円 | 28億円 | 29億円 |
| 経常利益 | 0.4億円 | -0.6億円 | -0.7億円 | -0.1億円 | 0.6億円 |
| 利益率(%) | 1.2% | -2.2% | -2.7% | -0.2% | 2.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 0.1億円 | -0.9億円 | -0.2億円 | -0.3億円 | 0.4億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の業績を比較すると、売上高は増加し、売上総利益率も改善しています。前期は営業損失を計上していましたが、当期は増収効果と利益率の改善により営業利益が黒字化しました。コストコントロールと売上拡大の両面で改善が見られます。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 28億円 | 29億円 |
| 売上総利益 | 8億円 | 9億円 |
| 売上総利益率(%) | 28.3% | 30.5% |
| 営業利益 | -0.1億円 | 0.6億円 |
| 営業利益率(%) | -0.3% | 2.0% |
販売費及び一般管理費のうち、雑給が2億円(構成比29%)、地代家賃が2億円(同24%)を占めています。売上原価においては、材料費が1.9億円(売上原価合計に対し9%)を占めています。
■(3) セグメント収益
小売事業は、商品単価の見直し等により顧客単価が上昇し増収増益となりました。その他事業も大型施設への新規取引開始等により増収増益を達成しています。全セグメントで収益性が改善し、全社的な黒字化に寄与しました。
| 区分 | 売上(2024年9月期) | 売上(2025年9月期) | 利益(2024年9月期) | 利益(2025年9月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 小売事業 | 25億円 | 26億円 | 1億円 | 2億円 | 7.5% |
| その他事業 | 3億円 | 3億円 | 0.2億円 | 0.2億円 | 5.5% |
| 調整額 | - | - | -2億円 | -2億円 | - |
| 連結(合計) | 28億円 | 29億円 | -0.1億円 | 1億円 | 2.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFは税引前当期純利益の計上などによりプラスとなり、投資CFも長期未収入金の回収等によりプラスとなりました。財務CFは微減であり、全体として営業活動と資産回収により資金が増加する「改善型」のキャッシュ・フロー構造となっています。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -1億円 | 0.8億円 |
| 投資CF | 0.3億円 | 0.2億円 |
| 財務CF | -0.2億円 | -0.0億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は76.8%で市場平均を大きく上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「よりいいものをより安く」提供することを通じて、全ての人の生きていくための糧となり、健康と幸せに貢献することを使命としています。消費者にとって価値のある商品づくり、人づくり、店づくりを目指し、常に消費者感覚を忘れずに経営を行うことを方針としています。
■(2) 企業文化
全従業員の行動規範として、「全ての事に感謝します」「全ての事に正直でいます」「全ての事にあきらめず挑戦します」「全ての事を大切にします」「全ての事のルールを守ります」の5つを掲げています。これらを基盤とし、持続的・安定的な成長を図ることを重要課題と認識しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、持続的・安定的な経営を実現させるため、本業の儲けに対する効率性を示す重要な経営指標として、以下の数値を目標に掲げています。
* 売上高営業利益率:5%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は製造小売(豆腐版SPA)事業に経営資源を集中し、事業拡大を推進しています。「三代目茂蔵」のブランド力を高めるため、オリジナル新商品の開発や既存商品のリニューアルを積極的に行い、店舗改装や新規出店による販売力の強化を図っています。また、多様な働き方の推奨やコンプライアンス体制の強化にも取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は持続的・安定的な成長のため、必要な人材の確保と育成を重要課題としています。多様な働き方を推奨し、適正な評価を行うことで優秀な人材を確保するとともに、従業員の教育や能力開発に積極的に取り組む方針です。また、DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)を推進し、全ての従業員がやりがいを持って働ける職場環境の改善に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年9月期 | 43.0歳 | 10.8年 | 4,644,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.0% |
| 男性育児休業取得率 | 0.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 33.7% |
| 男女賃金差異(正規) | 56.5% |
| 男女賃金差異(非正規) | 100.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給取得率(70.1%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 原材料価格の高騰に関するリスク
同社商品の主要原材料である大豆等の農産物や、石油製品を使用する包材の価格は市場変動の影響を受けます。異常気象や原油価格の高騰などによりこれらの価格が上昇した場合、同社の業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 災害等の発生による影響
同社は関東地方を中心に事業を展開しているため、地震や洪水等の自然災害が発生した場合、被害を受ける可能性があります。また、売上高が天候や気温に左右される傾向にあり、猛暑や厳冬等の異常気象が発生した場合や、取引先の工場等が被災した場合には、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 労務関連のリスク
同社では多くのパートタイム従業員が業務に従事しています。人口動態の変化により適正な労働力が確保できない場合や、社会保険・労働条件に関わる制度変更により人件費が増加した場合、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。



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