日本ファルコム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本ファルコム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所(グロース)に上場するゲームソフト制作会社です。人気RPG「軌跡」シリーズや「イース」シリーズなどの企画・制作・販売およびライセンスビジネスを主力事業としています。直近の業績は、主力タイトルの全世界同時発売やライセンス展開が寄与し、増収増益で推移しています。


#記事タイトル:日本ファルコム転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、日本ファルコム の有価証券報告書(第24期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本ファルコムってどんな会社?


ロールプレイングゲーム(RPG)を中心としたゲームソフトの企画、制作、開発および販売を行う企業です。

(1) 会社概要


同社は2001年11月、ゲームソフト事業の分離を目的に旧日本ファルコム(現ファルコム)からの新設分割により設立されました。2003年12月には東京証券取引所マザーズ(現グロース)へ株式を上場しています。創業以来、PCゲーム市場から家庭用ゲーム機へとプラットフォームを広げながら、自社IPの創出と育成に注力しています。

2025年9月30日時点で、従業員数は単体で69名と少数精鋭の体制です。筆頭株主は日本ファルコムホールディングス、第2位および第3位は創業家出身の個人株主となっており、創業家の影響力が強い資本構成となっています。

氏名 持株比率
日本ファルコムホールディングス 40.46%
加藤圭 10.44%
加藤翔 10.40%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長には近藤季洋氏が就任しており、社外取締役比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
近藤季洋 代表取締役社長 旧日本ファルコム入社後、制作企画委員会部長、取締役を経て2007年より現職。
中野貴司 専務取締役 旧日本ファルコム入社後、コーポレートユニット部長、取締役を経て2024年より現職。
石川三恵子 取締役デザインユニットエグゼクティブマネージャー 旧日本ファルコム入社後、取締役デザインユニット部長を経て2020年より現職。
草野孝之 取締役クリエイティブユニットクリエイティブディレクター 旧日本ファルコム入社後、取締役クリエイティブユニット本部長を経て2020年より現職。


社外取締役は、谷逸平(工画堂スタジオ代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「製品部門」および「ライセンス部門」を展開しています。

製品部門


RPGを中心としたゲームソフトの企画、制作、開発および販売を行っています。また、ゲーム音楽CDの制作・販売や、海外ゲームソフトの日本語版制作なども手がけています。主要な顧客はゲームユーザーであり、魅力的なストーリーやゲーム性を持つコンテンツを提供しています。

収益は、主にゲームソフトや音楽CDの販売代金から得ています。自社で企画・開発したタイトルを、家庭用ゲーム機やPC向けに販売することで収益を上げています。運営は主に同社が行っています。

ライセンス部門


同社が保有するゲームコンテンツ(IP)を、多様なプラットフォームやメディアへ展開するためのライセンス許諾を行っています。これには、他社によるゲーム開発、海外版の現地語化・販売、モバイル展開、ダウンロード販売、関連書籍やグッズ製作などが含まれます。

収益は、ライセンス許諾契約に基づく契約一時金や、売上に応じたロイヤリティー(使用料)として、提携先のパートナー企業から受け取っています。運営は同社が行っており、国内外の有力なパブリッシャーやデベロッパーと連携しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は25億円前後で安定的に推移しており、直近では微増傾向にあります。経常利益は12億円から16億円の水準を維持しており、経常利益率は50%前後という極めて高い収益性を誇っています。少数精鋭による高効率な経営と、利益率の高いライセンスビジネスが寄与しています。

項目 2021年9月期 2022年9月期 2023年9月期 2024年9月期 2025年9月期
売上高 25億円 25億円 25億円 25億円 26億円
経常利益 14億円 16億円 13億円 12億円 14億円
利益率(%) 57.2% 62.1% 54.3% 49.3% 52.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 10億円 10億円 9億円 9億円 9億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、売上高の増加に伴い売上総利益も増加しています。営業利益率は約50%前後で推移しており、依然として高い水準を維持しています。原価率が低く、販管費のコントロールも効いていることから、収益構造は非常に堅固です。

項目 2024年9月期 2025年9月期
売上高 25億円 26億円
売上総利益 23億円 23億円
売上総利益率(%) 90.0% 88.1%
営業利益 12億円 13億円
営業利益率(%) 49.1% 51.3%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が6億円(構成比66%)、役員報酬が1億円(同8%)を占めています。売上原価については、原材料費が2億円(構成比70%)、外注費が0.5億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


製品部門は、新作タイトルの全世界同時発売や旧作の移植版展開により増収となりました。ライセンス部門は、海外翻訳版やスマートフォン向けアプリの展開が継続し、前期並みの売上を維持しています。全体として、自社製品の販売増が業績を牽引しました。

区分 売上(2024年9月期) 売上(2025年9月期)
製品部門 6億円 7億円
ライセンス部門 19億円 19億円
連結(合計) 25億円 26億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業で稼いだ資金(営業CFプラス)をもとに、配当等の株主還元(財務CFマイナス)を行いながら、必要な投資(投資CFマイナス)も自己資金で賄う「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。無借金経営であり、財務基盤は盤石です。

項目 2024年9月期 2025年9月期
営業CF 8億円 10億円
投資CF -0.0億円 -0.1億円
財務CF -2億円 -2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は94.6%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、個人の創造力を尊重し、チームワークによってその効果を最大化することで、オリジナリティあふれるゲームコンテンツやサービスを創出することを基本方針としています。これらの魅力を多様なプラットフォームを通じて世界中に届け、事業の裾野を広げていくことを目指しています。

(2) 経営計画・目標


同社は収益性を重視しており、高い経営効率により既に高水準の利益率を達成しています。今後は営業利益率を維持しながらの持続的な成長を目指し、「Nintendo Switch」向けゲームの自社展開やマルチプラットフォーム展開、発売タイトル数の拡大や新規IPの創出を進める方針です。

* 2026年9月期 売上高:26億円
* 2026年9月期 営業利益:13億円
* 2026年9月期 経常利益:13億円
* 2026年9月期 当期純利益:9億円

(3) 成長戦略と重点施策


「攻」と「守」のバランスが取れた経営基盤作りを推進します。「攻」としては、家庭用ゲーム機やスマホアプリ、オンラインゲーム等の新規分野への挑戦と技術革新を重視し、「守」としては、開発のスピードと品質の向上、人材育成に取り組みます。また、自社IPを多様なプラットフォームへ展開し、ブランド認知度の向上と収益最大化を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


コンテンツメーカーとしての競争力を高めるため、人材の採用と育成に注力しています。老舗として培ってきたノウハウや技術、価値観を伝え、組織の中核を担う創造力豊かな人材を育成することを目指しています。また、多様性を確保し、性別や年齢等を問わず能力ある人材を採用し、仕事と家庭を両立しやすい環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年9月期 39.3歳 14.8年 5,569,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は従業員規模が300人以下のため、有報には本稿の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 開発期間の長期化


ゲームソフト開発は半年から数年を要するため、計画と実際の開発期間に差異が生じるリスクがあります。技術革新により求められる機能が高度化した場合、開発が長期化し業績に影響を与える可能性があります。同社はスケジュール管理や効率的な開発体制の整備により、期間長期化の回避に努めています。

(2) 製品の販売推移の傾向


製品部門の売上高は、新作ゲームソフトの発売時期に大きく計上される傾向があります。そのため、新製品の発売タイミングにより、四半期ごとの業績が大幅に変動する可能性があります。

(3) 特定のタイトルへの依存


同社の業績は「イース」や「軌跡」シリーズなど特定の人気タイトルへの依存度が高くなる傾向があります。市場環境の変化によりユーザー離れやコンテンツの陳腐化が進んだ場合、業績に影響を与える可能性があります。同社は既存タイトルの継続投入に加え、新規IPの創出も進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。