※本記事は、株式会社加藤産業 の有価証券報告書(第79期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 加藤産業ってどんな会社?
独立系の総合食品商社として、加工食品を中心に低温食品や酒類の卸売事業を国内外で展開する企業です。
■(1) 会社概要
1947年に兵庫県西宮市で設立され、1990年に大証二部、2004年に東証一部(現プライム)へ上場しました。全国規模の食品卸売基盤を確立する一方、2013年のベトナム現地法人設立をはじめ、マレーシア、シンガポールなどアジア地域での海外展開を加速させています。
連結従業員数は4,099名、単体では1,152名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は主要な仕入先でもある三井物産、第3位は株式会社プラスダブルとなっています。
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性2名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長執行役員は加藤和弥氏が務めています。取締役8名のうち3名が社外取締役であり、社外取締役比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 加藤 和弥 | 代表取締役社長執行役員 | 1994年入社。物流部長、営業企画部長等を経て、システム本部長や管理本部長を歴任。2003年代表取締役社長に就任し、2023年12月より現職。 |
| 中村 考直 | 取締役専務執行役員営業本部長兼グループ営業担当 | 1991年入社。中部支社名古屋支店長、広域流通部長、ブランド事業部長等を歴任。2018年常務取締役を経て、2023年12月より現職。 |
| 日比 啓介 | 取締役常務執行役員ロジスティクス本部長兼物流事業担当 | 1989年入社。ロジスティクス部長を経て、2016年取締役ロジスティクス本部長に就任。2023年12月より現職。 |
| 次家 成典 | 取締役常務執行役員管理本部長兼グループ管理担当 | 1995年入社。総務部長、環境管理部長等を経て、2018年取締役管理本部長に就任。2025年12月より現職。加藤SCアジアインベストメント代表取締役社長を兼務。 |
| 大西 高司 | 取締役常務執行役員南近畿支社長 | 1992年入社。中四国支社松山支店長、中四国支社長を経て、2021年取締役中四国支社長に就任。2025年12月より現職。 |
社外取締役は、八十川祐輔(ワイノット代表取締役)、海保 理子(Office Kaiho代表)、青木英彦(東京理科大学大学院教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「常温流通事業」、「低温流通事業」、「酒類流通事業」、「海外事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 常温流通事業
加工食品の卸売を行う主力事業です。スーパーマーケットやドラッグストアなどの小売業に対し、調味料、缶詰、乾物、飲料などの常温管理が可能な食品を提供しています。また、和歌山産業やグリーンウッドファクトリーによるジャム等の製造加工も行っています。
主な収益源は、小売業者への商品販売代金です。運営は主に加藤産業が行い、菓子卸売については加藤菓子ホールディングス傘下のカトー菓子や植嶋が担っています。製造部門は連結子会社の和歌山産業およびグリーンウッドファクトリーが担当しています。
■(2) 低温流通事業
冷凍食品やチルド食品など、低温管理が必要な食品の卸売を行っています。スーパーマーケットや外食産業などを顧客とし、鮮度管理が求められる商材を供給しています。
主な収益源は、小売業者や外食事業者への商品販売代金です。運営は、連結子会社であるケイ低温フーズが担っています。
■(3) 酒類流通事業
酒類の卸売を行う事業です。多様な酒類製品を小売業者等へ提供しています。
主な収益源は、小売業者等への酒類販売代金です。運営は、連結子会社の三陽物産およびヤタニ酒販が行っています。
■(4) 海外事業
マレーシア、シンガポール、ベトナム、中国において、加工食品を中心とした卸売事業を展開しています。現地の小売業者等へ商品を供給し、アジア地域での食品流通を担っています。
主な収益源は、現地小売業者等への商品販売代金です。運営は、Kato Sangyo Malaysia(マレーシア)、Teo Soon Seng(シンガポール)、Kato Sangyo Vietnam(ベトナム)、上海加産貿易(中国)などの現地法人が行っています。
■(5) その他
グループ内の物流業務受託、保険代理店業務、飲食業フランチャイズ運営などを行っています。
主な収益源は、グループ会社からの物流受託料や保険手数料などです。運営は、マンナ運輸、カトーロジスティクス、沖縄ロジスティクス(物流)、加藤不動産(保険)、アドバンス・キッチン(飲食)などが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、1兆円規模から順調に拡大しています。利益面では、経常利益が着実に増加しており、収益性が維持・向上しています。当期純利益については、第78期に過去最高益を記録した後、第79期はやや減少しましたが、安定した高水準を維持しています。
| 項目 | 2021年9月期 | 2022年9月期 | 2023年9月期 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 11,371億円 | 10,357億円 | 10,994億円 | 11,698億円 | 12,143億円 |
| 経常利益 | 133億円 | 154億円 | 185億円 | 187億円 | 201億円 |
| 利益率(%) | 1.2% | 1.5% | 1.7% | 1.6% | 1.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 84億円 | 113億円 | 120億円 | 145億円 | 132億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加し、売上総利益も増加しています。売上総利益率はほぼ横ばいで推移しており、安定した利益構造が見て取れます。営業利益も増加傾向にあり、本業の収益力が堅調であることを示しています。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 11,698億円 | 12,143億円 |
| 売上総利益 | 785億円 | 827億円 |
| 売上総利益率(%) | 6.7% | 6.8% |
| 営業利益 | 169億円 | 182億円 |
| 営業利益率(%) | 1.4% | 1.5% |
販売費及び一般管理費のうち、運搬費が319億円(構成比46%)、従業員給料及び手当が150億円(同21%)を占めています。売上原価については、商品仕入高などが大半を占めています。
■(3) セグメント収益
常温流通事業は売上・利益ともに増加し、全体の成長を牽引しています。低温流通事業も増収増益となり、堅調に推移しています。酒類流通事業は増収ながらも減益となり、利益率が低下しました。海外事業は大幅な増収となり、利益も黒字転換して収益性が改善しています。
| 区分 | 売上(2024年9月期) | 売上(2025年9月期) | 利益(2024年9月期) | 利益(2025年9月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 常温流通事業 | 7,166億円 | 7,413億円 | 130億円 | 144億円 | 1.9% |
| 低温流通事業 | 1,143億円 | 1,178億円 | 13億円 | 13億円 | 1.1% |
| 酒類流通事業 | 2,452億円 | 2,547億円 | 20億円 | 16億円 | 0.6% |
| 海外事業 | 893億円 | 957億円 | -2億円 | 2億円 | 0.2% |
| その他 | 44億円 | 48億円 | 5億円 | 5億円 | 10.7% |
| 調整額 | - | - | 3億円 | 2億円 | - |
| 連結(合計) | 11,698億円 | 12,143億円 | 169億円 | 182億円 | 1.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業で得た現金を活用し、将来の成長に向けた投資を積極的に行っている「健全型」のキャッシュ・フロー構造です。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 259億円 | 41億円 |
| 投資CF | -37億円 | -149億円 |
| 財務CF | -157億円 | -84億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.1%で市場平均(9.4%)を下回っています。一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は36.2%で、プライム市場の非製造業平均(24.2%)を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「生販両層にとって最も価値ある存在」として、食品の安全性の追求と流通の効率化を推進し、「豊かな食生活を提供して人々の幸せを実現すること」をミッションとしています。この実現に向け、グループ各社が専門機能を発揮し、効果的に連携することでグループ全体の価値最大化を図ることを基本方針としています。
■(2) 企業文化
いかなる環境変化にも迅速かつ適切に対応し、最適な流通サービスをローコストで実現する企業体質を目指しています。また、サステナビリティ基本方針を定め、「脱炭素」「フードロス&ウェイスト」「資源循環」「多様な人財の活躍」といった社会課題の解決に取り組み、持続可能な社会の実現と企業の成長の両立を図る姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
「豊かな食生活を提供して人々の幸せを実現すること」というミッション達成のため、3つの長期ビジョンを掲げています。
・食のインフラになる:商品、情報、ロジスティクスの総合力で基盤を作る
・食のプロフェッショナルになる:知識とスキルを磨き、豊かな食生活を提供する
・食のプロデューサーになる:「つなぎ」を実現し、食の価値を創造する
■(4) 成長戦略と重点施策
卸売業の基本機能である営業と物流の連携強化、デジタル技術活用による顧客価値創造、自社ブランド商品の拡売を通じて収益確保を図ります。また、物流費等の諸経費については、業務見直しや機械化・デジタル化による生産性向上でコスト抑制を進めます。海外事業では、マレーシア、ベトナム、シンガポール等での事業強化を推進し、アジア地域での成長を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材こそが最も重要な資本であるとの考えのもと、多様な能力・価値観を持つ人材が活躍できる職場環境の整備を進めています。自律的なキャリア形成を支援するためのリスキリングやOFF-JTの活用、業務効率化を推進するデジタル人材の育成に注力しています。また、ダイバーシティ&インクルージョンを推進し、心理的安全性の確保や柔軟な働き方の実現を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年9月期 | 40.5歳 | 14.8年 | 7,480,021円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.4% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 56.5% |
| 男女賃金差異(正規) | 67.4% |
| 男女賃金差異(非正規) | 92.4% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新入社員全体に占める女性の割合(33.3%)、女性管理職比率目標(2030年度までに4%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 事業環境の変化
国内人口の減少や少子高齢化による市場縮小、消費者の節約志向や購買行動の多様化、業種を超えた競争激化等が業績に影響を与える可能性があります。原材料価格やエネルギーコスト、物流費の上昇による経費増加も懸念されます。グループ各社の状況を常にモニタリングし、適時対応することで安定した業績維持に努めています。
■(2) 食品の安全性と品質管理
取り扱う商品や自社グループ工場・委託先で生産する自社ブランド商品において、安全性や品質に問題が生じた場合、業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。品質向上を推進する専門部署を中心に、鮮度管理の徹底や事故防止、適正表示への取り組みなど、品質管理体制の強化を図っています。
■(3) 海外事業展開のリスク
マレーシア、シンガポール、ベトナム、中国等での事業展開において、政治・経済情勢の変化、為替変動、法的規制の変更、予期せぬ社会的混乱等が事業の進捗に影響を与える可能性があります。専門部署や現地派遣の経営陣を中心に各国の状況を把握し、リスク管理を行うことで安定した事業運営に努めています。



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