※本記事は、株式会社東京一番フーズ の有価証券報告書(第27期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 東京一番フーズってどんな会社?
「とらふぐ亭」等の飲食店運営を主軸に、養殖から加工・物流まで手掛ける水産物の6次産業化を推進する企業です。
■(1) 会社概要
1998年に有限会社東京一番フーズとして設立され、2006年に東京証券取引所マザーズへ上場しました。2015年には同市場第一部へ市場変更を果たしています。2017年に米国ニューヨークへ「WOKUNI」を出店し海外展開を開始。2020年には株式会社寿し常の全株式を取得し、寿司業態を大幅に拡大しました。
連結従業員数は241名、単体では132名です。筆頭株主は株式会社なにわで、第2位は創業社長である坂本大地氏、第3位は常務取締役の良川忠必氏となっています。
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長兼営業本部長は坂本大地氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 坂 本 大 地 | 代表取締役社長兼営業本部長 | 1990年ふぐ料理店開業に参画、1996年とらふぐ亭開業。1998年同社設立に伴い取締役、2000年より現職。米国子会社や株式会社寿し常の代表も兼任する創業者。 |
| 河 原 庸 仁 | 取締役 | 株式会社リンク・ワン代表取締役社長などを経て、2013年同社取締役に就任。株式会社T&K Management systemsなどの代表も務め、2025年12月より専務取締役。 |
| 良 川 忠 必 | 常務取締役商品本部長 | 1998年同社入社。株式会社長崎ファーム代表取締役社長を経て、2010年同社取締役商品本部長兼外販事業部長。2018年12月より現職。 |
| 前 田 豊 司 | 取締役 | 日興証券株式会社(現SMBC日興証券株式会社)執行役員、日興アイ・アール株式会社代表取締役社長などを歴任。2021年同社顧問を経て同年12月より現職。 |
| 梅 原 美 樹 | 取締役 | 日本アイ・ビー・エム株式会社、株式会社経営共創基盤などを経て、2024年12月より現職。一般財団法人球心会専務理事も務める。 |
| 安 田 隆 | 取締役 | ピコ株式会社などを経て、日本ティームワイズ株式会社(現NTW Inc.株式会社)創業・代表。2025年12月より現職。 |
社外取締役は、前田豊司(元日興アイ・アール社長)、梅原美樹(元経営共創基盤MD)、安田隆(NTW Inc.代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「飲食事業」、「外販事業」および「不動産賃貸事業」を展開しています。
■(1) 飲食事業
「泳ぎとらふぐ料理専門店とらふぐ亭」や「おいしい寿司と活魚料理魚の飯」などのブランドを展開し、一般消費者を対象に料理やサービスを提供しています。米国ニューヨークでは「WOKUNI」ブランドでシーフードレストランを運営し、職人がいる寿司業態「寿し常」も展開しています。
主な収益は来店客からの飲食代金です。運営は主に株式会社東京一番フーズが行い、「寿し常」ブランドは株式会社寿し常が、米国の店舗はIchiban Foods Inc.およびIchiban Foods Broadway Inc.がそれぞれ担当しています。
■(2) 外販事業
自社養殖魚などの活魚・鮮魚を、法人および個人向けに販売しています。長崎県平戸市の養殖場でとらふぐやクロマグロ「平戸本まぐろ 極海一番」などを生産し、東京都江東区の加工場で身欠きふぐ等の加工を行っています。
主な収益は、飲食店や小売業者、卸売業者などの外販先への商品販売代金です。運営は主に株式会社長崎ファームが行っており、生産から加工・物流までの一貫体制を構築しています。
■(3) 不動産賃貸事業
東京都その他の地域において、居住用物件や賃貸商業施設を保有し、賃貸事業を行っています。グループ全体での収益効率化への貢献や、将来的な安定収益源の確保を目的としています。
主な収益は、賃借人からの賃料収入です。運営は株式会社東京一番フーズおよび株式会社寿し常が行っており、過去に社員寮として使用していた物件や自社店舗の一部エリアなどを活用しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は60億円台から70億円台で推移していましたが、最新期では微減となりました。利益面では黒字と赤字を行き来しており、安定的な収益確保が課題となっています。特に当期純利益は直近で損失を計上しており、収益性の改善が求められる状況です。
| 項目 | 2021年9月期 | 2022年9月期 | 2023年9月期 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 45億円 | 61億円 | 73億円 | 75億円 | 73億円 |
| 経常利益 | 1.2億円 | 2.7億円 | 1.8億円 | 2.5億円 | 1.9億円 |
| 利益率(%) | 2.7% | 4.5% | 2.5% | 3.3% | 2.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -0.1億円 | -1.3億円 | 1.4億円 | -0.7億円 | -0.8億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高は減少傾向にあり、それに伴い売上総利益も減少しています。営業利益率も低下しており、コスト構造の見直しや販売促進の効率化が必要な状況と言えます。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 75億円 | 73億円 |
| 売上総利益 | 48億円 | 46億円 |
| 売上総利益率(%) | 63.9% | 63.6% |
| 営業利益 | 2.3億円 | 2.0億円 |
| 営業利益率(%) | 3.1% | 2.7% |
販売費及び一般管理費のうち、その他が17億円(構成比38%)、給料及び手当が11億円(同25%)を占めています。
■(3) セグメント収益
飲食事業が売上の大部分を占めていますが、減収となりました。外販事業も減収傾向にあります。一方、不動産賃貸事業は規模は小さいものの増収となっており、新たな収益源としての成長が期待されます。
| 区分 | 売上(2024年9月期) | 売上(2025年9月期) |
|---|---|---|
| 飲食事業 | 67億円 | 65億円 |
| 外販事業 | 7億円 | 7億円 |
| 不動産賃貸事業 | 0.1億円 | 0.3億円 |
| 連結(合計) | 75億円 | 73億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業活動で得た資金に加え、財務活動でも資金を調達し、投資活動に充てている「積極型」です。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 0.1億円 | 1.3億円 |
| 投資CF | -2.7億円 | -16.0億円 |
| 財務CF | -2.2億円 | 12.9億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.8%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は28.9%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「自然の恵みである本物の食材をお客様にご提供すること」を最大のモットーとしています。また、飲食事業を起点に卸売、養殖、加工を垂直展開する6次産業化を推進し、水産物のSCM(サプライ・チェーン・マネジメント)力のある総合水産企業の展開を目指しています。
■(2) 企業文化
「食材・空間・サービスへのこだわり」を重視する文化があります。特に「プロの味」を提供するため、ふぐ調理師免許を保有する職人を多数抱えることを強みとしており、免許保有者数は競合との差別化要因となっています。また、独立意欲のある社員に対しては「のれん分け制度」を実施し、ベンチャー企業家の輩出を支援しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、グループ飲食店舗および外販先の顧客と直接情報を共有し、生産・物流等の業務改善やイノベーション推進により新しい価値を創造することを目指しています。また、SDGsの達成に向け、資源保護と水産物の安定供給を継続することを目標としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
主要食材である「国産高級とらふぐ」の調達安定化のため、子会社の長崎ファームにて自社養殖数の拡大と技術向上を図ります。また、食材の安全性確保と情報発信を強化し、トレーサビリティシステムの運用や産地連携を推進します。人材面では、IT活用によるサービスレベルの向上や、多様な人材の採用・育成に取り組みます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「大切な人と過ごせる空間の演出」のため、店舗スタッフのきめ細かなサービス提供を重視しています。そのために、スタッフ一人ひとりがコンセプトを深く理解し、「おもてなし」を実践できるよう教育に注力しています。また、独立支援制度や多様な人材の採用・評価制度の確立を通じて、人材の育成と輩出を推進する方針です。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年9月期 | 33.1歳 | 7.7年 | 4,445,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 19.1% |
| 男性育児休業取得率 | 0.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 54.6% |
| 男女賃金差異(正規) | 90.0% |
| 男女賃金差異(非正規) | 82.3% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性取締役(22.2%)、女性店長・責任者数(9名)、女性従業員数(30名)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 季節変動による業績への影響
主要事業である「とらふぐ亭」は冬季が繁忙期、夏季が閑散期となり、上期と下期で売上・利益に大きな差が生じます。閑散期の販促や季節メニューの強化で平準化を図っていますが、季節変動の影響を受けやすい構造にあります。
■(2) 主要食材の調達および価格変動
とらふぐ等の主要食材は相場変動の影響を受けやすく、安定的な調達が不可欠です。養殖事業への投資や生産者ネットワークの構築でリスク分散を図っていますが、調達難や価格高騰が生じた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 人材確保および法的規制
労働人口減少による採用難や人件費上昇のリスクがあります。また、ふぐを取り扱うため「ふぐ調理師免許」保持者の確保が必須であり、不足した場合は出店計画に支障をきたす恐れがあります。その他、食品衛生法違反による営業停止リスクなども認識しています。



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