ダイイチ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ダイイチ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所スタンダード市場および札幌証券取引所に上場し、北海道帯広市を拠点に食料品主体のスーパーマーケットを展開する企業です。2025年9月期は、新規出店効果により売上高は586億円と前期比で増収となりましたが、出店費用や人件費の増加等により経常利益は13億円と減益での着地となりました。


※本記事は、株式会社ダイイチ の有価証券報告書(第71期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ダイイチってどんな会社?


北海道の帯広・旭川・札幌地区を中心に、地域密着型の食料品スーパーマーケットチェーンを展開する企業です。

(1) 会社概要


1958年に帯広フードセンターとして設立され、1963年に第一スーパーへ商号変更しました。1991年に現在の社名へ変更し、2013年にはイトーヨーカ堂と資本業務提携を締結しています。現在はドミナント戦略に基づき店舗網を拡大し、2022年の市場区分見直しに伴い、東京証券取引所スタンダード市場へ移行しました。

従業員数は単体で437名です。筆頭株主は資本業務提携先である大手流通グループの事業会社で、第2位は取引先持株会、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
イトーヨーカ堂 30.56%
ダイイチ取引先持株会 4.24%
野村信託銀行(投信口) 3.26%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.0%です。代表取締役社長兼営業本部長は若園 清氏が務めています。社外取締役比率は44.4%です。

氏名 役職 主な経歴
若園 清 代表取締役社長兼営業本部長 国分入社後、同社へ入社。販売本部長、開発企画本部長、総務部担当などを歴任し、2020年より現職。
西崎 進 常務取締役管理本部長 北海道拓殖銀行入行後、北洋銀行にて法務コンプライアンス部長等を歴任。2022年に同社へ入社し、2024年より現職。
吉田 直久 常務取締役販売本部長兼札幌ブロック長 同社入社後、商品第二部次長、販売本部札幌ブロック長等を歴任。2024年より現職。
忠石 信之 取締役開発企画本部長兼BCP・災害対策推進室長 帯広スバル自動車入社後、同社へ入社。開発企画部部長等を歴任し、2024年より現職。
北村 攻 取締役販売本部副本部長兼帯広ブロック長 新日本製鐵入社後、同社へ入社。販売本部札幌ブロック長、帯広ブロック長等を歴任し、2024年より現職。


社外取締役は、宮川 明(イトーヨーカ堂参与)、井雲 康晴(財務経営調査研究所代表)、祖母井 里重子(ロジネットジャパン社外取締役)、林 美香子(慶應義塾大学大学院SDM研究所顧問)です。

2. 事業内容


同社グループは、「スーパーマーケット」および「その他」事業を展開しています。

(1) スーパーマーケット事業


北海道の帯広、旭川、札幌の各ブロックにおいて、生鮮食料品を中心としたスーパーマーケット店舗の運営を行っています。地域住民を主な顧客とし、日々の食生活に必要な商品を提供しています。

収益は、一般消費者への商品販売による代金が中心です。運営は主に同社が行っています。

(2) その他事業


スーパーマーケット店舗内のテナントスペースやショッピングセンター敷地内の一部の賃貸業務を行っています。

収益は、テナント出店者等からの賃貸料収入等です。運営は主に同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は右肩上がりの傾向にあり、特に直近の2025年9月期には586億円まで拡大しています。一方、利益面では、経常利益が2021年9月期の20億円水準から2025年9月期には13億円へと減少しており、利益率は低下傾向にあります。

項目 2021年9月期 2022年9月期 2023年9月期 2024年9月期 2025年9月期
売上高 440億円 466億円 480億円 518億円 586億円
経常利益 20億円 19億円 18億円 20億円 13億円
利益率(%) 4.5% 4.1% 3.8% 3.8% 2.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 13億円 12億円 12億円 14億円 10億円

(2) 損益計算書


直近2期間の業績を比較すると、売上高は前期の518億円から586億円へと約13%増加しました。しかし、売上総利益率は25.6%から25.3%へわずかに低下し、営業利益は19億円から13億円へと減少しました。営業利益率も3.7%から2.2%へと低下しており、収益性の改善が課題となっています。

項目 2024年9月期 2025年9月期
売上高 518億円 586億円
売上総利益 132億円 148億円
売上総利益率(%) 25.6% 25.3%
営業利益 19億円 13億円
営業利益率(%) 3.7% 2.2%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び賞与が55億円(構成比39%)、広告宣伝費が13億円(同9%)を占めています。

(3) セグメント収益


スーパーマーケット事業では、新規出店効果などにより売上が増加しています。その他事業(不動産賃貸等)は安定的に推移しています。

区分 売上(2024年9月期) 売上(2025年9月期)
スーパーマーケット 518億円 586億円
その他 2億円 2億円
連結(合計) 520億円 587億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年9月期 2025年9月期
営業CF 23億円 17億円
投資CF -14億円 -10億円
財務CF -8億円 -10億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は63.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「消費者の毎日の食生活を豊かにするためのお手伝いをする」というスーパーマーケットの社会的役割の実現を経営の基本としています。顧客の暮らしに欠かすことのできない店作りを通じて、売上の拡大と利益の追求を図り、ステークホルダーとの良好な関係維持と地域社会への貢献を目指しています。

(2) 企業文化


「お客様の普段の食生活のお役に立つ」をキーワードに、商品の品質・鮮度の向上、品揃えの強化、接客サービスの向上などを重視する文化があります。また、『普段の食生活を通じて、地域を笑顔に』を基本方針とし、地域や顧客の日常に根差した信用・信頼される企業であることを大切にしています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画に基づき、最終年度である2026年9月期に向けた目標を掲げています。また、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」として、PBR(株価純資産倍率)などの指標も意識した経営を行っています。

* 売上高:615億円
* 営業利益:16億8000万円
* 経常利益:16億3000万円
* 当期純利益:12億円

(4) 成長戦略と重点施策


成長戦略としてドミナント戦略を基本方針とし、帯広・旭川・札幌各地区での売上高シェア向上を図るため、新規出店やスクラップ&ビルドを進めています。特に新規出店が進んでいない旭川地区を優先した出店検討や、店舗の大型化・標準化による競争力確保、ローコストオペレーションの実現を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材の育成を企業成長の源泉と捉え、社外セミナーへの参加や社内勉強会の充実、専門講師による技術者指導など、教育投資を積極的に行っています。また、多様な人材の採用・登用強化や、雇用形態に応じたキャリアパスの再構築、労働環境の改善などを通じて、社員一人一人の能力開発と働きがいの向上に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年9月期 38.1歳 11.4年 5,444,820円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.4%
男性育児休業取得率 33.3%
男女賃金差異(全労働者) 65.4%
男女賃金差異(正規) 87.2%
男女賃金差異(非正規) 91.0%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 災害等の発生による影響


北海道内において店舗や物流・製造拠点を保有しているため、大規模自然災害、感染症、犯罪などが発生した場合、施設の損壊や営業停止などの被害を受ける可能性があります。これらの事象により、同社の財政状態や経営成績に影響が及ぶ可能性があります。

(2) 競合等の影響について


北海道内のスーパーマーケット業界では、同業他社との競争に加え、他業態の進出もあり競争が激化しています。他社の新規出店や業態転換、低価格戦略などが、同社の営業基盤におけるシェア争いに影響を与え、一時的に業績へ影響を及ぼす可能性があります。

(3) 食品の安全性について


食料品を取り扱う企業として、食中毒の発生、BSE問題、鳥インフルエンザ、残留農薬問題などの予期せぬ事態が発生した場合、一時的に業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は衛生管理や鮮度管理を徹底していますが、食の安全に関するリスクは常に存在します。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。