※本記事は、株式会社インタースペース の有価証券報告書(第26期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. インタースペースってどんな会社?
インターネット広告事業とメディア運営事業を主軸に、日本国内および東南アジアで事業を展開する企業です。
■(1) 会社概要
1999年に設立され、2001年にアフィリエイトサービス「アクセストレード」の運営を開始しました。2006年には東証マザーズ市場へ上場を果たし、その後、育児支援サイト「ママスタジアム」の事業譲受や海外現地法人の設立などを通じて事業を拡大しています。2022年には東証スタンダード市場へ移行しました。
同グループの従業員数は連結405名、単体249名です。筆頭株主は創業者の河端伸一郎氏で、発行済株式の約47%を保有しています。第2位、第3位はいずれも個人株主となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 河端 伸一郎 | 46.73% |
| 河端 隼平 | 8.28% |
| 藤田 由里子 | 8.28% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名、計7名で構成され、女性役員比率は14.0%です。代表取締役執行役員社長は河端伸一郎氏が務めています。社外取締役比率は57.1%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 河端 伸一郎 | 代表取締役執行役員社長パフォーマンスマーケティング事業担当 | 1994年大和証券入社。1999年同社設立とともに代表取締役社長に就任。2024年より現職。 |
| 尾久 一也 | 取締役上席執行役員メディア事業担当兼グループアライアンス担当 | 1998年日理入社。2011年同社入社。2015年取締役就任。4MEEE代表取締役社長を経て2024年より現職。 |
| 岩渕 桂太 | 取締役上席執行役員グループCFO | 2000年ホテル京急入社。光通信を経て2010年同社入社。2011年取締役就任。2024年より現職。 |
社外取締役は、半田勝彦(元博報堂)、後藤祥代(元日本ロレアル)、石久保善之(公認会計士)、吉富純一(元みずほ証券)です。
2. 事業内容
同社グループは、「パフォーマンスマーケティング事業」および「メディア事業」を展開しています。
■(1) パフォーマンスマーケティング
成果報酬型広告「アクセストレード」や、店舗でのアプリ提案等のソリューションを提供しています。広告主には費用対効果の明確な広告モデルを、パートナーサイトには収益機会を提供します。また、スマートフォンユーザー向けのセキュリティソフトやバックアップサービスの販売支援なども行っています。
収益は、広告主からの成果報酬手数料、システム利用料、初期導入費用のほか、個人向けサービスのサブスクリプション利用料などから得ています。運営は同社および海外子会社のほか、子会社の株式会社ストアフロント、株式会社N1テクノロジーズが行っています。
■(2) メディア
女性向けの「ママスタ」「4MEEE」等のコンテンツメディアや、学習塾ポータル「塾シル」等の比較・検討メディアを運営しています。子育て情報やライフスタイル提案、学習塾情報などを提供し、ユーザーの情報収集や選択を支援しています。
収益は、アドネットワーク広告による広告料や、資料請求・申込に応じた成果報酬などから得ています。運営は同社に加え、子会社の4MEEE株式会社、株式会社ユナイトプロジェクト、株式会社TAG STUDIOなどが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年9月期の売上高が大きく計上されていますが、これは「収益認識に関する会計基準」適用前の数値が含まれている可能性があります。直近数期間では売上高は緩やかな増加傾向にあるものの、利益面では減少傾向が見られます。特に2024年9月期から2025年9月期にかけては、利益率の低下が続いています。
| 項目 | 2021年9月期 | 2022年9月期 | 2023年9月期 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 231億円 | 71億円 | 73億円 | 79億円 | 88億円 |
| 経常利益 | 6億円 | 13億円 | 9億円 | 5億円 | 4億円 |
| 利益率(%) | 2.7% | 18.2% | 12.5% | 6.2% | 4.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3億円 | 2億円 | 4億円 | 0.8億円 | -0.6億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加し88億円となりましたが、売上総利益率はほぼ横ばいで推移しています。一方、営業利益は減少し、営業利益率は低下しました。販管費の増加が利益を圧迫している構造が見受けられます。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 79億円 | 88億円 |
| 売上総利益 | 64億円 | 73億円 |
| 売上総利益率(%) | 80.4% | 82.6% |
| 営業利益 | 6億円 | 4億円 |
| 営業利益率(%) | 7.0% | 4.2% |
販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が25億円(構成比36%)、給料及び手当が15億円(同22%)を占めています。売上原価に関しては、その内訳は詳細には記載されていませんが、売上原価率は約17%となっています。
■(3) セグメント収益
パフォーマンスマーケティング事業は増収となったものの、利益は減少しており、利益率は低下しています。メディア事業は売上高が微減し、利益は大幅に減少しました。全体として増収減益の傾向となっています。
| 区分 | 売上(2024年9月期) | 売上(2025年9月期) | 利益(2024年9月期) | 利益(2025年9月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| パフォーマンスマーケティング | 50億円 | 58億円 | 4億円 | 3億円 | 5.3% |
| メディア | 18億円 | 17億円 | 1億円 | 1億円 | 3.7% |
| 調整額 | 12億円 | 13億円 | - | - | - |
| 連結(合計) | 79億円 | 88億円 | 6億円 | 4億円 | 4.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 8.4億円 | 1.7億円 |
| 投資CF | -3.3億円 | -3.3億円 |
| 財務CF | -1.6億円 | -1.9億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は50.4%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは「Win-Winをつくり、未来をつくる。」を経営理念として掲げています。これは、人と人とがお互いを思いやりながら良い影響を与え合う関係性を築き、適切な情報を届けることで新しい気づきや多様な選択肢を提供し、今まで成し得なかった新しい価値を実現することを目指すものです。
■(2) 企業文化
同社は「価値の創造」「相互信頼」「長期的展望」「社員の成長」「社会的信用」を経営方針として掲げています。新しい価値の創造により社会発展に寄与し、互いを認め合いながら共に発展することを目指しています。また、法令遵守のもと、社員と共に成長し、長期的な視点で誠実な企業であり続けることを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は2023年11月に中期経営計画を策定しましたが、事業環境の変化やプラットフォーマーによる規制強化などの影響により目標達成が困難と判断し、計画の見直しを行っています。重視する経営指標として以下の3つを掲げており、新たな計画策定後に目標値を公表する予定です。
* 売上高
* 営業利益
* ROE
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は「Global市場に向け、パフォーマンスマーケティング領域でAsiaトップのポジションを目指す」というビジョンのもと、持続的成長に向けた戦略の再構築を進めています。具体的には、顧客提供価値の強化と新たな収益モデルの拡充、およびコスト効率による収益性改善に取り組む方針です。
* パフォーマンスマーケティング事業:マーケティングソリューションと組み合わせた新サービスの提供。
* メディア事業:会員基盤を活かした高付加価値サービスの拡充。
* コスト構造改革:海外事業の効率化、人員構成の最適化、AI活用による外注費削減。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「人」の成長への投資を経営の重要事項と位置付けています。従業員が安心して働ける環境整備、活躍・成長の支援、成果を評価する仕組み、多様性の確保に取り組んでいます。具体的には、フレックスタイムやテレワーク等の柔軟な働き方の推進、コーチングや研修等の成長支援、公正な評価制度の運用などを行っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年9月期 | 37.3歳 | 9.0年 | 6,782,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 15.8% |
| 男性育児休業取得率 | 75.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 66.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 76.7% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 101.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全従業員に占める女性従業員の割合(48.8%)、全従業員に占める外国籍従業員の割合(27.4%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 法的規制に伴うリスク
パフォーマンスマーケティング事業およびメディア事業においては、現時点では事業継続に重大な影響を及ぼす規制はありませんが、今後インターネット利用者や事業者を対象とする法令や行政指導が強化された場合、事業や業績に影響が及ぶ可能性があります。また、広告配信技術への規制強化により、代替技術開発への投資や機会損失が発生するリスクもあります。
■(2) 生成AIの利用等に関するリスク
業務効率化等のために生成AIを利用していますが、情報漏えいや知的財産権侵害、誤情報の流布などのリスクがあります。ルール策定等で軽減を図っていますが、AI技術の進歩や法規制の動向は不透明であり、予期せぬリスクが顕在化した場合、事業や業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 海外展開に伴うリスク
インドネシア、タイ、ベトナム、シンガポール、マレーシアで現地法人を展開しています。これらの地域における政治的・経済的な変動、文化や商習慣の違いによる労務問題、為替変動などのリスクがあります。これらのリスクが顕在化した場合、同社グループの事業や業績に影響を及ぼす可能性があります。



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