※本記事は、株式会社TKC の有価証券報告書(第59期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月11日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. TKCってどんな会社?
会計事務所と地方公共団体という2つの特定の分野に専門特化した情報サービスを展開する企業です。
■(1) 会社概要
1966年に栃木県計算センターとして設立され、会計事務所の職域防衛などを目的に事業を開始しました。1987年に東京証券取引所市場第二部に上場し、1996年には同市場第一部に指定されました。2002年に株式会社TKCに商号変更し、現在は会計事務所および地方公共団体向けに特化した事業を展開しています。
同グループは連結従業員2,964名、単体2,458名の体制です。筆頭株主は創業者が設立した公益財団法人飯塚毅育英会、第2位は業務提携関係にある大同生命保険、第3位は資産管理を行う信託銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 公益財団法人飯塚毅育英会 | 14.60% |
| 大同生命保険 | 9.30% |
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 8.80% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表者は代表取締役社長執行役員の飯塚真規氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 飯塚真規 | 代表取締役社長執行役員会計事務所事業部長 | 2002年同社入社。会計事務所事業部営業本部長等を経て、2016年代表取締役専務執行役員。2019年12月より現職。TKCカスタマーサポートサービス代表取締役社長を兼務。 |
| 飛鷹 聡 | 代表取締役専務執行役員地方公共団体事業部長 | 2003年同社入社。地方公共団体事業部クラウド事業推進本部長等を経て、2020年12月より現職。TKC保安サービス代表取締役社長を兼務。 |
| 川橋郁夫 | 取締役専務執行役員株式会社スカイコム担当 | 1977年同社入社。内部統制統括センター長等を経て、2014年スカイコム代表取締役社長(現任)。2020年12月より現職。 |
| 伊藤義久 | 取締役常務執行役員会計事務所事業部システム開発研究所システム企画本部長 | 1990年同社入社。会計事務所事業部営業企画本部長等を経て、2022年12月より現職。 |
| 河本健志 | 取締役常務執行役員地方公共団体事業部システム開発本部長 | 1994年同社入社。地方公共団体事業部技術基盤開発センター長等を経て、2024年12月より現職。 |
社外取締役は、加藤恵一郎(税理士法人加藤会計事務所代表社員)、渥美優子(Kollectパートナーズ法律事務所パートナー弁護士)、加藤隆(公益財団法人東京税務協会理事長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「会計事務所事業」「地方公共団体事業」「印刷事業」を展開しています。
■(1) 会計事務所事業
会計事務所およびその関与先企業に対し、情報処理サービス、ソフトウエア、コンサルティング・サービス、オフィス機器等を提供しています。税務・会計ソフトウエアの開発やクラウドサービスの提供が主力です。
収益は、会計事務所や関与先企業からのシステム利用料やソフトウエア保守料、ハードウエア販売代金等から得ています。運営は主に同社が行い、ヘルプデスクをTKCカスタマーサポートサービス、サプライ用品製造をTLP、出版をTKC出版が担当しています。
■(2) 地方公共団体事業
市区町村等の地方公共団体に対し、情報処理サービス、ソフトウエア、コンサルティング・サービス、オフィス機器等を提供しています。基幹系システムや行政手続きのデジタル化支援サービスを展開しています。
収益は、地方公共団体からのシステム利用料、導入支援作業費、アウトソーシング受託費等から得ています。運営は主に同社が行い、ヘルプデスク業務をTKCカスタマーサポートサービス、帳表印刷等をTLPが担当しています。
■(3) 印刷事業
コンピュータ用連続伝票、一般事務用伝票、データ・プリント・サービス(DPS)、パンフレット等の製造・販売を行っています。
収益は、顧客企業や自治体からの印刷物製造受託費やデータ処理サービス料等から得ています。運営は主に株式会社TLPが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、売上高、経常利益ともに右肩上がりの成長を続けています。特に当期は、システム標準化対応などの需要を取り込み、売上高・利益ともに過去最高を更新しました。利益率も20%前後と高い水準を維持しており、安定した収益基盤と成長性を兼ね備えています。
| 項目 | 2021年9月期 | 2022年9月期 | 2023年9月期 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 662億円 | 678億円 | 719億円 | 752億円 | 835億円 |
| 経常利益 | 127億円 | 137億円 | 148億円 | 160億円 | 166億円 |
| 利益率(%) | 19.1% | 20.2% | 20.5% | 21.3% | 19.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 87億円 | 93億円 | 108億円 | 113億円 | 121億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益、営業利益ともに増加しました。売上原価率は増加傾向にありますが、依然として高い利益率を確保しています。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 752億円 | 835億円 |
| 売上総利益 | 536億円 | 566億円 |
| 売上総利益率(%) | 71.3% | 67.8% |
| 営業利益 | 155億円 | 161億円 |
| 営業利益率(%) | 20.6% | 19.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給与が138億円(構成比34%)、賞与引当金繰入額が44億円(同11%)を占めています。
■(3) セグメント収益
会計事務所事業はクラウドサービスの利用拡大等により堅調に推移しました。地方公共団体事業は、標準準拠システムへの移行作業やハードウエア販売が集中し、大幅な増収となりました。印刷事業も選挙関連業務の受注等により増収増益となりました。
| 区分 | 売上(2024年9月期) | 売上(2025年9月期) | 利益(2024年9月期) | 利益(2025年9月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 会計事務所事業 | 505億円 | 528億円 | 113億円 | 125億円 | 23.6% |
| 地方公共団体事業 | 218億円 | 276億円 | 41億円 | 35億円 | 12.7% |
| 印刷事業 | 30億円 | 31億円 | 1億円 | 1億円 | 4.7% |
| 連結(合計) | 752億円 | 835億円 | 155億円 | 161億円 | 19.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によるキャッシュ・フローがプラスで、投資活動および財務活動によるキャッシュ・フローがマイナスであることから、本業で稼いだ資金で投資や借入返済を行っている「健全型」と言えます。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 128億円 | 125億円 |
| 投資CF | -60億円 | -4億円 |
| 財務CF | -52億円 | -89億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は83.6%で市場平均を大きく上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「自利利他(自利トハ利他ヲイフ)」を社是とし、「顧客への貢献」を経営理念に掲げています。会計事務所の職域防衛と運命打開、および地方公共団体の行政効率向上を支援するための計算センター経営を事業目的とし、顧客の事業の成功と発展に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
創業以来「ルールによる経営」を標榜し、法令や社会規範の遵守を徹底しています。「顧客への貢献」を実現するため、社員一人ひとりが高い倫理観を持ち、公正かつ誠実に業務に取り組む姿勢を重視しています。また、「最大の財産は従業員」という考えのもと、人材育成にも力を入れています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、継続企業の前提の下、毎期の配当原資を期間利益に求めることを原則とし、以下の経営指標を掲げています。
* 連結対前年度売上高比率:103%以上
* 連結自己資本利益率(ROE):11%以上
* 個別自己資本比率:80%以上
* 個別限界利益率:70%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
会計事務所分野では、インボイス制度対応等のデジタル化推進やクラウドサービスの拡充による業務効率化支援に注力します。地方公共団体分野では、政府が進めるシステム標準化への対応を最優先課題とし、2026年3月末までの標準準拠システムへの移行完遂を目指します。また、AI技術の活用やサイバーセキュリティ対策の強化も進めます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「自利利他」の社是のもと、顧客の事業成功を支援できる人材の育成に注力しています。社員の学習意欲を支援し、専門知識や役割別スキルの習得機会を提供しています。また、顧客満足度、市場シェア、社員待遇において世界第一級を目指し、健康管理や女性活躍推進など、社員が長く安心して働ける環境整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年9月期 | 40.3歳 | 17.1年 | 9,209,326円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 6.1% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 71.7% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 71.1% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 71.3% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期) | 39.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、社員(入社4年目以降)の「日商簿記検定2級」取得率(82.3%)、定期健康診断の受診率(100%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 事業環境の変化
会計事務所業界における後継者不足や採用難、関与先企業の廃業等による市場縮小の可能性があります。また、地方公共団体向けでは、法制度改正への対応負荷増大による開発リソース不足の懸念があります。これらに対し、組織体制強化や高付加価値システムの開発で対応します。
■(2) サイバーセキュリティとシステム障害
サイバー攻撃の増加や大規模災害等によるシステム障害のリスクがあります。これに対し、24時間365日の監視体制、社員教育の徹底、積極的な設備投資によるセキュリティ強化、BCP対策の強化等を実施し、サービスの安定稼働と早期復旧に努めています。
■(3) 印刷事業の原材料価格変動
印刷事業において、原油価格高騰や需給逼迫による原材料調達難や価格上昇のリスクがあります。これらが顕在化した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。安定的な確保と最適価格の維持に努めつつ、必要に応じて価格交渉等で対応します。



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