※本記事は、株式会社エムティーアイ の有価証券報告書(第30期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. エムティーアイってどんな会社?
コンテンツ配信サービス「music.jp」やヘルスケアアプリ「ルナルナ」などを展開するIT企業です。
■(1) 会社概要
1996年8月に設立され、1997年よりコンテンツサービスを開始しました。1999年に店頭登録、2004年にジャスダックへ上場し、2015年3月に東証一部(現プライム)へ上場しました。2010年にはAI事業を行うAutomagiを子会社化し、近年はヘルスケアや学校DXなどの新領域へ事業を拡大しています。
同グループの従業員数は連結1,236名、単体769名です。筆頭株主は創業者の前多俊宏氏で、第2位は法人である株式会社ケイ・エム・シー、第3位は投資事業組合となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 前多 俊宏 | 21.41% |
| ケイ・エム・シー | 18.13% |
| エスアイエル投資事業有限責任組合 | 7.82% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性3名の計14名で構成され、女性役員比率は21.0%です。代表取締役社長は前多俊宏氏が務めています。取締役10名のうち5名が社外取締役であり、社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 前多 俊宏 | 代表取締役社長 | 1987年日本アイ・ビー・エム入社。1988年光通信入社、同社常務取締役を経て、1996年8月エムティーアイを設立し代表取締役社長に就任。以来、現職として経営を牽引。 |
| 泉 博史 | 取締役副社長ライフ・エンターテインメント事業本部長兼テクノロジー本部長(DXソリューション事業部、サイバーリスクマネジメント室、CX統括部、コンプライアンス推進統括室、AI Transformation Lab担当) | 日本アイ・ビー・エム、マイクロソフトを経て1999年入社。執行役員、取締役専務などを歴任し、2009年より現職。 |
| 松本 博 | 専務取締役(IR室・事業アライアンス 担当) | 富士銀行(現みずほFG)、シーエーシー、ユー・エス・ジェイを経て2004年入社。執行役員、取締役、常務取締役を経て2018年より現職。 |
| 石川 幸一 | 常務取締役スマートコンテンツ事業部長(ERPソリューション事業部 担当) | プロディクス等を経て1999年入社。他社経験を経て2010年再入社。執行役員、常務執行役員を経て2023年より現職。 |
| 一ノ倉 悠 | 常務取締役(自治体向けサービス戦略・学校向けサービス事業 担当) | 猿田彦珈琲を経て、2018年モチベーションワークス代表取締役(現任)。2024年6月エムティーアイ常務執行役員、同年12月より現職。 |
社外取締役は、周牧之(東京経済大学経済学部教授)、山本晶(慶應義塾大学商学部教授)、土屋了介(学校法人国際学園理事)、和田英明(株式会社コア・コンサルティング・グループ代表取締役)、石川雄三(元KDDI副社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「コンテンツ事業」「ヘルスケア事業」「学校DX事業」および「その他事業」を展開しています。
■(1) コンテンツ事業
スマートフォン等のモバイル端末向けに、動画・音楽・書籍・コミックなどのエンターテインメント系コンテンツや、セキュリティ関連アプリ『AdGuard』等のライフ系コンテンツを提供しています。また、コミック配信事業者向けにオリジナルコミック作品を提供するBtoB事業も行っています。
主な収益は、エンドユーザーからの月額課金収入や、事業者からのコンテンツ提供料です。運営は主に同社が行うほか、ビデオマーケット、メディアーノ、ライズシステムなどが各サービスを担当しています。
■(2) ヘルスケア事業
女性向け健康情報サービス『ルナルナ』や『カラダメディカ』などのBtoCサービスに加え、医療機関や自治体向けに母子手帳アプリ、クラウド薬歴、オンライン診療システムなどのDXサービスを提供しています。個人のヘルスデータを活用し、便利で快適な日常の実現を目指しています。
収益源は、エンドユーザーからの月額利用料や、医療機関・自治体からのシステム利用料・導入費などです。運営は同社のほか、エムティーアイ・ヘルスケア・ホールディングス、カラダメディカ、ソラミチシステム、母子モ、クリプラ、ファルモなどが行っています。
■(3) 学校DX事業
教育現場のデジタルトランスフォーメーションを支援するため、学校法人(私立・公立)向けにクラウド型校務支援システム『BLEND』などを提供しています。校務の効率化やデータ活用を通じて、教育環境の改善をサポートしています。
主な収益は、学校法人からのシステム月額利用料や初期導入費用です。運営は、連結子会社であるモチベーションワークス株式会社が行っています。
■(4) その他事業
法人顧客に対して、AI(人工知能)を活用したシステム開発やソリューション提供、企業のDX支援などを行っています。画像・音声認識技術などを活用し、業務効率化や付加価値向上を支援しています。
収益は、システム開発の受託費やソリューションサービスの利用料です。運営は、AI事業を行うAutomagi株式会社や、法人向けDX支援を行う同社が担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は着実な増加傾向にあり、直近では約300億円規模に達しています。利益面では一時的な赤字や低迷期がありましたが、直近2期でV字回復を果たし、当期は大幅な増益を達成しました。当期純利益も前期比で増加し、収益性が向上しています。
| 項目 | 2021年9月期 | 2022年9月期 | 2023年9月期 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 257億円 | 265億円 | 268億円 | 277億円 | 299億円 |
| 経常利益 | 14億円 | 5億円 | 5億円 | 28億円 | 30億円 |
| 利益率(%) | 5.3% | 1.8% | 1.7% | 10.2% | 10.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -12億円 | -9億円 | 8億円 | 24億円 | 34億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益も順調に拡大しています。売上総利益率は70%台と高い水準を維持しており、営業利益率も約10%前後で推移しています。販管費のコントロールと売上拡大が両立しており、本業の収益力が強化されています。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 277億円 | 299億円 |
| 売上総利益 | 204億円 | 222億円 |
| 売上総利益率(%) | 73.7% | 74.3% |
| 営業利益 | 24億円 | 29億円 |
| 営業利益率(%) | 8.7% | 9.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が46億円(構成比24.1%)、広告宣伝費が37億円(同19.0%)、支払手数料が31億円(同16.2%)を占めています。
■(3) セグメント収益
コンテンツ事業は売上・利益ともに安定しており、全社の収益基盤となっています。ヘルスケア事業と学校DX事業は売上が大きく伸長しており、特に学校DX事業は黒字化を果たし利益貢献が始まっています。その他事業も増収増益となり、全セグメントで売上が拡大しました。
| 区分 | 売上(2024年9月期) | 売上(2025年9月期) | 利益(2024年9月期) | 利益(2025年9月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| コンテンツ事業 | 168億円 | 171億円 | 43億円 | 43億円 | 25.0% |
| ヘルスケア事業 | 55億円 | 67億円 | 4億円 | -1億円 | -1.2% |
| 学校DX事業 | 12億円 | 19億円 | -1億円 | 6億円 | 29.1% |
| その他事業 | 42億円 | 43億円 | 3億円 | 9億円 | 22.2% |
| 調整額 | - | - | -25億円 | -27億円 | - |
| 連結(合計) | 277億円 | 299億円 | 24億円 | 29億円 | 9.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、本業で稼いだ現金を借入返済や配当支払い等の財務活動に充てつつ、将来のための投資も行っている「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 41億円 | 57億円 |
| 投資CF | -14億円 | -17億円 |
| 財務CF | -16億円 | -9億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は20.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は55.2%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
日々変化する世の中で、その時々に求められるサービスを絶えず生み出し、世界中に届けていくことが、お客様がより自由に自分らしく生きられる社会を実現する上で大切であると考えています。お客様の生活を共に歩むパートナーとして、日々の暮らしをより便利に、より豊かにするサービスの提供を通じて、よりよい未来社会の実現に取り組んでいます。
■(2) 企業文化
経営の基本方針として、お客様の生活を共に歩むパートナーとして、日々の暮らしをより便利に、より豊かにするサービスの提供を通じて、よりよい未来社会の実現に取り組む姿勢を重視しています。変化し続ける環境にいち早く適応し、高度なデジタル技術を活用したDXサービスを創出することを目指しています。
■(3) 経営計画・目標
「売上高の成長率」と「営業利益率の改善度」を重要な経営指標として位置づけ、企業価値の継続的向上を目指しています。また、「総還元性向」については、中期的に35%を目安に株主還元を行う方針です。2026年9月期の計画として以下の数値を掲げています。
* 売上高:310億円
* 営業利益:31億~35億円
* 経常利益:31億~35億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:17.7億~20.5億円
■(4) 成長戦略と重点施策
コンテンツ事業の収益を、成長ポテンシャルの高いヘルスケア事業および学校DX事業への先行投資に振り向け、新たな収益の柱を育成する方針です。また、AI等のデジタル技術の活用やグループシナジーの最大化を推進します。
* コンテンツ事業:有料会員数の維持とセキュリティ系コンテンツの拡大。
* ヘルスケア事業:クラウド薬歴や子育てDXサービスの拡販による売上成長。
* 学校DX事業:クラウド型校務支援システムの公立・私立学校への導入拡大。
* AI・技術活用:サービス開発の全工程でのAI活用(AI駆動開発)やセキュリティ人材の強化。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
従業員一人ひとりが個性と能力を最大限に発揮し、成果創出や価値創造を最大化することを目指しています。そのために、次世代経営幹部候補の早期抜擢や成長機会の提供、AI・セキュリティ人材の採用・教育への投資を継続します。また、多様な人材が活躍できる環境整備や、テレワーク・フレックス制度などを通じた柔軟な働き方を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年9月期 | 40.4歳 | 9.1年 | 6,607,415円 |
※平均年間給与は、賞与および基準外賃金を含んでいます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 18.7% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 86.7% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 78.4% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 79.9% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用) | 47.3% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 技術革新におけるリスク
IT技術の革新が急速に進む中、先進技術への対応が遅れるとサービスの陳腐化を招く恐れがあります。新技術採用のための開発コストが増加したり、ユーザーニーズに合致したサービス提供が困難になった場合、グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 競合との競争激化
提供するサービスの品質や価格面で競合との差別化が図れない場合や、無料サービスを含む価格競争が激化した場合には、顧客流出や収益性の低下を招く可能性があります。コスト競争力を維持できず、ユーザーや取引先との関係を維持できない場合、経営に影響を与える可能性があります。
■(3) 情報ネットワークにおけるリスク
通信回線や情報システムを活用した事業を展開しているため、自然災害、事故、急激なアクセス増加、サイバー攻撃等によりシステムが長期間停止した場合、事業の中断を余儀なくされる可能性があります。また、AWS等のクラウドサービス障害によりサービス品質に影響が出た場合も、業績や社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。



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