※本記事は、株式会社東陽テクニカ の有価証券報告書(第73期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 東陽テクニカってどんな会社?
「はかる」技術のリーディングカンパニーとして、最先端の計測機器・ソリューションを輸入・開発・販売しています。
■(1) 会社概要
1953年9月に光和通商として設立され、当初は工作機械の輸入販売を行っていましたが、1955年に電子計測器分野へ進出しました。1984年に現在の東陽テクニカへ商号変更し、翌1985年に東証二部に上場、1990年には東証一部銘柄となりました。2022年の市場区分見直しを経て、現在はプライム市場に上場しています。直近では2025年8月に量子コンピューター事業を開始するなど、先端技術分野への展開を続けています。
連結従業員数は653名、単体では524名体制です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位も同様に信託銀行です。第3位は外国法人等の常任代理人である証券会社となっています。特定の事業会社による支配はなく、独立した経営体制を維持しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 15.69% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 11.33% |
| NOMURA CUSTODY NOMINEES LIMITED OMNIBUS-FULLY PAID (CASHPB) | 5.41% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性3名の計12名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役 社長執行役員 CEOは高野俊也氏が務めています。社外取締役は3名で、取締役全体の37.5%を占めています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 高野 俊也 | 代表取締役社長執行役員 CEO 兼 量子コンピューティング・カンパニー 管掌 | 1989年入社。EMCマイクロウェーブ計測部長、上海現地法人董事長などを経て、2020年12月より現職。 |
| 小野寺 充 | 取締役常務執行役員 | 1991年入社。情報通信システム営業部門などを経て、2025年10月より現職。 |
| 今泉 良通 | 取締役上席執行役員 | 1987年入社。EMCマイクロウェーブ計測部統括部長、上海現地法人総経理などを経て、2025年10月より現職。 |
| 木内 健雄 | 取締役上席執行役員 CTO 兼 ワン・テクノロジーズ・カンパニー、技術本部 管掌 | 本田技研工業出身。同社技術研究所での研究員を経て2017年入社。2025年10月より現職。 |
| 松井 俊明 | 取締役上席執行役員 CFO 兼 情報システム部、経理部、総務部、業務部、ファシリティエンジニアリング部、監査室 管掌 及び リスク管理担当 | 三菱商事出身。三菱商事テクノス等の役員を経て2022年入社。2025年10月より現職。 |
社外取締役は、西勝也(元サンデン代表取締役社長)、須加深雪(元日立ソリューションズダイバーシティ推進センタ長)、依田智樹(元三菱商事テクノス代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「先進モビリティ」「脱炭素/エネルギー」など7つの報告セグメントで事業を展開しています。
■先進モビリティ
自動車や鉄道などの輸送機器における「性能」「振動騒音」「安全性/耐久性」の研究開発に使われる計測・解析機器やソリューションを提供しています。自動運転技術やEV、eVTOL(空飛ぶクルマ)の開発支援も行っています。
主な収益は、自動車メーカーや輸送機器メーカー等からの機器販売代金およびソリューション提供料です。運営は同社および東揚精測系統(上海)有限公司、TOYOTech LLC、Rototest International AB等の国内外の子会社が行っています。
■脱炭素/エネルギー
カーボンニュートラル実現に向け、二次電池や燃料電池などのエネルギーデバイス、パワー半導体等の電子材料に関する計測・評価システムを提供しています。基礎研究から製品開発まで幅広く支援しています。
主な収益は、電池メーカーや材料メーカー、研究機関等からのシステム販売代金です。運営は同社および東揚精測系統(上海)有限公司、株式会社エル・テール等が行っています。
■情報通信/情報セキュリティ
ICTにおける品質確保や安全運用のためのネットワーク性能試験、運用可視化、情報セキュリティ担保を実現する試験・解析・監視システムを提供しています。最新IT技術を活用したサービスも展開しています。
主な収益は、通信事業者やIT企業等からのシステム販売代金およびサービス利用料です。運営は同社および東揚精測系統(上海)有限公司、TOYOTech LLC、北京普利科技有限公司等が行っています。
■EMC/大型アンテナ
電子機器のEMC(電磁環境両立性)適合試験支援や、5G・コネクテッドカー向けOTA計測システムを提供しています。また、パラボラ大型アンテナ地上システムの設置から保守・校正までをトータルサポートしています。
主な収益は、電子機器メーカー等からの試験システム販売代金やアンテナ関連の工事・保守料です。運営は同社および東揚精測系統(上海)有限公司、AeroGT Labs Corporation、株式会社東陽EMCエンジニアリング等が行っています。
■海洋/防衛
洋上・海中・海底などで使用される調査・計測機器を、防衛、洋上風力発電、水産業などの分野に提供しています。防衛分野向けには、攻撃能力を持たない防衛装備品を扱っています。
主な収益は、官公庁や防衛関連機関、研究機関等からの機器販売代金です。運営は主に同社が行っています。
■ソフトウェア開発支援
ソフトウェア開発のライフサイクル全般を支援し、品質や生産性向上に貢献する製品・サービスを提供しています。DXに対応したセキュリティソリューションも展開しています。
主な収益は、ソフトウェア開発企業等からの製品ライセンス料やサービス提供料です。運営は主に同社が行っています。
■その他
医療用画像読影支援システムや整形外科向けデジタルプランニングツールなどのライフサイエンス分野、電子顕微鏡、油中粒子計測器、量子コンピューターなどを提供しています。
主な収益は、医療機関や研究機関等からのシステム・機器販売代金です。運営は同社および株式会社レキシーが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は200億円台後半から300億円台前半で推移しています。2024年9月期は過去最高の売上高を記録しましたが、2025年9月期は顧客都合による大型案件の期ずれ等により減収となりました。利益面では、売上変動に伴い増減が見られますが、安定して黒字を維持しています。当期利益は10億円台後半の水準で推移していましたが、直近は減益となっています。
| 項目 | 2021年9月期 | 2022年9月期 | 2023年9月期 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 235億円 | 265億円 | 282億円 | 350億円 | 326億円 |
| 経常利益 | 22億円 | 28億円 | 18億円 | 34億円 | 20億円 |
| 利益率(%) | 9.5% | 10.5% | 6.4% | 9.6% | 6.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 17億円 | 19億円 | 15億円 | 25億円 | 12億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の減少に伴い、売上総利益、営業利益ともに前期比で減少しています。特に営業利益は大幅な減益となりました。売上原価率は改善傾向にありますが、販売費及び一般管理費が増加したことが利益を圧迫しました。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 350億円 | 326億円 |
| 売上総利益 | 152億円 | 142億円 |
| 売上総利益率(%) | 43.3% | 43.6% |
| 営業利益 | 34億円 | 19億円 |
| 営業利益率(%) | 9.6% | 5.9% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び賞与が52億円(構成比42%)、賞与引当金繰入額が11億円(同9%)を占めています。売上原価の内訳は、商品評価損等が一部含まれますが、大部分は商品仕入高が占めています。
■(3) セグメント収益
全セグメントにおいて黒字を確保していますが、前期と比較すると多くのセグメントで減益となっています。特に先進モビリティ事業は大型案件の期ずれにより大幅な減収減益となりました。一方、情報通信/情報セキュリティ事業は大手通信事業者向け製品等が好調で増収増益を達成しました。海洋/防衛事業は増収ながら一過性コストにより減益となりました。
| 区分 | 売上(2024年9月期) | 売上(2025年9月期) | 利益(2024年9月期) | 利益(2025年9月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 先進モビリティ | 98億円 | 76億円 | 21億円 | 7億円 | 9.3% |
| 脱炭素/エネルギー | 66億円 | 58億円 | 16億円 | 9億円 | 16.1% |
| 情報通信/情報セキュリティ | 75億円 | 81億円 | 4億円 | 7億円 | 8.5% |
| EMC/大型アンテナ | 47億円 | 44億円 | 2億円 | 2億円 | 3.8% |
| 海洋/防衛 | 23億円 | 27億円 | 5億円 | 3億円 | 9.3% |
| ソフトウェア開発支援 | 21億円 | 24億円 | 4億円 | 3億円 | 14.7% |
| その他 | 21億円 | 15億円 | 1億円 | 0.3億円 | 2.0% |
| 調整額 | - | - | -19億円 | -12億円 | - |
| 連結(合計) | 350億円 | 326億円 | 34億円 | 19億円 | 5.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業である営業活動から得た資金で借入金の返済や配当支払いを行い、投資活動も自己資金の範囲内でコントロールしている「健全型」で、財務的に安定した状態です。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 41億円 | 22億円 |
| 投資CF | -29億円 | -8億円 |
| 財務CF | -7億円 | -10億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は70.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「“はかる”技術で未来を創る」を企業理念に掲げています。リーディングカンパニーとして豊かな社会と環境創りに貢献することを目指し、「テクノロジーインターフェース」として最先端の計測ソリューションを提供することで技術革新を支援・促進します。また、計測システム等の創造を通じて企業価値を向上させ、ステークホルダーと社員に繁栄をもたらすことを使命としています。
■(2) 企業文化
同社は「社員のこころ得(東陽テクニカ コンプライアンス)」を制定し、法令・定款の遵守を徹底する文化を持っています。また、人材を最大の財産と捉え、多様な人材の育成と活躍を推進しています。企業理念に基づいた事業活動そのものがサステナビリティ推進に直結するという意識を共有し、技術革新への貢献と環境保全の推進に全社一丸となって取り組む風土があります。
■(3) 経営計画・目標
2030年に向けた長期ビジョン“BT600-2030”において、連結売上高600億円、連結営業利益75億円、ROE15.0%を目指しています。その中間地点として、2027年9月期を最終年度とする中期経営計画“TY2027”を推進しており、以下の数値目標を掲げています。
* 連結売上高:450億円(新規M&Aを含め500億円以上)
* 連結営業利益:45億円
* ROE:11.0%
■(4) 成長戦略と重点施策
事業戦略、財務・資本戦略、サステナビリティ経営を柱に成長を図ります。事業面では「先進モビリティ」「脱炭素/エネルギー」「防衛」分野に注力し、リカーリングビジネスや自社開発製品による独自ソリューションを拡大します。海外展開の強化やM&Aも積極的に推進します。財務面では成長投資への配分を重視し、DX/AI投資も進めます。サステナビリティでは技術革新への貢献や環境保全等を重点課題としています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材を最大の財産と位置づけ、キャリアアップ支援と評価制度の充実、グローバル人材の育成に投資しています。働き方改革としてフレックスやテレワーク制度を整備し、70歳までの就業を確保する「マイスター/シニアマイスター制度」も導入しています。多様性の観点から女性や外国人の活躍推進、障がい者の雇用率向上にも努め、健康経営を通じて働きやすい環境づくりを推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年9月期 | 42.5歳 | 12.9年 | 9,134,137円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 8.3% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 59.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 75.0% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 42.0% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、外国人管理職比率(6.4%)、キャリア採用者管理職比率(56.4%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 為替レートの変動
海外から製品を輸入し販売しているため、為替レートの変動が損益に影響を与える可能性があります。急激な円安・円高に対しては価格変更や為替予約等で対応していますが、海外連結子会社の財務諸表換算も含め、業績や財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。
■(2) プロジェクトの長期化
大型プロジェクトにおいては、計測システムの納期や設置が長期化し、検収遅延が発生する要因が増加しています。期中に予定していた検収時期が後ろ倒しとなり、期中に売上計上できなかった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 総代理店契約解消
総代理店契約を締結している海外メーカーが、日本法人の設立や他社からの買収によって契約を解消する場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。海外メーカーへの投資によるパートナーシップ強化や、取扱メーカーの拡充によりリスク軽減を図っています。
■(4) 人材の確保
少子高齢化に伴う労働力人口の減少等により、必要な能力を持つ人材や人員数を確保できなかった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。業績連動による利益還元や人事制度の拡充、働き方改革により人材の確保と定着に努めています。



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