扶桑電通 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

扶桑電通 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場し、情報通信機器の施工やオフィス機器販売、システム開発などを展開しています。直近の決算では、自治体や民需向けのビジネスが好調に推移し、売上高は前年同期比16.9%増、経常利益は77.9%増と大幅な増収増益を達成しました。


※本記事は、扶桑電通株式会社 の有価証券報告書(第80期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 扶桑電通ってどんな会社?


富士通パートナーとして情報通信システムの提案から施工、保守までを一貫して提供するICT企業です。

(1) 会社概要


同社は1948年、富士通信機製造(現富士通)の特約店として設立されました。1999年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、2022年の市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行しました。2025年1月には自治体ビジネスの拡大を目的に北海道システムエンジニアリングを完全子会社化するなど、事業基盤の強化を進めています。

2025年9月30日現在、単体の従業員数は1,005名です。筆頭株主は同社の従業員持株会で、第2位は個人の株主となっています。同社は富士通グループ販売パートナー契約を締結しており、安定した取引関係を構築しています。

氏名 持株比率
扶桑電通従業員持株会 15.71%
滝内裕子 5.27%
太田雅子 5.20%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長社長執行役員は有冨英治氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
有冨 英治 代表取締役社長社長執行役員 1982年入社。ソリューション営業本部長、東京営業本部長、管理本部長などを歴任。2019年より現職。
山田 均 取締役常務執行役員 1982年入社。四国支店長、中国支店長などを経て、現在はビジネス統轄本部長代理兼関西支店長を務める。2025年より現職。
兼松 良一 取締役 1980年入社。IT戦略統括部長、管理本部長兼総務統括部長などを歴任。2025年より現職。
小松 昇 取締役(常勤監査等委員) 1984年第一勧業銀行入行。2013年同社入社。管理本部コンプライアンス推進室長、執行役員などを経て、2024年より現職。


社外取締役は、泉澤大介(公認会計士・税理士)、苫米地邦男(税理士)、二宮麻里子(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、情報通信機器の施工、オフィス機器の販売、システムソフト開発およびこれらに関連するサポートサービスを提供する単一セグメントで事業を展開しています。

ネットワーク部門


通信インフラの構築やネットワーク機器の設置工事、LAN工事などを提供しています。自治体や民間企業が主な顧客です。
収益は、機器の販売代金や施工工事代金として顧客から受け取ります。運営は同社が行っており、防災・減災ビジネスなどの自治体向け案件も手掛けています。

ソリューション部門


サーバーやコンピューター機器の販売、システムソフト開発、導入支援などを行っています。医療機関や自治体、電力会社などが顧客です。
収益は、ハードウェアやソフトウェアの販売、システム開発費として顧客から受け取ります。運営は同社が行っており、電子カルテシステムや自治体システムの標準化対応などを推進しています。

オフィス部門


パソコン、プリンターなどのオフィス機器やサプライ用品の販売を行っています。一般企業や官公庁など幅広い顧客層を持ちます。
収益は、機器や消耗品の販売代金として顧客から受け取ります。運営は同社が行っており、セキュリティ対策を施したパソコン販売なども展開しています。

サービス部門


導入したシステムの運用・保守サービスやクラウドサービスなどを提供しています。システムを利用する全ての顧客が対象です。
収益は、保守契約に基づくサービス料やクラウドサービスの利用料として顧客から受け取ります。運営は同社が行っており、ストックビジネスとして安定的な収益確保に貢献しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は増加傾向にあり、特に直近期では大幅な増収となりました。利益面でも、経常利益と当期純利益が順調に伸長しており、利益率も改善しています。これは、自治体向けビジネスや民需向けの販売が好調に推移したことなどが寄与しています。

項目 2021年9月期 2022年9月期 2023年9月期 2024年9月期 2025年9月期
売上高 434億円 365億円 411億円 468億円 547億円
経常利益 17億円 5億円 14億円 21億円 37億円
利益率(%) 3.8% 1.5% 3.5% 4.4% 6.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 11億円 3億円 10億円 14億円 25億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益も拡大しています。売上総利益率および営業利益率ともに上昇しており、収益性が高まっていることがわかります。特に営業利益率は前期間と比較して大きく改善しました。

項目 2024年9月期 2025年9月期
売上高 468億円 547億円
売上総利益 85億円 105億円
売上総利益率(%) 18.1% 19.2%
営業利益 19億円 34億円
営業利益率(%) 4.0% 6.3%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が38億円(構成比53%)、その他が10億円(同14%)を占めています。売上原価においては、機器及び工事売上原価が330億円(売上原価合計比75%)を占めています。

(3) セグメント収益


全部門で増収となりましたが、特にソリューション部門とオフィス部門の伸びが顕著です。ソリューション部門は医療関連や自治体向けビジネスが牽引し、オフィス部門は民需向け販売が好調でした。ネットワーク部門は一部工事の減少がありましたが、自治体向けは堅調でした。

区分 売上(2024年9月期) 売上(2025年9月期)
ネットワーク 145億円 139億円
ソリューション 120億円 167億円
オフィス 95億円 121億円
サービス 108億円 119億円
連結(合計) 468億円 547億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業活動で得た資金の範囲内で投資活動と財務活動(借入返済や配当支払い)を行っており、健全な財務状態にある「健全型」と言えます。

項目 2024年9月期 2025年9月期
営業CF 13億円 49億円
投資CF -8億円 -9億円
財務CF -5億円 -9億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は18.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は38.8%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「誠心誠意 お客様のお役に立つ愛される企業」を企業理念として掲げています。また、経営ビジョンとして「ココロ躍る未来を創造するICTデザインパートナー」を定め、時代変化を捉えICTを通じて顧客と共に成長するビジネスパートナーを目指しています。

(2) 企業文化


社員の行動基準として「スタイル」を制定しています。「伸び伸び挑戦しよう」「スピードを意識しよう」「ゴールを想い描こう」「仲間と共有しよう」「誠実にやりきろう」の5つを掲げ、失敗を恐れない挑戦やスピード感のある行動、誠実な対応などを重視する風土の醸成に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


2027年9月期を最終年度とする第3期中期経営計画「FuSodentsu Vision 2027」を策定しています。
* 売上高:550億円
* 営業利益:22億円
* 営業利益率:4.0%
* ROE:10.0%

(4) 成長戦略と重点施策


事業成長戦略として、業種区分を基軸に顧客ニーズへ的確に対応することや、伴走型企画・コンサルティングによる顧客のDX推進強化、アライアンスやM&Aによる技術拡充を掲げています。また、経営基盤の強化として、人材育成や組織文化の変革、先端技術研究、新業務システムへの移行、デジタルマーケティングの活用などに注力していきます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続可能な社会への貢献と企業の発展のため、人材を優先すべき資本と捉えています。「自立型人財の育成」を基本方針とし、各種研修や資格取得支援、スキル認定制度を通じて社員の能力開発と意欲向上を図っています。また、ダイバーシティや働き方改革、健康経営を推進し、多様な人材が活躍できる環境づくりに努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年9月期 45.2歳 20.7年 7,449,000円


※平均年間給与は、賞与および基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.7%
男性育児休業取得率 33.0%
男女賃金差異(全労働者) 68.4%
男女賃金差異(正規雇用) 70.3%
男女賃金差異(非正規雇用) 44.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒採用における女性労働者比率(40.0%)、女性労働者比率(13.7%)、年次有給休暇取得率(73.2%)、再検診受診率(62.8%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定の取引先への依存


同社は富士通グループ販売パートナー契約を締結しており、富士通および同社グループからの仕入高が全体の約3割を占めています。取引関係は安定していますが、何らかの理由で取引に支障が生じた場合、業績に影響を与える可能性があります。

(2) システム開発リスク


システム開発においては、顧客との認識不一致や技術的な検証不足などにより、プロジェクトが予定通りに進まないリスクがあります。これにより、納期遅延や品質問題が発生した場合、損失が生じる可能性があります。

(3) 金融商品の価格変動リスク


同社は上場株式などの有価証券を保有しており、これらの時価や価値が下落した場合、業績や財政状態に影響を与える可能性があります。

(4) 情報セキュリティに関するリスク


個人情報や機密情報を取り扱う事業特性上、情報漏洩やサイバー攻撃による被害が発生するリスクがあります。これにより社会的信用の失墜や損害賠償請求を受けた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。