LIFULL 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

LIFULL 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

LIFULL(ライフル)は東証プライム市場に上場し、不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME'S」の運営を主要事業としています。直近の決算では、売上収益は281億円で増収、親会社所有者帰属当期利益は53億円となり、前期の赤字から黒字転換を果たしました。


※本記事は、株式会社LIFULL の有価証券報告書(第31期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. LIFULLってどんな会社?


同社は、総掲載物件数No.1クラスの不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME'S(ライフルホームズ)」を運営し、住まい領域を中心に多角的な情報サービスを展開する企業です。

(1) 会社概要


1997年に不動産物件情報サービスの提供を目的に設立され、2006年にマザーズへ上場しました。2010年には東証一部へ市場変更し、2017年に現社名へ変更しています。2022年の市場区分見直しによりプライム市場へ移行しました。2025年には海外事業を非継続事業に分類し、国内事業への集中を進めています。

連結従業員数は918名、単体では667名です。筆頭株主は創業者の井上高志氏で、第2位は資本提携関係にある楽天グループです。第3位には資産管理業務を行う信託銀行が名を連ねています。

氏名 持株比率
井上 高志 33.19%
楽天グループ 18.57%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.28%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性4名の計13名で構成され、女性役員比率は30.8%です。代表者は代表取締役会長の井上高志氏と代表取締役社長執行役員の伊東祐司氏です。社外取締役比率は38.5%です。

氏名 役職 主な経歴
井上 高志 代表取締役会長 リクルートコスモス等を経て、1997年に同社設立・代表取締役。2023年より現職。
伊東 祐司 代表取締役社長執行役員 2006年同社入社。HOME'S事業本部長等を経て、2023年代表取締役社長執行役員に就任し現職。
宍戸 潔 取締役 三菱商事等を経て、2016年同社常勤社外監査役。2023年より現職。
清水 哲朗 取締役 新生銀行専務執行役員、マネックスグループ常務執行役員等を経て、2023年より現職。


社外取締役は、小林正忠(楽天グループ常務執行役員)、中尾隆一郎(中尾マネジメント研究所社長)、大久保和孝(公認会計士)、木村尚敬(IGPIグループ共同経営者)、中村公美(元日本板硝子執行役CCDO)です。

2. 事業内容

同社グループは、2025年9月期中に海外事業セグメントを非継続事業に分類しました。これに伴い、報告セグメントを「HOME'S関連事業」の単一セグメントに変更しています。

(1) HOME'S関連事業


国内最大級の不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME'S(ライフルホームズ)」や、不動産投資と収益物件の情報サイト「健美家」を運営しています。AI等の技術を活用し、住まい探しの検索体験を提供するとともに、不動産事業者向けに業務効率化支援サービス等も展開しています。

主な収益源は、不動産事業者からの情報掲載料や、ユーザーからの問合せに応じた送客手数料、広告掲載料などです。運営は主にLIFULLが行い、投資関連サイトは子会社の健美家が運営しています。

(2) その他事業


老人ホーム・介護施設の検索サイト「LIFULL 介護」の運営や、地方創生に関わる事業を展開しています。また、空き家の利活用や地方創生に資するファンド運営なども行っています。

収益源は、介護施設等からの掲載料や送客手数料、地方自治体等からの業務受託料などです。運営は主に子会社のLIFULL seniorやLIFULL Investmentなどが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上収益は、2024年9月期に一旦減少しましたが、直近では回復傾向にあります。利益面では、2024年9月期に当期損失を計上しましたが、直近の2025年9月期には黒字転換を果たし、利益率も大幅に改善しています。

項目 2021年9月期 2022年9月期 2023年9月期 2024年9月期 2025年9月期
売上収益 359億円 357億円 364億円 263億円 281億円
税引前利益 -69億円 14億円 15億円 25億円 38億円
利益率 -19.1% 3.9% 4.2% 9.7% 13.5%
当期利益(親会社所有者帰属) -59億円 12億円 9億円 -85億円 53億円

(2) 損益計算書


前期と比較して売上収益が増加し、売上総利益率も改善しています。営業利益も増益となっており、収益性が向上しています。販売費及び一般管理費は横ばいで推移しており、コストコントロールが進んでいることがうかがえます。

項目 2024年9月期 2025年9月期
売上高 263億円 281億円
売上総利益 223億円 240億円
売上総利益率(%) 84.7% 85.2%
営業利益 30億円 38億円
営業利益率(%) 11.5% 13.6%


販売費及び一般管理費のうち、従業員及び役員に対する給付費用が81億円(構成比36%)、広告宣伝費が81億円(同36%)を占めています。

(3) セグメント収益

同社は「HOME'S関連事業」の単一セグメントなので、セグメント利益はありません。主力のHOME'S関連事業は、トラフィックや問合せ数が好調に推移し増収増益となりました。その他事業もRakuten STAY VILLAの運営開始等により増収となり、赤字幅が縮小しています。

区分 売上(2024年9月期) 売上(2025年9月期)
HOME'S関連事業 240億円 255億円
その他 23億円 26億円
調整額 -0.1億円 -0.1億円
連結(合計) 263億円 281億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

本業で稼ぎつつ、積極的に投資を行い、不足分を資金調達している「積極型」です。

項目 2024年9月期 2025年9月期
営業CF 17億円 48億円
投資CF -7億円 -119億円
財務CF -30億円 39億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は21.2%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は72.6%でも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「常に革進することで、より多くの人々が心からの『安心』と『喜び』を得られる社会の仕組みを創る」を経営理念として掲げています。また、社是として「利他主義」を掲げ、事業を通じた社会課題の解決により、あらゆる人々が自分らしい暮らしを実現できる世界の実現を目指しています。

(2) 企業文化


同社では「ガイドライン」を策定し、経営理念実現のために社員に期待する行動を定義しています。また、すべての社員が経営理念を心から実現したいと考えている状態を目指し、内発的動機に基づく挑戦を推奨する文化があります。

(3) 経営計画・目標


革進的な検索体験の創出と、ユーザー数の増加、顧客基盤の強化に取り組み、ユーザーとクライアント双方に対する提供価値を増加させることで業績の拡大を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


主力事業の強化として、AI・生成AI等の最新技術を活用し、情報の網羅性向上や可視化を推進します。また、グループシナジーの強化や、不動産市場の活性化・拡大に向けたDX提案、M&Aや事業提携の推進、人材採用・育成および組織力の強化に取り組む方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、社員が経営理念の実現を目指して内発的動機に基づき挑戦することを人材戦略の核としています。経営理念の共有や企業文化の浸透を基盤とし、多様な人材の確保、個人の挑戦機会の提供、Well-beingの追求、チーム成果の最大化、互いの違いを歓迎する組織づくりに注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年9月期 37.4歳 8.4年 7,120,000円


※平均年間給与は、従業員1人当たりの本給、賞与及び基準外賃金の合計額で算定しております。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 24.6%
男性育児休業取得率 52.6%
男女賃金差異(全労働者) 80.2%
男女賃金差異(正規) 83.3%
男女賃金差異(非正規) 54.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、インクルージョンサーベイでのポジティブ評価(86%)、健康診断受診率(100%)、ストレスチェック受検率(94.8%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業戦略に関するリスク(HOME'S関連事業)


主力サービスでは成果報酬型の課金形式を採用しているものがあり、事業環境の変化等により顧客への送客数が減少した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、価格体系の見直しや、クライアントの退会、ユーザーとのトラブル等が業績に悪影響を与えるリスクもあります。

(2) 外部検索エンジンへの依存


同社サイトへの集客は検索エンジン経由が主であり、検索エンジンの表示アルゴリズム変更等により検索結果の表示順位が下がった場合、サイトへの集客力が低下し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 個人情報の取り扱い


事業において多数の個人情報を保有しているため、外部からの不正アクセスや管理体制の不備等により情報の流出や不正利用が発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償請求等により、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。