※本記事は、東北化学薬品株式会社 の有価証券報告書(第74期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 東北化学薬品ってどんな会社?
化学工業薬品や臨床検査試薬、関連機器の販売を行う専門商社です。東北地方を中心に地域密着型の事業を展開しています。
■(1) 会社概要
1953年に青森県弘前市で化学工業薬品の販売を目的に設立されました。1954年に毒物劇物、1955年に医薬品の販売を開始し事業を拡大。1995年に日本証券業協会(現スタンダード市場)へ株式を店頭登録しました。2012年には臨床検査試薬販売の日栄東海を連結子会社化し、2023年には子会社の東北システムを吸収合併するなど、グループ再編を進めています。
同社グループは連結315名、単体245名の従業員で構成されています。筆頭株主は地方銀行の青森みちのく銀行で、第2位は取引先で構成される東北化学薬品取引先持株会、第3位は従業員による東北化学薬品従業員持株会となっており、地域金融機関やステークホルダーが主要株主となっています。
■(2) 経営陣
同社の役員は男性14名、女性0名の計14名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長兼管理統括は東康之氏です。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 東 康夫 | 取締役会長 | 1982年入社。常務取締役を経て1987年に代表取締役社長に就任。2009年より現職。 |
| 東 康之 | 代表取締役社長兼管理統括 | 2010年入社。経営戦略室長、上席執行役員営業統括補佐などを経て2019年より現職。 |
| 今 政弘 | 取締役 | 1976年入社。仙台支店長、専務取締役営業統括などを歴任。日栄東海代表取締役会長も務める。 |
| 嶋津 学 | 取締役常務執行役員インダストリー営業グループ統括兼本社インダストリー営業グループ部長兼営業推進室長 | 1983年入社。八戸支店長、営業第四グループ長などを経て2023年より現職。 |
| 佐藤 亥 | 取締役常務執行役員アカデミア・ライフサイエンス営業グループ統括兼仙台支店長兼新規商材・サービス開拓チーム管掌 | 1982年入社。青森支店長、営業第三グループ長などを経て2024年10月より現職。 |
| 西堀 渉 | 取締役常務執行役員アカデミア・ライフサイエンス営業グループ副統括兼青森支店長兼むつ小川原営業所長兼受託解析・プログラム研究開発グループ管掌兼経営戦略室副室長 | 1987年入社。生命システム情報研究所長などを経て2023年より現職。 |
社外取締役は、髙田修(元千代田石油商事社長)、八島英彦(元三菱ケミカルリサーチ社長)、髙杉禎(元三菱商事ケミカル社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「インダストリー」「メディカル」「アカデミア・ライフサイエンス」の報告セグメントで事業を展開しています。
■(1) インダストリー
ソーダ工業薬品、有機・無機薬品、半導体薬品などの化学工業薬品や、分析機器、計測機器などの機器類、食品添加物や農薬などを取り扱っています。主な顧客は製造業の民間企業や官公庁、農業関係者などです。
商品の販売代金が主な収益源です。運営は主に東北化学薬品および子会社のあすなろ理研が行っています。
■(2) メディカル
一般検査用試薬や血液学的検査用試薬などの臨床検査試薬、医療機器、医療用消耗品、介護用品などを取り扱っています。主な顧客は医療機関や検査機関などです。
商品および消耗品の販売代金が主な収益源です。運営は主に東北化学薬品および子会社の日栄東海が行っています。
■(3) アカデミア・ライフサイエンス
研究用分析試薬や抗体試薬、分析機器、計測機器などを取り扱っています。主な顧客は大学や研究機関などです。
研究用試薬や機器の販売代金が主な収益源です。運営は主に東北化学薬品が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は300億円台で推移しており、第73期に一時減少しましたが、第74期には回復傾向にあります。利益面でも変動が見られますが、当期は増益となりました。
| 項目 | 2021年9月期 | 2022年9月期 | 2023年9月期 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 362億円 | 373億円 | 351億円 | 322億円 | 344億円 |
| 経常利益 | 8億円 | 10億円 | 8億円 | 4億円 | 6億円 |
| 利益率(%) | 2.1% | 2.7% | 2.3% | 1.3% | 1.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 4億円 | 5億円 | 5億円 | 2億円 | 4億円 |
■(2) 損益計算書
売上高が増加し、売上総利益も増加しました。営業利益率は改善傾向にあります。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 322億円 | 344億円 |
| 売上総利益 | 31億円 | 33億円 |
| 売上総利益率(%) | 9.8% | 9.5% |
| 営業利益 | 4億円 | 5億円 |
| 営業利益率(%) | 1.1% | 1.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当・役員報酬が16億円(構成比57%)を占めています。
■(3) セグメント収益
インダストリー事業は製造業の設備投資需要やインバウンド効果により増収となりました。メディカル事業は検査試薬の新規採用等で微増収、アカデミア・ライフサイエンス事業は機器の受注増により大幅な増収となりました。
| 区分 | 売上(2024年9月期) | 売上(2025年9月期) |
|---|---|---|
| インダストリー | 161億円 | 179億円 |
| メディカル | 141億円 | 141億円 |
| アカデミア・ライフサイエンス | 19億円 | 24億円 |
| 連結(合計) | 322億円 | 344億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は43.0%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「お客様を大切にします」「人を大切にします」「社会に貢献します」「豊かな生活を目指します」の4つを経営理念として掲げています。株主満足度の向上、顧客への情報提供と迅速な納品、社員全員参加型の活力ある組織運営を目指しています。
■(2) 企業文化
「ヘッドワーク、フットワーク、ネットワーク」を駆使し、取引先とのすり合わせ能力を磨くことを重視しています。また、ムリ・ムダ・ムラのある支出を徹底してなくし、労働生産性の向上を目指す姿勢を持っています。
■(3) 経営計画・目標
3ヵ年中期経営計画を毎年度更新・策定しています。経営上の目標達成状況を判断する指標として、以下の数値を掲げています。
* 売上高:350億円
* 営業利益:5億30百万円
* 経常利益:6億20百万円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:4億30百万円
■(4) 成長戦略と重点施策
既存事業の深耕と実務の質の向上に加え、本業に関連する多角化の発掘と育成を進めています。仕入先の分散によるリスク回避や販売先への提案の多様化を図り、粗利益率の拡大を目指しています。また、2026年9月期に向けては、デジタル推進やSDGs、コーポレート・ガバナンスへの対応も強化していく方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
高度な専門知識と技能で課題解決できる人材の育成を目標としています。OJTを中心とした教育に加え、階層別・職種別研修を実施し、業務上必要な資格取得を奨励しています。また、ジェンダー平等の実現に向けて女性の採用・育成・登用を推進するほか、SDGsの理念を踏まえた人材育成にも取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年9月期 | 46.5歳 | 17.0年 | 4,504,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.0% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 59.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 61.4% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 71.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性主任級以上の人数(11名)、化学製品の取り扱いに関する資格の新規取得者数(既存従業員)(6名)、全社員のうち化学製品の取り扱いに関する有資格者数(100名)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特有の法的規制等
医薬品卸売業として活動するにあたり、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」等の規制を受け、許可や登録が必要です。これらの規制を遵守できなかった場合、事業活動が制限される可能性があります。
■(2) 薬価基準の改定
主要な取扱商品である医療用医薬品は薬価基準により販売価格の上限が定められています。原則2年に1回の改定で薬価が引き下げられる傾向にあり、改定のたびに販売価格の上限が低下し、売上高に影響を与える可能性があります。
■(3) 貸倒れリスク
取引先の財政状態が悪化し、売掛金等の回収が困難となった場合、貸倒引当金の追加計上が必要となり、経営成績が悪化する可能性があります。
■(4) 直送取引に伴う売上計上リスク
大型機器等は仕入先から得意先へ直送されるケースがあり、据え付けや調整も仕入先が行うことがあります。販売事実の確認や売上計上の時期に誤りが生じるリスクがあり、稼働確認に時間を要する場合は売上計上時期に影響を与える可能性があります。



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