※本記事は、SHOEI の有価証券報告書(第69期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. SHOEIってどんな会社?
プレミアムヘルメット市場で世界的なブランド力を持つメーカー。海外売上比率が高く、財務体質も健全です。
■(1) 会社概要
1959年に昭栄化工として設立され、翌1960年に二輪乗車用ヘルメットの生産に着手しました。1968年には米国子会社を設立して海外展開を開始し、グローバルブランドとしての地位を確立。2004年にジャスダック証券取引所へ上場し、2015年には東京証券取引所市場第一部(現プライム市場)への上場を果たしました。
連結従業員数は670名、単体では626名が在籍しています。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位も同様に信託銀行です。第3位には外国法人が名を連ねており、機関投資家や海外投資家からの保有比率が高い構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本カストディ銀行(信託口) | 12.90% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 12.20% |
| STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001 | 6.50% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名、計9名で構成され、女性役員比率は22.0%です。代表取締役社長は石田健一郎氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 石田 健一郎 | 代表取締役社長 | 三菱商事出身。海外子会社社長、海外営業部長等を経て2016年より現職。 |
| 堀本 隆行 | 常務取締役 | 同社入社後、商品開発部長、生産技術統括部長、茨城工場長等を経て2023年より現職。 |
| 山口 裕士 | 取締役 | 三菱銀行(現三菱UFJ銀行)出身。財務経理部長、経営管理本部長等を経て2021年より現職。 |
| 清水 匡輔 | 取締役 | 弁護士。同社社外取締役、海外営業部長、海外子会社社長等を経て2024年より現職。 |
社外取締役は、小林慶一郎(慶應義塾大学経済学部教授)、髙山清子(髙山清子公認会計士事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ヘルメット関連事業」の単一セグメントです。
■ヘルメット関連事業
主に高品質・高付加価値の「プレミアムヘルメット」に特化した二輪乗車用ヘルメット及び関連製品を製造・販売しています。一般二輪車用が売上の約90%を占めるほか、官需用ヘルメットなども取り扱っており、世界中のライダーを顧客としています。
製品の販売代金を主な収益源としています。開発・製造は主に同社が行い、販売は同社およびSHOEI DISTRIBUTION GMBH、SHOEI EUROPE DISTRIBUTION SARL、SHOEI ITALIA S.R.L.などの海外連結子会社が各地域の代理店や販売店を通じて行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は2024年9月期まで拡大傾向にありましたが、直近の2025年9月期は減収となりました。利益面でも同様にピークアウトし減益となっていますが、経常利益率は依然として20%台後半の高い水準を維持しており、高収益体質であることが読み取れます。
| 項目 | 2021年9月期 | 2022年9月期 | 2023年9月期 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 238億円 | 290億円 | 336億円 | 358億円 | 324億円 |
| 経常利益 | 61億円 | 85億円 | 99億円 | 105億円 | 89億円 |
| 利益率(%) | 25.6% | 29.4% | 29.3% | 29.3% | 27.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 48億円 | 61億円 | 88億円 | 55億円 | 49億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高の減少に伴い、売上総利益および営業利益が減少しています。売上総利益率は46.4%と前年から改善していますが、販管費の増加により営業利益率は低下しました。それでも営業利益率は27.5%と非常に高い水準を保っています。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 358億円 | 324億円 |
| 売上総利益 | 161億円 | 150億円 |
| 売上総利益率(%) | 45.0% | 46.4% |
| 営業利益 | 103億円 | 89億円 |
| 営業利益率(%) | 28.9% | 27.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が12億円(構成比20%)、広告宣伝費が13億円(同21%)を占めています。売上原価では、材料費や労務費が含まれる当期製品製造原価が原価の大半を構成しています。
■(3) セグメント収益
同社は単一セグメントであり、セグメント利益の開示はありません。
地域別の売上状況を見ると、欧州市場が全体の4割以上を占める最大市場となっています。当期は欧州での新商品反動減や日本の流通在庫調整の影響により、主要地域で売上が減少しました。特に日本市場での減少幅が大きくなっています。
| 区分 | 売上(2024年9月期) | 売上(2025年9月期) |
|---|---|---|
| 日本 | 69億円 | 57億円 |
| 欧州 | 165億円 | 144億円 |
| 北米 | 50億円 | 50億円 |
| アジア | 47億円 | 45億円 |
| その他 | 16億円 | 11億円 |
| 連結(合計) | 358億円 | 324億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
豊富な営業CFで、投資CFと財務CFのマイナスをカバーしきっています。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 97億円 | 98億円 |
| 投資CF | -33億円 | -14億円 |
| 財務CF | -57億円 | -38億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は20.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は85.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「健全な財務体質により、事業継続を長期にコミットする」「Made in Japanで勝負する」「お客様の声に耳を傾ける」という3つの経営方針を掲げています。財務的な独立性を維持し、国内生産による高品質な製品を提供し続けること、そして市場ニーズを的確に捉えた製品開発を行うことを企業の使命としています。
■(2) 企業文化
「Made in Japan」への強いこだわりを持ち、コストダウンを目的とした海外移転よりも、国内工場での品質維持と技術力のブラックボックス化を重視する文化があります。また、「現地現物」の精神に基づき、需要に合わせてフレキシブルに生産体制を変更する柔軟性や、ジャストインタイムによる改善活動を徹底する現場重視の姿勢が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
同社は具体的な数値目標として、ROE(自己資本利益率)20.5%を維持・達成した実績を重視しており、今後も高収益体質と健全な財務体質の維持を目指しています。また、サステナビリティ指標として、2028年3月までに女性管理職比率を8%へ、2027年9月までに男性の育児休業取得率を70%へ引き上げる目標を掲げています。
■(4) 成長戦略と重点施策
既存の二輪用ヘルメット事業においては、欧米日市場でのシェア維持と、中国やASEANなど新興国市場での拡販を強化します。また、新事業としてBMX用ヘルメットに加え、キャリーケース事業への進出を決定しました。同社の強みである高付加価値なモノづくりのノウハウを活かし、事業の多角化と長期的な企業価値向上を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「Made in Japan」を維持するため、従業員一人ひとりの精鋭化と多能工化を推進しています。工場ではジャストインタイム会議を通じた改善活動により人材育成を図っています。また、多様な人材の活躍を重視し、特に女性管理職比率の向上に向けた育成プランの策定や、柔軟な働き方を実現するための制度整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年9月期 | 36.9歳 | 12.8年 | 5,506,145円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.1% |
| 男性育児休業取得率 | 73.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 79.0% |
| 男女賃金差異(正規) | 80.1% |
| 男女賃金差異(非正規) | 75.8% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市場構造の変化(ライダーの高齢化)
日米欧などの主要な二輪先進国において、ライダーの平均年齢が高齢化しています。少子高齢化の進行により若年層のライダーが増加しない場合、将来的に顧客数が減少し、同社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。
■(2) 事業集中リスク
同社は二輪用ヘルメット専業メーカーとして成長してきましたが、経営資源を一つの事業に集中させています。そのため、業界のパラダイムシフトや市場環境の急激な変化が発生した場合、経営に重大な影響を及ぼす可能性があります。これに対し、新規事業への進出でリスク分散を図っています。
■(3) 為替変動リスク
海外売上高比率が80%を超えており、為替相場の変動が経営成績に大きな影響を与える可能性があります。円高局面では収益性が低下する恐れがあるため、円建て輸出の拡大や製品の高付加価値化、内部留保の確保により、為替変動への耐性を高める対策を講じています。



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